大好きな人ができたら、毎日でも一緒にいたい、そう思うのは自然なことです。友達と遊ぶ時間よりも恋人といたいと思ったり、ちょっと連絡が返ってこないと不安になったり、恋愛をしていれば誰しもが経験する気持ちですが、あまりにそれが行き過ぎている場合、恋愛依存症の可能性もあります。
では、恋愛依存症とは一体どういったものなのでしょうか。また、恋愛依存症に陥る原因や克服方法はあるのでしょうか。
目次
- 恋愛依存症とは
- 恋愛依存症の特徴
- まとめ
恋愛依存症とは、好きな人がいて楽しいはずなのに、相手に見捨てられるのではないかという不安がつきまとい、そんな自分を安心させるために、相手に行動をあれこれ求めてしまう状態を指します。恋愛依存症は正式な病名ではありませんが、恋愛依存によって日常生活に支障をきたしている場合には、後述の別の診断名がつくこともあります。
一般的に恋愛は、自分から相手、相手から自分といったように、相互作用によって関係性が成り立っています。しかし、依存状態では相手に軸があり、相手の言葉一つやちょっとした行動で、自分の感情が大きく揺さぶられます。いつも連絡をくれるタイミングで連絡がないと、「忙しいのかな」ではなく、「もう私のことを好きじゃなくなったんじゃないか」「誰かと浮気しているんじゃないか」などと不安になります。こうした、相手に見捨てられるのではないかという不安を「見捨てられ不安」といいます。
付き合いはじめの頃は、いつも一緒にいたり、四六時中連絡を取ったりしていても楽しいですが、次第に依存する側も依存される側も、辛くなっていきます。
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恋愛依存症と一緒に、回避依存症という言葉もよく使われています。回避依存症は、恋愛依存症とは真逆に、他人と深く関わることを避けようとする状態を指します。回避依存症も恋愛依存症と同様に、正式な病名ではありません。回避依存といわれる人は、面倒なことを避けて一人で過ごすことが好きなので、人付き合いや恋愛を億劫に感じるという特徴があります。恋愛依存症は女性に多く、回避依存症は男性に多いとされています。
恋愛依存症と回避依存症の人はお互いに引かれやすい傾向にあるといわれています。しかし、依存したい恋愛依存症と、依存されるのを嫌う回避依存症による関係性のため、時間が経つと恋愛依存症側がだんだんと不安になり、最終的に不満がたまって泥沼状態になりやすいとされています。
「恋人のことが大好き」という状態と「依存」は違います。では、依存とは一体どういった状態を指すのでしょうか。
◇生活のすべてが相手中心になる
恋愛依存症では、恋人ができると生活のすべてが相手中心になります。「相手から連絡が来るかもしれないから」「お誘いが来るかもしれないから」と友達との予定を断ったり、ときには仕事よりも恋人を優先したりするようです。
付き合っている相手によって服装やメイクががらりと変わったり、急に家庭的になったりすることもあります。
◇少しでも連絡がないと不安になる
恋愛依存症では、恋人から少しでも連絡がないと非常に不安な気持ちになります。「もしかすると、この時間に他の人と浮気をしているのではないか」と疑ったり、「何か隠し事があるのではないか」と不安になったりします。一日中スマホが手放せず、何度も電話をかけたり、相手に連絡がついたときには、不安だった気持ちを思い切りぶつけたりしてしまうこともあります。
◇相手のためなら自分を犠牲にすることも構わない
恋愛依存症には、相手のためになら自分を犠牲にすることも嫌がらない傾向があります。自分の身体や気持ちが疲れていても、相手のために尽くしたり、自身を責めたりするようです。
こういった自己犠牲をいとわないのは、恋愛依存症の特徴です。
◇関係性を繋ぎとめるためなら何でもする
恋愛依存症には、相手が別れをほのめかすようなことをすれば、二人の関係性を繋ぎとめるために何でも手を尽くそうとする傾向があります。例えば、相手にお金を渡したり、自傷行為をしたりしてでも、相手を自分のそばに繋ぎとめようとします。
◇知り合ってすぐに肉体関係を持つ
恋愛依存症には、知り合ってすぐに肉体関係を持つ傾向が見られます。恋愛依存症の人は、他人からの愛情に飢えていたり、一人でいることの寂しさを抱えたりしていることが多いため、一時的にであっても他人の愛情や温もりを求めて、出会って間もない人とも肉体関係を持ってしまうことがあります。
では、恋愛依存症になりやすいのは、どのような人でしょうか。
◇自分に自信がない
自分に自信がないと、「こんな自分と付き合ってくれるのだから、相手の理想的な姿でいなければ」といった具合に、相手を中心にものごとを考えてしまうため、恋愛依存症に陥りやすくなります。
また、自分に自信がない人は、「もしかすると、彼はもっと素敵な女性と恋愛をしたいのではないか」「もっと可愛い子に目が移ってしまうのではないか」と不安になり、相手からちょっと連絡がなかったり、冷たい態度を取られたりすると、気持ちが爆発して相手を責めたてることがあります。
◇見捨てられ不安から、常にいい人でいようとする
常にいい人でいようとする傾向も、恋愛依存症に陥りやすい人によく見られます。他人からの評価を下げたくない人が、特定の場面で「いい人」を演じることは多いのですが、恋愛になるともっと徹底的に「いい人」を演じようとします。付き合った人に振られたくない、見捨てられたくないという気持ちが大きいため、常にいい人でいようとして自分に無理をさせてしまうようです。
◇感情表現が苦手
自分の感情をあまり表に出せない人も、恋愛依存症に陥りやすいといわれています。自分の感情や意見をあまり伝えず、相手に合わせてしまうことが多いため、付き合った相手の顔色をうかがってしまいやすくなります。行きたい場所や食べたいものなども相手に合わせて、自分は我慢する癖がついてしまっており、恋愛においても相手を中心に考えてしまうため、恋愛依存症に陥りやすいとされています。
では、恋愛依存症になる原因には、どんなものがあるのでしょうか。
◇両親からの愛情不足
両親からの愛情が不足している、または本人がそれを不足していると感じている場合、愛情に飢えている状態になります。この飢えている愛情を、多くの場合は恋人に求めてしまうため、過剰なほどに相手へ依存する傾向が見られます。
また、両親からネグレクトや虐待を受けていると、自尊心を十分に育むことができないため、自分で自分を愛することよりも、誰かから愛してもらうことを求めてしまいます。
◇過去の恋愛にトラウマがある
過去の恋愛にトラウマがあると、「次の恋愛では同じ目に合わないように」と必死になってしまい、相手のことを中心に考えようとします。「これを言ったら嫌われるのではないか」「自分の時間を犠牲にしないと、浮気されるのではないか」といったように、過去の恋愛でのトラウマや不安な気持ちがあると、相手の生活や考えに合わせすぎてしまい、恋愛依存症に陥ることがあります。
では、恋愛依存症を治すにはどうしたらいいのでしょうか。
◇自分のことを好きになる
自分に自信を持つことによって、恋愛依存症を克服できる場合があります。自分の短所にばかり目を向けていると、どんどん自信がなくなってきますが、人には必ず長所もあるはずです。特に、恋愛依存症のように相手に尽くすタイプの人は、一途で頑張り屋さんである人が多いはずです。そのエネルギーを恋愛以外に向けることができれば、趣味を充実させたり、仕事で成果を出したりして、自分に自信をつけることができるでしょう。
自分のことを好きになると、わざわざ他人に認められようとする必要がなくなるため、恋愛依存症を克服できる可能性があります。
◇趣味や仕事などに没頭する
相手との時間を何よりも優先してしまう人は、趣味や仕事に没頭するのもいいでしょう。何もしない時間が長いと、どうしても相手の事を考えて不安になったり、相手に予定を合わせたりしてしまいがちですが、自分が没頭できるものがあれば、自然と相手のことを考える時間は減り、恋愛依存症を克服する癖をつけることができます。また、自分の時間を有意義に使うことで、自分に自信がついたり、仕事でいい成果が出たり、他にも良い効果が期待できます。
◇相手と少し距離を置いてみる
相手といったん距離を置いてみるのも、恋愛依存症を克服するための一つの手です。特に、相手に尽くしすぎてしまう人は、会う時間を減らしたり、電話をしないようにしたりして、相手との距離感を見つめ直すことが大切です。最初は辛いでしょうが、少し距離を置くことで、他にも没頭できる趣味があることに気がついたり、次に相手に会うまでの時間が楽しみになったりして、それまで仕事を頑張ろう、自分の能力を高めよう、という気持ちになりやすいものです。
あえて相手と距離を置くことで、「相手が全て」という状態から抜け出しやすくなります。
◇自分なりの恋愛ルールを作る
恋愛のルールを作ることも、恋愛依存症を克服するために効果的です。
といった、自分なりのルールをつくることで、相手に依存したい気持ちを抑えやすくすることができます。
また、普段は相手に合わせて自分の意見や正直な気持ちを言えなかったとしても、
などと、自ら事前に決めておくことで、なんでも従順に相手に尽くしてしまうのを防ぐことができます。
カウンセラーと一緒に、恋愛依存の克服に取り組んでみませんか?
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恋愛依存症は正式な病名ではありませんが、似たような症状が見られる障害(病気)はいくつか存在しています。代表的なものを以下に見ていきましょう。
◇パーソナリティ障害
パーソナリティ障害とは、考え方や対人関係のパターンが極めて特異、かつ柔軟でないために、健全な日常生活を送ることが困難になったり、周囲がどう対応して良いか困惑していたりする場合に適応されることがある診断名です。パーソナリティ障害はいくつかの類似性によって分類されますが、そのうちの境界性パーソナリティ障害、演技性パーソナリティ障害、依存性パーソナリティ障害では、恋愛依存症に似た症状が見られることが多くあります。
・境界性パーソナリティ障害
孤独に耐え切れず、相手に見捨てられないようにするために手段を選ばないことがあります。また、見捨てられ不安によってパニックになったり、態度が豹変したりする傾向があります。
・演技性パーソナリティ障害
自分が注目されていなければ気分が落ち込み、見た目を利用したり誘惑したりして不適切な形で相手の注意を引こうとします。パートナーに強く依存する傾向があります。
・依存性パーソナリティ障害
自分では自分の人生を支えることができないという不安から、自分が持つべき関心を失い、パートナーに依存します。また、常に見捨てられ不安を抱えていることが多いです。
パーソナリティ障害はストレスにより、うつ病などの他の障害を併発しやすいとされています。医師の診断に従って、適切な治療を受けることをおすすめします。
◇愛着障害・不安障害
愛着障害は、養育者の離別やネグレクト、虐待によって子どもが相手との対人関係をうまく築くことが困難になる障害です。小児の行動に対する診断名になりますが、大人になっても症状が継続することは十分に考えられます。大人の場合は、不安障害などの診断がつくことが多いです。不適切な養育環境が原因となり、成人してからも対人関係や精神状態に不安を抱えている人をアダルトチルドレンということもありますが、こちらは正式な病名ではありません。愛着障害を抱えていた人やアダルトチルドレンには、パートナーへの依存や見捨てられ不安といった傾向が見られる場合があります。
大好きな人ができたら、相手に愛されたい、ずっと一緒にいたい、そう思うのはとても自然なことです。しかし、自分を犠牲にしてまで頑張ってしまうと、相手も自分も疲れてしまいます。
恋愛依存症を治すには、自分のことを好きになって自信を持ったり、相手と少し距離を置いてみたり、自分なりの恋愛ルールを作るのがおすすめです。
楽しい恋愛がしたい、相手に依存しない生き方がしたい、この記事を読んでそう思っていただけましたら、ぜひカウンセリングを活用して自分と向き合い、カウンセラーと伴走しながら、恋愛依存症を克服していきましょう。