働く人の心と身体の健康を守ることは、近年、企業や組織にとって重要な課題となっており、メンタルヘルス対策の1つとして、職場カウンセリングを導入する企業が増えてきています。
本記事では、職場カウンセリングの基本的な概要や、導入することによる効果について詳しく紹介していきます。
職場カウンセリングの導入をお考えの人事ご担当者の方や、産業保健スタッフの方々はぜひ一読ください。
目次
- おわりに
・カウンセリングとは?
カウンセリングは、カウンセラーとの言葉のやりとりを通して、相談者自身の悩みや問題について向き合い方を考える方法です。カウンセラーは、相談者の考えや気持ちを整理したり、気づきを促すサポートを行います。
・職場カウンセリングとは?
このうち「職場カウンセリング」は、会社や組織で働く人を対象に実施するカウンセリングです。厚生労働省の調査(※)では、「現在の仕事や職業生活のことでストレスがある」と答えた方は82.2%、メンタル不調により休職(1カ月以上)または退職した人がいる事業所は13.3%に上ります。働く人は様々なストレスを抱えている状況が伺われます。
国内最大のオンラインカウンセリング「うららか相談室」の法人向けサービスでは、いつでもどこでも相談可能なオンラインカウンセリングを従業員に提供できます。
社内でカウンセラーを抱える必要がないため低コストで導入可能、金額の上限を設けることもできます。
・生産性アップ
働く人がストレスを抱えていることは、組織にとっても大きな問題となります。プレゼンティーズムといって、健康問題によって業務の能率が落ちている状況は、健康関連コストの約8割に上るという調査結果もあります。これはアブセンティーズム(欠勤)によるコストや、医療費よりも非常に大きな割合を占めています。職場カウンセリングを行うことで、業務効率が落ちる前にメンタルヘルスに関する問題を相談し解決を目指すことは、生産性を上げるという面からも大切であると言えます。
厚生労働省「データヘルス・健康経営を推進するためのコラボヘルスガイドライン」(2017年)
・安全配慮義務を果たす
企業や組織には「安全配慮義務」といって、労働者の危険や健康障害を防ぐ義務があります(労働契約法 第5条)。メンタル不調による休職や退職を防ぐことは、職場の義務となっているのです。メンタル不調のリスクがある方や悩みを抱えている従業員に対して、職場カウンセリングを行うことで、働く人の心身の安全を守ることが可能になります。
・メンタル不調の防止や早期発見
職場の人間関係や業務のプレッシャー、部下や後輩の指導への不安等、働く人は様々な内容のストレスを抱えています。また、働き盛りの年代は育児や介護等、家庭の中でも大切な役割を担っており、プライベートのストレスを抱えることも少なくありません。どんな人にもキャパシティがあり、一定以上ストレスがかかってしまうとメンタル不調のリスクがあります。職場カウンセリングでストレスについて相談できる場所があれば、メンタル不良を未然に防いだり、早い段階で対処したりすることができます。
・医療機関との連携
働く人の中にはストレスによって心身の症状が出る方もいらっしゃいます。ですがメンタルヘルスの問題で医療機関を受診するのには抵抗がある方も少なくありません。そこで、カウンセラーから必要なタイミングで医療機関を受診するよう促してもらうことで、ご本人も納得した上で医療機関を受診することができます。
・休職者の復職支援
メンタル不調の場合、医師から休職を勧められることがあります。個人差はありますが、1カ月~1年程度まとめて休みを取ることも珍しくありません。休職中は定期的なカウンセリングで休職中の過ごし方や、再発防止のための方法を考えていくことも効果的です。
・キャリア開発
働く人にとって、業務内容や働き方が自身の望むものと異なる場合、大きなストレスとなります。カウンセリングの中でキャリアについて考えることで、職場で働く意味や目標を見出し、モチベーションアップに繋がる可能性があります。
・メンタル不調を未然防止したAさん
Aさんは入社3年目の若手社員です。元々まじめな性格で、職場でも丁寧な業務が評価されていました。ところがある時、些細なミスで「こんなミスをするのは顧客のことを考えていないからだ」と顧客からクレームを貰ってしまいました。それからしばらくの間、出社前に腹痛や頭痛が頻繁に起こるようになりました。心配した上司に「一度カウンセラーに相談してみてはどうか」とオンラインカウンセリングを勧められ、その日の午後にカウンセリングを予約しました。Aさんは初めてのカウンセリングで緊張していましたが、落ち着いて話を聴いてもらうことができました。カウンセリングを継続する中で、医療機関の受診を勧められ、処方された薬を飲んで腹痛や頭痛は治まりました。幸い仕事を休むこともなく、元気に働いています。
・職場復帰したBさん
Bさんは5人の部下を抱える管理職です。突然退職した部下のカバーのため、深夜まで残業する日が続いていましたが、ある日電車に乗るのが怖くなり出社できなくなってしまいました。家の近くのメンタルクリニックで「うつ病」と診断され、休職の診断書をもらいました。職場からは、自宅からオンラインカウンセリングを受けることを勧められ、隔週でカウンセリングを受けています。休職当初は「自分のせいで職場に迷惑をかけていて申し訳ない」と自分を責めてしまうことが続いてました。カウンセラーから散歩や家事を勧められ、公園に出かけたり、風呂掃除や洗濯をしたりして過ごすようになりました。仕事のことは考えずに生活することで、体調も回復していきました。数カ月後、主治医から復帰の許可が出ました。Bさんは職場復帰にあたり、「こんなに休んでしまって仕事になるのだろうか」と不安になっていましたが、カウンセラーから出社の時間に起きて生活するよう言われて身体を慣らすことで自信がついてきました。人事面談で、復帰後の希望について調整し、無事3カ月で職場復帰することが出来ました。職場復帰後も定期的なカウンセリングで、再発防止のためサポートを受けています。
うららか相談室の法人カウンセリングでは、専門家にオンラインで相談できる環境を福利厚生で従業員に提供することができます。
職場カウンセリングは、離職リスクの改善や生産性・モチベーション向上にも効果的です。
昨今では様々なカウンセリング資格が出てきており、カウンセラーも多様化しています。職場カウンセリングを導入する際には、「臨床心理士」や「公認心理師」といった専門性の高いカウンセラーに任せるのが安心です。「臨床心理士」は大学院修了、資格審査に合格する必要があります。またその後5年毎の更新制度等の厳しい学習条件があり、常に最新の知識を身に着けることが求められます。「公認心理師」は心理学を専門とした唯一の国家資格で、2019年から制度が開始されました。
・社内カウンセラーを雇用する
社内に専門のカウンセラーを雇用すれば、常にカウンセリングを提供することができます。しかし、カウンセラーを固定で雇用することは大きなコストがかかってしまいます。また、基本的には1人もしくは少数のカウンセラー雇用となることが多く、対応可能な分野が限られるケースや、相談する際に相談者がカウンセラーを選ぶといったことは難しいことが多いです。
・社外で対面カウンセリングを依頼する
近年はEAP(従業員支援プログラムEmployee Assistance Program)サービスを提供する会社も増えてきています。カウンセラーを雇用するよりはコストが下げられますが、初期費用がかかったり、交通費等1回あたりの費用が高額になってしまうリスクもあります。また、時間と場所の設定が困難な場合も少なくありません。
・法人向けのオンラインカウンセリングサービスを導入する
現在は、企業向けにオンラインカウンセリングを提供するサービスも存在します。オンラインカウンセリングは、場所や時間を選ばずに利用できるため、業務の都合がつきにくい社員やリモート勤務の社員でも気軽に受けることができ、利便性の高いカウンセリング方式です。
うららか相談室で提供している法人カウンセリングでは、24時間いつでもどこからでも相談可能なオンラインカウンセリングを、上限を決めて従業員に提供できます。
対面カウンセラーを派遣するのが難しい夜間の相談や、地方の職場にも対応可能なほか、多数のカウンセラーの中から自分の悩みにあったカウンセラーを選ぶことができ、自分の性格の悩みや仕事・家庭の悩みなど、幅広く相談することが可能です。
そのほか、新入社員や事故発生時など、一斉に個別カウンセリングを実施したいケースや、従業員にメンタルケアが必要になった時に都度依頼いただく形式など、さまざまな形態の法人カウンセリングを用意しておりますので、ご検討されたい方は、お気軽にお問い合わせいただければと思います。
職場カウンセリングでは、カウンセラーが働く人の様々な悩みに寄り添い、解決を目指します。メンタル不調防止だけでなく、復職支援やキャリア相談など、利用の可能性が広がってきています。
働く人の心と身体の健康を守るために、職場カウンセリングの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
※厚生労働省「労働安全衛生調査」令和4年, https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r04-46-50b.html