あなたは今までに、このような経験はないでしょうか?
「友達に嘘をつかれた」
「恋人に約束を破られた」
「上司に嫌味を言われた」
こういった経験をしたとき、
「ムカつく」
「カッとなる」
「イライラする」など、
怒りの感情を抱きませんでしたか?
このような怒りの感情は、方法を知ることでコントロールすることが可能になります。
「アンガーマネジメント」という言葉を、聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。今回は、このアンガーマネジメントについて解説します。
目次
- おわりに
何もないゼロの状態から怒りが生まれるわけではありません。
まず、怒りのきっかけとなる出来事があります。(例:上司に嫌味を言われた)
次に、その出来事に対して意味づけを行います(例:嫌味を言うなんて、人として最低だ。ありえない)
そして最後に、怒りの感情が生まれます(例:腹が立つ)
出来事→意味づけ→感情の発生という順を辿って怒りの感情は起こるのです。
カウンセリングを通じて、自分の性格とじっくり向き合ってみませんか?
うららか相談室では、あなたの「変わりたい」という気持ちを、臨床心理士などの専門家がしっかりとサポートさせていただきます。
怒りという感情は、心の癖のようなものです。
怒りの感情がコントロールできないのは、この癖のようなものを自覚できていないためであると考えられています。
怒りを表出することが、自分でも気づかないうちに癖になっていると思われます。
先の説明を踏まえると、怒りの感情がコントロールできない人は、自分自身の心の癖が自覚できていない可能性があります。
以下に例示するような特徴の方は該当しやすいかもしれません。
・正義感が強い人
・好き嫌いがはっきりしている人
・こだわりが強い人 など
怒りの感情は出来事→意味づけ→感情の発生という順を辿って起こると述べました。
例示した特徴の方は、その強い正義感やこだわり故に「許せない」や「ありえない」といった意味づけを、他の人よりもはっきりと行う場合があります。
例えば正義感の強い方であれば、決まりに反する行いを目にすると「そんなことは間違っている、ありえない」と意味づけをするのではないでしょうか。
(もちろん、このような特徴の方々のすべてが怒りの感情をコントロールできないという訳ではありません。誤解のないよう断っておきますが、これらの特徴に当てはまること自体は問題ではありません。)
怒りに任せて発した一言は、人間関係を壊してしまう可能性があります。
例えば親が子どもに対して、または上司が部下に対して怒りに任せて発した一言が虐待やパワハラになってしまうかもしれません。
友人関係や恋人関係を終わらせてしまう一言になることも考えられます。
対人関係のデメリットだけではなく、自分自身への疲労やさらなる怒りの増幅に繋がる恐れもあります。
怒りの感情をコントロールできるようになると、他者や自分を傷つけたり、物に当たったりすることなく、自分は怒っているということを上手く表現できるようになります。
上手く表現できるようになると、誰かを傷つけたり人間関係を壊したりすることが予防できるのはもちろん、自分自身もストレスが溜まりにくくなり、メンタルヘルスの改善にもつながります。
それでは、怒りの感情と上手く付き合うにはどうしたら良いのでしょうか。
怒りの感情は、アンガーマネジメントを適切に行うことで克服できる可能性があります。
アンガーマネジメントとは、1970年代にアメリカで始まったとされる、怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニングです。
アンガーマネジメントは、怒らないようになるというトレーニングではありません。
怒る必要のあることは上手に怒れるようになる、怒る必要のないことは怒らなくて済むようになることを目指します。
次に、アンガーマネジメントの具体的な実践方法をご紹介します。
⒈ 「怒り」の記録をつける
アンガーマネジメントでは、自分の心の癖を把握することが大切な考え方になってきます。
怒りを覚えたときには、記録を残しておくことをお勧めします。忘れてしまわないよう、できるだけ早いタイミングで、あまり深く考えずにありのままを記録しましょう。
あとから見返すことで怒りの感情が起こりやすいパターンなど、怒りの癖が見えてくるはずです。
2. 怒りそうになる瞬間には「6秒ルール」を実践する
諸説あるようですが、怒りの感情のピークは6秒程度だそうです。その6秒をやり過ごす方法の一つにコーピングマントラがあります。コーピングマントラの方法は簡単です。怒りそうになったときに心の中で自分を落ち着かせる言葉を唱えます。言葉は「大丈夫」「気にしない」など何でもOKです。
⒊ 怒りの感情を線引きする
アンガーマネジメントは怒らないようにするものではなく、上手に怒れるようになるためのものです。
怒りを感じることがあれば、「許せること」「まあ許せること」「許せないこと」のどれに分類できるか考えてみましょう。
「許せないこと」があっても構いません。初めはあいまいな線引きがだったものが「許せること」と「許せないこと」に分類できるようになれば、怒りのコントロールがしやすくなります。
⒋ 行動の優先順位づけ
怒りの線引きをして「許せないこと」に分類された場合はどうすればよいでしょうか。
その許せない、怒りを覚えることに対して何らかの行動を取ることが必要になります。そして、その行動は「自分で変えられるかどうか」と「重要かどうか」の2点で優先順位付けをすることができます。
それぞれ2通りの選択肢があるので2×2、
つまり整理すると次の4つに分けられます。
①自分で変えることができて、重要な物事である
②自分で変えることができて、重要ではない物事である
③自分で変えることができないが、重要な物事である
④自分で変えることができないし、重要でもない物事である
そして、4つの優先順位に基づく行動は以下のようになります。
①→今すぐ対処する
②→余裕があるときに対処する
③→現実を受け止め、現実的な選択肢を探す
④→放っておく
例えば「約束を守らない人」に怒りを覚えた場合はどうでしょうか。他人の行動は変えることが難しいので③か④で考えるのが適当ではないかと私は思います。
③であれば、約束を守れない人もいるという現実をまずは受け止めましょう。今後も続く仕事や活動で代わりの人がいないのであれば、その人に約束を破られたとしても自分や周囲が受ける影響が小さくなる方法はないかを検討してみましょう。
趣味の活動で、人に迷惑がかからないようであれば、④の放っておくも一手です。
上記の1〜4を意識的に継続して行うことで、怒りが瞬間的なもので無くなり思考や行動のコントロールも可能になっていきます。つまり、自分の怒りをコントロールするアンガーマネジメントの習慣に繋がります。
臨床心理士とは・・・
悩みを抱える人との対話をベースに、精神分析や心理療法を使って問題の解決をサポートする「こころの専門家」です。
うららか相談室には、多くの臨床心理士が在籍しています。
アンガーマネジメントの手法について紹介しましたが、理屈ではわかっていても、最初は実践するのはなかなか難しいと感じるかもしれません。長年付き合ってきた自分の心の癖を直すのは、簡単なことではないからです。
カウンセリングでは、一人で実践するよりも効率的に、心の癖を直していくお手伝いができます。
・どんなことがあったのか、そしてその時どう感じたのか
・その時にどんな考えをしていたのか
言葉にして話をしてみることで、自分の心の癖を把握しやすくなります。
自分一人では考えが整理できない、上記に示したアンガーマネジメントが自分では上手くできないなど、お困りの方は、うららか相談室のカウンセリングも活用してみてください。
<参考文献>
安藤俊介(2016)「自分の『怒り』タイプを知ってコントロールする はじめての『アンガーマネジメント』実践ブック」ディスカバー・トュエンティワン