罪悪感という感情は、生きていれば日々の生活のなかで誰もが感じることのある感情であり、決して特別な感情ではありません。
けれども、家族や友人関係、仕事に支障をきたすほどであったり、後悔が消えないことに苦しむのは、耐えがたいことです。
少しでも罪悪感を解消することができるように、後悔を感じにくくなるように、罪悪感の意味や考え方の特徴について解説します。
目次
皆さんはどのような場面で罪悪感を感じたことがありますか?
友人とのおしゃべりで話すような軽い出来事のこともあれば、うつうつとした重い気分になり、誰にも話したくないこともあるかもしれません。
「罪悪感」の意味について、心理学の観点でみると、
「社会的-道徳的規範にそむき、重大な過失を犯したという意識、ないしはその感情。こうした意識、感情をもつと、自尊心を失い、犯した過失の罪ほろぼしをしようとする感情が起きる」と説明されています。
(参考:「心理学辞典」)
自分が過失を犯したという意識や感情をもつだけでなく、自尊心を失い、その過失の罪滅ぼしをしようとする感情が起きる、ということを踏まえて上の例で考えると、
大事な人を傷つけてしまったことを後悔し、自分はまだまだ未熟だった、どうやって相手に謝ろうかと考えたり、ケーキを我慢できなかった自分はなんて意志が弱いんだろう、もう絶対にケーキ売り場に近づかないようにしよう、と心に誓うかもしれません。
そうすることで、良好な人間関係を保つことができたり、健康に役立つこともあるでしょう。
しかし、同じような状況でも、過失の捉え方や後悔の程度、対処の方法などは人それぞれ違い、心理的にダメージをきたす場合もあります。
大事な人を傷つけてしまったダメな自分は、誰とも付き合う価値がない人間だと思い、関わりを断ち、強い孤独感に苛まれるというケースもありえます。
臨床心理士とは・・・
悩みを抱える人との対話をベースに、精神分析や心理療法を使って問題の解決をサポートする「こころの専門家」です。
臨床心理士の資格は厳しい学習条件が求められ、心理業界では長年にわたり根強い信頼性を持っています。
うららか相談室には、多くの臨床心理士が在籍しています。
メッセージ・ビデオ・電話・対面、あなたが一番話しやすい方法で、悩みを相談してみませんか。
このように、同じような出来事に対しても罪悪感のあり方が人によって違うのは、過失が重大であるかどうかの判断や、後悔の程度、罪滅ぼしの方向性や対処が、その人の生まれ持った気質や、自尊心のあり方、親子関係や周囲の環境要因などによって、さまざまな影響を受けるからです。
親が望んでいた学校に合格できなかった子どもが、自分が勉強を怠けたからだと後悔し、今度こそ計画を立てて勉強しよう、という場合はどうでしょうか?
怠けた自分を反省し、計画を立てて勉強に励むことは、ポジティブなことです。
ところが、誰からも愛されていないと感じている子どもは、勉強を怠けた自分は悪い子だ、こんな自分だから愛されないのだと思い、愛されるために償う行為をしたくなります。
勉強に励むのは、親が期待するいい点数を取る子どもでいるためであり、自分の人生を自分のこととして考えることができないのです。
次のような思い込みや囚われも罪悪感に影響します。
どれも明確な根拠がないにもかかわらず、それに背いた自分を追い詰めてしまいます。
親子であっても好みも思考も違うので、親が思う幸せと子ども自身の幸せが同じとは限りません。
“憎い”とか“妬ましい”と思う気持ちは人間として自然な感情ですし、完璧という基準も曖昧です。
その思い込みは、自分自身がそうでありたいと心から思っていることでしょうか?自分でも気づかないうちに、誰かに言われた意見や、世間一般の考えが刷り込まれてしまっているかもしれません。
また、相手との関係性が対等でない場合も、罪悪感をもちやすくなります。
対等な関係とは、大人と子どもであっても、男性と女性であっても、収入や社会的地位に関係なく、お互いにひとりの人間として認め合う、自分と同じように、相手にも感情や考え・価値観があり、それぞれ違っていいのだと思えるような尊重し合える関係性です。
親と子の関係で考えると、子どもは自分で働く経済的な力もなく、身の回りのことも十分にはできません。
精神的にも未熟ですから、いろいろな面で大人である親に依存せざるを得ない状態です。
ところが、大人である親自身が、自分の課題が解決されていなかったり、精神的に自立していないと、親という立場にしがみつき、子どもと対等な関係を築くことが難しくなります。
親子関係が支配する・支配される関係になってしまうと、子どもはなんとなく親に対して申し訳なさを抱えながら生きるようになり、少しのことでも罪悪感を持つようになってしまいます。
夫婦や、上司と部下という関係でも、支配する・支配されるという関係性のもとでは、いつのまにか罪悪感をもってしまうことがあります。
収入がないことや上司の怒鳴り声に罪悪感を感じ、自分の価値を下げ、償いに翻弄することも珍しくありません。
このように見ると、罪悪感をもちやすい人には、次のような傾向があるといえそうです。
罪悪感が消えない苦しみを、カウンセラーと一緒に解決していきませんか?
オンラインカウンセリングのうららか相談室では、臨床心理士などの専門家に匿名で悩みを相談することができます。
罪悪感をすっかり消すことはできませんし、無理に消す必要もありませんが、苦しみや後悔を少しでも軽くすることができれば、今までとは違った自分や周りの景色が見えてくるかもしれません。
そこで、タイプ別に、考え方のヒントをいくつか挙げてみました。
◇他人の役に立てなかった時に罪悪感を感じる人
他者の気持ちを汲み取り、それに失敗すると罪悪感をもつという罪悪感に苦しんでいる人のなかには、知らず知らずのうちに、人間関係を取り持つ役割を担っている場合があります。
たとえば、家族の仲を取り持つ役割や、職場の人間関係を維持する役割などです。
自分がどのような役割を担っているのかを確認し、他者の期待に過剰に反応していないか、相手を優先しすぎていないか、自分が疲れ果てていないか、自分のことも大切にしているか、点検してみましょう。
罪悪感を持ちそうになったら、「今、私がもつ必要はない」とこころの中でつぶやいてみましょう。
しかし、その役割を失ってしまうと、自分が必要とされなくなってしまうのではないかという不安から、役割をやめることが難しいこともしばしばです。
辛くなってしまう前に、カウンセラーと一緒にご自身を見つめ直してみませんか?
◇他人の機嫌が悪いのは自分のせいだと思ってしまう人
親や恋人の機嫌が悪いとき、自分のせいだと思ってしまう人は、「あなたのせいではない」と言ってくれる人が身近にいなかったのかもしれません。
家庭内のこと、恋人同士のことは、外部の人の目に触れにくいですし、過失が重大であるという認識が強いほど、誰かに話すことは怖ろしいものです。
でも、自分で言葉にしてみると、自分の耳で聞くことができ、出来事を客観的にとらえる機会になります。
“客観的にとらえる自分”は、“自分を罰する自分”とは別の、“支えてくれる自分”を育むことに役立つのです。
自分だけでは言葉にするのが難しいとき、カウンセリングという秘密が守られる場所で、カウンセラーに話してみるという方法もあります。
◇後悔を感じやすい人
後悔を感じやすい人は、今ここで起こっていることより、変えられない過去や、考えてもわからない未来のことに目を向けるパターンが習慣となっていることが多いようです。
こういったパターンを変えるのはなかなか大変な作業ですが、まずは、自分がそのようなパターンに取り込まれていないか気付くことが第一歩です。
「後悔」とは、デジタル大辞泉の解説によると、
「自分のしてしまったことを、あとになって失敗であったとくやむこと」とあります。
「あのとき、こうしていれば、うまくいったはず」
「自分がこうしなければ、こんなことにならなかったにちがいない」
後悔するクセがついていると、“今”を肯定することができず、過去の選択しなかった他の方法や、わかりえない未来ばかり気になります。
残念ながら、過去に戻って他の方法を試しても、何千何万とある方法のうち、たったひとつしか試すことができませんし、どれを選んでも、選ばれなかった選択肢の結果を知ることはできません。
どのような結果であれ、“過去”の体験があるからこそ、“今”の自分が、こうすればよかったと思うことができるのです。
このように考えると、過去の自分より少しだけ新しいことを知っている、成長した自分がいることがわかります。
”今”ここにいる自分を大切にしましょう。
人は誰でも愛されたいもの。
愛されたいのに、愛されないから、罪悪感を背負い、存在をアピールする手段になっているかもしれません。
そんなときは、罪悪感を背負ってきた自分を慈しみ、一時的にちょっとだけ降ろしてみませんか?
ほんの少しほっとしている自分を感じられるかもしれません。