もし、あなたに次の項目に当てはまる特徴があるときには、HSPについて知っておくと良いかも知れません。HSPについて知ることで、疲れやしんどさを少し減らすことができる場合があります。
✔︎ 疲れやすいと感じる
✔︎ 豊かな想像力があり、空想に入りやすい
✔︎ 光や音、におい、味などにとても敏感
✔︎ まわりの人の心の動きを感じとって、気分が左右されることがある
✔︎ 仕事のときに時間をせかされたり、観察されていると緊張して力が発揮できない
✔︎ 内向的で物事を深く考える傾向がある
※HSPのチェックについてはより細かい項目に分かれたスケールを使います。上記の内容で、複数該当する項目があるからといって、必ずしもHSPであるとは限りません。
目次
- HSPとは?
- HSPの特徴
HSPとは、“Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)”の略です。
日本語にすると“とても敏感な人”となります。
これは、アメリカの心理学者であるエレイン・N・アーロン博士が『ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。』という本の中で提唱した概念です。
世界的なベストセラーになった本なので、HSPという言葉は聞いたことがある方もいるかもしれませんね。
アーロン博士の研究では、どの社会にも“とても敏感な人(HSP)”は15〜20%の割合でいることがわかっています。
つまり、5人に1人くらいの割合でHSPがいることになります。なので、自分がHSPであったとしても特別なことではなく、一定の割合で同じように敏感な人がいるということです。
敏感や繊細という言葉は、どちらかというと「弱い」や「暗い」といったイメージを持たれることがあります。
自分の主張をはっきりと言ったり、たくさんの人と関わることが得意な人の方が割合的には多いので、繊細さをまわりに理解されず、とてもつらい思いをしてきた人も多いのではないかと思います。(HSPのうち、3割程度の人は外向的な気質を持っているといわれていますが、ここでは内向的な気質のHSPを中心に考えることにします)
ただ、HSPであることは弱みではなく、むしろ強みです。豊かな感受性があるからこそ、とても繊細に感じることができるのです。
内面的な成長は外からは見えづらいですが、じっくりと自分を見つめることによって深みのある魅力的な人になると思います。
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HSPの主な特徴をまとめると次のようになります。
①刺激に対してとても敏感
②まわりの影響を受けやすい
③一人でコツコツと取り組むことが得意
④興味関心が内向的
1つずつ見ていきましょう。
HSPは、視覚・聴覚・嗅覚・味覚などの感覚にとても敏感だといわれています。どの感覚が敏感であるかについては個人差がありますが、外からの刺激に対して敏感に感じやすいところがあります。
刺激に対してすごく敏感なので、ちょっとした環境の変化に気づきやすく、周りの人の心の動きも感じやすいところがあります。
ときには、敏感に感じすぎて疲れ切ってしまうことがあります。HSPでない人と比べて、たくさんの情報(刺激)を脳で処理する形になるので、疲れやすくなるのです。
たとえば、会社で仕事をしていても、まわりの人の動きや心の変化が情報として入ってくる(感覚として気づいてしまう)ために、しんどいと感じている人もいるかも知れません。
世の中には人混みに行ったり、満員電車に乗ったりすることが平気な人もいれば、常に神経を張りめぐらしてしんどくなってしまう人もいます。
感受性が豊かなために、日常生活でも多くのことを感じとって、まわりに気を遣いすぎて疲れてしまうことが“とても敏感な人”の特徴といえます。
また、HSPの多くは良心的で、やさしい気持ちを持っています。他人の気持ちを敏感に感じられるので、まわりの人の気持ちに寄り添って共感することができます。
その反面、共感をしすぎてしまう場合もあります。まわりの人の気持ちを感じすぎて自分がしんどくなったりするのです。
誰かが悩んでいたりすると、聞き役にまわって「うん、うん」と相手の気持ちに寄り添いながら話を聞くことができますが、家に帰ると自分もすごく悲しい気持ちになって落ち込んだりすることがあります。
HSPは、普段の生活でも多くの刺激やストレスを感じるので、ものごとに対してとても慎重になる傾向があります。
「これをしたら、自分にどんな刺激やストレスが起こるだろうか?」などと考え、慎重に行動を進めるところがあります。
仕事においても、たくさんの人と一緒に行う作業よりも、1人でコツコツと取り組むことが得意だったりします。外からの刺激ができるだけ少ない環境で、落ち着いて過ごすことを望みます。
仕事をせかされたりすると過度にストレスを感じてしまいますが、ゆっくりと丁寧に取り組める環境があると集中することができます。
HSPは、「世の中の流行やニュースなどを人よりも早く知りたい」といった気持ちよりも、自分の心のあり方や人生について深く考える傾向にあります。
本を読んだり、音楽を聞いたり、絵を見たりすることが好きで、空想をしたり、自分の内面と向き合う時間を大切にしたいと思う傾向があります。
HSPの中には、小さい頃に「活発でない」とか「明るくない」などといわれたことがある人もいるかも知れません。ただ、そのような子どもは、外からは見えない内面のところで想像力をふくらまして、感受性を育んでいることがあります。
大人になってからも、自分の内面を大切にしたい気持ちが強いので、一人で静かに過ごすことを好む傾向にあります。
HSPの特徴について見てきましたが、HSPであることは病気ではありません。生まれつきの気質的なものですので、その人の個性といっても良いかも知れません。
ネコやイヌ、ウマなどの動物の中にも、一定の割合で敏感な動物がいるという研究もあります。これまでお伝えしてきたように、HSPであることは弱みではなく、豊かな感受性をもっているという素晴らしい素質です。
ただ、まわりからの刺激に対して敏感に反応するところがありますので、ときには疲れてしんどくなってしまうことがあります。
HSPであることはその人の素質ですので治療する必要がありませんが、長期間にわたって疲れがとれないときや身体の不調が見られる場合には、病院で相談をするのも1つの方法です。
もともとHSPの気質があって、身体の不調が出ている場合には、病院で治療を受けてもなかなか改善しないことがあるかもしれません。
そのようなときは、カウンセリングを受けたり、セルフケアをしていくことが効果的になります。HSPであることをカウンセラーに理解してもらったり、自分で自分のことをケアすることで、身体的な症状が改善する場合があります。
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HSPの中には、常に神経が高ぶっている状態で過ごしている人もいます。その人が望んで興奮状態になっているというよりかは、まわりの環境が興奮状態にさせている場合があります。
興奮した状態が長く続くと、ちょっとしたことでも過剰に反応するようになります。中には、ある時期から物事への意欲が急激に低下したり、気持ちの波が大きくなるなど、うつ病の症状があらわれる人もいます。
他の人よりも感受性が強く、まわりの出来事に対して敏感に反応することが、うつ病につながってしまう場合があるのです。気持ちの落ち込みや急激な意欲の低下などが感じられた際は、無理をせずに病院を受診することも考えていきましょう。
もし、自分がHSPである場合、どのように付き合っていくと良いのでしょうか?
一番大切なことは、セルフケアをすることです。
具体的には、
①まわりからの刺激を弱められるように、生活環境を整える
②疲れきってしまう前に、身体を休める
③日々の生活習慣を整える
の3つがポイントになります。
HSPは、まわりからの刺激やストレスを感じやすいという特性がありますので、できるだけ自分が過ごす環境を刺激が少なくなるように調整していくことが大切です。
人によって刺激に感じやすい部分は異なりますが、たとえば電球の光を少し弱くしたり、やさしい色合いの電球を選んでみることも1つの方法です。
また、人混みや騒音の大きい場所を避けるようにしたり、大勢での食事や飲み会などを断ることも自分を守ることにつながります。
もちろん自分がいくら環境の調整をしたとしても、日常生活の中にはさまざまな刺激がありますので、すべてを防ぐわけにはいかないと思います。
自分が刺激を受けやすい体質であることを感じているのであれば、早めに身体を休めることを意識していきましょう。
たとえば、職場で「疲れたな〜」と感じたら、休憩室や静かな場所で少し目を閉じて休息をとるなどして、外からの刺激を意識的に断つ時間をつくることが大切です。
家の中で過ごしているのであれば、電気を消して静かに過ごす時間をつくるのも良いですね。
外部からの刺激やストレスを感じやすいので、自分の身体のコンディションを整えておくためにも、食事や睡眠には十分に気をつけていきましょう。
・野菜やフルーツなどを食事に積極的に取り入れること
・安定した睡眠時間を確保すること
などは自分のコンディションを整えていく上でとても大切になります。とても基本的なことですが、食事や睡眠を見直すことで刺激やストレスに対して抵抗力をつけることができます。
もう一度まとめると、
✔︎ 生活環境を整えること
✔︎ 身体を休めること
✔︎ 日々の習慣を整えること
の3つのポイントを意識して、セルフケアを心がけてみてくださいね。
セルフケアについては、自分に合った方法を見つけていくことが大切です。日々の生活の中で、試行錯誤をしながら自分に合った方法を見つけていくことで、疲れを溜めずに過ごすことができるようになります。
疲れてしまったときには、がんばりすぎている自分を責めたりしないで、身体や心を休めながら無理のない生活を送っていきましょう。
<補足>
HSPは医学的に正式な診断名ではありませんが、他の精神障害の症状がHSPの特徴と似ているものもあります。代表的なものが以下になります。
◆ASD(自閉症スペクトラム)やADHD(注意欠陥・多動性障害)などの発達障害では複数の刺激や情報の処理が困難なことが見られます。
◆PTSD(心的外傷後ストレス障害)では、特定のトラウマに関する刺激に対して敏感になります。
◆強迫性障害では、一見些細に思えることに対して、不安を伴い敏感に反応する症状が見られます。
このような類似性から、自分ではHSPによる生きづらさだと思っていたものが、他の精神障害の症状であり、そちらの診断結果に基づく治療・対処によって、軽減・改善される場合があります。