カウンセリングの世界でよく見られる「認知行動療法」
この認知行動療法は、様々な心理療法・精神療法の中でも特に信頼のおける治療法です。
なかなかイメージがしづらい言葉ですが、一体どういったものなのでしょうか。
また、認知行動療法はどういったときに取り組むことができるのでしょうか。
目次
- 認知行動療法とは
- 自動思考とは
- さいごに
ごく簡潔に言えば、認知行動療法とは、物や出来事に対する自身の「捉え方」を知り、解決のための方法を実行する心理療法のことです。CBT(Cognitive Behavioral Therapy)とも呼ばれます。
心理療法を行なっている精神科やカウンセリングルームにて、必要な場合は認知行動療法を受けることができます。
認知行動療法は、認知療法と行動療法という2つの心理療法を基本としたものになります。認知行動療法を受けるにあたって、わざわざ認知療法、そして行動療法について知る必要はありませんが、それぞれは簡単に言えば、以下のようなものになります。
◇認知療法
認知とは、物や出来事に対する捉え方・考え方のことをいいます。この認知のしかたは人によって異なります。例えば、目の前にリンゴがあったとします。「おいしそう」と感じる人もいる一方で、リンゴを知らない人からすると、「赤くて丸いもの」としか捉えられません。
それと同じく、認知のしかたが異なると、1つのとある出来事に対して、ストレスを感じて悩む人もいれば、ストレスにうまく対処できる人もいます。
こうした、それぞれの「認知」にはたらきかけることによって、抱えている問題を解決することを認知療法といいます。
◇行動療法
認知は目に見えないもののため、変化に気づきにくいですが、行動は簡単に変えることができます。また、行動は自ら変えようとしなくても、環境や条件によって変えることができます。この「行動」を変えることによって、抱えている問題を解決することを行動療法といいます。
また、認知行動療法のやり方は、一つではありません。精神療法を受ける人に合わせて、認知行動療法の中でも様々な方法がとられる場合があります。スキーマ療法や弁証法的行動療法と呼ばれるものも認知行動療法の一種です。
うららか相談室では、認知行動療法で思考の癖を把握し、自分らしく楽に生きるための考え方を身につけるプログラムを実施しています。
ネガティブ思考を改善し、ストレスにうまく対処できるメンタルをつくっていきませんか?
認知行動療法(CBT)では「自動思考」ということばがよく使われます。自動思考とは、ものや出来事に対して瞬時かつ無意識に行なっている思考のことをいいます。
例えば、目の前のリンゴに対して、「これは赤くて丸いからリンゴだ」とか「以前リンゴを食べたときに甘かったから、このリンゴも甘そうだ」といったようには思わないでしょう。リンゴを見た瞬間に「リンゴだ」「甘そうだ」ということは考えなくても分かります。この「リンゴだ」「甘そうだ」という無意識のうちに行う認知の処理が自動思考にあたります。
では、もしリンゴが目の前に合ったときの自動思考が「甘そう」ではなく「酸っぱそう」だったとしたらどうでしょう。「甘そうだ」という自動思考を持つ人は「食べたい」という感情に気づき、実際に食べ始めるかもしれません。逆に、「酸っぱそうだ」という自動思考を持つ人は「食べたくない」という感情に気づき、食べようとしないかもしれません。この自動思考の違いによって自分の感情や行動が、気づかないうちに「他人と違う」ことになったり、「社会に適応できない」ことになったりするのです。そして、この自動思考や行動にはたらきかけることで、ストレスを抑えたり、困りごとを減らしたりするというのが、認知行動療法で多く見られる基本的な理解です。
では、目の前にあるリンゴに対して、「酸っぱそうだ」という自動思考を持つのは悪いことでしょうか?人によって味覚は異なりますし、もしかすると過去に食べたリンゴが酸っぱかった記憶が残っているのかもしれません。このように、多くの人と異なる自動思考を持っていること自体は問題ではありません。したがって、認知行動療法においても、自動思考を無理やり変えるというよりは、「目の前のリンゴを見て『甘そうだ』という自動思考を持つ人もいる」ということを知るトレーニングが重要になります。
これはあまりに極端な例えでしたが、リンゴの話から離れると、認知行動療法における自動思考へのはたらきは「自分の行動や感情を導く考え方の過程を疑い、他の考え方(または行動)を見出すことによって、行動や感情のコントロールをすること」だということができます。
例えば、とあるストレスを感じたときに、つらいと感じる自動思考やそれに伴う行動を把握し、ストレスに適応する考え方や行動を取り入れることで、つらいと感じることを軽減できます。
認知行動療法(CBT)は、例えば精神安定剤によって症状を抑えながら、根本的な問題を解決するといったように、比較的に落ち着いて取り組むことができる場合には、効果が期待できます。
逆に、症状が出ていて今すぐ治療が必要な場合にはふさわしくありません。なぜなら、認知行動療法ではある程度のストレスがかかったり、冷静な判断が必要になったりする場合があり、症状に対して薬のような即効性はないからです。したがって、本人に「改善しよう」という意思がない場合にも、認知行動療法の適用は難しくなるでしょう。
また、職場のハラスメントやDVなど、具体的に心理的な不調を招いているものがある場合には、その原因を根本的に取り除くことが最優先事項になります。
認知行動療法は、代表的なところでいえば、うつ病などの気分障害、パニック障害などの不安障害の治療において、薬による治療と併用して行われることが多くあります。根拠のないこだわりに対する不安から抜け出せなくなる「強迫性障害」では、曝露反応妨害法(ばくろはんのうぼうがいほう)という認知行動療法の一種がよく用いられます。また、大人の発達障害に特有の困りごとに対処できるようになるために認知行動療法が使われることも多くあります。
このように、認知行動療法は実際に多くの精神障害の治療に適用されています。
認知行動療法(CBT)には、他にどのような効果があるのでしょうか。見ていきましょう。
◇副作用がない
認知行動療法は薬を使わないため、副作用はありません。ただし、先ほどもあったように、全ての症状に対して認知行動療法のみが有効というわけではなく、薬による治療を併用しなければいけない場合もあるということは知っておきましょう。
◇予防効果がある
認知行動療法は、問題の根本的な要因にはたらきかけるため、抱えていた精神障害の再発リスクが抑えられたり、他の精神障害の予防ができたりするというメリットがあります。
◇ワークを自分で実践できる
治療のために医師やカウンセラーと複数回の面談を行う時間を取る必要はありますが、ワーク(取り組み)を持ち帰って、ある程度は認知行動療法を自分でできるということもメリットの一つでしょう。逆に、こちらがうまく実践できない場合は、治療が長引いたり、面談の頻度を増やしたりしなければならないということにもなります。
◇薬による治療がとれない場合にも活用できる
認知行動療法は精神障害の診断の対象外であっても、生きづらさ等を改善するためにその考え方を取り入れることができるという点で優れています。
うららか相談室でも、ネガティブ思考や対人関係の不安を改善する認知行動療法のプログラムを実施しています。また、認知行動療法は精神療法の中でもオンラインで取り組みやすいという特徴があり、その効果を実感しやすくなっております。
認知行動療法でネガティブな思考の癖に気づき、生きづらさを改善
こんな悩みはありませんか?自分らしく楽に生きるための考え方をカウンセラーと一緒に習得していきましょう。
認知行動療法(CBT)は、問題を引き起こしている自身の自動思考を把握し、それに適応するための考え方や行動を取り入れることによって、根本的に問題の解決を図る精神療法です。多くの精神障害の治療法として用いられていますが、全てに適用されるというわけではなく、薬による治療との併用が必要な場合などもあります。また、認知行動療法は精神療法の中でもオンラインで取り組みやすいという特徴があり、うららか相談室でも認知行動療法を取り入れたプログラムを実施しています。