カウンセリングは、日本ではまだまだ浸透していない現状があり、「話を聞いてもらうだけ?」といったイメージを持っている人も少なくありません。ここでは、カウンセリングの内容や効果、カウンセラーの資格などについて詳しく解説していきます。
目次
カウンセリングを実施する人のことをカウンセラー、カウンセリングを受ける人のことを相談者またはクライアントと呼びます。
カウンセリングとは、主に心理学の知識や技術を持つカウンセラーとの面談によって、相談者の悩みやこころの不調の解決を目指すことをいいます。
カウンセリング(counseling)は「相談」という意味の英単語であるため、例えば、美容業界では化粧品のカウンセリングといった使い方も浸透しており、これらと区別するために「心理カウンセリング」と呼ぶこともあります。
カウンセリングでできることについて見ていきましょう。
◇相談者の困りごとや心理状態を引き出す
相談者の中には、自分が何に苦しんでいるのか分からないということが少なくありません。そうした漠然とした不安や悩みを具体的にしないまま解決することは難しいですから、カウンセラーが「傾聴」などのスキルを使って、相談者の困りごとを引き出します。
傾聴とは、カウンセリングの基本姿勢であり、カウンセラー個人としての意見に左右されることのないように、相談者の話をしっかりと聞くということです。傾聴がなされなければ、相談者の困りごとを正しく把握することはできません。例えば、友人とのコミュニケーションではすれ違いが生じることがありますが、それは聞き手が話し手の言ったことに対して勝手な解釈を加えていたり話をしっかり聞いていなかったりするために起こるものです。このような誤りをなくすことも重要な傾聴の役割になります。
もちろん、ただ聞くというだけでは、相談者の悩みを引き出すことはできないため、適切なあいづちや質問を使ってカウンセリングを進行していくことになります。
漠然としていた自分の困りごとが言葉になっただけでも気持ちが楽になることがありますし、苦しさの原因だと思っていたものが実は一つではなく、話しているうちに今まで考えもしなかったようなほかの原因に自ら気づくこともあります。
◇引き出した悩みを整理、分析(提案、助言)する
傾聴や質問によって引き出した悩みを、論理的にまとめたりすることによって、相談者の頭の中を整理することに役立てます。これによって、相談者が自分の力で問題を解決できるようになることもあります。ただし、必ずしもそうはならないこともありますので、カウンセラーは心理学的な分析のもと、エビデンス(実証されている根拠)に基づいて相談者に専門的な提案・助言を行います。
◇精神療法
上記に加えて、精神療法または心理療法と呼ばれるものが、カウンセリングの枠組みで実施されることもあります。後述の認知行動療法やEMDRといったものに代表される、方針や流れがある程度決まった解決方法のことを、一般的に精神療法または心理療法と呼びます。
精神療法(心理療法)では、カウンセラーが主体的に動いたり、相談者に助言を行ったりすることが多くなります。なお、薬物療法については医師以外のものが行うことはできません。
カウンセリングを受ける目的として、ほかにどのような効果があるのか見ていきましょう。
◇なりたい自分に近づくことができる
カウンセリングというと、うつ病などの精神疾患を抱える人だけが受けるものだという誤解をしている人も少なくありません。カウンセリングは、相談者の悩みの解決を目指しますので、例えば、「自分に自信をつけたい」「コミュニケーションをうまく取れるようになりたい」といった、理想の自分に近づくことについても効果があります。
◇自分について知ることができる
カウンセリングは、日常生活であまり考えることのない「自分自身」と向き合う機会でもあります。カウンセリングの中で、自分の考え方の癖に気がつくこともありますし、自分が実は得意なことや望んでいることなど、自分らしさを発見することもあります。
◇気持ちがすっきりする
自分の中にためていた感情や出来事を、誰かに話したりするだけでもストレスの軽減になるといわれています。このように、今まで自分の外に出せなかったことを解放し、気持ちがすっきりすることを「カタルシス」と呼びます。とりわけ、カウンセラーには守秘義務という、相談者から聞いたことを外に漏らさない義務があり、友人や家族に今まで言えなかったようなことも安心して話しやすくなるため、カタルシスを得やすくなると考えられています。
◇メンタル不調の予防
メンタル不調の大きな原因に、ストレスが挙げられます。
カウンセリングによって悩みを整理したり気づきを得たりすることで、相談者が困難に対処できるようになると、今後の日常生活でストレスをためにくくなるため、メンタル不調を予防する効果があると考えられています。
また、定期的にカウンセリングを受けることで、メンタル不調の予兆を早期に発見することが期待できるうえに、カタルシス効果によってストレスを軽減し、メンタル不調のリスクを抑えることができます。
カウンセラーの資格にはどのようなものがあるでしょうか。代表的な資格について見ていきましょう。
◇臨床心理士
臨床心理士は、カウンセラーの資格の中で最も有名な資格といってもいいでしょう。臨床心理士としてカウンセリングを実施するためには、厳しい学習条件や経験が求められ、長年にわたって根強い信頼性を担保しています。
◇公認心理師
公認心理師は、心理学を専門とした唯一の国家資格です。カウンセリングだけでなく、他の医療機関や福祉などと連携することも多く、多角的な支援を前提とした心理職ということができます。
◇精神保健福祉士
精神保健福祉士は、精神障害に関する保健や福祉の専門知識・技術をもって、おもに心の不調を抱える人が健全な社会生活を送れることを目指して相談援助を行うための国家資格です。精神科や心療内科では、精神保健福祉士がカウンセリングを行うところもあります。
◇産業カウンセラー
産業カウンセラーは、多くが企業内で、職場のメンタルヘルスや人間関係の悩み、キャリアの相談を実施するカウンセリングの資格です。現在は民間資格となっていますが、2001年までは公的資格でした。
カウンセラーとしてカウンセリングを実施しているからといって、全ての人がこのような資格を持っているとは限りません。しかし、上記のような資格を保有しているカウンセラーは、肩書きを明らかにしてカウンセリングを実施しています。また、これらのほかにも数多くの民間資格が存在しています。
先ほども述べたように、カウンセリングというと、うつ病などの精神疾患を抱える人だけが受けるものだという誤ったイメージをしている人も少なくありません。
例えば、次のようなカウンセリングの活用方法が考えられます。これらは特に、欧米で顕著に見られる傾向です。
もちろん、上記のように日常的にカウンセリングを活用するのが現実的に難しい人も少なくありません。カウンセリングは、こういうときに受けたほうがいいという基準が明確にはなく、基本的にはカウンセリングを受けたいと思ったら受けるということになりますが、目安として次のようなときに初めてのカウンセリングを受けてみるといいのかもしれません。
では、カウンセリングはどこで受けることができるでしょうか?
◇カウンセリングルーム
まずは、主に臨床心理士が開業しているカウンセリングルームが挙げられます。心理相談室、カウンセリングオフィス、カウンセリングセンターなどの名前を掲げているところも多いです。カウンセラーが一人で全てのカウンセリングを担当しているところもあれば、曜日や時間によって担当が決まっているところもあります。
◇病院のカウンセリング
精神科や心療内科、総合病院などの医療機関で、臨床心理士や公認心理師、精神保健福祉士によるカウンセリングが提供されていることがあります。ただし、医療機関内だからといって基本的には保険が適用されるわけではありません。
◇施設内のカウンセリング
会社であれば企業内カウンセラー(産業カウンセラー、臨床心理士など)が、学校であればスクールカウンセラー(おもに臨床心理士)がいることもあります。当然、その会社や学校に所属していることが前提となりますが、従業員や生徒、生徒の親は無料で利用できることがあります。
また、ハローワークや児童相談所などといった公的機関に加え、結婚相談所などのサービス内で心理カウンセリングが提供されていることもあります。
◇訪問カウンセリング
訪問カウンセリングでは、カウンセラーが相談者のもとに出向き、自宅や近くでカウンセリングを受けることができます。不登校やひきこもりといった事由で家から出ていない方や、介護や子育てが忙しくあまり外出ができない方、精神疾患により外出が不安な方にとって、効果的な形態のカウンセリングです。
◇オンラインカウンセリング
オンラインカウンセリングは、ビデオ通話や電話、メールやSNS、チャットなどを使って、カウンセラーと相談者が遠隔で行うカウンセリングであり、相談者の好きな場所で受けることができます。カウンセリングルームなどで行われるカウンセリングと違うところは、実際にカウンセラーと対面はしていないという点ですが、お互いに長所と短所があり、対面でのカウンセリングに負けず劣らず効果があることが分かっています。
訪問カウンセリングと同じく外出が難しい方や、カウンセリングルームへ行くことに抵抗がある方、通える範囲にカウンセリングルームがない方にニーズのある形態のカウンセリングです。
カウンセリングには、おもに次のような形態・種類があります。
◇個人カウンセリング
個人カウンセリングは、カウンセラーと相談者が1対1で実施される最も一般的なカウンセリング形態です。
◇カップルカウンセリング・親子カウンセリング
カップル(夫婦)や親子といった2名(両親と子どもの場合は3名)とカウンセラー1名によるカウンセリング形態です。夫婦カウンセリングや家族カウンセリングとも呼ばれます。おもに夫婦・カップル・親子における2名の関係性における問題の解決を目指します。
◇グループカウンセリング
グループカウンセリングは、複数名の相談者とカウンセラー1名によるカウンセリング形態です。おもに共通・類似した問題や悩みを抱える相談者たちがグループとなります。グループ内の相談者同士は積極的な関わりを持つことになり、人間関係の中で自分自身を理解したり共通の問題を解決したりすることを目指します。集団心理療法とも呼ばれ、プログラムに沿って合宿のような形で進められるものもあります。
カウンセリングを受けたかった、じっくりと悩み相談がしたかったのに、目的の異なるところを利用したという人は少なくありません。カウンセリングと混同されやすいものについて、見ていきましょう。
◇精神科
精神科(神経科・精神神経科)は、おもに精神症状を専門的として扱う診療科です。具体的な症状としては、抑うつ(気分の落ち込み)や不安、焦燥感、幻覚・幻聴、睡眠障害や摂食障害、認知症などが挙げられます。治療はおもに薬の処方と指導または精神療法を用いることもあります。基本的に医師が検査と治療以外でじっくりと話を聞くということはありませんが、保険診療外で臨床心理士や公認心理師などによるカウンセリングを受けられるところもあります。
◇心療内科
心療内科は、おもに心身症(ストレスにより身体症状が現れること)を専門として扱う診療科です。具体的な症状としては、ストレスによる胃痛や頭痛、腹痛、吐き気、起立性調節障害、過敏性腸症候群などが挙げられます。治療やカウンセリングについては、精神科の説明と同様です。
◇メンタルクリニック
メンタルクリニックは、精神科(および心療内科)のうち、入院用のベッドが20床に満たない診療所を指します。扱う症状、治療やカウンセリングについては、精神科の説明と同様です。
◇占い
占いは、科学やエビデンスよりも統計や経験、霊的な要因などから未知のものを予測することをいいます。いくら当たるという占いであっても、結果は参考にとどめて、最終的には自分で判断することが大切と言われています。
◇コーチング
コーチングは、おもに相手への問いかけを通じて気付きを与え、一緒にその人の成長や行動の変容、目標の達成をサポートすることをいいます。目標を達成することや成長を求めていない場合は、効果が得られにくいとされています。
心理療法(精神療法)は単にセラピーということもあり、心理療法を実施する人はセラピストや心理療法家と呼ばれます。カウンセリングで使われる代表的な心理療法について見ていきましょう。
◇精神分析的心理療法
精神分析的心理療法は、精神科医のフロイトが創始した精神分析という理論・治療法をベースとして、おもに相談者の深層心理を扱う心理療法です。フロイトは、人が無意識下に抑圧した記憶や感情によって精神的な問題が引き起こされていると考えました。このようなものをカウンセリングにおいて分析しながら、相談者が自分自身についてうまく受け入れたり深く考えたりすることができるように対話を重ねます。
◇認知行動療法
認知とは、簡単に言えばものごとの捉え方のことを指します。同じ出来事やものであっても、それらに対する行動や捉え方は人によって異なります。この認知や行動を扱うことで問題の解決を目指す方法を、広く認知行動療法といいます。狭義の認知行動療法は、認知再構成法(を含んだ行動療法)という技法を指し、今の自分にとって役に立っていない、苦しみにつながるような認知に気付き、ほかにどのようなものの捉え方ができるかを主に考えていきます。そのほか、不安に慣れることを少しずつ体験していく曝露反応妨害法や、身体や意識をコントロールすることでストレスや不安を軽減するリラクゼーション法、認知の中でも価値観や信念といった深いレベルの思考を扱うスキーマ療法などが、認知行動療法で用いられることがあります。
◇来談者中心療法
来談者中心療法(クライアント中心療法)は、カウンセリングの原点といわれる心理学者カール・ロジャーズによって創始されました。人間は誰にでも主体的に問題を解決しようとしたり成長しようとしたりする潜在能力があり、異なる立場からの指示ではなく共感的な理解によって潜在能力を妨げている障害をともに乗り越えられるという考えに基づいて、相談者の成長や問題解決を目指します。
◇箱庭療法
箱庭療法は、砂の入った箱庭にミニチュアを置いて自由に表現したり遊んだりすることを通じて行う心理療法です。主な効果としては、無意識の意識化が挙げられ、自己表現と自己理解を促すと考えられています。これはカウンセラーと相談者の対話という形式ではなく、心理療法の枠組みでクライアントに絵を描いてもらったりする芸術療法(アートセラピー)もおよそ同様の効果・目的で行われます。
◇EMDR
EMDRは、トラウマ治療に用いられる心理療法の一つです。眼球の運動が情報処理の活性と関連していることから、セラピストの誘導する眼球運動や音などの刺激によって、脳内でトラウマをうまく処理していくことを目指します。こちらもカウンセラーと相談者の対話という形式からは少し外れた心理療法といえます。
カウンセリング料金の相場は1回50分~1時間程度で、5,000円~10,000円のところが多く、中には10,000円を超えるところもあります。また、基本的に保険は適用されません。
オンラインカウンセリングでは、固定費などの経費が少なくなるため、対面のカウンセリングよりも料金が安いことが多いです。
うららか相談室のカウンセリング料金(税込)は以下の通りです。
カウンセラーには、カウンセリングで知り得た相談内容や個人情報を、外部に漏らしたり公開したりしないようにする守秘義務があります。例えば、カウンセラーが家族や友人にカウンセリングの内容を話したり、SNSやインターネット上に公開したりすることはありません。ただし、例外として危害にかかわる場合や相談者から情報開示の許可がある場合などには、慎重に情報の共有が行われることがあります。
カウンセリングの注意点として、精神科などでの治療を優先したほうがいい場合もあるということが挙げられます。カウンセリングでは、ものごとを深く考えるということを行います。例えば、うつ病の症状により、今までの自分と違ってものごとをネガティブな方向にしか考えられなくなっている状態でカウンセリングを受けるよりも、しっかりと休養をとり、少し落ち着いて考えられるようになってからカウンセリングを受けたほうが効果的でしょう。こういった観点からも通院中の方は、必ず主治医にカウンセリングを受けたいと考えていることを相談するようにしましょう。
カウンセリングを受けるための準備や複雑な手続きは基本的に必要ありません。うまく話せるか分からないという場合でも、カウンセラーがお話を伺いながら一緒に考えていくので問題ありません。
うららか相談室では、資格やプロフィールから自分に合いそうなカウンセラーを選んで、ビデオ・電話・メッセージ・対面形式のカウンセリングを受けることができます。申込みはwebで24時間受け付けています。また、深夜・早朝のカウンセリングや当日予約にも対応しています。