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  1. 愛着障害とは?子どもと大人の愛着障害の原因・克服方法

愛着障害とは?子どもと大人の愛着障害の原因・克服方法

更新日 2024.11.15
自身の性格・能力
うららか相談室

「愛着スタイル」という言葉や、メンタルヘルスにおける「愛着」の観点が近年、注目されています。「愛着障害」とはどういうものなのか、大人にとって愛着スタイルがどのように影響するのかについて、理解を深めることで新しい視点からあなたにとって重要な発見ができるかもしれません。

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愛着障害のカウンセリング

- 愛着とは?

- なぜ「愛着」が注目されているのか

- 愛着障害の定義

- 子どもの愛着障害の傾向と原因

- 「安全基地」とは?

- 大人の愛着障害とは?

- 愛着障害の克服・治療・対処法

- おわりに

愛着とは?

愛着(アタッチメント)は、心理学者・精神科医のジョン・ボウルヴィによって提唱された理論です。愛着とは、人が危険や不安・恐怖を感じたときに、他者にくっついたり接近したりすることによって安心感を得る心理のことを指します。この愛着の形には、人によって違いがあり、これを「愛着スタイル」と呼びます。愛着スタイルは、生まれ持ったものというよりは、後天的に自然と刷り込まれていくもので、主に乳幼児期の愛着経験、つまり養育者の接し方によって左右されます。赤ちゃんはネガティブな出来事に対して、泣くことによって自分の感情を表現します。その際に養育者は抱っこしたり近くで話しかけたりして、赤ちゃんに安心してもらおうとします。このようなことを繰り返すことで、まず子どもは養育者との間に愛着を築き、困ったときには愛着の対象である養育者のところに戻れば安心できると理解するようになるのです。これを安定型愛着スタイルと呼んでいます。しかし、家庭環境や養育者の関わり方によっては、子どもが愛着の対象を見失ったり、危険や不安を感じたときの対処法が分からなくなったりすることがあります。これを不安型愛着スタイルと呼びます。

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なぜ「愛着」が注目されているのか

近年、この「愛着スタイル」が対人関係を築く際のひな型のような役割を果たしていると考えられ、自分の子どもやパートナーを含む他人との距離感がつかめないといった問題を説明する際にも多く用いられています。

それだけではなく、ストレスを回避・対処する方法も愛着スタイルによって傾向の違いが見られるため、こころの病の治療や人間の後天的な能力について考える際にも「愛着」が重要視されつつあります。


愛着障害の定義

愛着障害(アタッチメント障害)とは、不安型愛着スタイルを持つことで、過剰に他人を恐れたり、逆に、誰に対しても甘えてしまったりと、対人関係を上手に築くことができなくなってしまっているものを指します。愛着障害は、5歳までの発症を診断基準としており、正確には「反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)」「脱抑制型愛着障害」の2つの診断名に分類されます。


反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)

愛着行動を誰に対してもとろうとせず、他人を避けるようになるものです。自身が何かしら苦しいときや危険因子を感じているときにも、他人を頼ろうとしません。先天的な自閉症スペクトラム(ASD)の症状と類似しており、社会的な能力や感覚に変わった点が見られないことなどによって鑑別されます。


▼脱抑制型愛着障害

不安や恐怖を感じたときに愛着行動をとる相手が、養育者ではなく無差別的な他者になってしまっているものです。過剰なほど他人に対して馴れ馴れしいそぶりを見せるものの、協調や相互の対人交流は苦手としています。こちらは先天的なADHD(注意欠如・多動症)の症状と類似しています。

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子どもの愛着障害の傾向と原因

「反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)」と「脱抑制型愛着障害」に共通して、子どもは養育者を頼りに思っていないため、視線を養育者に合わそうとしない傾向があります。また、上手く甘えることが苦手なため、どちらも「意地が強い」「わがまま」と言われることが多くなります。原因は、離別やネグレクトなどによって養育者との間にうまく愛着が形成されないことで、子どもが不安型愛着スタイルを持つからです。2つの診断別にも傾向と原因を見ていきましょう。


▼反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)

反応性アタッチメント障害の子どもは、無表情で笑顔があまり見られません。養育者だけではなく誰に対しても、抱きつくなどの愛着行動や興味を示そうとしません。また、不安や恐怖を察知したときにも、安心感を得る方法が限られてしまうため、特にストレスがたまりやすくなります。脱抑制型愛着障害に比べて、両親のネグレクトや虐待がひどい、または子育ての方法が大きく一般的なものから外れていることが原因となり、愛着形成ができていない場合が多いとされています。


▼脱抑制型愛着障害

脱抑制型愛着障害の子どもは、誰にでもしがみついたり、知らない人であっても気を引こうとしたりする傾向があります。暴れだして周囲を困惑させることも少なくありません。

反応性アタッチメント障害にも言えることですが、養育者がいなくなった、養育者の立場である人物がころころ入れ替わった、養育者が無関心であったといったことが原因となり、愛着形成ができていないことが多いとされています。

「安全基地」とは?

愛着障害について理解する上で、重要な観点となるのが「安全基地」という考え方です。愛着関係がしっかりと形成された子どもは、養育者の存在を「いざとなったら頼れる心の拠り所」のような役割として認識します。好奇心を持った子どもは、知らない世界へ飛び出していくことで成長していきますが、そこには不安や恐怖が潜んでいるかもしれません。それにも関わらず、果敢に挑戦していけるのは、養育者が「いつでも自分のもとへ戻ってきて安心感を得てもいい」という、子どもにとっての安全基地のような役割を果たしているからなのです。

しかし、愛着障害を抱えていると、安全基地の役割をどこにも認識できないため、チャレンジできることが少なくなったり、ストレスがたまりやすくなったりします。

大人の愛着障害とは?

現在、愛着障害は5歳までの行動を診断基準としているため、大人が愛着障害と診断されることはありませんが、子どもの頃の愛着障害が治癒しておらず、大人になっても症状が継続していることは十分に考えられます。愛着障害の影響を受けている大人は、人間関係を築くことに困難を感じ、特にパートナーや自分の子どもといった近しい存在との適正な距離感が分からずに苦しむことが多いとされています。また、そのことによって受けるストレスが他人に比べて大きく、人に頼ってストレス軽減をすることが苦手であるため、心身症やうつ病などの不調を引き起こしやすいと考えられています。

愛着障害の克服・治療・対処法

愛着障害については、改めて「安全基地」をつくるといった観点から治療・対処が行われます。

子どもの愛着障害であれば、根本的な原因とも言える養育者側の問題を解決することを前提に、スキンシップの時間やコミュニケーションを意識的に増やすことで治療につなげることができます。愛着形成は5歳までの養育者の関わりが全てと誤解される人が多いようですが、あくまで愛着障害の「診断」において5歳までの行動が見られるだけであって、幼少期のスキンシップが不足していたからといって諦めたり絶望したりする必要はありません。養育者が子どもにとって「安全基地」となれるように、お互いの理解やケアに努めましょう。多くの場合は、親子カウンセリングなど第三者の介入が推奨されています。


では、大人の愛着障害を克服する方法はあるのでしょうか?正確に言えば、大人になってから、自身の愛着スタイルを修正するということになりますが、愛着障害は生まれ持ったものではなく、子育てによって引き起こされる後天的なものであるため、治療は可能と言えるでしょう。

以下の方法を試してみてください。


1. 安全基地と呼べるものをつくる

養育者ではなく、その代わりになるような心の拠り所を意識してみます。友人やカウンセラー、インターネットなど自分が不安になったときに頼れる場所をつくることによって、対人関係に抱える課題の克服に取り組みやすくなります。


2. スキンシップをはかる

幼少期に不足していたと思われるスキンシップを大人になって補填しなおすという方法も考えられます。信頼できる友人やパートナーと意識的にスキンシップや密なコミュニケーションをとることによって、安定型の愛着スタイルを取り入れることができると期待されます。


3. 子どものころに受けていた愛情を思い返す

虐待やネグレクトに遭い続けてきた人を除いて、少なからず養育者から受けてきた愛情を大人になってから認識しなおすことで、愛着スタイルにポジティブな影響を及ぼす可能性があります。子どもの頃は気付いていなかった、あるいは死別などによって思い出そうとしていなかった、愛情を受けていたという記憶はありませんか?

おわりに

愛着障害は、養育者との愛着形成が上手くいかずに、不安型の愛着スタイルを持つことで、子どもの対人関係やストレス対処に困難を生じるものです。大人になっても、不安型愛着スタイルが変わることなく、日常生活に不便さや生きづらさをもたらしているかもしれません。子どもの愛着障害の治療は養育者のメンタルケア、大人の愛着スタイルの克服は認知行動療法などが有効です。子ども・大人ともに、不安型愛着スタイルを持つ人はストレスの解消が苦手であるため、カウンセリングなどを活用して、意識的にストレスの軽減をすることで、メンタル不調の予防をすることができます。

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このコラムを書いた人
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