アダルトチルドレン(AC)という言葉を聞いたことがありますか。アダルトチルドレンとは、病気の診断名ではありませんが、幼少期のトラウマにより、大人になってからも人間関係においてストレスを抱えやすく、精神疾患を抱えるリスクも高いといわれています。では、アダルトチルドレンとはどのような症状のことを指すのでしょうか。また、原因や治療法などはあるのでしょうか。
目次
- まとめ
アダルトチルドレンとは、子どもの頃に親との関係の中でトラウマを抱えたまま大人になった人のことを指します。adult children (of alcoholics)の略で、ACとも呼ばれます。誤解されやすいですが、子どものような大人や、大人のような子どものことではありません。親との関係の中でトラウマを抱えやすいこととしては、親がアルコール依存症やギャンブル依存症、薬物依存症などの依存症だった、虐待や育児放棄といった行為を受けていた、極端に過保護だった、などが挙げられます。そういった経験によってトラウマを抱え続けている場合、自身のことを否定的に捉えたまま大人になり、何かに依存しやすくなったり、ストレスを抱えて精神疾患にかかりやすくなったりするといわれています。
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アダルトチルドレンの主な特徴は、自尊心の低さです。人が「自分は価値のある人間だ」と感じるようになるためには、「ありのままの自分を受け入れてくれる人がいて、自分は愛されている」と実感することが大切です。しかし、親が何かしらの依存症であったり、虐待をしたりするような場合、子どもは「いい子にしていないと愛されない」「親が望んでいるようにしないといけない」と、条件付きの愛情しか受けられない、または愛情をほとんど受けられないで大人になってしまいます。
そうすると、子どもは自尊心が育たず、大人になっても「周囲が期待しているように振舞わないといけない」「NOと言えない」「相手にしがみついて依存してしまう」といったことが起こりやすくなります。その結果、自分の考えや意見を知らず知らずのうちに押さえ込んでしまい、ストレスを抱えて精神疾患にかかるリスクも高くなるといわれています。
アダルトチルドレンの影響を受けるのは、思春期以降といわれており、もっと顕著にあらわれるのは、20代半ばにさしかかってからと考えられています。社会に出て、「自分が思うように生きたい」という気持ちと、自尊心の低さからくる感情との間に差異が生まれ、アダルトチルドレンの影響を大きく受けるようになります。
具体的な症状には、下記のようなことが挙げられ、アダルトチルドレンといっても様々なタイプがあることが分かります。
どの症状も、やはり自尊心の低さが根底にあります。依存的になるのは、自分の価値が自分では分からず、自分以外のものとの関わりを意識しなければならないためです。
アダルトチルドレンは病名ではなく、親との関係でトラウマを抱えたまま大人になった状態を指す言葉です。アダルトチルドレンによる影響が日常生活に支障をきたしている場合、パーソナリティ障害やPTSD(心的外傷後ストレス障害)という診断名がつくことがあります。前章で挙げたものはそれらの症状の一部です。
また、アダルトチルドレンの人はストレスをためやすいことから、二次障害を抱えやすくなります。アダルトチルドレンの人がかかりやすい二次障害は、アルコール依存症やギャンブル依存症などの依存症、摂食障害、不安障害、気分障害(うつ病を含む)などがあります。どれも自尊心の低さや抑圧された感情が影響していることが多く、自分の生きる価値を見出すために依存症になったり、感情のコントロールがうまくできず、不安障害やうつ病を引き起こしたりすることがあります。
アダルトチルドレンは診断名ではありませんので、病気のように治療法というものがあるわけではありません。
アダルトチルドレンの問題を解決していくための方法の一つとして、カウンセリングが有効になります。過去のトラウマを整理し、自尊心を少しずつ育てていくことに加え、ものごとの捉え方や行動のしかたについて考えることで、人間関係を改善したり、ストレス対処ができるようになったりします。
アダルトチルドレンの人の中には、過去の悲しい経験を抱えきれず、なかったこととして見て見ぬふりをしているので、一体何が原因になっているのか自分でもよく分からないという人もいます。悲しい経験と向き合うことは簡単ではありませんが、カウンセリングを通して少しずつ自分を認めてあげることで、問題の解決へと向かっていくでしょう。
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◇仕事での注意点
アダルトチルドレンの人は、「人から嫌われたくない」という気持ちが強いので、組織の中で働くことがしんどくなりやすい人も多いです。そんな人は、フリーランスとして働いたり、技術系の仕事を選ぶことで、やりづらさが軽減されるかもしれません。
◇恋愛での注意点
アダルトチルドレンの人は、親という大切な人に見放されてしまうのではないかという不安が大きく、「自分の存在を認めてもらえる人」に対して同様の不安を抱きやすくなります。
そして、特に恋愛において、相手に愛情を強く求めたり、相手に嫌われたくないという思いから必要以上に献身的になったり、自己犠牲を払ってしまうことがあります。
また、恋愛によって自分の価値を確認する傾向があり、精神的に相手に依存しやすくなります。
相手に合わせすぎてしんどくなったり、自己犠牲を払いすぎたりしているときは、少し立ち止まって冷静に相手と自分を見つめてみるようにしましょう。
◇子育てでの注意点
アダルトチルドレンの人は、子どもの人生にも自分の価値を見出そうとすることがあります。子どもが少しでも自分に反発する、興味を持たなくなるといったことが不安で、子どもに恐怖心を与えてでも、自分のもとから離さないようにするという人も見られます。
また、子育てで自分が親からしてもらったことを見本にする傾向もあります。アダルトチルドレンの人は、親にきつく当たられたということを「子育てはこういうもの」と思って、自分の子どもにしてしまったり、愛情のかけ方や褒め方が分からずに、子どもと触れ合うことができなかったり、あるいは過剰に干渉してしまったりします。
どうしたらいいか分からない、うまく子育てができないことに対して自分を責めてしまう、そんなときは、周りの人に相談したり、気持ちを吐き出したりして、一人で抱え込まないようにすることが大切です。
アダルトチルドレンは、子どものころに親から不適切な養育を受け、自尊心が育たないまま大人になった人のことをいいます。自尊心の低さから、他人に依存したり、あるいは親密な人間関係が築けないなどの生きづらさを抱えやすくなります。
アダルトチルドレンを克服していくには、カウンセリングなどを利用して、ありのままの自分と向き合い、自尊心を育てていく必要があります。時間をかけてゆっくり克服していくことで、自分の価値を自身で認めることができ、仕事や恋愛、子育てにおいても、きっといい効果を実感できるでしょう。
一人で抱え込んでつらい思いをしている方は、カウンセリングを利用してみてはいかがでしょうか。