「うちの子は勉強をしない」というお話をよく耳にしますが、お母さんお父さんは子どもの頃どれだけ勉強をしていたのかと問われると、答えに窮する方も少なくないのではないでしょうか。
そもそも、何も言わなくてもよく勉強をする子のほうが割合としては少ないように思います。
子どもに勉強をしてほしい理由はご家庭により様々かもしれませんが、何かしら子どもの将来のためを思って勉強をしてほしい、と感じている親御さんは多いですよね。
どうしても子どもが勉強してくれないとき、一番の解決策は、シンプルに「勉強しなさいと言ったら子どもが勉強してくれる」ことです。
そんなのわかってるよ、と思うかもしれませんが、ちょっとした親の関わりかた次第でお子さんが勉強に取り組みやすくなります。今回は、比較的どのお子さんにも共通する関わり方について、いくつか紹介したいと思います。
目次
・目的の共有をする
・環境を本人に決めさせる
・視覚化する
・大人が環境を整える
・親も一緒に頑張る
・量や難易度を整える
勉強嫌いな子がいる一方で、勉強が好きな子もいます。勉強好きな子にはいくつかの特徴があります。
・もともとの性格
新しい知識を吸収することや、難しい問題を解くこと自体に楽しさや面白味を感じるため、もとから勉強が好きな子もいます。
・興味関心が強い
勉強の何かしらの要素が自分の好きなこととつながっていると、深く知ろうと楽しんで勉強をする子もいます。
また、好きとまではいかなくても、以下の様な場合には自ら進んでやる子もいます。
・環境による習慣化
睡眠、食事、入浴などと同等に勉強の時間が必ずある、あるいは勉強をしないととても厳しく叱られる、などの環境が幼いときからあったことで勉強が習慣化している子もいます。
・勉強と引き換えに自分の欲しい物が手に入る
勉強をすることで、希望の進路にいける、お小遣いがアップする、ほしかったゲームを勝ってもらえる、周りから褒めてもらえる、など、自分の望む出来事が現実になるため、勉強するようになる子もいます。勉強をする子のなかには、これに当てはまる子が最も多いように思います。
このように、一言で「勉強をする」といっても理由は子どもにより様々です。性格や幼いときの環境などのようにすでに備わっていることが理由の場合もあれば、興味や自分の要求など後天的な要素が理由の場合もあります。
今からできることとして、子どもの興味関心を引き出してあげられれば一番ですが、全員が自分の興味のあることをすぐに見つけられるわけではないですよね。
そのため、子どもが勉強嫌いを直すには「自分自身のやりたいことのため」に必要なのだと感じること、また、そう感じたときには惰性に流されないよう協力してあげられるといいですよね。
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・目的の共有をする
まず一番大切なのは目的の共有をすることです。なんのために勉強が必要なのか、勉強をするとどんないいことが自分(子ども)にとってあるのか、ということを親子で話し合います。そのうえで、子ども自身が「自分のしたいことのために」勉強を必要と思っていることについて整理します。「勉強をする」という行為は、親が望んでいることではなく、自分自身(子ども)が望んでいることなのだ、ということをはっきりさせてください。
例えば、中学受験が控えているとしたら、どの中学校に行きたいのか、なぜ行きたいのか、そのためには今のままの学力で行けるのか、行けなそうなのであれば、そのために勉強をする必要があると思っているのか、などを再確認します。
受験ほど明確なものではなくても、どんな大人になりたいのか、あるいは大学に行きたいのか、など大きな目的でも良いので、そのために勉強をする必要性を子ども自身が感じているということが大切です。
親はあくまで子どものしたいことを手伝っている、促している、という立場であることを忘れないようにしてください。これはお子さんが何歳でも必要かつ有効な手段ですが、年齢があがるほどにとても重要になってきます。
親に言われているから、周りがそうだから、など子ども自身に目標や、なりたいイメージがない場合は、子どもと目的共有をすることはできません。そのようなお子さんに対して「勉強しなさい」と強く言うことは、親の願いを子どもに体現させているだけにすぎないので、自発的に勉強をさせるのは難しいと覚悟を決めたほうが良いでしょう。それよりは、あらためて子どもと話をして子ども自身の希望に沿っている目的を見つけ、共有するほうがお互いにとってより良い関係性を築けるでしょう。
・環境を本人に決めさせる
親のタイミングで「あ、またやってない」と感じ「勉強しなさい!」と声掛けをするのではなく、勉強する場所と時間をあらかじめ本人に決めてもらうと、お子さんが動きやすくなります。今日のいつどこで勉強するか聞いておけば、「いつまでやってもしない!勉強しなさい!」とイライラする前に、「16時になったよ、自分の部屋で勉強するんでしょ。飲み物持っていっておくね」などの声かけに変えることができます。事前に決めておくのがベストですが、何回声掛けしてもやらない場合にも、同じ声掛け(勉強しなさい)を繰り返すよりは、「何時からどこでやる?」と本人に質問するほうが有効です。
・視覚化する
「勉強する」と言葉で言っても漠然としてしまうので、勉強するという行動を具体的に視覚でわかるようにします。例えば、以下のように紙に書き出します。
〈今日やること〉
学校の宿題/来週までの塾の宿題プリント2枚/数学の復習(教科書41~45ページ)
→お風呂前までに終わらせる
といった感じです。項目ごとに終わらせたい目安の時間を書いてもいいのですが、おすすめの方法としては、1日の何時頃までに終わらせるかの期限を決め、終わったものから消していきます。そしてその時間配分は子どもに任せます。そうすることで、親が何度も勉強しなさいと言わなくて良いだけではなく、子どもに計画性と自己コントロール力を身につけさせることができます。
やることを決めたとしても、子どもがその通りにやることができない場合は、自分で決めたことをできるようになるまで、やるべきことと好きなことをセットにしてしまう方法もあります。
例えば、やるべき宿題リストの下に、終わるまでゲームなし、終わるまでご飯なし、終わらせられなかったらその月のお小遣いからマイナス300円などと書いて、やるべきことが終わらないと好きなことができない、ということをわかりやすくしておくやり方です。
私が見ていた高校生のお子さんで、自分で勉強した時間をはかり「勉強した分だけゲームをしてもいい」と自分ルールを決め取り組んでいる子もいました。これはやる内容を細かく書き出しているわけではありませんが、時間をはかることで「勉強する」という行動が視覚でわかるようにし、やるべきことと好きなことをセットにしている良い例です。
視覚化する方法は小さいお子さんにもわかりやすく、どの年齢の子どもにもやらないよりはやってあげたほうが確実にやりやすくなります。
・大人が環境を整える
本人に環境を決めさせる、と上に書きましたが、大人も環境の手伝いをしてあげることが必要です。勉強をしなさいといっても、周りにおもちゃ、テレビ、携帯、パソコンなど好きなものが散らばっている環境ではどうやっても勉強に集中できません。自分の部屋があればその部屋で勉強できるので良いかもしれませんが、自分だけの部屋がない、あるいは自分の部屋のほうが好きなものがあり集中できない、という場合もあるかもしれません。そのような場合は、リビングで勉強しやすい環境を作ってあげる工夫も必要です。リビングの机周りを片付ける、リビングのテレビを消す、気が行きやすいものを違う場所に移す、あるいはリビングに勉強用の小さな机を用意してあげて、そのまわりを目隠しコーナーなどで囲う、などもできます。
・親も一緒に頑張る
親が「勉強しなさい」と言うと、「うーん」と曖昧な返事をしながら、なかなかやらない勉強嫌いのお子さんもいますよね。そのようなときは、「じゃあいつからやる?それにあわせてママも~するよ」、など、親も一緒に頑張ることを提示するというのも一つの手段です。
親が資格取得や仕事関係など勉強するものがあれば、お子さんが勉強している横で一緒に勉強をするのもいいでしょう。時間になって親が始めれば仕方なく子どもも始めるかもしれません。
また、勉強に限らずとも、夕食を子どもの好きなメニューにしてそのごはん作りにとりかかる、子どもが勉強しているあいだ自分もテレビを見ない、ダイエット運動をする、などでも良いかもしれません。大それたことではなくとも、子どもが勉強をはじめるといっている時間の少し前に、あえてダラーッとしている様子をみせ、「あ!時間になった!ママも面倒くさいけどやらなきゃ!」といつもするはずのことをあえてバタバタと始めてみる、ということでも大丈夫です。
・量や難易度を整える
これは意外な落とし穴で、実は勉強の量や難易度がそもそも子どもにとってキャパオーバー、というケースがあります。
私達も、問題文がすべて自分の知らない言語で書いてあるものだと、どんなにパソコンで翻訳がすぐにできると言われてもなかなかやる気になれませんよね。大人が思うより子どもにとって必要以上に難易度が高い、あるいはものすごく量が多く終わりそうにない、などの場合はもはや取りかかろうともしなくなります。
そこまで多いケースではありませんが、「やる気になればできるはずでしょ」と決めつけず、一度勉強内容を一緒に見て、話を聞いてあげる必要があるお子さんもいます。
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勉強嫌いをやる気にさせる方法についてご紹介しましたが、子どもに勉強をしてほしいと思っているのであれば、忘れてはならない大切なことがあります。それは、勉強以外でも成長を喜ぶ、認める、期待するということです。
子どもは基本的に、勉強が楽しいからするのではなく、勉強をすると何かしら良いことがあるから勉強をするようになります。はじめのうちは「勉強を頑張ったら褒めてもらえた」など直後に起こるメリットからはじまり、そのうちに「勉強をすると希望の進学をして自分の思い描く未来にすすめる」という数年先に起こるメリットのために勉強をすることができるようになります。
勉強をしたことによる成功体験の積み重ねが勉強を継続するにあたり重要となるので、頑張ったら褒めてあげる、いい成績を取れたら喜んであげる、というのは必要不可欠です。
しかし、大きくなるにつれ、どんなに褒めてあげたとしても親が勉強のことでしか褒めてくれないと、子どもは虚しくなっていきます。逆に勉強に対してのモチベーションを下げてしまうことにもなりかねません。
勉強に限らず、どんなことでも子どもの成長や変化を敏感に感じ取って、褒め、喜んであげてください。親からしたらどうでもいいと感じる子どものゲームの話でも、レベルがあがったことを喜び、それだけのスキルが付いたことを認め、どこまで上手くなるのか期待してあげてください。親が自分の様々なことに気づいて、認めてくれ、次を期待してくれる、という感覚ができてくると、それが例えあまり楽しくない勉強であったとしても、子どもは「しかたない、やるか」といった気持ちになってくれます。
勉強嫌いな子どもをやる気にさせる方法についていくつか紹介しましたが、一人ひとりに合った方法があるため、今回紹介した方法が当てはまらないこともあるかもしれません。また、方法はわかっていても自分ではうまくできない、ということもあるかもしれません。
切実に勉強をしてほしい、あるいは勉強する・しないで親子関係がギクシャクしてしまっている、などの現状がある場合は、いったん第三者に相談してみて、自分たち親子にあった方法を見つけることから始めてみると良いかもしれません。
子どもが勉強をしてくれるようになる可能性は親の関わり方次第でいくらでも広がります。
また、子どもとの関わりに行き詰まりを感じた時、大人基準から子ども基準に見方を変えるだけで関わり方は広がっていきます。
大切な子どもの今を豊かにして、未来を逞しく楽しく生きてもらうためにも、親が無理なくできる関わり方のバリエーションをどんどん増やしていきたいですね。