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アサーションを使ったコミュニケーションの実践方法とは?

自身の性格・能力
臨床心理士・公認心理師:酒井 祥子
2020.03.18

あなたは今までに、こんな思いをしたことはありませんか?


・自分の意見をうまく伝えられなくて、もどかしい思いをしたことがある

・何か物事を頼まれたとき、関係が悪くなることを恐れて相手にNOと言えない

・仲良しグループで友達同士が話しているときに、うまく会話に入っていけない


表面的には相手や周囲との関係がうまくいっているように見えても、自分の言いたいことを言えないでいると、モヤモヤやストレスが溜まります。「どうせ自分なんか」と自己肯定感が低くなり、さらに言えなくなるという悪循環になりかねません。


こんな事態を解消するために、自分にとっても、相手にとっても、お互いに気持ちのよいコミュニケーションができる「アサーション」という考え方をご紹介します。

目次

- アサーションとは?

- 自己表現には3つのタイプがある

- アサーションを実践するためには?

- 日常生活にアサーションを取り入れるとどうなる?

- アサーションを身につけるためのカウンセリングの活用について

- アサーションを使って、自分らしく生きる


アサーションとは?

アサーションとは、自分のことも相手のことも同じように大切にする自己表現のことです。


アメリカの心理学者であるウォルピは、内気で人と会話することが苦手な人や、コミュニケーションがうまくできない人、引っ込み思案になって思ったことが言えない人を助けるために、アサーションという考え方を自己表現の方法として伝え、訓練しました。


もともと英語のassertive、assertion という言葉からきており、これらの言葉は直訳すると「断言する」、「主張する」といった強い意味の言葉です。

しかし、アサーションにとって重要なことは、一方的に自己主張をするのではなく、相手のことを思いやりつつ自己表現をする、というところにあります。


日本では、アメリカでアサーションの理論を学んだ平木典子氏によって紹介されました。日本の風土に合った方法で実践し、「アサーション」とそのまま呼んでいます。


自己表現には3つのタイプがある

先述のウォルピは、人の自己表現には次のような3つのタイプがあると示しました。


1)非主張的自己表現

自分の考えや気持ちを言わず、言いたくても自分を抑え、結果として相手の言うことを聞き入れてしまうこと。


2)攻撃的自己表現

自分の考えや気持ちを伝えることはできるが、自分の言い分を一方的に通そうとして、言い分を相手に押しつけたり、言い放しにしたりすること。


3)アサーティブな自己表現

自分の考えや気持ちなどを後回しにしたり、ごまかしたりせず自分でまずはっきりさせ、それを伝えた方が自分も相手も大切にしていることになるかどうかを判断し、そう思ったら、正直に、相手に分かりやすく伝えてみようとすること。


3つの自己表現にはそれぞれ、次のような特徴があります。


1)非主張的自己表現

相手が攻撃的な場合、相手にとっては都合よく頼りにされ、パワハラが起こりやすくなり、心理的なストレスを負うこともある。

相手も非主張的な場合、お互いに思いが伝わりにくく、話が弾まなかったり、互いに分かり合えず、気が合うかもしれない人との出会いのチャンスを逃してしまうことにもなりかねない。


2)攻撃的自己表現

相手が非主張的な場合、思いが通るので、自分の方が優位に立ち、勝ったような気分になる。

相手も攻撃的な場合、自己主張の押し付け合いやケンカになることもある。


3)アサーティブな自己表現

相手が非主張的でも攻撃的でも、その人の思いを理解しようとし、また自分の思いも理解してもらおうとする。違いをわかり合うことで、お互いの視野が広がり、付き合いが楽しくなる。

(※1)


皆さんの言動には、どのような特徴が多いですか?

行動を変えるために、まずは自分の習慣や言動を意識してみましょう。


アサーションを実践するためには?

アサーションを実践するために大切な4つのポイントをご紹介します。


◆自分の気持ちを明確に把握する

私たちは、自分の気持ちを否定したり、気づかないようにして過ごしていることもあります。忙しい現代では、自分の気持ちを振り返る余裕もないですね。けれども、言いたいことが自分でもはっきりとわからないと、表現することもできません。自分がどのような気持ちなのかを把握することがアサーションの第一歩です。


◆誰にでもアサーションする権利があることを理解する

アサーションは基本的人権のひとつですが、平木典子氏は、多くの人はアサーションする権利があることを知らないか、忘れて生活していることを指摘しています。

相手の言い分を受けとめる気持ちがあるなら、とりあえず、自分の今の気持ちを伝えてみてもいい。それに対して、相手は同意する権利もあるし、別の提案をする権利もある。そして、相手の意見によって、また次の考えを言えばいい。これが話し合いであり、人間関係なのだと説明しています。 (※2)

(アサーションする権利については、別のコラムでご紹介します。)


◆考え方をアサーティブにする

私たちは、成長する過程で様々な情報を取り入れながら、自分なりのものの見方や価値観を基準に生活しています。

・断ることはよくない

・迷惑をかけてはならない

・人を悲しませてはならない

これらの考えは間違いではないとしても、「こうでなくてはいけない」という思い込みになっていると、自分を苦しめていることもあります。それでは、「自分も相手も大切にする」アサーティブな考え方ではなくなってしまいます。自分の思い込みを点検すると、素直な気持ちが見えてくるかもしれません。

また、相手にも相手のものの見方や価値観があり、それぞれ異なるとしても、どちらも間違いではありません。アサーティブな考え方では、相手との違いを理解することも大切です。


◆非言語的アサーションも大切にする

本当は悲しい気持ちなのに、ニコニコしながら伝えてしまうと、相手には十分に伝わらないし、誤解されてしまうかもしれません。

腕を組むのが習慣になっている人は、自分では親身になって話を聞いているつもりなのに、偉そうにしているように思われて、勝手に煙たがられるかもしれません。

言葉以外の情報として相手に伝えているメッセージも大切なのです。


日常生活にアサーションを取り入れるとどうなる?

アサーションは日常の人間関係に取り入れることができます。

最初は、馴染みがなくてうまく伝えられないかもしれませんが、自転車に乗ったり、楽器の演奏などと同じように、練習を積み重ねて慣れてくれば、うまく使えるようになります。


具体的に、日常の一場面でアサーションを使ったケースを考えてみましょう。


◆ご飯の誘いを断れないAさんの場合

Aさんには、仕事帰りに時々ご飯を食べに行く3人の同僚がいます。今日も積極的なBさんから、イタリアンのお店に誘われました。今まで断ったことがないAさんでしたが、今週は仕事が忙しくて、今日こそは家に帰ってゆっくりお風呂に入りたいと思っていました。他の2人は行けないらしく、すでに断られたそう。Aさんは、「いいよ」と言いそうになりました。


〔このときのAさんの気持ち〕

Bさん、楽しみにしてるんだろうな。私まで断ったら、気分を悪くしちゃうかも。

Bさんはいい人だけど、グイグイくるのでちょっと断りにくいな。

私は聞き役でいることが多いけど、2人だけだとしゃべらないわけにもいかないし・・・はぁ。


同僚とご飯を食べるのは楽しいけれど、たいてい家に帰るとクタクタで、最近はご飯に誘われると何となく憂鬱でした。人に気を使いがちなAさんは、楽しいことでも知らないうちに疲れが溜まり、ストレスになっていたようです。Aさんは、先週アサーションの本を読んだばかりでしたが、思い切って自分の意見を伝えてみました。

「Bさん、・・・私もそのお店に行きたいと思ってるんだけど、・・・今週は仕事が大変だったから、今日は早く帰って疲れを取ろうと思ってたんだ。来週だったら行けるかも。」


Bさんは「じゃあ、来週ゼッタイね」と言って帰りました。声がちょっと怒っているようにも聞こえましたが、Aさんは、自分の気持ちを大切にできたことが嬉しかったのと、Bさんに対する苦手意識も少し改善しそうな気がして、ゆっくりお風呂に入りました。



◆恋人に観たい映画について伝えられないLさんの場合

Lさんは、恋人と映画を観に行くのが楽しみですが、いつも彼が決めた映画を観に行くので、たまには自分が観たい映画に行きたいと思っています。けれども、相手の思いを大切にする習慣が身についているLさんは、言えずに何となくモヤモヤしてしまうのでした。


〔このときのLさんの気持ち〕

彼が選ぶ映画はどれも面白い。でも、私が選んだのも観に行きたいな。

だけど、面白くなかったらどうしよう。嫌われたくない。やっぱり彼に任せよう。どうせ私が選んでも・・・。


あるとき、親友のMさん夫婦がお互いに言いたいことを自由に言っているのを見て、Lさんは羨ましくなりました。そういえば、子どもの頃から着る服は母親が決めて、自分は黙って従っていたことを思い出し、相手が決めてしまうことや、言えない自分にモヤモヤしていたのだと気づきました。そこで、彼と観に行くための映画を考えるのではなく、自分はどんな映画を観たいのかを考えてみました。


Lさんは、自分がどんな映画を観たいのかを恋人に言ってもいいし、言わないという選択もできます。大事なのは、自分にも観たい映画があるという思いを大切にしたことです。Lさんは、自分が観たい映画のことを、いつか恋人に話したいと思いました。



◆上司の指示に悩むSさんの場合

Sさんは、仕事をたくさん抱えていましたが、上司から急ぎの仕事を頼まれました。日頃から相手の都合も考えず一方的に仕事を振ってくる上司にうんざりしているのに、いつもの癖で、「はい、わかりました」と返答しました。


〔このときのSさんの気持ち〕

頑張って急いでもお礼も言われたことないし、“急に言われてもできません!”って言いたい。

でも、怒鳴られそう。せめて、こっちの都合も聞いてほしい。

私がやらないと後輩のTさんに頼むに決まってる。後輩に迷惑もかけたくないし・・・。


友人からアサーションの考え方を教えてもらったSさんは、伝わらないかどうかではなく、自分の意見を主張してもいいのだということを知りました。

いつものように上司から急ぎの仕事を頼まれたある日、「急ぎの仕事だということはわかりますが」と述べてから、「今すぐにはできません」と言いました。そのあとに、「あと1時間したら手が空くので、それから取りかかります」と伝えました。

上司は少し不機嫌そうでしたが、黙って席に戻っていきました。


相手の都合を考えないタイプの人には、こちらの言い分が受け入れられないことも多いです。しかし、「はい、わかりました」といういつもの返答をアサーティブに表現することで、相手が“おや?”と感じることもあります。相手を変えることはできませんが、自分の返答を変えることで、負のスパイラルにちょっとした変化が生じるのです。


アサーションを身につけるためのカウンセリングの活用について

自己表現を控えたり、しすぎたりして、思うように自己表現ができなくなっている場合、次のようなことが考えられます。


・自分の思いや気持ちをありのままに受け止めてもらえる体験が乏しく、自分の気持ちに気づきにくい。

・アサーティブな自己表現のモデルが身近になく、アサーションスキルを習得しにくい。

・思い込みや相手との関係性から、アサーティブではない自己表現が身についている。


また、成果やスピードを求められる世の中の傾向も、自己表現を不自由にさせているように感じます。


自分の体の歪みは自分では気づかないように、自分の気持ちや自己表現のクセも、自分では気づきにくいもの。

カウンセリングを受けると、対話によって自分の素直な思いを知ることができたり、今、自分が行なっている自己表現について客観的に見つめ直すことができます。

カウンセリングは、“そんなふうに思ってはいけない”とか、いい悪いを評価する場ではないので、家族や友達に話すのとは違い、否定を恐れることなく話すことができます。

また、アサーションを試してみたけれど、相手にうまく伝わらなかった、思うように理解されないというときにも、一緒に考えるお手伝いをすることができます。

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アサーションを使って、自分らしく生きる

アサーティブとは、主張することだけではなく、主張しない決心をすることでもあります。また、断るための技術でもありません。自分は嫌だと思っているけれど、相手の要求を受け入れた方がいいと判断する場合もあるでしょう。自分の気持ちに気づいて、自分が納得しているかどうかが大事なのです。それが、自分のことに責任を持つということでもあります。


自分のことに責任をもち、自分らしく生きるために、アサーティブな自己表現をぜひ活用してみてください。



(参考文献)

※1 平木典子(2015)『マンガでやさしくわかるアサーション』 日本能率協会マネジメントセンター

※2 平木典子(2007)『自分の気持ちをきちんと〈伝える〉技術』 PHP研究所

このコラムを書いた人
臨床心理士・公認心理師
精神科クリニック併設のカウンセリングセンターに20年間勤務し、小学生から80代まで幅広い悩みの相談業務や心理検査に対応してきた。現在はカウンセリングオフィスを開業し個人カウンセリングを行っているほか、若者就労支援の心理相談員として従事している。
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