パワハラというと、上司が部下に対して、職場での立場を利用して嫌がらせをしたり、精神的な苦痛を与えたりすることですが、最近では、部下から上司への「逆パワハラ」が増えつつあります。では、逆パワハラとは一体どのようなものでしょうか。また、逆パワハラをされたら、どのように対処するのがいいのでしょうか。
目次
- 逆パワハラとは
- 逆パワハラの事例
- まとめ
パワーハラスメント(パワハラ)とは、上司が部下に対して、暴言を吐いたり、暴力を振るったり、誹謗中傷、無視するなどの精神的または肉体的な苦痛を与えることを指します。反対に、逆パワハラとは、部下から上司に対して、暴言や誹謗中傷などの苦痛を与えることを指します。
逆パワハラを受けた上司が、うつ病などの精神障害を患ったり、休職せざるを得なくなったりするケースもあります。
また、部下から上司へのハラスメントを見逃していると、会社の秩序を乱して、組織が崩壊する恐れもありますので、注意が必要です。
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逆パワハラの事例について、タイプごとに見ていきましょう。
◇暴言・暴行
業界によっては、上司よりも若い人のほうがスキルや知識を持っていることがあります。特にIT業界では、若い人のほうがスマホやパソコンの操作に慣れていて、上司を傷つける発言がされやすくなります。「どうしてこんな簡単なことも知らないのか」「無能」などと、上司を否定するようなことを聞かされたという事例があります。
◇無視や反発
仕事を依頼しても無視や反発ばかりする部下もいます。部下が結託して反発すると太刀打ちできない場合があります。
といった、いじめに近いような事例があります。
◇誹謗中傷
気に入らないことがあると、SNSなどに上司の誹謗中傷を書きこむ部下もいます。一般的な範囲内の指示や教育、あるいは飲みに誘っただけで「パワハラをされた」と投稿したり、社内で噂を流したりする事例もあります。
では、どのようなことが原因で逆パワハラは起きるのでしょうか。
◇部下のほうが仕事の経験が豊富
上司が過去に身につけたスキルが時代に合わなくなり、部下の方が高いスキルを持っているのはよくあることです。また、年齢が考慮されて上司になったものの、経験年数は部下の方が長いということもあり得ます。特に、パソコンやスマホ、SNSなどについては、若い人のほうが慣れていることも多く、中高年層が逆パワハラの被害に遭いやすくなります。
◇上司が叱らない
上司が部下を叱らないのをいいことに、逆パワハラが起きやすくなることがあります。今は「人手不足で、辞められたら困る」「指導したらパワハラと言われるかもしれない」と、叱ることができない上司も少なくありません。部下の問題行動を見逃していると、エスカレートして逆パワハラに発展しやすくなります。
◇上司に間違いがあってはならないという決めつけ
上司は、できるだけ正しいことを部下に伝えていくに越したことはありません。ですが、いくら立場が高いからとはいえ、上司も人間ですので間違えることはあります。しかし、上司というだけで「一つも間違えてはいけない」「部下である自分でもできることを間違えるなんて無能だ」という思い込みが起きやすく、相手を責めるという言動に繋がりやすくなります。
◇結託しやすい
上司は一人で複数名の部下に指示を出したり、管理をしたりすることが多いです。そうすると、複数の部下で結託して上司を陥れようと動くことが簡単になります。管理職は、同じ立場である人と接する機会が部下に比べて少なくなるのが一般的です。そのため、上司は孤立しやすく、それをいいことにさらに上司を追い詰めようという行為に至りやすくなります。
◇会社との板挟みになっている
会社の方針で部下の反発も全て上司の責任になるといったことを利用したり、上司が会社から厳しい条件を突き付けられていることを知っていて、あえて困らせてやろうとしたりなど、「部下のハラスメントを我慢しなければ自分や会社が不利益を得る」という構造が発生しやすいのも、逆パワハラが起きやすい一因となります。
パワハラと言われるのが怖くて部下を指導したり叱ったりすることができない人も少なくありません。例えば、ミスを指摘しただけでパワハラと言われた、という逆パワハラの事例では、上司・部下ともにパワハラというものに対する認識が誤っていることが考えられるでしょう。部下は、都合のいいように拡大解釈して、仕事をする上で必要な上司の指摘までパワハラと言い張ってしまうことがあります。上司のほうも、昔は耳にしなかったパワハラという言葉に戸惑い、またこうした近年の感覚が理解しにくく、一体どういったことがパワハラにあたるのか明確に線引きできる自信がないという人が多く見られます。このことを部下がうまく利用している事例もあるでしょう。逆パワハラの中には、「パワハラ」を利用したものがよく見られ、そのほとんどがパワハラについての間違った認識によって引き起こされているものでした。
◇年功序列
ひと昔前までは、年功序列によって立場が決まる会社がほとんどでした。しかし、年功序列による評価制度では、年齢だけが上がって、スキルや経験が伴っていない、ということも起こりやすくなります。年齢や経験年数だけでは本人のスキルを図ることはできません。そのため、年齢や経験年数も上司の方が上なのに、スキルは部下のほうが高いということが起こりやすくなります。
部下としても、自分よりもスキルが低い人に仕事を指示されるのは嫌だと感じたり、自分よりも給料をもらっているのに能力が低いのは許せないと思ったりするため、逆パワハラが起きやすくなります。
◇部下が多い
上司1人あたりに対しての部下の数が多いと、どうしても指導しきれなかったり、一人一人と向き合う時間が減ったりすることがあります。そうすると、部下の不満が蓄積して、無視や反発をするようになり、逆パワハラにつながりやすくなります。
また、部下の人数が多いと、上司がより精神的に孤立しやすくなり、部下も結託しやすくなるため、逆パワハラが起きやすい環境になります。
◇勤続年数の長いアルバイトがたくさんいる
職場によっては、正社員がアルバイトを管理するところも少なくありません。このような職場では、雇用形態の違いで上司と部下の関係になっているだけで、勤続年数はアルバイトのほうが長いということも多くあります。こうした関係性においては、アルバイトが社員を軽視しやすくなるため、逆パワハラが起きやすくなります。
では、逆パワハラが起きている場合、どのように対処していくのがいいでしょうか。
◇会社に相談する
まずは、逆パワハラが起きていることを、会社に相談してみましょう。逆パワハラを受けているなんて、上司として部下が管理できていない、みっともない、と思われるのではないかと、誰にも相談できずに一人で抱え込んでしまう人もいます。ですが、逆パワハラも、パワハラと同じように個人同士ではなく、会社が労働問題として改善していかなければならないトラブルです。会社の構造や人員配置の仕組みに問題を抱えていることが発覚する事例も多くあります。
一人で辛い気持ちを我慢していると、うつ病になってしまったり、休職や退職に追い込まれたりすることもあります。まずは、パワハラと同様に一度、会社の人事部や直属の上司まで相談してみましょう。
◇証拠を残す
逆パワハラを受けたという証拠は残しておきましょう。ボイスレコーダーで録音したり、メールを残しておいたり、手書きのメモも有効となる場合があります。誰に何を言われたのか、どのようなことをされたのか、詳細が分かるものを用意するようにしましょう。
証拠があれば、会社や社外に相談するときにも、相手からより信用してもらえることになります。
◇社外の人に相談する
労働基準監督署という、労働基準法などに違反がないか会社を監督する公的機関があります。労働基準法に違反があれば、会社を指導してくれるだけでなく、逆パワハラをしている部下に対して尋問を行い、悪質な場合には逮捕につなげることもできます。
会社に相談したけどなかなか動いてくれない、部下の管理ができていないと言われて降格させられた、といったように、会社にも方針に問題がある場合には、労働基準監督署に相談してみましょう。
また、逆パワハラをしてきた部下に損害賠償請求をしたいという場合には、弁護士まで相談するようにしましょう。
逆パワハラを予防するためには、上司のマネジメント力が重要なポイントになります。上司の立場にある人は、仕事のスキルや経験が豊富なことが多いですが、部下をマネジメントする能力は、また別のものになりますよね。場合によっては、部下の方が仕事のスキルや経験を持っていることもありますが、それでも上司にマネジメント力があれば、部下の能力をまとめて最大限のパフォーマンスを発揮させることができるので、部下からも支持されやすくなります。逆パワハラを予防するには、リーダー層のマネジメントスキルを向上できるよう、研修や指導を行うことが大切です。
部下に対しても、逆パワハラが不利益を生むという理解を研修などで学んでもらうことも効果的です。部下の中には、逆パワハラをしている、という意識がないまま、逆パワハラをしている人もいます。まずは、逆パワハラというものが起こり得るということを知ってもらいましょう。また、研修を行うことで、会社としても逆パワハラを予防しようとしているという姿勢が部下に伝わります。
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逆パワハラとは、部下から上司に対するハラスメントのことで、見て見ぬふりをしていると、会社の秩序が乱れたり、組織が崩壊したりするリスクもあります。
被害を受けた上司も、精神的な苦痛により、うつ病などを患ったり、退職に追い込まれたりすることがあるので、逆パワハラを放置するのはとても危険です。
部下からハラスメントを受けるなんて、指導ができていない、部下を管理できていない、と思われるかもしれないと考え、誰にも相談できずに一人で抱え込んでしまうケースもあります。逆パワハラを受けているのであれば、会社に相談するようにして、対応してもらえなかったり、理不尽に降格させられたりした場合には、労働基準監督署に相談するようにしましょう。