相手に精神的な嫌がらせや攻撃をするモラハラ。暴力や暴言などと違って、周囲から見て気がつきにくいうえ、被害者自身もモラハラを受けていると自覚しにくいケースも少なくありません。そのため、問題が明るみに出るころにはすでに事態が悪化していた、ということになりやすい性質を持っています。
メディアなどでは夫婦間のモラハラが話題になりがちですが、職場内のモラハラも頻繁に起こっていて、問題になっています。では、職場でのモラハラには、どのようなものが当てはまるのでしょうか。また、モラハラを受けたときの対処法にはどのようなものがあるのでしょうか。
目次
- モラハラとは
- まとめ
モラハラとは、モラルハラスメントの略称で、「倫理や道徳に反した嫌がらせ」という意味です。相手を言葉で責めたてたり、無視したり、ときには人格を否定するようなことを言ったりします。
身体的な暴力は伴わず、あくまで発言や言動によって精神的な嫌がらせをすることを指します。
また、加害者意識が低く、被害者以外は問題に気付きにくいという特徴があります。
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職場で起こりやすいハラスメントとしては、パワハラが有名ですが、パワハラは職務上の立場を利用して嫌がらせをするのに対し、モラハラは立場に関係なく起こります。上司から部下にだけでなく、同僚間であったり、部下から上司にモラハラが起こることもあります。
ではモラハラをそのままにしておくと、どんな影響が生じるのでしょうか。
モラハラを受けると、人格否定をされたり、精神的に追い詰められやすくなるので、自己肯定感が低くなります。「自分はなんてダメな人間なんだ」と思うようになり、ひとりぼっちになったような孤独を感じます。そうなると、会社に行くのが億劫になり、仕事への意欲も低下します。さらに精神面だけでなく、身体にも不調があらわれ、体調不良で会社を休まないといけなくなったり、うつ病などの精神疾患を患うこともあります。
モラハラ加害者は、その行為自体が普通のことだという認識を持っているケースが多く見られます。自己愛が強いため自分に根拠のない自信はあるのですが、うまくいかない劣等感や不安を抱えており、そのギャップを正当化するために無意識でモラハラが行われる傾向があります。
◎モラハラ加害者は、以下のような潜在意識を持っていることが多いと言われています。
では、職場で起こるモラハラにはどのようなものがあるのか、具体的に見ていきましょう。
◆暴言やいやみ、陰口などの言葉による侮辱
職場で起こるモラハラの代表的なものとして、「お前は本当に使えない」「ダメな人間だ」など、侮辱するような発言が挙げられます。
仕事のことだけではなく、プライベートに立ち入って侮辱してくるのも、職場のモラハラに多く見られるケースです。仕事と関係がないのに、趣味や見た目、パートナーの有無を馬鹿にしたりします。
また、個人的に攻撃してくるだけでなく、周囲の人にうわさを吹き込んだりすることもあります。
言葉によるモラハラには、悪口と認識されにくいような人格否定が含まれていることがあり、モラハラに気付きにくくさせる大きな原因となっています。
例えば
などが挙げられます。
◆連絡しない/無視をする/誘わない
必要な連絡をしない、無視をする、ほかの全員が参加する行事に誘わない、というのも職場でのモラハラに多く見られます。挨拶を毎日無視される、一人だけランチに誘われない、社員旅行や社内のイベントに誘わない、仕事に必要な連絡をまわしてくれない、といったことが挙げられます。
情報を遮断させることで、モラハラを受けた人は孤立したような苦痛を味わうことになります。
また、周りから見て気がつきにくく、相談したとしても「気のせいじゃないか」「気にしすぎじゃないか」と言われてしまいやすい性質があります。
◆労働環境を悪くする
夏に寒すぎるぐらいに冷房をかけたり、扇風機を当て続けるなど、職場の環境を悪くすることもあります。また、人前で必要以上に叱責したり、侮辱したりしてモラハラを受けた人が居づらい環境にする、ということもあります。睨んだり、舌打ちをする、変なものを見るような目で見る、ものに当たる、といったことも同様にモラハラと言えます。
周囲を巻き込んでのモラハラの場合、モラハラを受けた人は孤立化し、周りに助けを求められなくなるため、より強い苦痛を感じやすくなります。
◆仕事を奪う/押し付ける
仕事を奪ったり、嫌な仕事や大量の仕事を極端に押し付けるのもモラハラです。
業務に直接関係するモラハラは、会社での評価につながるため、モラハラを受けた人は精神的に追い詰められやすくなります。
ではもし、モラハラを受けてしまった場合、どのように対処していくのがいいのでしょうか。
◆社内で相談する
社内に相談できる人がいたり、相談できる場所がある人は、社内で相談してみましょう。大きい会社であれば窓口がありますし、なければ上司や人事部などに相談するといいでしょう。社内で相談すれば、より身近な人の協力を得ることができるので、心強いと思われます。
また、誰かに相談するときには証拠があったほうがいいでしょう。モラハラは、精神的な攻撃になるため、言われたことやされたことなどを口で説明するだけでは信憑性が低いと判断されてしまいます。送られてきたメール、渡されたメモ、暴言を吐かれた時の録音データなどが証拠としてとても有効です。また、日記のようにモラハラを記録したメモなども有効です。「いつ」」「誰が」「どのように」モラハラをしたのかをはっきりさせることで、より第三者の協力を得やすくなります。
◆労働局に相談する
労働局とは、各都道府県にある、労働者が無料で相談できる場所で、労働問題に関する相談や解決を行なっている行政の機関です。
労働局は労働基準法とは関係がない問題でも相談に乗ってくれますが、会社に対しての強制力などはありません。
しかし、具体的なアドバイスをしてくれたり、会社との間に入って和解の場を設けてくれたりします。
確実に解決してくれる、というわけではないですが、無料で相談できますし、社内の人には知られたくない場合、まずは労働局に相談してみるのもいいでしょう。
◆自分の意思を伝える
直接言えるのであれば、しっかりと相手に「嫌だ」「やめてほしい」という意思を伝えることが大切です。モラハラをしている本人が、人の気持ちに無頓着であり、相手に言われて初めて気付かされる場合もあります。モラハラを受け流しているだけでは、いつまで経っても改善されませんので、少しでもアクションを起こしたほうが解決に向かいやすくなります。
◆転職する
モラハラがそれでも改善されない場合、転職するのも1つの方法です。逃げているみたいで気が引けると思うかもしれませんが、決して逃げではありません。モラハラは精神的な苦痛も大きく、自己肯定感が低くなったり、ひどいときには精神疾患を患うこともあります。
会社がモラハラに対処してくれればいいですが、相談しても解決しないような場合、ずっとその環境に身を置くよりも、転職して新しい環境で仕事をするほうが、あなたのキャリアや人生にとって、プラスの選択をしたと言えるのではないでしょうか。
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モラハラには、労働基準法で規定されたルールがないため、何が法律違反で、何が法律違反でないのか、という基準がありません。
しかし会社には、職場環境配慮義務というものがあり、従業員が安心して働ける環境を作る義務があります。
また、職場でのいじめやパワハラを防止する義務があり、会社でいじめがあったのに放置しておくのは、違法となります。
加害者を法で罰することは難しいですが、会社に相談したのに何も動いてくれない場合は、会社に対して損害賠償請求ができるケースもあります。会社を訴える場合は、専門の弁護士に相談するようにしましょう。
モラハラは、精神的な苦痛が大きく、放っておくと自己肯定感が低くなったり、精神疾患を患うこともあるほどです。しかし、周囲が気付きにくく、モラハラを受けた人が一人で悩みを抱え込みやすいという問題があります。
モラハラを受けて一人で悩んでいるという方は、自分を大切にするためにも、友人やカウンセラーに頼って、早めにつらい気持ちを相談しましょう。同時に、証拠を集めるようにして、社内で相談したり、解決しない場合は転職も視野に入れながら、決して一人で悩み続けることがないようにしてください。