調子が良くない時期などに、ちょっとしたことで落ち込んだり、自分が嫌になったりすることは、きっと誰にでもあると思います。しかし、それが日常のようになっている人にとっては、メンタルが強い人は一種の憧れにもなり得るのではないでしょうか。
そんなメンタルが強い人とは具体的に言うとどんな状態なのか、メンタルを強くする方法はあるのか、あるならどんな方法なのか、順を追ってお話していきます。
目次
- おわりに
メンタルとは元々、「精神的な」「心の」という意味の英単語「mental」が由来ですが、今では一般的に、心や精神自体、および、その傾向を含む使われ方をするようになっています。「メンタルが強い」は「心が強い」とほぼ同義に使われています。
では、心が強い人とは、どんな特徴がある人のことなのでしょう?
・物事を否定的に捉えない
心が強い人は、多少嫌なことがあっても、深刻に受け止めすぎない習慣ができていると言えます。どんな人、どんな出来事にも良い面と悪い面があるものですが、メンタルが強い人は自然と良い面の方を多めに受け止める傾向があります。
そのため、過度に気持ちが沈んだり傷ついたりしないでいられます。
・自分にある程度の自信がある
そのような受け止め方ができるのは、自分の存在や生活、能力にある程度の自信があるからとも言えるでしょう。
何か嫌なことや困ることが起きても、私ならどうにか対処できるだろう、誰かに助けを求めて手伝ってもらうこともできるだろう、というように未来の自分や自分の置かれた環境を信じることができるのも、メンタルが強い人によく見られる特徴です。
・自分と他人の境界線がはっきりしている
心が強い人は、自分の気持ちや考えと他人のそれとを、分けて考えることが得意な人とも言い換えられるように思います。メンタルを健やかに保てている人の中には、自他の境界を明確に区切り、過剰に人にどう思われているか考えすぎることも、人を期待通りに動かそうとすることもせず、「自分は自分、人は人」をベースに生きている人も多いのではないでしょうか。
・気持ちの切り替えがうまい
いくらメンタルが強くても、日々まったくストレスを感じないということは稀だと思います。しかし、ストレスを感じることがあっても、長期間引きずることなく切り替えができるのも、心が強い人の特徴と言えるでしょう。
・他人の状況や気持ちに配慮できる
ここまでの特徴は、他者や環境をどう受け止めるかという視点を中心に考えてきましたが、本人から他者や環境という方向でも見てみると、自分自身はストレスなく過ごせていても、逆に周囲の人にストレスを与えているという状況もあり得ます。
そうなっていても気づかない、あるいは気づいても適切な対応をしようとしない場合、本人は困り感が少なく自分が変わる必要を感じにくいため、落ち込んだりすることはあまりないかもしれません。しかし、そのような状態にある人を「心が強い」とは言い難いのではないかとも感じます。
メンタルの強さには、自分だけでなく周囲の人々の状況や気持ちにも配慮でき、なおかつ巻き込まれ過ぎない強さも含まれているのではないでしょうか。
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ここからは逆に、落ち込みやすかったりストレスを抱えやすかったりする人の特徴を挙げていきます。
・否定的な捉え方をしてしまう
メンタルが強い人とは逆に、ストレスを抱えやすい人はいろんなことを否定的に捉えがちです。同じ場面で同じ体験をしていても、メンタルが強い人と比べると、ネガティブな部分により多くの焦点を当てた受け止め方をしてしまうと言えるでしょう。
・自分に自信が持てず不安や自責の念が強い
持って生まれた資質や様々なしんどい経験などを通じて、必要充分な自信を持ちづらい状態になっているのも、メンタルに課題を持つ人の特徴と言えます。自信がないため、過度に不安になってしまったり、自分のせいだと思ってしまったりしやすく、ますます辛くなるという負のループに陥ることも少なくありません。
・人の気持ちを想像しすぎる
メンタルが不安定になりやすい人は、周囲の人の気持ちや、人からどう思われているかをあれこれ考えすぎてしまう傾向もあります。考えているうちにどんどんネガティブな方に気持ちが向き、「嫌な気持ちにさせてしまったかもしれない」「悪く思われているに違いない」というように感じてしまいがちです。
・嫌な出来事を繰り返し思い返してしまう
悪い方に考えてしまうことがあっても、数日でだんだん忘れていくなら問題ないのですが、なかなかそうはいかないところが、メンタル的に課題がある人の辛いところです。忘れたくてもなぜか嫌だったことや気になることが何度も頭の中をグルグル巡ってしまい、思い返すたびに嫌な気持ちが積み重なり、落ち込んでしまいます。
このように嫌な記憶や思考が繰り返される流れを、自分ではうまく変えられないのも、ストレスを強める大きな要因となります。
ここからは心を強くする方法をご紹介しますので、「自分の傾向は理解しているけれど、でもどうすれば変えられるのかが分からない」という方も、できそうなものから取り組んでみてはいかがでしょうか。
・人や状況の良い部分を見つけ出してみる
まずは、物事のネガティブな面に重きを置いた見方をしてしまいがち、という自分自身の癖を把握して、敢えて普段とは逆の見方をしてみるのも取り入れやすい方法のひとつです。周囲の人や状況のポジティブな部分に着目してみると、どんなことが見えてくるか、どんな気分になるか確認してみるだけでも変化があるかもしれません。
・自他の境界を意識する
自分と他人の境界線を意識するのも、心を強くするおすすめの方法のひとつです。
たとえば、仕事の同僚が不機嫌そうに見えたとき、メンタルに課題のある人は「私が何かしてしまったのかな」と気になったり、謝った方がいいのか不安になったり、機嫌を良くしてもらえるような接し方をしなくてはと考えて疲れてしまったりしがちです。このとき、他人の状態を過剰に自分事として考えているという意味で、自分と相手とが入り交じった、自他の境界線があいまいな状態になっていると言えます。
相手には相手の生活、気持ちや考えがあり、自分の想像の及ばないところで何か嫌なことがあったのかもしれませんし、単なる疲れや体調不良などが不機嫌の原因かもしれません。
このように、相手の状態を過剰に自分に引き付けて考えないよう、境界線を意識していくと良いでしょう。
・人のことは人に聞かないと分からないことを理解する
人間は一人ひとり全員違う存在であり、人のことは意外なほどに分からないものだという前提を持つのも大事なことです。
先ほどの例で言うと、同僚が不機嫌そうに見えたのは自分の感じ方でしかなく、そもそも不機嫌ではない可能性もあります。本当に不機嫌かどうかは、ご本人に聞いてみなければ分かりませんから、「同僚の機嫌が悪く見えたのは自分であり、同僚が自ら機嫌が悪いと言ったわけではない」というように、相手の気持ちや状態を勝手に判断しないようにすると巻き込まれにくくなります。
・誰かに相談する
一人で考えていると、どんどんネガティブな方に気持ちが向いてしまいがちです。ストレスが溜まっていると感じたら、思い切って信頼できる人に相談してお話を聞いてもらうと、負の考えのループから抜け出しやすくなります。
・過去の成功事例などを参考にして嫌な感情の流れを止める
心が弱っているときは、いつも以上に自信が持てなくなり、嫌なことばかり考えてしまってますます自信を失うということにもなりがちですね。そんなときは、過去の自分がうまくできたことや、何とか乗り切れたことを具体的に思い返してみましょう。
たとえば、「あの時大丈夫だったのだから、きっと今回も何とかなるだろう」「あのときは相手に嫌われたかなと心配していたけど、その後は特に問題なかった。またそうなるかもしれないから考えないでおこう」というように、嫌な感情の流れを止められる捉え方を試してみると、少し楽になれるかもしれません。
過去の自分自身が比較対象なので、メンタルが強い人を参考にするよりも、現実的な部分に目を向けて自信につなげやすいのではないでしょうか。
精神的に強くなるには、弱っているときの自分の心の動きとその対処法を知ることも大切です。カウンセリングではそのお手伝いができます。
・メンタル面の課題ができた背景を探る
一時的な落ち込みではなく、自分はちょっとしたことで落ち込みやすい性格だと思える場合、そうなった背景にはどんな事情があったのか考えてみると、意外な発見があるかもしれません。
心が落ち込みやすい要因が分かれば、対処法も見出しやすくなります。
・人に相談するハードルを下げる
メンタル的に課題がある人は、どう思われるか不安で友人知人には相談しづらいという人も少なくないかと思います。普段の人間関係から離れたところにいるカウンセラーに話してみることで、「こんなことを話してもいいんだな」と思えると、人に相談するということが今までより容易に感じられるようになる効果も期待できます。
そうしてだんだん周囲の人にも話せるようになっていけば、より楽に気持ちを保てるようにもなりそうですね。
・自分を楽にする思考を身につける
カウンセリングでは気持ちをお話してすっきりするだけではなく、状況によっては、より具体的に落ち込みから回復する方法や考え方を提案されることもあります。考え方の癖を一緒に見出し、それに応じた対策を探っていくことができます。
自分を楽にする方法を身につけられれば、カウンセリングが終わっても落ち込みにくいメンタルを保つことが可能です。
すぐに落ち込んでしまう人は、そうでない人より多くの時間をネガティブな気分と共に過ごさねばならず、しんどさや生きづらさを抱えがちです。落ち込むに値することがあったときに落ち込むのはむしろ正常な反応ですが、客観的な状況に不相応なくらい深く長く落ち込んでしまうようなら、メンタルを上向きにするための方法を試してみる価値はあります。
お好みやその時の状況に合ったやり方から挑戦して、少しでも気持ちが楽になったと感じられたら、無理のないペースで続けていけるといいですね。