発達障害のグレーゾーンの人は、発達障害と診断を受けた人よりも「生きにくさ」を抱えやすいといいます。それは、職場に適応できなかったり、結婚してパートナーとコミュニケーションがうまくとれなかったりすることで、大人になってから、ようやく「何か自分は人とは違うのでは?」と感じることが多いからです。なんとなく「周りの子や他のきょうだいに比べて育てにくい」と親が感じていても、子どもが大学生になり親元を離れるまで、あるいは社会人になるまで、問題が表面化しないことが少なくありません。
この記事では、発達障害のグレーゾーンの特徴や、抱えやすい悩みと対策などについて、お伝えしていきます。
目次
- おわりに
発達障害のグレーゾーンとは、発達障害の傾向を持ちながら、発達障害の診断基準を満たしていないため、確定診断がつかない状態のことです。
発達障害には、代表的なものに、自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如・多動性障害(ADHD)がありますが、これらのどちらかの傾向、あるいは両方の傾向を持ちつつ、確定診断には至らない状態などを指します。
グレーゾーンだからといって、発達障害の診断を受けた人よりも特性が弱く悩みが深刻ではないというわけではありません。
「グレーゾーン」という状態は曖昧で、周りの人に説明するのが難しく、辛さを理解してもらいにくいため、ますます本人や身近な人の悩みが深刻化しやすいです。
子どもは生まれ持った特性が言動に出やすいので、発達障害の特性が強い場合は、保健センターなどの定期検診で幼少期に指摘を受けることがあります。
たとえば、自閉スペクトラム症(ASD)であれば、「赤ちゃんの頃にあやしても目が合わない、人見知りがない、抱っこを嫌がる」などの特性から、早ければ1歳半頃から診断がつくことがあります。
また、ADHDは、おもに集団行動が始まると、「衝動性や落ち着きのなさ、先生の話を聞いていられない、言葉よりも先に手が出てしまう」などのことによりトラブルが頻発し、園の先生が「ほかの子と様子が違う」と気が付くことがあります。
発達障害やグレーゾーンは、定期検診で指摘されない場合でも、身近な存在であるお母さんが育てにくさに違和感を持つことや、園や学校の先生がトラブルの多さから疑いをもつことがあります。もし、お子さんが「問題行動が多い、友だちや学校になじめない」などの悩みを抱えやすい場合は、身近な人が話を聞いてあげましょう。
以下に、自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如・多動性障害(ADHD)の特性を挙げますので、「特性が強くて悩んでいる、困っている」という方は、市町村の保健センターや子ども家庭支援センター、都道府県の発達障害者支援センター、発達外来がある医療機関などに相談するとよいでしょう。
自閉スペクトラム症(ASD)の特性
注意欠如・多動性障害(ADHD)の特性
該当する項目の多さよりも、「程度がひどく、生活の支障になっているかどうか」が大事なポイントです。
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発達障害のグレーゾーンのお子さんへの対応の基本は、発達障害のあるお子さんや、定型発達のお子さんへの対応と同じです。分かりやすい言葉で簡潔に具体的に伝えることのほか、話し言葉が苦手なお子さんには、ホワイトボードに箇条書きにしたり、図や絵で示したりするなど、視覚的な手掛かりを与えると理解しやすいでしょう。
また、感情的に早口で話されると、責められているようで怖いと感じやすいので、穏やかに冷静に落ち着いて伝えることが重要です。
1.否定せずに話をじっくり聞く
たとえば、自閉スペクトラム症のお子さんは、感覚過敏あるいは感覚鈍麻を伴うことがあります。特に、感覚過敏のお子さんは、その辛さを理解してもらえず、「学校が怖い、大きな声の友だちや先生が怖い」と言っても、親や周りの人から「気にしすぎだよ」と言われてしまうことがあるでしょう。お子さんは「分かってもらえない」と思ってしまうと、心を閉ざしてしまうことがあります。感覚過敏は、当事者でない方には理解しがたいこともありますが、本人は刺激を人より数倍も多く受け取ってしまい、とてもストレスを感じてしまいます。
お子さんのそのような気持ちを否定せず、「そうか、大変だったね」と最後まで話を聞いてあげてください。
2.気持ちを受け止めて、言いたいことを代弁する
発達障害傾向のあるお子さんは、気持ちを言葉にするのが上手ではありません。言われていることはわかっても、自分の意見をまとめることが苦手で、言葉にできないことも多いです。
たとえば、ADHD傾向のあるお子さんは、友だちに嫌なことをされたとき、「やめて」と言うよりも先に手が出てしまい、悪者になってしまう場面が少なくありません。
親はいきなり「だめだよ!」と怒るのではなく、「どうして叩いたの?」と子どもの気持ちを確認し、そのうえで「悪口を言われて悔しかったんだね。でも、どんなときでも友だちを叩いてはだめだよ。『バカと言わないで』と言葉で伝えようね。」というように、お子さんの気持ちを代弁しつつ、適切な対応を教えてあげてください。
3.どうすればストレスなく過ごせるかを話し合う
発達障害やグレーゾーンのお子さんは、何に困っているかを自分で把握できないことも特徴の一つです。
「もしかして教室がうるさくて苦手なの?」「人がたくさんいるところは疲れるのかな?」など、会話や普段の様子からストレスの原因について想像がつく場合は、率直に聞いてみることが大切です。お子さんは「周りのみんなが平気なのにどうして自分だけ・・・」と思い詰めていることもあるため、きっかけを作ってあげると話しやすいでしょう。
また、苦手なことに対して、「我慢しなくてもいいんだよ。みんなが平気でも、感覚が過敏で人より疲れてしまう人もいるんだよ」と、苦手なことを自覚してもらい、対処方法を一緒に考えてあげてください。
4.発達障害に詳しい専門家に相談をする
発達外来などを受診し、診断を受けたり、医師やカウンセラーからアドバイスを受けたりすることで、お子さんの特性を知る機会になります。
悩みやストレスが原因でお子さんの心身に不調が出てしまう場合は、スクールカウンセラーや担任の先生と相談し、気分が悪いときは別室登校にするなど、何らかの配慮をしてもらうのもいいでしょう。
身近な人に悩みを話せないと、一人でストレスを抱え込み、登校しぶりや不登校、引きこもりなどにもつながりやすいため、気持ちがふさぎ込んでいる様子に気がついたら、子どもに向き合う時間を作って下さい。世の中には様々な特性を持つ人がいることを理解してもらい、不調をきたしてしまうほど我慢しなくてもいいということを話してあげてください。
5.二次的な心の問題を予防する
お子さんの心身の不調に対応しないままでいると、二次的な心の問題を抱えやすくなります。
特に、お子さんが自分の特性を理解していない場合は、無理をしすぎて、うつ病や強迫性障害、パニック障害、不安障害、適応障害などを併発しやすいです。
たとえば、自閉スペクトラム症は、思い込みやこだわりが強いですが、強迫性障害もこだわりに似た行動を症状とするため、併発すると治療がより難しくなるといいます。
お子さんの様子に異変があったら、「無理はさせない、話をよく聞く、気持ちを受け止める、対処法を考える」など、早めの対応をしてください。
大人の発達障害グレーゾーンの場合は、社会経験が多く、子どものように率直な行動に特性が出にくいため、「ちょっと変わった人」くらいに思われることが多いです。
おもに自閉スペクトラム症の夫(妻)と情緒的なやりとりができないことで妻(夫)の気分が落ち込んでしまう、夫婦関係の「カサンドラ症候群」で問題になるのは、発達障害のグレーゾーンで周囲が気付いていない場合が多いです。
「自分は発達障害かもしれない」という自覚がある場合や、「苦手なことを知られたくない」という気持ちがある場合は、苦手なことを隠そうとして、発達障害の特性と真逆の行動をする場合があります。たとえば、学生時代や子どものころに、人付き合いやコミュニケーションが苦手で生きにくさを抱えていた場合、外では無理をして「過剰適応」をしてしまっているかもしれません。外での浅い人間関係では、「穏やかな人、面白い人」と周りに評されることもありますが、本来の自分を押し込めてしまうため、「不適応」を起こすことがあり、家庭内では、外でのストレスをパートナーや子どもにぶつけてしまうこともあります。モラハラ、パワハラ、依存症、逃避傾向などの問題には、陰に発達障害のグレーゾーンが隠れていることがあります。
発達障害の診断は、アメリカ精神医学会で出版しているDSM-5(「精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版」)をもとに、発達障害に詳しい専門医療機関でなされます。医師の問診や行動観察、生育歴のほか、知能検査や適応能力を測る検査を行い、総合的に判断します。
幼少期は、独特な特性が強く出やすいので、その頃の言動を知ることで、発達障害かどうかを知る手掛かりになりやすいです。グレーゾーンと言われる場合は、幼少期の状態を明確に知ることができず、確定診断が付けられないことも少なくありません。
また、環境や体調の影響を受けることがあり、特に大人の場合は、社会経験があり、「まわりに合わせよう、発達障害の特性を隠そう」とすることが、本来の状態を把握しにくい原因の一つとなります。
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発達障害のグレーゾーンに多い悩みを以下に挙げます。
1.まわりに説明しにくい
発達障害のグレーゾーンに関して、家族や友人、職場の人など、身近な人へ具体的に悩みを説明しにくいことが、生きにくさにもつながりやすいです。
2.本人も身近な家族も悩みを理解しにくい
発達障害のグレーゾーンは、「本人が自覚はありつつも敢えて診断を受けない」場合や、「本人は自覚がないけれど、夫婦関係や親子など深い関係にある身近な家族が気付く」場合が多く、本人や周囲が問題を正しく理解できていないことがあります。
特に、身近で深い関係にある家族は、コミュニケーションの難しさや問題行動に悩んでいて、「発達障害の特性を持っているのでは?」と疑っているが、特性が顕著とは言い切れず、本人には打ち明けにくいことがよく見られます。
また、グレーゾーンで全く自覚がない場合に、自分の特性や能力を把握できず、自分の責任なのに人のせいにしたり、「もっと自分はできるはずなのに」と思い込んだり、反対に、能力を過小評価したりすることがあります。
3.「努力が足りない」と思われやすい
発達障害のグレーゾーンは、明確な診断がつかないので、職場や学校で「さぼっている」「意欲がない」と思われやすいです。
また、発達障害に関わる人や、当事者、関係者から、「あなたよりもっと大変な人もいる」と言われてしまうことがあり、「辛い」と言いにくくなることも悩みを深くしてしまいます。
発達障害のグレーゾーンの悩みの対策を以下に挙げます。
1.苦手なことや得意なことについて周りに伝えておく
確定診断がつかなくても、生きにくさや極端に苦手なことがある場合は、発達障害専門の医療機関で診断を受け、発達の凸凹を知り、その結果を職場の人に伝えておくとよいでしょう。
診断がつかなくても、知能検査や社会適応を測定する検査では、得意不得意を知ることができます。
発達障害の診断によく使われる知能検査では、「言語理解(言葉による理解力、推理力、思考力など)」「知覚推理(視覚的な情報を把握し、推理する力など)」「ワーキングメモリ(一時的に情報を記憶しながら、処理する能力)」「処理速度(情報を処理するスピード)」などがわかります。発達障害と診断される人は、これらの能力に極端な傾向があり、苦手なことが生活に支障を及ぼしていることが多いです。
苦手なことを知ることで、まわりに依頼すること、自力でやれることの把握がしやすいことはメリットです。
苦手なことのほか、得意なこともわかるため、学校や職場、その他の人付き合いで「これは難しいけれど、これはできます」と自信を持って言えるので、自分の能力を客観的な指標で知っておくことは生きる上でのヒントになります。
2.理解者を増やす
発達障害のグレーゾーンは「誰でも苦手なことはあるから努力しないといけない」と言われたり、周りの理解が得られにくいため、否定せず話を聞いてくれる専門職のほか、同じような悩みを持つ人や理解してくれる人を持っておくと、心の整理がしやすいです。また、困ったときに相談できる、発達障害の専門医やカウンセラーのほか、理解のある友人、知人がいると安心です。
都道府県にある発達障害者支援センターなどの専門機関などの情報も持っておくと、何かあった際に情報を得られます。
発達障害グレーゾーンの方が職場で困ることとして、具体的には、次のような悩みを抱えやすいです。
1.こだわりが強く、自分の興味がある仕事に集中してしまう
自閉スペクトラム症傾向の方は特に、「木を見て森を見ず」の状態になりやすいです。全体を見て重要な部分に労力を使うのではなく、自分自身が気になる部分について執着してしまい、上司や同僚に何度も同じ質問をして困らせてしまうなど、自分が納得できないと前へ進めないことがあります。
対策としては、指示されたことのリストを作り、期限や重要度を確認し、目印をつけたり、優先順位の高い順に並べて、自分が把握しやすいように、目に見えるところに貼っておいたりすることが挙げられます。
自信がないのであれば、上司や同僚にそのリストを確認してもらい、できた順に見てもらったり、進捗状況を報告したりするのがいいでしょう。
2.複数の指示をもらうと混乱してしまう
発達障害のグレーゾーンの傾向として、マルチタスクが苦手で、一度に多くの指示をもらうと、優先順位をつけられず、頭がいっぱいになり、パニックになりやすいです。
1と重なるところもありますが、やるべきことをリストにし、視覚化することで、混乱しにくくなります。
発達障害グレーゾーンの人は、ワーキングメモリが低い傾向があるので、耳から聞くだけでは、「こんなにたくさんは無理!」と焦ってしまいます。いつでもメモがとれるように準備しておくことも必要です。
3.抽象的な表現が理解できず、何をしていいかわからない
自閉スペクトラム症傾向のある方は、抽象的な表現が理解できない傾向があり、相手の言葉をそのまま受け取ってしまって、上司やクライエントが依頼した内容の言葉の裏にあるものまで想像できないことがあります。その結果、気が利かない人、要領が悪い人、指示待ちのような印象を持たれてしまいやすいです。
「何をしていいかよくわからない、勝手に動いても怒られる」と思う場合は、上司や同僚に「これは具体的にどういうことをしたらいいのですか?」と確認することが大切です。途中経過を報告して確認をとるのもよいでしょう。
4.思ったことをあまり考えずに発言して、相手を不快にさせてしまう
自閉スペクトラム症傾向のある人は特に、相手の感情を読み取るのが苦手といわれます。相手がどう思うかを考えずに、会議などで突然、失礼な発言をしてしまうことも少なくありません。本人は無意識でも、周りはフォローに追われたり、チームで協力するのは難しいと思われたりしやすいです。
対策としては、発言する前に、自分の考えを頭の中で反芻してみて、相手がどう感じるかを考えてみましょう。また、相手が不快な反応をしたら、その場ですぐに謝り、「失礼なことを言ってしまったなら、申し訳ありません」とカバーすることも大切です。できれば、その場にいた同僚などに、どのように言えばよかったかなどを聞いてみると、同じ失敗を繰り返さない対策になります。また、コミュニケーションスキルの練習として、身近な家族や信頼できる友人などに「不快な言い方をしたら、適切な言い方や対応を教えてほしい」とお願いしておくのもいいでしょう。
5.仕事に集中できず、ケアレスミスが多い
ADHD傾向を持つ方に多いですが、他のことに気を取られてしまって、一つに集中できないことがあります。その結果、ケアレスミスが増えたり、やるべきことが抜け落ちたりすることがあります。
対策は、気が散らないような環境をつくることです。デスクが散らかっていたり、余計なものがデスクにあったりする人も多いですが、仕事に必要ないものは目につかないような環境を作ることが大切です。また、人の声などが気になってしまう場合は、音を軽減する感覚過敏専用の耳パフなどを利用したり、一人になれる場所に移動して気持ちを切り替えたりするのも良いでしょう。
ケアレスミスについては、聞き逃さないようにメモを取ったり、やることリストを作ったり、毎朝やることや期限を確認する習慣をつけたりすることが対策になります。
発達障害のグレーゾーンは、面接の際に自分の特性を説明することが難しく、周囲の理解を得にくいです。こだわりが強く、自分中心で仕事を進めてしまい、周囲に変わった人と思われ、職場に適応できなかったり、過去の失敗に囚われて、「うまくやらねば」と過剰適応になり、人の顔色をうかがいすぎて疲弊してしまったりすることがあります。
仕事を選ぶ際で次のようなことは把握しておくと、役に立ちます。
1.自分の得意不得意を把握しておく
グレーゾーンは、診断はついていなくても、実際に生活で困っていることや生きにくさがあることが多いです。自分ではわからなくても、家族や親しい友人に聞くと、特性が見えてくることがあります。自分の得意不得意を把握するために、専門医療機関でアドバイスを受けるのもいいでしょう。診断がつかなくても、知能検査や社会適応検査で見えてくるものがあり、そのデータを面接でも活かすことができます。
2.可能であれば面接のときに、自分の特性を伝えてみる
クローズ就労(発達障害などを伝えずに就業すること)を選ぶ人も多いですが、自分の特性を伝えない場合は、苦手な仕事を任されたり、ほかの人と同じ成果を求められたりすることがあります。それで転職を繰り返す人も多いですが、そのうち心が折れてしまうこともあるため、
可能であれば勇気を出して自分の苦手なことを伝えてみるといいでしょう。
それと同時に、苦手なことについて自分が対処している方法を伝え、部署の上司や同僚に理解を求める場合は、「こうしてもらえると助かる」という依頼を具体的に伝えるといいと思います。
たとえば、マルチタスクが苦手で、一度に複数の指示があると混乱しやすい場合は、「優先順位をつけてもらえると助かる」といったことをお願いしておくといいでしょう。
3.会社のワークスタイルや研修制度など、会社の体制を調べてみる
たとえば、最近増えているリモートワークは、ひとりで黙々とこなす業務内容も多く、対人関係が苦手で、専門スキルをすでに持っている人に向いています。しかし、教えてもらわないといけない立場で、特定のスキルがない場合は、リモートで人とやりとりすることがかえって苦痛になってしまうことがありますので、面接で詳しく確認することが大切です。
研修やサポート体制、異動の頻度などについても、調べられるのであれば、知っておくと安心です。
一言にグレーゾーンといっても、程度や特性は様々ですが、傾向によって次のような仕事が向いているといえます。
おもに自閉スペクトラム症(ASD)傾向がある人
人との深いやりとりや臨機応変に対応することが苦手でも、興味のあることには追究心と集中力があるので、それを活かす仕事が向いています。
研究職、エンジニア、アナリスト、プログラマーなど、主に専門スキルをもって、黙々とこなすような仕事が合っていると感じる人が多いようです。
おもに注意欠如・多動性障害(ADHD)傾向がある人
一つのことに集中することや単調なことは苦手ですが、刺激が多く、複数の視点をもって関わるようなクリエイティブな仕事には向いています。
様々な人と話すのが好きな人が多いので、対人関係の仕事も向いています。たとえば、営業職、販売業、マスコミ関係、芸術や音楽関係などの仕事が合っていると感じる人が多いようです。
就職活動でも就職後も、発達障害のグレーゾーンの様々な悩みは尽きないと思います。
会社の上司や同僚に相談することも大事ですが、専門職や関連機関と連携をとると、解決のヒントになるでしょう。
以下に、就労の相談やアドバイスを受けられる機関について挙げておきます。
1.発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは、都道府県にある専門機関で、大人から子どもまで、発達障害に関する相談にのっています。診断がつかなくても利用でき、診断の相談も可能です。
発達の凸凹を知り、就労のアドバイスを受けるのも参考になるでしょう。
2.地域の医療機関
発達障害を専門としている医師に相談してみるのもいいでしょう。
家族と一緒に受診に行き、自分では気が付かない特性を家族から医師に相談してもらうと、新たな発見が見つかることがあります。
3.就労移行支援事業所
就労移行支援事業所では、障害のある方が仕事に必要なスキルなどを身につけるための支援を行っています。自治体の障害担当者に相談し、受給者証が発行されると利用できます。
一人で就職活動、転職活動をして、就職してからのことが不安な方も利用してみるといいと思います。
4.ハローワーク
ハローワークは障害のある方向けの窓口を設けているところもありますので、転職を繰り返していて、一般就労は難しいと思われる場合は、相談してみるといいでしょう。
ただし、発達障害の専門窓口ではないので、特性や苦手なことは自分でまとめておきましょう。
5.カウンセリング
発達障害に詳しいカウンセラーや仕事の相談を受けてきたカウンセラーなどに相談してみると、自分の仕事に対する特徴や意識した方がいいことなどが見えてきます。
ひとりで悩んだり、家族や友人に相談したりしても、納得いかないことが多い方は、カウンセラーに相談してみると、就労に活かせるヒントが得られるかもしれません。
発達障害のグレーゾーンは、本人や周りの人がもやもやと悩んでしまうことが多いと思います。
生活の悩みや仕事の悩みなど、特に社会生活のなかで困ることが多いですが、二次的な心の問題を防ぐためにも、早めに専門職などに相談して、対応を考えることが大事です。