カウンセリングと精神科・心療内科の違いを知っていますか?精神科・心療内科の医師による診察と臨床心理士などのカウンセラーによるカウンセリングは混同されやすく、悩みや心の不調を抱えているとき、どちらに行ったら良いのか分からないという人も少なくありません。なかには、悩みを親身に聞いてもらえることを期待して心療内科に行き、「あまり話を聞いてもらえなかった」と不満を感じたことがある人もいるようです。
本記事では、カウンセリングと精神科・心療内科の違いや、相談先の選び方について解説します。
目次
- おわりに
カウンセリングとは、臨床心理士などのカウンセラーとの対話(面談)を通じて、相談者の悩みや心の不調の解決を目指すことをいいます。
多くのカウンセリングでは1回に50分ほどの時間をかけて、カウンセラーがしっかりと相談者の話を聴きます。カウンセラーはただ話を聞くだけではなく、様々なカウンセリング理論や技法、心理療法(場合によって心理検査)を用いて、相談者の問題解決をサポートします。
うつ病などの精神疾患を抱えている人に対して、カウンセリングでは、薬物治療や診断はできませんが、精神科や心療内科での薬物治療と並行することで、効果的に治療を勧めることができて、再発率も低くなると考えられています。
また、病気でなくてもカウンセリングは受けることができます。病気でない場合のカウンセリングについては、例えば、次のような目的や効果があります。
など
カウンセリングは、カウンセリングルーム(カウンセリングオフィス)や心理相談室というところで受けられるほか、精神科・心療内科にカウンセラーが駐在しカウンセリングを行なうところも多く存在します。また、学校ではスクールカウンセラーがカウンセリングを実施しており、大学や企業内などでもカウンセリングを受けることができるところがあります。
臨床心理士とは・・・
悩みを抱える人との対話をベースに、精神分析や心理療法を使って問題の解決をサポートする「こころの専門家」です。
うららか相談室には、多くの臨床心理士が在籍しています。
精神科とは、うつ病や統合失調症などのこころの病気(精神疾患)について、医師が診察・診断・治療を行う医療機関です。
多くの精神科では、たくさんの患者の診察をするため、初診以外は、薬物の調整や簡単な助言が短時間で行われるのが一般的なようです。
精神科で扱われる症状や障害の例として、次のようなことが挙げられます。
気分の落ち込み(または高揚)、不安、パニック、意欲の低下、発達障害、トラウマ、依存症、認知症、摂食障害、パーソナリティ障害、幻覚・幻聴、妄想、問題行動、睡眠障害、倦怠感、頭痛、めまい、動悸など
精神科は精神神経科ともいい、「メンタルクリニック」や「精神科クリニック」は、精神科のうち、入院用のベッドが20床に満たない診療所を指します。また、入院用のベッドが20床以上ある精神科は「精神科病院」となり、リハビリ(デイケア)を行なっているところも多く存在します。
心療内科とは、心理的ストレスの影響で身体に症状があらわれる「心身症」を専門に、医師が診察・診断・治療を行う医療機関を指しますが、精神科領域の症状にも対応できることがほとんどであり、「心療内科・精神科」という表記の医療機関も多く見られます。また、精神科という言葉に抵抗がある人が多いために、あえて「心療内科」という表記を使っている精神科もあります。
ストレスによる心身症の例として、次のようなことが挙げられます。
過敏性腸症候群(腹痛)、起立性調節障害(朝起きられない)、胃・十二指腸潰瘍、頭痛、めまい、動悸、喉のつかえ、過呼吸、耳鳴り、円形脱毛症、アトピー性皮膚炎、月経異常など
※上記のような症状の中にも、身体的な不調が原因であらわれるものがあります。
心療内科と精神科は、厳密には定義が異なりますが、実際にはお互いの領域を含んでいることがほとんどです。どちらに行くべきかを難しく考える必要はありませんが、心理的な要因による身体症状を専門的に診てもらいたい場合は心療内科、精神症状を専門的に診てもらいたい場合は精神科という選び方を目安にするといいかもしれません。
「精神科・心療内科の診察」と「カウンセリング」の違いをまとめると、次のようになります。
精神科・心療内科の診察
カウンセリング
精神科・心療内科の診察とカウンセリングのどちらが良い悪いというわけではなく、抱えている問題や目的に合わせて利用することが大切です。
悩みや心の不調を抱えているときに、「精神科・心療内科かカウンセリング、どっちに行くべき?」と迷ってしまう人は少なくありません。相談先が分からない場合の選び方として、次のようなことを参考にしてみてください。
症状によって日常生活に支障が出たり、周りの人が困ったりしている場合は、早めに医療機関で診てもらうことを検討しましょう。例えば、「気分が落ち込んで、何もやる気が出ない」「不安が強く、執拗に確認してしまう」といった症状は、放っておくと悪化する可能性があります。
もし、精神科や心療内科で薬が出なかったり、病気じゃないと言われたりした場合も、病気の可能性を否定することに意味があり、問題が解決されないというわけではありません。薬ではなく、カウンセリングを受けたり、生活習慣を整えたり、ゆっくりと休んだりすることで、問題を解決できるかもしれない、と前向きに捉えるようにしましょう。
仕事や夫婦関係、恋愛、親子関係、子育てなどのように、生活上の具体的な出来事について相談したい場合は、カウンセリングの利用が向いていると考えられます。
ただし、「仕事に行こうとすると体が動かない」「育児がつらくて涙が止まらない」などの、日常生活に支障が出る症状があらわれている場合は、医療機関で診てもらうことも検討しましょう。
なお、「恋愛依存症」のように正式な診断名ではないものは、医療機関で診断してもらうことはできません。
次のようなキーワードやテーマがあり、じっくりと話がしたい、改善したいという場合は、カウンセリングの利用が向いていると考えられます。
考え方、性格、癖、態度、価値観、人生、生き方、人間関係、コミュニケーション、能力、過去、将来、ジェンダー観など
ほとんどのカウンセリングでは、医療機関で診てもらう必要があるとカウンセラーが判断した場合に、相談者へ医療機関の受診を勧めています。病院に行くほどの悩みではないと感じても、一度専門家に相談してみると気持ちが軽くなったり、参考になる意見がもらえるかもしれません。悩みや問題がたくさんあって困っている人は、まずはカウンセリングで専門家と一緒に問題を整理してもらうことから始めると良いでしょう。
精神科・心療内科での医師の診察とカウンセリングには大きな違いがあり、抱えている問題や目的に合わせて利用することが大切です。
また、困ったときに相談できるのは、臨床心理士などのカウンセラーや医療機関の医師だけではありません。例えば、精神保健福祉士や社会福祉士というソーシャルワーカーは、障害や就労、生活全般の相談に乗り、社会資源を活用して問題の解決を目指します。
うららか相談室では、臨床心理士や公認心理師、精神保健福祉士などの様々な専門的に、ビデオ・電話・メッセージ・対面形式で悩みを相談することができます。申込みはwebで24時間受け付けており、深夜・早朝のカウンセリングや当日予約にも対応しています。
精神科・心療内科かカウンセリングのどちらに行くべきか迷っている方も、ぜひうららか相談室の専門家に相談してみてください。
<参考文献>
精神科とカウンセリングとは違うのですか。/千葉県, 2019, https://www.pref.chiba.lg.jp/kenshidou/faq/363.html(2022-02-18 参照)