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  1. 「学校に行きたくない」時の対処法。小中高生の理由と親の対応

「学校に行きたくない」時の対処法。小中高生の理由と親の対応

お子さんが、「学校に行きたくない」と言い出したら、焦ってしまう保護者の方が多いと思います。はっきりとした原因がないのに、「朝になるとなんとなく体調が悪い」「休みにするとほっとする」というお子さんもいるでしょう。

この記事では、登校することに対してモヤモヤした気分を抱えたお子さんと、その保護者の方が、「学校に行くこと」に対して柔軟な考え方ができるようなヒントを提示していければと思います。

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目次

学校に行きたくないのは甘えではない


「ほかのみんなは普通に学校に行けているのに、どうして自分は学校に行けないのだろう?」「特にこれといった理由がないのに、学校のことを思うと気分が悪くなるのは自分が弱いのかな?」と思う人もいるかもしれませんが、「学校に行きたくない」のは決しておかしなことではありません。学校に行きたくない人の中には、休まないと前へ進めない人もいます。

「親や先生、友だちになんと言われるだろう?」と不安になることもあるでしょうが、「もう無理だ」と感じたら、学校を休んでも、遅刻や早退をしてもかまわないのです。ゆっくりと心を休めれば、「そろそろ学校に行ってみようかな」と思えるかもしれません。そう思えなくても学ぶ方法はほかにもあります。


2016年に国で「教育機会確保法」という法律が制定され、学校以外の学習の機会が見直されています。この法律では、「多様で適切な学習活動の重要性」や「休養の必要性」について示されており、生徒の希望で学校に登校せず、家庭学習やフリースクール(学校に行けない生徒が学校の代わりに過ごす場所)などを選ぶことも認められるようになりました。

「消えてなくなりたいほど辛い」「大きなストレスを抱えている」といった生徒に対して、法律で学校以外の幅広い学習の機会が認められていますので、辛いときには堂々と学校を休んでもかまわないのです。

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学校に行きたくない理由は?


学校に行きたくない理由は人それぞれですが、よく見られるのは次のようなケースです。


  • 自分自身でも理由がわからない

学校に行きたくない理由が自分でも分からないという人は少なくありません。

「学校に行きたくないのはどうして?」と親や先生に理由を聞かれても、もっともな理由を答えられないため、親に怒られると思ったり、「学校を休むなんて親は許してくれない」「誰かに話しても分かってもらえない」と考えたり、「ほかの人たちは学校に行けるのに、自分はどうして行けないのだろう」と自分を責めたりしている人も多いでしょう。


  • 学校に行こうとすると体調が悪くなる

・寝る前に学校のことを考えると不安で眠れない

・朝になかなか布団から出られない

・登校時に頭痛や腹痛がする

といったように、学校に行こうとすると心身に不調があらわれるため、学校に行けないという人は少なくありません。


  • 心身が疲弊している

心や体が疲れていて、学校で頑張ることができない状態になっている人も多くいます。

いじめられているわけでもなく、勉強が嫌なわけでもないのに、体がだるかったり、憂うつな気分になったりするケースもあります。


  • 集団生活が苦手

座ってじっと先生の話を聞かないといけないことが耐えられなかったり、よく忘れ物をしてしまって先生から怒られたりといったように、集団生活でどうしても苦手なことがあり、学校に行きたくないという人は少なくありません。

教室内の話し声がうるさく感じたり、先生がクラスメイトを怒っている声をまるで自分が怒られているかのように怖いと感じたりといったように、集団生活で生じる刺激が苦手な人もいます。

また、周りの人からどのように思われるかを気にしすぎてしまう人や、全員から好かれないといけないと思ってしまう人は、友人関係で気を遣いすぎて疲れたり、クラスになじめなかったときに憂うつな気分になったりすることがあるでしょう。


  • 学業不振・勉強が嫌い

文部科学省(2021)の調査(※1)によると、不登校になった生徒のうち学業不振が要因である割合は、小学校で3.2%、中学校で6.5%でした。勉強が本格的になると、テストの点数や成績を気にしたり、進路に不安を抱えたり、ほかの生徒たちと比較されるような環境の中にストレスを感じてしまうこともあるでしょう。


  • 家庭に悩みを抱えている

親子関係がうまくいっていない、家族仲が悪いなどの原因により、学校に行けないという人も少なくありません。


次に、「学校に行きたくない」という状況について、小学生、中学生、高校生別によく見られる傾向を挙げていきます。

小学生の傾向

小学校生活の6年間でお子さんは心身共に著しい発達を遂げます。それゆえ、学年ごとに問題となりやすい傾向も変わります。


  • 園生活から学校への環境の変化にとまどう

特に、小学校入学~低学年の頃は、遊びや行事が中心の幼稚園や保育園から勉強中心の学校生活が始まることで、環境の変化に戸惑うお子さんが多くなります。ほとんどの学校は、園よりも多くの児童が在籍するため、うまくクラスになじめなくなることもあります。このように、小学校に入学して集団生活になじめないといった問題は「小1プロブレム」と呼ばれています。環境の変化にうまくなじめないために、学校に行きたくないと思うお子さんは多いです。

また、小学校低学年は、交友関係が広がり、子どもだけの集団登下校でのトラブルなどが起こりやすくなります。友人関係のトラブルが原因で学校に行きたくなくなるお子さんは多いため、親の見守りがまだまだ必要な時期といえます。


  • ストレスをうまく言葉で表現できない

特に、小学校低学年のお子さんは、モヤモヤした気持ちをうまく言葉で伝えられず、帰宅してから癇癪(かんしゃく)を起こしたり、登校前にしくしく泣いたりすることがあります。お子さんが暴れたり泣いたりする場合は、言葉にしても分かってもらえないようなストレスを抱えているかもしれません。


  • 友人関係のトラブルや劣等感を抱える

小学校高学年の頃は、心身の発達とともに自己肯定感が育っていく一方で、学業やスポーツなどの能力の差がはっきりしてくるため、周りのお子さんと自分を比べてしまい、劣等感を抱えやすくなります。親友と呼べる密な付き合いが始まったり、仲の良いグループが固定されやすくなったり、秘密を共有するのが楽しかったりする時期でもあるため、友だちとのトラブルや悩みが深刻になりやすいです。

中学生の傾向

中学生の頃は思春期といわれ、現実と理想の間で葛藤を抱きやすく、自分自身の人生を模索し始める時期です。親と関わることが減り、親に反抗することも多く、大人よりも友人関係に意義を見出します。


  • 学業の悩みが多くなる

日本財団(2018)の調査(※2)によると、中学校に行きたくない理由について、「疲れる」「朝起きられない」などの身体的症状以外の理由では、「授業がよくわからない」「良い成績がとれない」「テストを受けたくない」という学業面での理由が多く挙げられています。


  • 親に心配されるのが面倒なので話さない

中学生になると、親よりも友人とコミュニケーションをとることが楽しくなり、親に秘密にしたいことも増えてきます。親にいろいろと詮索されるのも面倒に感じて、部屋にこもったり、スマホやゲームに夢中になったり、家族といるときも無口になることがあります。


  • 部屋にこもってしまう

中学生になると、一人になってのんびりしたい、好きな音楽を聴いていたい、趣味に没頭したいといったように、家族や学校生活から離れて自由な時間を持つために、部屋にこもってしまうことがあります。また、悩みがあって、人と話したくない、何も考えたくないというときに部屋にこもってしまうこともあります。


  • 進路や部活、友人関係の悩みが深刻になる

中学生になると学業が中心になり、友だちとの話題も勉強や受験の話が多くなります。希望する進路に思うように進めない場合、葛藤が生じたり混乱したりすることがあります。

また、部活などで、特定の限られたメンバーと一緒に過ごすことが多くなり、友人間のトラブルがあると、深刻な悩みになりやすいです。


  • 起立性調節障害が出やすい

起立性調節障害は、体を起こしていると脳に回る血液や全身への血行が少なくなり、立ちくらみやめまい、動悸、失神、息切れ、体のだるさ、頭痛などの症状を起こし、朝起きられずに学校に行けなくなりやすい疾患です。午前中は不調でも午後には回復していることが多いので、怠けていると誤解されてしまうこともあります。

10歳から16歳の発症が多く、小学生の約5%、中学生の約10%に見られます。男女比は1:1.5~2の比率で、女子に多いといわれています(日本小児心身医学会)。

朝起きられない、めまい、だるさ(倦怠感)などの不調が続くようであれば、小児科などの医療機関で診断を受けることも必要です。

高校生の傾向

  • 学業や進路の悩みが深くなる

高校生は、中学校までの義務教育とは違って、単位取得や試験の成績によっては進級できないことがあり、学業についての悩みが深くなりやすい時期です。また、留年の心配などから、学校をゆっくり休むということが難しくなります。さらに、進学先や就職といった、一人で決めるのが難しい問題に多くの人が直面することになります。


  • 学校に行きたくない理由が複雑になる

高校生は、進路や進級に対する先が見えない不安だけでなく、人間関係や遊び方などが多様になるため、学校に行きたくない理由が複雑になります。

文部科学省(2021)の調査(※1)によると、高校生の不登校要因の割合は、「無気力・不安」が37.7%、「生活リズムの乱れ・あそび・非行」が15.4%、「いじめを除く友人関係をめぐる問題」が8.8%となっています。

無気力や不安になる原因は人により様々ですが、こころの不調を放っておくと長期化・重症化して、生活リズムが乱れたりひきこもりのような状態になったりする場合があります。

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「学校に行きたくない」ときの対処法は?

学校に行きたくないという気持ちのときもあって当然です。そんなときは、次のような方法を試してみましょう。


  • 信頼できる大人に伝える

こころや体の元気が無くて、なんだかとても疲れていると感じたら、思いきって周囲の信頼できる大人に伝えてみましょう。両親に言いにくいなら、おばあちゃんやおじいちゃんでもかまいません。

「学校に行きたくない気持ち」を親にわかってもらえるか、自信がないという方もいるでしょう。その際は、学校で担任の先生や保健室の先生、スクールカウンセラーなどの話しやすそうな人に、まずは今の辛い気持ちを伝えて、味方になってくれる大人をみつけましょう。

学校に行けないことで、友だちや周囲の人からの言葉に傷つくことがあるかもしれませんが、両親や部活の仲間、塾の先生など、自分が信頼できると思う人には理解してもらいたいところです。話を聞いてくれそうな大人や友人に、思いを伝えてみることで、少し心が軽くなるかもしれません。


  • 早退や遅刻もありと考える

登校する際、学校に長時間いないといけないと思うと、緊張したり嫌になったりするかもしれません。最初から最後まで学校にいようとするのではなく、例えば、「朝に具合が悪い場合は少し落ち着いてから遅刻して登校する」といったことも先生と相談しておけば問題ありません。また、「とりあえず登校してみて、ダメなら帰ってこよう」というのも一つの手段で、何とか登校できたけれど気分が悪くなってしまったというときは、早退することも可能です。


  • 保健室などの別室で過ごす

教室に入りたくないときは、担任の先生と相談して、保健室や心の教室(心の相談室)などで、教室にいることに悩みを抱えるほかの生徒と過ごすこともできます。勉強が苦手というわけでなくても、大人数のがやがやしたクラスが苦手なら、少人数の教室に希望を出すこともできます。


  • 家庭で学習する

学校の課題を後から取りに行ったり、先生や友だちに今日習ったところを確認したりして、学校に戻るのがおっくうにならないように、家庭で学習に取り組んでおきましょう。


  • のんびりと過ごす

親と相談して学校をお休みにしたら、課題などやるべきことはやることを条件として、そのほかの時間はのんびりと好きなことをして過ごしましょう。自分がリラックスできることは何かを考えてみましょう。


  • 放課後、友だちや先生に会ってみる

学校をお休みしてしまっても、午後から気分が落ち着いたら、友だちと遊んだり、お話したりするのもおすすめです。放課後に先生や友だちと連絡をとっておくと、休み明けに登校しやすくなります。


  • 体調不良が続くなら、病院でみてもらう

頻繁に具合が悪くなる場合は、心身の病気が隠れていることがあります。例えば、ストレスでおなかが痛くなる過敏性腸症候群や、朝起き上がったり体を起こしていたりすることが辛く困難になる起立性調節障害なども、学校へ行きたくない要因になっていることがあります。

このような症状がある場合は、医師と相談しながら治療を行い、学校にお休みする理由としての届けを出し、自宅できちんと休みましょう。

通信制高校・チャレンジスクール・高卒認定試験について

高校に行かないことによって、将来を不安に感じている人も多いと思います。実際に、就きたい職業で働くためや資格取得をするために学歴が必要になる場合もあるでしょう。

学歴の取得については、次のように全日制高校以外の選択肢もあることを知っておくと安心です。


  • 通信制高校

通信制高校は、学校教育法により「高等学校」と認められた学校で、基本的には家庭で学習を行い、年に数回スクーリングという学校から指定された会場で授業を受けることやレポート、テストにより単位を取得します。学ぶことは好きだけれど、集団生活が苦手な方や、体調が悪い日が多く通学に不安がある方に向いています。自由な時間を持ちやすいため、授業のほかに学びたいことがある人や、スポーツ選手で遠征が多い人も通信制高校を利用することがあります。

また、通信制高校には、サポート校というものがあります。サポート校は、学校教育法で「高等学校」と認められていない学校で、通信制高校の生徒が通学し、卒業までの単位取得などの支援を行なっている場所です。


  • チャレンジスクールなど

東京都をはじめとしたいくつかの自治体で、不登校などの何らかの事情により支援が必要な方向けの定時制の高校の設置をしています。チャレンジスクールやクリエイティブスクールといった名称があり、カウンセリング体制の充実、科目の選択肢が多いこと、授業時間の短縮、特定の技術の習得など、学校によって様々な特色があります。


  • 高卒認定試験

高卒認定試験(高等学校卒業程度認定試験)は、高校卒業と同程度の能力があることを証明する資格のことで、高校を卒業していなくても大学や専門学校の受験ができるようになります。最終学歴が高卒以上であることを採用条件とする企業への入社の道も開けますが、大学や専門学校に進学しない場合は、最終学歴は「中卒(高卒認定有)」になりますので注意が必要です。

「学校に行きたくない」と言われたときの親の対応

子どもから学校に行きたくないと言われたりしたときには、慌てずに以下のような対応をしてみましょう。


  • 心身の不調は医師の診察を受ける

お子さんから頭痛や腹痛の訴えがあったり、朝起こすととても辛そうに見えたりといったように、身体症状が繰り返されるようでしたら、医師の診察を受けることも必要です。ストレスによる過敏性腸症候群や起立性調節障害などを抱えているかもしれません。診断がつけば、今後の対応を考えたり学校に説明したりしやすくなり、お子さんは心置きなくゆっくりと休むことができます。


  • 子どもの話に耳を傾ける

お子さんから「学校に行きたくない」と言われたら、「どうして?」と問いたくなりますが、本人も理由が分からないことが少なくありません。「話してもどうせ分かってもらえない」と感じて一人で悩んでいることも多いため、理由を無理に問い詰めるのではなく、まずはお子さんの話に耳を傾けましょう。


  • 子どもの希望を聞く

体調が悪い、泣いている、起きてこないといった場合に、お子さんを無理に登校させることは難しいです。そんなときは、お子さんに「どうしたいのか?」を聞いてみましょう。

例えば、「体調が悪いからひとまず休んで、落ち着いたら遅れて登校する」「とりあえず登校してみて、無理だったら早退する」といったように、お子さんの状況や希望に合わせて臨機応変に対応するのがよいです。「登校しないといけない」「登校したらずっと学校にいてほしい」といった親の希望を押し付けると、お子さんの登校へのハードルが上がってしまいます。


  • 子どものストレスを取り除く

特に小学校低学年ぐらいのお子さんは、嫌なことやストレスに感じていることを取り除くだけで、スムーズに登校できる場合があります。例えば、集団登校が苦手なお子さんには、校門まで親が付き沿ったり、発表が嫌いなお子さんには、先生に相談して発表は外してもらったりするといいでしょう。親が「嫌なことから逃げてはだめだ」と考えて、お子さんを追い詰めるようにしても逆効果になることが多いです。


  • 学校の先生やカウンセラーに相談する

「授業がつまらない」などといった不満をお子さんが抱えているときは、学習のつまずきをチェックしたり学習の遅れを補ったりする方法を、担任の先生やカウンセラー、塾の先生などと相談して、今後の学習の見通しを立てましょう。お子さんがどのような環境であれば学習できるのか、どのような進路であれば頑張れるのかを、第三者を交えながらよく話し合いましょう。


  • 他人の意見に振り回されない

不登校や登校しぶりについては、様々な意見を言う人がいますし、「これが正解」といえる方法はありません。お子さん自身がどうしたいか、何をどのような方法で学んで将来に生かしたいか、という気持ちと向き合うことが大事です。世間の人が憧れるような進路に進むことが必ずしも幸せになる道ではありませんので、人生を長い目で見て、将来お子さんが何をしたいのか、どうやって生きていきたいのかを一緒に考えることも必要です。


  • 社会資源や支援サービスを利用する

高校生の場合は、前述した通信制高校や自治体のチャレンジスクール、高卒認定試験などを利用する方法があります。小中学生の義務教育段階では、自治体の教育支援センターや民間のフリースクールなどの利用が可能です。


・教育支援センター(適応指導教室)

教育支援センターは、不登校児童に対する指導のために教育委員会が設置した場所です。学校生活への復帰を目指して、在籍する学校と連携を取りながら、カウンセリングや集団指導、学習支援を行います。自治体に届けを出すことで、教育支援センターに通った日は登校扱いとなります。


・フリースクール

フリースクールは、何らかの事情で学校に通えない小中学生のための、学びや体験、友だちとの交流ができる場所です。学校のように決まったカリキュラムや入学資格はありません。

2016年「教育機会確保法」により、フリースクールの重要性について示され、在籍する学校が認めればフリースクールに登校した日は出席扱いになります。


日本財団(2018)の調査(※2)で、不登校または不登校傾向にある現中学生や卒業生が学びたいと思える場所として挙げた環境に、「自分の好きなことを突き詰めることができる」「自分の学習のペースに合った手助けがある」という回答が多くみられました。本人が希望する学習方法が選べれば、学校への不安も少なくなると思われます。


また、学校に行けなくても塾や習い事には行けたり、家庭教師に来てもらったり、タブレット学習なら可能だったりするお子さんも多く、学習方法の選択肢は様々です。学校へ復帰しやすくするために、オンラインで先生とやりとりする方法や、授業外で課題を取りに行ったり提出したりする方法が取れないかを学校と相談してみるのもよいでしょう。


  • 感覚過敏や発達障害の可能性も

お子さんの特性として感覚過敏や発達障害などが隠れている場合に、本人が努力をしてもなかなかクラスに適応しにくいことがあります。感覚過敏や発達障害は生まれ持った特性であり、それ自体を治すことはできませんが、環境調整や周囲の人たちのかかわり方により、お子さんのストレスは軽減されることが多いです。


・感覚過敏

聴覚、視覚、触覚、嗅覚、味覚といった感覚が敏感で、刺激が苦痛に感じられるため、恐怖や苦手意識を強く持ってしまう生まれつきの特性を感覚過敏といいます。

感覚過敏を持つお子さんについて、例えば、雑音がうるさく感じるために教室で授業を受けるのが苦手であれば、イヤーマフの使用許可をもらったり、特別支援教室などの少人数の教室で対応してもらったりして、苦手な部分をカバーすることができます。


・発達障害

発達障害は、脳機能が異なることにより日常生活に困難を抱えやすくなる生まれつきの特性を指し、感覚過敏を併せ持つこともあります。

発達障害の代表的なものに、ASD(自閉スペクトラム症)ADHD(注意欠如・多動症)SLD(限局性学習症)などがあります。

例えば、ASDのお子さんはマイペースな傾向があり、集団行動に適応できないことがあります。また、一つのことに集中しすぎてしまいやすい傾向があり、活動の切り替えがうまくできないため、学校での生活を苦痛に感じることがあります。

ADHDのお子さんは、落ち着きがなくそわそわしたり、忘れ物をしたり、余計な発言で授業を遮ったり、一斉指示が通らなかったりするので、先生に怒られることが多いです。座ってじっと先生の話を聞かないといけなかったり、怒られることが多かったりするような状況があと何年も続くと思うと、とても憂うつな気分になってしまうことがあります。

特定の学習が苦手なSLDのお子さんは、学校や勉強に苦手意識をもってしまうことがあります。計算機や音声読み上げ機能を使用するなどの工夫により、学習がしやすくなるので、特別支援教室などで個別の配慮を受けることで、学校でのストレスを減らすことができます。

このような配慮の必要性を感じた場合は、地域の保健センターや都道府県の発達障害支援センターなどで、発達障害を診断できる医療機関を紹介してもらい、診断を受けておくと、その後の教育方法や支援、進路などを考えるときの参考になります。

おわりに

「学校に行きたくない」という気持ちの整理や今後の対応について、親子で理解が深まれば幸いです。「これをすれば解決する」という即効性のある方法はありませんが、ゆっくり心身を休ませることや、話を聞いてくれる人の存在は大事です。焦らず、できることから試してみてください。

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<参考文献>

(※1)文部科学省(2021)令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について, https://www.mext.go.jp/content/20211007-mxt_jidou01-100002753_1.pdf(2021-11-25参照)
(※2)日本財団(2018)不登校傾向にある子どもの実態調査, https://www.nippon-foundation.or.jp/app/uploads/2019/01/new_inf_201811212_01.pdf(2021-11-25参照)
文部科学省(2019)「教育支援センター(適応指導教室)に関する実態調査」結果, https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2019/05/20/1416689_002.pdf(2021-11-25参照)
子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題:文部科学省, https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/053/gaiyou/attach/1286156.htm(2021-11-25参照)
一般社団法人 小児心身医学会 | (1)起立性調節障害(OD), https://www.jisinsin.jp/general/detail/detail_01/(2021-11-25参照)
学校行かないとダメですか? - Yahoo!ニュース, https://news.yahoo.co.jp/special/nonschool/(2021-11-25参照)
フリースクール・不登校に対する取組|『3月のライオン』×文部科学省 コラボレーションページ, https://www.mext.go.jp/march_lion/torikumi_futoukou.htm(2021-11-25参照)
腹痛・下痢・便秘が続く原因はストレス?「過敏性腸症候群」とは | NHK健康チャンネル, https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_39.html(2021-11-25参照)
このコラムを書いた人
精神保健福祉士・社会福祉士
救急病院の医療ソーシャルワーカーとして、うつに悩む方や、不登校・長期の引きこもり、障害のあるお子さんの悩みなど、様々なケースに出会い、早期に専門職が関わる必要性を感じてきた。子育てやモラハラなどの家庭内の問題など、様々なお悩みの相談に携わっている。
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