新型うつ病という病気を聞いたことはありますか?テレビやインターネットでは、「仕事には行けないけれど、遊びには行くことができる」という甘えの病気だと言われることもあり、精神的な不調を感じたことのない方にはとても理解されにくい病気です。ここでは、新型うつ病について理解を深められるように解説していきます。
目次
- 新型うつ病とは?
- おわりに
新型うつ病とは、特定の環境下でうつ症状を表す病気です。よく言われているのが、職場ではうつの症状が現れ、それ以外では症状を感じないというものです。うつの症状とは「職場にいると死にたいほどつらい」「職場にいると意味もなく涙が出る」という気持ちの辛さや集中力がなくなりミスが多くなる状態があげられます。
精神的な不調があるので、自分自身では「うつ病だ」と感じるのですが、従来のうつ病と同じような診断がされにくい病気です。また、新型うつ病は背景に発達障害やストレス耐性の低さなどの要因があるとされています。
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世間一般にうつ病と知られている状態と新型うつは、特徴によって以下の呼び方で分類されます。
① メランコリー親和型うつ病
世間一般にうつ病として知られているものがメランコリー親和型と呼ばれるうつ病です。ドイツの精神科医テレンバッハは、うつ病になりやすい性格傾向としてメランコリー親和型性格を挙げています。メランコリー親和型の性格には以下のような特徴があります。
・秩序やルールに忠実である
・非常に献身的である
・まじめで仕事熱心である
・責任感が強い
このような特徴を持った人は、社会的な役割に自分を合わせていくことで生活しており、自分の意志よりも秩序によって自分自身を保つ傾向にあります。任されている役割が脅かされるような環境の変化があるとうつ症状を表しやすいとされています。
② ディスチミア親和型うつ病
いわゆる新型うつ病はディスチミア親和型うつ病と呼ばれます。20~30代の若者に多く、以下のような性格特徴があげられます。
・社会の秩序やルールに否定的であり、ルールを守ることにストレスを感じる
・仕事への熱意はなく、逃避的
・他人を責めやすい
・治療に積極的である
会社のルールに従うこと自体が強いストレスであり、人間関係に敏感な傾向にあります。
また、傷つきやすい人が新型うつになりやすい傾向にあり、自己愛が強いことも特徴の一つです。
従来型のうつ病と新型うつ病は症状にも違いがあります。
うつ病の特徴は、抑うつ気分や焦燥感、消えてなくなりたいといった気持ちになることなどが挙げられますが、新型うつ病は、典型的なうつ病とは少し異なる症状があります。
会社で注意を受けたことや傷つくことがあったときに、それを思い出すだけで食欲がわかなくなったり、会社へ足が向かなくなったりと特定の環境に強い拒否反応がみられます。
一方で、辛い環境から離れたところでは気分が戻りやすく、けろっと元気になることがあります。趣味やプライベートの時間は楽しむことができ、余力を持つことができます。
周囲からは理解されにくいですが、本人にとってはとても辛い状況なのです。
例えば、「上司に叱責された翌日から会社に行こうとするとひどい頭痛が現れるけれども、会社を休む連絡をすると途端に状態が良くなる」「吐き気や頭痛が治まらないため、休職することにしたら旅行に行きたくなる」など、辛い環境に対して症状は存在するもののストレスを避けることができると途端に軽快するという特徴があります。
新型うつ病という言葉が生まれてから、10数年が経過しました。新しい精神疾患が生まれるときはいつも、ストレスとなる環境、時代的背景があります。臨床的な研究では、新型うつ病の青年たちは「やみ切れなさ」「症状の出せなさ」があると表現されています。生まれたときから個性を求められ、学習制度の多様化によりストレスを我慢してまで学校に適応する必要のなかった彼らは、「自分らしく生きればいいんだ」という自信と自己愛を持っています。一方でSNSの普及により他人と自分を比較せざるを得ない状況に晒されており、「みんなと同じライフステージにいなければ」という気持ちも強く持っているのです。
働き方も自由化が進んでいる昨今ですが、ひとたび企業に入れば同世代の人ばかりではありません。また利益を上げていくためには、自分の考えに沿わないこともしていく必要があるでしょう。新型うつ病になりやすい若い世代の人には、そういったことだけでも強いストレスとなります。考えの合わない上司とうまくやっていかなければならなかったり、個人の意見とは異なる結論を出さなければならなかったりするとうまく適応できない状態に陥ってしまいます。
新型うつ病の治療は従来型のうつ病とは異なります。セロトニンの分泌量が減少するという従来型うつ病の原因と、ストレス反応である新型うつ病は要因が全く異なるためです。新型うつ病の治療は以下のような方法があります。
① 規則正しい生活をする
精神疾患は、生活リズムを整えることが必要です。脳内物質の分泌が整えられ、生活にメリハリもつけられるためです。新型うつ病では、過眠や過食など生活習慣が乱れやすく、またそれによって症状が悪化する傾向にあります。おおまかに「規則正しい生活をしよう」と心がけるよりも、具体的な生活スケジュールを決めるとよいでしょう。
「朝は7時に起きる」「毎日必ず10分以上散歩に行く」など、なるべく細かく決めることがポイントです。新型うつ病の人は「少しくらいできなくてもいいか」と考えてしまいがちなので、より細かくルール化した目標のほうがわかりやすいためです。支援者や家族と一緒に達成度を確認し、ルールに無理がないかを定期的に振り返ることも重要です。
② 適度な負荷をかける
従来型のうつ病治療では、当事者にがんばらせず休息してもらうことを前提にしていました。新型うつ病の治療でも、ストレスから離れて休息をとることは必要です。しかし、適度にがんばることも大切です。会社の中でなかなか役割ややりがいを見いだせず、がんばりきれない状態から、目的を持って仕事を楽しめるようになると会社をストレスに感じることも少なくなるでしょう。
③ カウンセリングなどの精神療法
新型うつ病の治療では、薬物療法よりもカウンセリングなどの精神療法が中心となります。カウンセラーと話す中で、自分の辛さの原因や問題の核心などに気づき、自然と症状の原因を解決できるようになります。
心療内科やカウンセリングルームに通いにくいという場合、オンラインカウンセリングも一つの選択肢として考えてみてください。うららか相談室では、メッセージやオンラインカウンセリングを通してストレスの原因に気づくきっかけを得られます。気になることがあればぜひお気軽にご相談ください。
うららか相談室では、臨床心理士などの専門家を選び、メッセージ・ビデオ・電話・対面形式のカウンセリングを受けることができます。
匿名で相談ができるため、家族や友人に知られることなく、安心して相談していただくことが可能です。
新型うつ病は作られた言葉であり、新しい概念です。詐病と思われたり甘えと言われたりすることもありますが、本人の辛さは本物です。相談や治療によって現実的に課題を解決していけるとよいですね。
(参考文献)
臨床援助の視点からみた「新型うつ病」と「現代型不登校」 大石英史 2012
非定型うつ病を克服するために有効な4つの治療法 せせらぎメンタルクリニック http://seseragi-mentalclinic.com/atypical-depression-treat/(参照:2020-07-08)
うつ病を知る うつ病サプリ http://www.utsu-s.jp/understand/symptom/new-type/(参照:2020-07-08)