ノイローゼという病名を聞いたことがありますか?「育児ノイローゼ」という言葉があったり、ゲーテやゴッホなど芸術家がノイローゼだったという話があったり、昔から存在した病気というイメージがあるかと思います。ストレスが溜まったり精神的に辛くなったりすると「あれ?もしかしてノイローゼ?」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。ここではノイローゼとその対処法について解説を行います。
目次
- ノイローゼの特徴
- ノイローゼの種類
- うつ病との違い
- ノイローゼの原因
まず、ノイローゼとはドイツ語で神経症という意味です。昔は精神疾患の名前としてよく用いられていましたが、範囲がやや広すぎたため、今ではあまり使われません。一方で精神的な不調全般に対して、一般的にノイローゼという呼び方が使われています。育児ノイローゼに代表されるように、強いストレスに対する不安やイライラ感に対してはノイローゼと表現されることが多いようです。
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前述のとおり、ノイローゼとは正式な病名ではありません。しかし、広く浸透している言葉であり、自分自身をノイローゼだと感じる人も多いようです。ノイローゼの特徴は以下のようなものです。
①イライラする・怒りっぽい
②気分が落ち込む
③不安が強い
④小さなことに思い悩んでしまう
⑤ストレスで胸がつぶれそうな思いである
ノイローゼの代表的な症状は強い不安感とイライラ感です。受験ノイローゼでは「志望校に合格できるだろうか」という不安に対処しきれなくなり、不眠や動悸など生活に支障が出るほどの症状があらわれるといいます。悩み事や不安は誰でも抱くものですが、受験や育児などではゴールにたどり着くまで常に不安に対処し続けなければなりません。適度に気を抜くことができないと病的な状態になってしまうのです。
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WHOによると、ノイローゼは8つの種類に分けられます。
①不安障害
前述の受験ノイローゼなど、先のことへの不安に適切な対処をできない状態が続いた結果に起きる障害です。人は不安を抱えたまま日々を過ごしていると、徐々に心身に不調があらわれます。不安が続くことでイライラし、集中力がなくなったり動悸がしたりします。
②強迫性障害
出かけるときに鍵をかけたか、ガスの元栓を閉めたかなどが気になり何度も確認してしまうような状態を指します。何度確認しても心配になり、無意味な確認を何度も続けてしまいます。一日中そればかりが気になって他のことが手につかないこともあります。
③恐怖神経症
特定の対象に対する恐怖感が生じる状態のことです。「先端恐怖症」「高所恐怖症」「ピエロ恐怖症」「不潔恐怖症」などがあり、恐怖対象の前では硬直して身動きが取れなくなってしまいます。
④ヒステリー神経症
心の葛藤や強い欲求が身体的な症状になってあらわれます。家族や友人の前で気を失ったり手足が動かなくなったりと目に見えてわかりやすい症状が起きやすいです。本来向き合うべき、心の葛藤が身体症状に置き換わり、周囲の人に心配してもらうことができるので、人前では症状が強くなることもあります。同じような症状があっても、本人にとって利点がなければヒステリー神経症とは呼びません。
⑤心気症
「自分は病気なのではないか」という疑いが強く、病院で何度も検査をしても異常が見つからないと納得がいかないという症状があります。
⑥抑うつ神経症
いつもぐずぐずしていて、行動を起こさない、うつ状態が続くという状態を指します。うつ状態になる点ではうつ病に近く感じられますが、他者に対するイライラと、不眠や不安を訴える傾向がみられます。神経質な性格の高齢者によくみられます。
⑦離人症
自分に起きていることに実感を持てず、体と心が分離しているような感覚が起こります。
⑧その他
神経症の症状はさまざまですが、ほとんどが上記の7種類に当てはまります。心配事や恐怖感などにとらわれてしまうという点が共通しています。
一昔前は、精神疾患の代表的表現であったノイローゼですが、いわゆるうつ病とは異なります。どのような点が異なるかというと、全体的な抑うつ感や気分の変動、抗うつ剤が有効であるかなどの細かな点になります。
ノイローゼとうつ病の特徴は以下のようにまとめられます。
・うつ病
顔つきが暗くなり、食欲低下によって1ヵ月に5~10kg程度の体重変動がみられる。不眠がみられ、眠りについても朝まで眠れずに早朝覚醒してしまう。希死念慮が強く、自殺を企てることも多い。治療には主に抗うつ薬が用いられる。
・ノイローゼ
辛さの訴えは多いが、ハキハキして元気がよくみえる。食欲のなさを訴えることもあるが、体重の減少はあまりみられない。不眠になると一晩中寝付けないようなこともある。自殺をほのめかすことがあるが、実行にはためらう。治療は主に精神療法(カウンセリングなど)が有効である。
ノイローゼの原因は大きな環境の変化や強いストレスに適応しきれず、心のバランスを崩してしまうことにあります。環境への適応力やストレス耐性には個人差があり、大きな変化があっても乗り切れる人もいます。人生のうちで大きな変化が度々訪れる人もいれば、あまり環境が変わらない状態で生涯を終える人もいます。結婚や出産、介護など大きなライフイベントがあるときは、辛いときに助けを求められる存在が必要です。
ノイローゼのなりやすさには環境への適応力の他にも性格や環境的な要因があります。普段の自分はどうか、振り返って見ましょう。
①まじめで完璧主義
完璧主義の人は環境が変わって、少しでも思い通りに物事を進められないことに強いストレスを感じます。例えば育児などでは、子どもにも自我や性格があり自分の思う通りに進まないことが増えます。自分ひとりの管理とは状況が異なるため、適応しきれなくなってしまうのです。
②周囲にサポートしてくれる人がいない
完璧主義と重なりますが、思うように物事を進めるにもひとりでは限界があります。サポートがあれば環境が変化していく中でも、こだわりのある部分には集中する余裕を持てますが、周囲にサポートしてくれる人がいないと、やりたいことが十分にできず、ストレスが溜まっていってしまいます。
③弱い自分を周りに見せることができず、相談が苦手
ノイローゼになるきっかけには、他の人の考えや客観的な見方を得られずに不安が募ってしまう状況があげられます。人に相談することは、状況の整理やストレスの解消に役立ちますが、ひとりで問題を抱え込むと思い詰めることが多くなってしまいます。
④ストレス解消が苦手
たまったストレスをうまく解消できると、「また明日からがんばろう」という活力が生まれますが、上手に解消ができないと、新たなストレスが積み重なり、悪循環にはまってしまいます。適度に問題から離れることで視野が狭まることや極端なこだわりから抜け出すきっかけもできるため、ストレスをうまくコントロールすることが大切です。
いかがでしょうか。当てはまる特徴はありますか?ほとんど当てはまると感じる方は、もう少し肩の力を抜いて、思いつめる傾向を減らしていけるとよいですね。
ノイローゼは、その他の精神疾患と異なりきっかけがはっきりしています。ストレスの発散や考え方に柔軟性をもたせていくことが必要になるため、精神療法が有効です。精神療法には「精神分析」「認知行動療法」「自律訓練法」「カウンセリング」などの種類があり、環境に適応できない原因を整理したり心を落ち着ける方法を見つけたりするものです。ノイローゼの治療は精神療法を中心に薬物療法を補助的に用いることが多いです。
悩みごとや気になることをひとりで抱え込まず、相談する相手を持つことはノイローゼの予防にもつながります。
うららか相談室には心理カウンセリングの専門カウンセラーも多数在籍しています。精神科の受診前やカウンセリングの導入を考えたとき、気軽に相談できる場所になればよいと思っています。
ノイローゼは昔から存在する神経症状です。いつの時代の人も環境の変化やライフステージの変化に悩んできました。よい相談相手を持ち、ひとりで抱え込まないようにしていけるとよいですね。