心理的なストレスが身体の症状として表れることはしばしばあり、吐き気もその主要な症状のひとつです。吐き気やムカムカした不快感のせいで、外出を控えるなど日常生活に支障や制限が出て困った経験がある方も少なくないのではないでしょうか。
今回は、ストレスが原因の吐き気について、その対処法や予防法などとともにお伝えしていきます。
目次
- おわりに
ストレスと吐き気にはどのような因果関係があるのでしょうか。人の心身状態には様々な要因が同時に影響を及ぼすことも多々あるので、吐き気の原因をひとつに断定することは簡単ではありませんが、考えられる因果関係について見ていきましょう。
・身体的な病気が原因の吐き気
急性胃炎・慢性胃炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、逆流性食道炎など、胃腸などの消化器系の病気によって吐き気が起こることもあります。また、偏頭痛やめまいに伴う吐き気、緑内障からくる吐き気など、消化器以外の身体部位による吐き気もあります。
消化器はストレスと関連の深い自律神経の影響を大きく受ける器官であり、ストレスが上記の病気の要因となることもあるため、身体的な病気とストレスが原因の吐き気とを明確に区別しきれないところもあります。
消化器内科など身体科を受診して病気と診断されたら治療をし、その病気が治ってからも吐き気が続くようなら、ストレスが原因と考えられます。
・心因性嘔吐や機能性ディスペプシアというケースも
身体的な異常がないにもかかわらず、ストレスが原因と思われる吐き気や嘔吐が続く場合は、心因性嘔吐や機能性ディスペプシアと診断されることもあります。
心因性嘔吐は子どもにも多く見られるもので、ストレスをうまく認識したり対処したりする能力が十分ではないため、嘔吐という身体症状に現れると考えられています。ストレスを感じる場面で嘔吐が見られ、ストレスから離れれば治まることが多いです。
機能性ディスペプシアは、吐き気や胃もたれ、胃痛などがあるけれど、検査をしてもその説明になるほどの異常が見つからない場合に診断され得る病気です。不規則な食生活やアルコールなどと並んでストレスも原因のひとつとされています。
・ストレスが吐き気に繋がる要因
身体的な病変がないのにストレスで吐き気が出るのは、主に自律神経の不調が要因となっていると考えられます。
また、ストレスから食べ過ぎてしまう、あるいは食欲がなく食べられない、アルコールや喫煙の量が増えるなど、生活習慣から胃腸に負担がかかり吐き気が出てくるということもあり得ます。
いずれにしても、ストレスが原因と判断するには身体的な所見がないことが前提となりますので、朝だけ胃がむかむかする程度など、病院に行くほどではないと感じられる吐き気でも、念のため受診して身体的に異常がないか確認することをおすすめします。
ストレスが原因だと思われる吐き気には、どのような対処法があるのか見ていきましょう。
・ストレスから離れる
可能であれば、ストレス源から離れるのがもっとも効果的な対処法です。
仕事や学校がストレスなのであれば少しお休みしたり、配置転換などで環境を変えたりできるといいですね。それが難しい場合でも、最も大きなストレス要因を見つけ出し、そこにとどまる時間を少しでも短くするなどの工夫をしてみて、その間に別の対処法を身につけるのも一手段です。
・食事や睡眠など生活習慣を整える
暴飲暴食が吐き気の要因になっていることもあるので、消化の良い食事に切り替えましょう。カフェインやアルコール、タバコの摂りすぎは吐き気を悪化させてしまうおそれがありますので、控えめにすると良いでしょう。
また、充分な睡眠は自律神経の働きを整え、吐き気の改善にもつながります。たっぷり睡眠をとって生活習慣を整えることも、ストレスからくる吐き気を軽減するための大切な対策です。
・白湯やお茶などで口を潤す
口の渇きは吐き気を引き起こすことがあります。白湯や麦茶、ルイボスティーなどカフェインの含まれない水分を補給して口を潤すのも、すぐにできる対処法のひとつです。
・リラックスできるアイテムを常備しておく
吐き気をもよおしたときにすぐできる対策として、たとえば好きな香りのハンドクリームや見ると安心できる写真など、自分をリラックスさせることができるアイテムを使うのもおすすめです。
・医師の診察を受け治療をする
ストレスが原因であっても、吐き気が強くて生活に支障が出るようならば、心療内科などを受診して治療をするのもひとつの手です。
医師の判断やご本人の意向によっては服薬治療が選択されることもありますので、その場合は医師の指示通り薬を飲むのも大切な吐き気対策となります。
カウンセリングを通じて、自身の内面とじっくり向き合ってみませんか?
うららか相談室では、あなたの「変わりたい」という気持ちを、臨床心理士などの専門家がしっかりとサポートさせていただきます。
そもそもストレスをためないようにすることは、ストレスによる吐き気を治す根本的な対応にもなり得ます。ストレスをためないための習慣づくりについてお伝えします。
・意識的に睡眠をとり生活を整える
ごく当たり前のことではありますが、よく眠りバランスの良い食事をとるなど生活を整えるのは、ストレスを軽減するための大切な習慣です。
睡眠には感情の調整という効果もあるため、充分な睡眠を習慣にすることで、ストレスを感じてもため込みにくくなることも期待できます。
・自分のストレスについて理解を深め、対処法を探る
同じ状況にいても、平気な人もいればストレスをためてしまう人もいるように、何をストレスと感じるかは人によって異なります。自分がストレスを感じがちな場面やパターンを把握することが、対処法を探る前提となります。
ストレスがたまったと感じた状況や言葉などを書き出してみて、どんなことが自分のストレスになるか振り返り、それに対してどんな対処ができそうか考えてみるのも効果的な方法です。
早めに休む、人に相談する、好きなことをする時間を取るなど、行動面でできることもありますし、ストレスのたまる捉え方からもう少し楽な受け止め方に変えられないか考えてみるなど、現実は変えられなくても感じるストレスを軽減できる方法もあります。
・カウンセリングでできること
ストレスをためないようにするためにどうしたらいいのか、自分だけで考えていてもうまくいかない場合は、カウンセラーに相談するのも良いでしょう。
カウンセリングでは、否定されたり誰かに秘密が漏れたりという心配をすることなく、ただストレスに関することを思い切り話せるだけでも、安心感が得られることも期待できます。
また、ストレスへの具体的な対処法についてカウンセラーと話し合うことで、自分では思いつくことが難しかった対策が見つかる可能性もあります。やってみてうまくいかなかったときも、ではどうしたらいいのかということをまたカウンセラーと相談し合っていくことができます。
さらに、認知行動療法など、より実践的にストレス場面への捉え方を楽なものにしていく方法をカウンセラーと一緒に試すことも可能です。
吐き気は実際に嘔吐がない場合でも、外出や楽しみの機会の喪失や減少に直結するような、とてもしんどい症状と言えます。まずは病気や身体的な異常がないか確認することが大切ですが、ストレスが原因だと分かったら、相応の対処をしていけるといいですよね。
ストレス自体を軽減する方法と、ストレスの捉え方を変えて体感的に楽になる方法とに大別されるかと思いますが、ご自分で取り組んでみて難しいと感じたら気軽にカウンセリングを検討してみてはいかがでしょうか。