受援力とは、困ったときに助けを求めることができる力です。
人はお互いに助け合いながら生きていく社会的な生き物ですが、日本では核家族化などによっていつの間にか「困ったときに助け合う」ことが少なくなってしまいました。
結果として、ブラック企業に入ってしまい、苦しんでいる人、貧困に陥り、明日の食べ物にも困っている人、親の介護で、精神的に追い詰められている人などが「助けてほしい」と他人に声を上げることができず、最悪の場合自殺に追いやられてしまうこともあります。
特に男性は、助けを求めることが苦手な傾向があります。それは昔ながらのジェンダー観で「男なら泣くな」「男なら音を上げるな」という我慢が美徳とされた考え方が浸透しているためだとも言われています。
また、日本の福祉制度は「申請主義」であるために、助けてくれる制度があってもその存在を知らなかったり、申請方法を知らなかったり、自分の困っている状況を申請窓口でしっかりと伝えられなかったために追い返されてしまったりすることがあります。
困った時に助けを求める力、受援力は、これから生きていく若い人たちにとって必要不可欠な力です。
では、親として、子どもの受援力を高めるために、どんなことができるでしょうか。
臨床心理士とは・・・
悩みを抱える人との対話をベースに、精神分析や心理療法を使って問題の解決をサポートする「こころの専門家」です。
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1. 申請主義を家庭の中に取り入れる
日本の福祉制度は「申請主義」です。申請がなければ助けてもらうことはできません。必要な時に、必要な制度を「申請」することができるようになるには、情報収集力を日ごろから鍛え、申請主義が当たり前だと教えることが大切です。
例えば、我が家では小学生の息子にお小遣いを渡していますが、月初めに「お小遣い請求書」という紙を渡して、毎日の家事のお手伝いやテストで100点を取った日などを請求書に書かせて、月末に清算し、「〇月分のお小遣いとして〇〇円請求します。」という形で親に「申請」をしなければお小遣いは渡さないようにしています。当然ですが、お小遣い請求書の書面自体も「請求書をください」と申請がなければ渡しません。
この方法を始めてから数か月は、請求書をもらい忘れたり、なくしたり、書き忘れたりしてお小遣いがもらえない月がありましたが、今ではそれにも慣れて、きちんと自分で「申請」ができるようになりました。
また、学用品などの必需品の補充についても、自分で管理をして「備品購入申請書」を出されなければ買わないようにしています。これも、慣れるまで1年かかりましたが、今ではしっかりと自分で管理し、「申請」ができるようになりました。
このように、「申請主義」を日常に取り入れることで、援助を受ける際には必ず申請が伴うということを教えることができます。
2. 何でも相談できる関係性づくり
子どもが困ったときには、相談してほしいと思うのが親心です。しかし、なるべく親に心配をかけまいと思うのが子心でもあります。
そこで心がけたいのが、子どものことをいったんすべて受け入れることです。子どもが何かに失敗したときは、まずそれを伝えてくれたことを感謝するとともに、子どもが心身に傷を負っていないかを確認します。「伝えてくれたことを感謝する」というのは、意識していないとなかなかできないことですが、とても大切なことです。
まずは「教えてくれてありがとう」そして「大変だったよね、つらい気持ちになっていない?」と確認し、「そんなことがあったのなら、つらくなって当たり前だよ」と子どもの気持ちに寄り添って、抱きしめてあげてください。「何があっても、あなたの味方だよ」という姿勢を示すことで、「困ったら、まず相談しよう」という気持ちをはぐくむことができます。
3. 社会の中にある「助けを求められる場所」を教える
学校からのおたよりで「教育相談」や「心の相談」窓口のお知らせを受け取った時は、子どもに「誰のための相談窓口」なのか、「どんな相談にのってくれる」のかを説明しましょう。子どもたちは「親に渡す手紙」という気持ちで、もらったお便りをよく読んでいない可能性があります。最近では学校にスクールソーシャルワーカーが設置されていることも多いので、そういった人が何のためにいるのかを伝えることも大切です。いざ何かあった時にどこに相談したらいいのかを、親子で話し合ってまとめるのもいいかもしれません。また、近所の「子ども110番の家」を一緒に散歩しながら確認しておくのもよいでしょう。
公的機関の相談は「対象になる相手か」「対象になる内容か」を判定し、対象にならなかった場合は別の窓口を案内される、いわゆる「たらい回し」が起こる場合もあります。
そうなってしまうと、「せっかく勇気を出したのに、相談するんじゃなかった」と感じてしまうかもしれません。
しかし、カウンセリングの場合は必ず相談者のお話を丁寧におたずねし、適切な公的窓口のご案内をすることもできますし、問題解決のためにカウンセラーが一緒に考えることもできます。
困った時の最初の窓口としてカウンセリングを選ぶことは、その後どうしたら良いのかも含めて制度や機関の垣根を超えた相談ができるので、身近な「助けを求められる場所」なのです。
うららか相談室のオンラインカウンセリングでは、電話やメールなど、様々な方法でカウンセリングを受けることができるので、困ったときにはぜひご利用いただければと思います。