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  1. 産後クライシスとは?夫との離婚を後悔しないための乗り越え方

産後クライシスとは?夫との離婚を後悔しないための乗り越え方

子どもが生まれても幸せな家庭でいたい、良好な夫婦関係でいたいというのは、多くの人が望むことでしょう。しかし一方で、産後の慣れない育児や家事、さらには仕事とのバランスに悩む女性が、「もっと夫が家事を手伝ってくれたらいいのに」「子育てで睡眠も十分にとれないのに旦那に分かってもらえない」といったように負担感や不満をため込み、夫への愛情が急激に冷めていくことは少なくありません。

育児や家事について「自分だけが我慢すれば何とかなる」と考える人も多いですが、子育ては夫婦の課題であり、母親だけに負担を押し付けることが現在の社会問題になっています。

この記事では、産後クライシスの原因や乗り越え方について解説していきます。

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産後クライシスのカウンセリング

目次

産後クライシスとは

産後うつ病の症状との違いは?

産後クライシスのチェックリスト

産後クライシスの原因

産後クライシスになりやすい人は?

産後クライシスの乗り越え方

夫との離婚を後悔しないために考えたいこと

産後クライシスとは


産後クライシスとは、子どもの出産をきっかけに、夫婦仲が急激に悪化し、夫婦関係の危機に陥ることです。

ベネッセ次世代育成研究所の調査(※1)によると、妊娠期には74.3%の女性が「配偶者といると本当に愛していると実感する」と回答していますが、出産後の0歳児期では45.5%、1歳児期では34.8%、2歳児期では34.0%といったように回答の割合が下がり続けています。また、男性側の同回答は、妻の妊娠期には74.3%、2歳児期には55.2%と、女性側に比べると緩やかに下がっています。

また、厚生労働省の調査(※2)によると、離婚によって母子家庭になった末子の年齢のうち、0~2歳が全年齢の39.6%を占め、ほかの年齢に比べて突出しています。

このようなデータは、産後クライシスに悩む夫婦が珍しくないことや、子どもが2歳までの手がかかる時期に離婚しやすいことを示しているといえるでしょう。

産後うつ病との症状との違いは?

「産後クライシス」と混同されやすい言葉に「産後うつ病」があります。

産後うつ病は、気分の落ち込みや楽しみの喪失、自責感や自己評価の低下などを訴え、産後3か月以内に発症することが多いです(日本産婦人科学会ホームページより抜粋)。出産後に気分が落ち込みやすい原因ははっきりと分かっていませんが、出産後にエストロゲンなどの女性ホルモン濃度が急激に低下することにより、心身の調子を整える自律神経が乱れることも影響していると考えられています。

「産後うつ病」になった場合は、その本人が治療対象になりますが、「産後クライシス」は夫婦間の関係性の問題を指しており、心身のケアは必要ですが、お互いの歩み寄りや価値観のすり合わせといった対応が望まれます。

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産後クライシスのチェックリスト

産後クライシスについての目安を知りたい方は以下の項目をチェックしてみてください。

当てはまる項目が多いほど、産後クライシスに陥っている可能性が高いといえます。


  • 以前よりもパートナーを好きと思えない
  • パートナーに触られるのが嫌だと感じる
  • パートナーが頑張っているとは思うが、イライラして腹が立つ
  • 夫婦で話したり過ごしたりすることが少なくなっている
  • パートナーにきつい言い方をしてしまう
  • パートナーと価値観が違うと感じることが増えた

当てはまる項目を覚えておくことは、夫婦の関係性を見直して産後クライシスを乗り越えるための参考になるでしょう。

産後クライシスの原因

産後クライシスが起こる原因は、以下のようなことが考えられます。


  • ホルモンバランスの変化

産後はホルモンバランスが急激に変化し、自律神経が乱れやすくなるため、些細なことにイライラしてしまう傾向があります。


  • 子育てのストレス

授乳や夜泣きによる睡眠不足や育児が思うようにいかないこと、自分の時間が無くなりやすいこと、トラブルへの不安などから、子育てでは大きなストレスを抱えやすくなります。

初めての子育ては慣れないことが多くストレスを抱えやすいといわれますが、二人目、三人目の子育ての場合も、上の子にも手がかかったり、複数の子どもたちの面倒を見たりなど、子育てでストレスが溜まることは多いでしょう。


  • 夫の無理解

妻は育児で自分の時間がないのに、子どもが産まれても以前とさほど変わらず、のんびりと休んだり好きなことをしている男性は少なくありません。育児の大変さに無理解な様子である夫に対して、妻は不公平感を抱えて、腹が立ちやすくなります。


  • ガルガル期の妻に夫がうまく対応できない

産後6~8週ごろまで(産褥期)は、「ガルガル期」とも呼ばれ、ホルモンバランスが崩れて精神的に不安定になり、急に怒りっぽくなったり、イライラしたり、攻撃的になりやすいといわれています。

ガルガル期の妻を、夫が「今の時期は大変なんだな」とおおらかに受けとめられず、お互いの感情に振り回されてしまうと、夫婦関係が一気に悪化することがあります。また、産後に怒りっぽくなってしまうことを夫が理解できず、おろおろしたり怯えたりすることも、妻をさらにイラつかせる原因の一つになります。

産後クライシスになりやすい人は?

産後クライシスになりやすい性格や環境には、以下のようなものが挙げられます。


  • 完璧でないと気が済まない

いわゆる完璧主義な人は、予測がつかない赤ちゃんへの対応も「決して失敗してはいけない」と考える傾向があります。手を抜くことができず、子育てを頑張りすぎてしまうため、疲れきってしまったり、精神的に追い詰められたりしやすくなります。


  • 不安が強い

不安を抱えやすい人は、赤ちゃんの些細な変化に対しても過剰に心配することが多いため、ゆっくりと休むことができず、疲れやすくなります。例えば、育児に関して、本やインターネットから情報をたくさん収集しても、「本当にこれでいいのだろうか?」と不安になってしまうことが挙げられます。


  • 夫婦のコミュニケーションが少ない

夫の仕事が忙しく帰りが遅いために、子育ての負担を妻が一人で背負っている夫婦は、「疲れているのに悩みを話すのは悪い」といったように、お互いに気を遣っていることがあります。一方は子育て、一方は仕事に傾倒すると、話をしても内容にピンとこなかったり、話を理解してもらえず、かえって虚しくなったりする場合があり、次第に夫婦の会話が少なくなりやすいです。


  • 夫が育児や家事に無関心

「子育てや家事は妻の仕事」「自分は仕事を頑張っているので、子育ての責任を持つのは無理」などと考えている夫に対して、妻の不満はたまりやすくなります。ただし、育児や家事に無関心そうに見える夫も、実は妻のダメ出しや指摘によってやる気を削がれたにすぎない場合があります。


  • 相談相手や協力者が身近にいない

子育てや家事、仕事のバランスがうまくいかずに悩んでいるとき、身近に協力者や理解者がいることは心強いです。反対に、誰も相談できる人がいない場合は、問題を一人で抱え込んでしまって、身動きがとれなくなることがあります。


  • 里帰り出産

核家族が増え、近所に妻の両親がいない場合、あるいは上のお子さんの面倒をみてもらえる環境にない場合は、実家への里帰り出産を選ぶことが多いです。

夫が赤ちゃんに会える距離であったり、産後1か月でスムーズに自宅へ戻って夫婦で赤ちゃんのお世話を開始できたりすればいいですが、何らかの理由で実家から戻る時期が長引くと、夫が父親としての自覚を持てないことがあります。妻も「夫婦で子育て」という感覚が乏しくなり、実家の両親を頼ってしまいやすくなります。

里帰り出産をした場合は、できるだけ早く夫婦で子育てをする環境に戻せるよう計画を立てることが大事です。あるいは、里帰り出産でも、夫が面会に来る機会を作っておくとよいでしょう。

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産後クライシスの乗り越え方


産後クライシスは、誰にでも起こりうることです。問題を一人で抱え込まないことが大事ですが、具体的には以下のことを参考にしてみるとよいでしょう。


  • 自分の体調を優先し、誰かを頼る

産後は、前述したように体調の変化が著しく、そんな中で慣れない子育てを一人で背負うのは大変です。心身が辛いと感じたら、早めに誰かに気持ちを伝えましょう。「これくらいのことは自分一人でなんとかしなければ」と考えて問題を抱え込んでしまう人は、産後うつ病や産後クライシスに陥りやすいといわれています。訪問に来た保健師に体調不良や子育ての不安を聞いてもらうのもいいでしょう。子どもに手がかかる時期は、お互いの両親に協力してもらったり、子育ての援助が受けられるファミリーサポートなどを利用したりすることで辛い時期を乗り越えられることがあります。


  • 家事や育児に完璧を求めない

完璧主義的な妻は、夫が家事や育児をしても、「洗濯の仕方が雑」「食器洗いが適当で気に入らない」といったように、細かい点が気になることがあります。何でも自分でやらないと気が済まないという方もいると思いますが、少々気に入らないことがあっても大目に見て、夫と子どもの接点をつくり、夫のやる気を促しましょう。それでも夫のやり方が目に余る場合は、優しく頼むようにしましょう。

子育てで忙しい時期は、思うようにいかなくても仕方がないと割り切ることも必要です。「こうしないといけない」という考えをあらわにすると、夫のやる気を削いでしまう可能性があります。


  • 夫婦のコミュニケーションを増やす

「夫は仕事で忙しいから負担をかけたくない」と思い、夫婦のコミュニケーションを控える人は少なくありません。しかし、日中の子どもや自身の状況は、言葉で伝えないと夫は分かりません。コミュニケーションが足りていないと感じたら、まずはその日の子どもの成長など、夫が知らない子どもの様子について意識して伝える努力をしてみましょう。夫の帰りが遅くコミュニケーションの時間が取れない場合は、メールで伝えてみてもよいでしょう。


  • 不満は工夫して夫に伝える

夫への不満が積み重なると、いずれ不満が爆発してしまいます。ただし、ストレートに不満を伝えると、攻撃されていると捉えられたり、愚痴ばかり言っていると思われる可能性があります。不満に思うことは、工夫して伝えることが大切です。

「○○をしてくれると嬉しい」「○日は子どもをみてもらえると助かる」といったように、具体的で優しく頼むような言い方で伝えると、夫も聞き入れやすいと思います。感情的に伝えると、夫は怖がったり、激しい喧嘩になったりすることがあります。


  • パートナー以外の相談相手をもつ

毎日のように妻の愚痴を聞かされると夫は疲弊してしまいます。夫婦関係を良好に保つには、家庭外での相談相手をもつことが大事です。

お子さんが同年代であるママ友だちに相談できれば、似たような悩みに共感してもらえたり、参考になる情報を交換できたりして心強いと思います。また、保健センターの保健師や子育て支援センターの保育士など、日頃の子育ての悩みを気軽に相談できる専門職を頼るのもオススメです。モヤモヤした気持ちが続いている場合は、悩みをカウンセラーや心理士に聞いてもらうのもいいでしょう。

夫との離婚を後悔しないために考えたいこと

産後クライシスは、お子さんに手がかかる2歳ごろまでがピークといわれています。3歳以降は幼稚園に入園する家庭が多く、子どもと離れることで妻のイライラが軽減することがあります。

お子さんが2歳くらいになるまでは産後クライシスになることがあると知っておくと、離婚を急いだために後悔するということを避けられるかもしれません。

夫との離婚を後悔しないために考えたいことには、以下のようなことが挙げられます。


  • 離婚のメリット・デメリットをよく考える

夫の暴力やモラハラ、浮気などがある場合は、離婚を考える方も多いでしょう。

夫の暴力がある場合は、お子さんと自分の身を守るために、迷わず実家やホテル、シェルターなどへの避難が必要です。同時に都道府県が設置する「配偶者暴力相談支援センター」などの専門機関にも相談しておくとよいでしょう。


言葉によるモラハラは、身体に直接傷は残りませんが、辛い時期に心ない言葉をあびせられると、妻の精神に悪影響を及ぼしたり、夫婦関係に深い溝を残したりすることがあります。また、モラハラをする夫がお子さんにも同じようにきつい言葉をぶつけたり、嫌味を言ったりすることも考えられます。


上記のように子どもや自分にとって、夫が悪影響を及ぼし続けるような場合には、離婚は大きなメリットとなります。子どもの父親がいなくなることや経済的な負担といったデメリットよりも、こうしたメリットの方が大きいのであれば、離婚しても後悔は少ないと思います。


  • 時間をおいて冷静になったときに考えてみる

産後はイライラしやすい時期でもあるので、普段なら見過ごすようなことも「許せない」と感じやすくなるでしょう。精神的に不安定な時期に重大な決断をすると、後悔することが少なくありません。冷静に考えられるようになるまでは、時間の経過を待つことも大事です。例えば、産後は睡眠不足でイライラして、気が利かない夫に不満があったけれど、子どもの成長とともに気にならなくなったということもあると思います。離婚を決めるほどの決定的な理由がない場合は、時間の経過を待ち、気持ちが安定しているときに、離婚について考えてみるのがよいでしょう。


  • カウンセラーに相談して気持ちを整理する

気持ちの整理がつかないまま離婚をして後悔する人は少なくありません。カウンセリングで自分の気持ちをカウンセラーに話すことで、もやもやとした気持ちを整理しやすくなります。

また、夫婦関係では価値観のすり合わせや歩み寄りが必要ですので、夫婦カウンセリングを受けて、お互いの気持ちを確認することも効果的です。夫婦だけでは感情的になり、生産的な話し合いができない場合があります。第三者が介入するだけでも、お互いの気持ちを理解する手助けになります。


  • 離婚した場合の生活をイメージしてみる

離婚の判断を迷う場合は、離婚後のお子さんの将来的な見通しと必要なサポートについてあらかじめ考えてみましょう。例えば、お子さんの進学にかかる経済的な見通し、周囲や親戚の協力が得られそうかといったことをイメージしてみましょう。

親権や財産分与に関して、離婚を決意する前に必要な手続きなどを把握しておきたい場合は、法律の相談に乗っている公的機関の「法テラス」や市町村の法律相談などで話を聞いておくと、今後の動きがとりやすくなります。離婚した場合の生活をイメージしてみると、「まだ離婚について情報収集をするだけでよい」と思うこともあれば、具体的な見通しがつき、「離婚に向けて本格的に動き出そう」と思うようになるかもしれません。

おわりに

産後クライシスは、誰にでも起こりうる身近な問題であることをご理解いただけたと思います。離婚を慌てて考えるよりも、まずは夫婦で話し合ったり、周囲の人の協力を得たり、保健師やカウンセラーに相談するなど、自分ができそうなことから試してみましょう。

もともと生活環境の違う夫婦間では価値観も異なります。子育てによる環境の大きな変化によって、価値観の違いが浮き彫りになることは多いですが、今後も辛いときや大変なときは何度も訪れるでしょう。子育ては家庭のトラブルを今後どのように夫婦で乗り越えていくかを考える最初の試練でもあります。夫婦関係は「うまくいかないこともある」と長い目で見て、どのような夫婦でいたいかを話し合う機会をもてると安心ですね。

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<参考文献>

塩野悦子(2017)特集 助産師は父親をどう支えるか 産後クライシスのからくりと予防方法, 医学書院 助産雑誌, vol.71, No.10, pp.748-755
(※1)小林登(2010)第1回妊娠出産子育て基本調査報告書・フォローアップ調査(1歳児期)報告書, ベネッセ教育総合研究所, https://berd.benesse.jp/jisedai/research/detail1.php?id=3318(2021-10-25 参照)
(※2)厚生労働省(2016)平成28年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告, https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11920000-Kodomokateikyoku/0000190327.pdf(2021-10-25 参照)
公益財団法人 日本産婦人科医会, 産後うつ病について教えてください, https://www.jaog.or.jp/qa/confinement/jyosei200311/(2021-10-25 参照)
産後クライシスのカウンセリング
このコラムを書いた人
精神保健福祉士・社会福祉士
救急病院の医療ソーシャルワーカーとして、うつに悩む方や、不登校・長期の引きこもり、障害のあるお子さんの悩みなど、様々なケースに出会い、早期に専門職が関わる必要性を感じてきた。子育てやモラハラなどの家庭内の問題など、様々なお悩みの相談に携わっている。
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