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  1. 小1の壁とは?子育てと仕事の両立ができない問題への10の対策

小1の壁とは?子育てと仕事の両立ができない問題への10の対策

「小1の壁」といわれるものが、主に働く母親にとって大きな悩みの一つになっています。保育園では、子どもを遅い時間までみてくれたり、お迎えの時には日々の状況を詳しく教えてもらえたりしますが、小学校に入るとそうした体制ががらりと変わります。

こちらの記事では、小1の壁として多くの母親が負担に感じることや不安に思うこと、それらの解決策を提示できればと思いますので、参考にしてみてください。

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目次

- 小1の壁とは

- 小1の壁の実態

- 退職を検討する際に考えたいこと

- 小1の壁の乗り越え方

- おわりに

小1の壁とは


小1の壁とは、主に共働きやひとり親世帯において、子どもの小学校入学を機に、仕事と育児の両立が難しくなることを指します。具体的には、親の退社時間まで子どもを預けられる施設が見つからなくなったり、保護者の負担が増えたりすることにより、働き方を変えなければならない問題が生じることと説明されています(日本大百科全書より)。

例えば、子どもだけでの登下校に対する不安、学童保育の空きがない状況、勤務時間の制約、子どもの勉強のフォロー、PTA役員や学校行事への参加、子どもの交友関係が見えにくくなる問題などによって保護者の負担が増えるため、仕事と育児の両立に悩むことが多くなります。

小1の壁の実態


内閣府の調査(令和2年版男女共同参画白書)によると、まだまだ女性の希望するワークスタイルで働けている人は少ないようです。

例えば、一番下の子どもが中学生以上である母親のうち、フルタイム勤務の正社員として働きたいと考えている人は半数近いものの、実際そのように働いている人は全体の2割弱にとどまっています。

現在の小1の壁の問題を反映しているものとしては、以下の調査結果や考察が挙げられています。

  • 子どもが保育園・幼稚園児になったときにはフルタイム勤務の正社員が増加しているが、子どもが小学生になるとフルタイム勤務の正社員は就園前と同等まで減り、短時間勤務の非正社員が増加している。
  • 子どもが成長しても、育児・家事負担が軽くなるとは限らず、希望していた通りに働けないことがある。
  • フルタイム勤務の共働きが最も多いのは平成5年で、それ以降は短時間勤務が増え続けている。
  • 共働き世帯が増えたと言われるが、その実態はフルタイム勤務の正社員ではなく短時間勤務の女性が増えたことによる。

また、2018年にスリール社が保育園に通う子どもを持つ親を対象に行った調査(※1)では、以下のような結果になっています。

  • 9割以上の親が、小学生になったときの子育てと仕事の両立に不安を感じている。
  • 3人に1人が働き方を変えようと考えている。
  • 小1の壁が大変だと思う理由として、多くの人が挙げたものは以下の通りです。
夏休み・春休みの対応(87.4%)学童の預かり時間(72.4%)PTA・保護者会などの学校活動(70.4%)子どもの友人関係・安全・勉強などの状況(67%)持ち物・宿題・勉強サポート(59.2%)


そして、同じく小学校に通う子どもを持つ親を対象に行った調査(※2)では、以下のようになっています。


  • 78.7%の方が、子どもが小学生になったときに仕事と子育ての両立が大変になったと回答。
  • 小1の壁が実際に大変だと思う理由としては、保育園に通う子どもを持つ親の回答と同様の理由に加え、「子どもの意思を尊重した日々の対応」と回答した人が50.5%と高い結果になっている。
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退職を検討する前に考えたいこと

「小1の壁が不安だから」「子どもがかわいそうだから」といった理由ですぐに退職を考える前に、ほかにできることがないかよく考えることをおすすめします。親の人生はずっと続きますが、小1の壁はある一定の期間だけの問題です。また、小1の壁の負担感は、子どもの特性や協力者の有無などの環境も影響するため人それぞれであり、必ずしも退職したほうがいいとは限りません。

先輩ママに小1の壁の体験談を聞いたり、通学予定の学校が開催する説明会に参加・見学したりするなどして、自分なりに情報収集することが大切です。

また、夫婦で話し合い、身内の協力や役割の分担を整理し、時短勤務や在宅勤務を取り入れるなど、ワークスタイルも見直してみましょう。

一口に小1の壁と言っても、特に問題を感じずに乗り越えてしまう親子もいます。焦らずに情報収集をして、以下を参考に退職のメリット・デメリットを書き出し、夫婦等で話し合った結果、デメリットよりメリットが大きいのであれば、退職を考えることも一つの方法だと思います。


◆メリット


  • 子どもの不安な気持ちに寄り添える

子どもだけの登下校、勉強中心の生活、長時間の座学、規則の厳しさ、新しいクラスメイトや先生との出会いなどで、4月から夏休みまでは、親が思うよりも子どもは緊張している場合が多いです。5月のゴールデンウイークには、登校しぶりがみられるお子さんもいます。

子どもの変化を見極めて、心に寄り添うことができるメリットは大きいです。


  • 朝は見送り、帰宅後は迎えてあげられる

フルタイム勤務の親にとっては、子どもよりも先に家を出ることや、子どもが帰宅後に一人で留守番することは、防犯上の観点から不安の要因になります。子どもに鍵を管理させることも心配でしょう。


なお、フルタイム勤務の親は、学童保育を利用する場合が多いと思います。。

学童保育は、正式名称を「放課後児童健全育成事業」といい、主に厚生労働省が管轄しています。保護者が就労などで在宅していない場合の放課後児童にとっての生活の場として、「児童指導員」という資格を持った担当者のもとで、19時くらいまで開かれています。民間の学童保育もあり、雰囲気や活動内容は自治体・企業により様々です。

学童保育と似たものに文部科学省が管轄する「放課後子ども教室」があります。放課後子ども教室は、子どもにとっての学習・体験の場として、大学生や地域のボランティアスタッフが「教育活動サポーター」として子どもを見守り、17時くらいまで開かれています。


  • ゆったり学習をみてあげることができる

最近では、幼少期から塾に通っているお子さんも多く、勉強が苦ではない場合もありますが、帰宅後に宿題を早めに終わらせてほしい、学習習慣を子どもにつけたい、といった悩みは、多くの小学生の親に共通して見られる悩みです。

また、学校からの課題を毎日こなしてもらうことに加えて、特に子どもが低学年のころは親が丸を付けなければいけないことが多く、働いているとその作業が負担になることがあります。

仕事をしていなければ、宿題や学習に困難があるお子さんであっても、多少は心のゆとりをもって接することができると思います。


ちなみに、学童保育では、基本的に学習の時間があり、宿題を進められるようになっていますが、なかには拒否して進めてこないお子さんもいます。

一方で、学童保育を辞めてから、だらけて宿題ができなくなるなど、働いていたときのほうが学習を見てあげるのを楽に感じるケースがあり、仕事をしていないから子どもに学習習慣をつけるのが楽とは一概には言えません。


  • 放課後の様子や友だちとの交流を把握できる

学童保育に預けていると、放課後はほとんど同じ場所で過ごすことになるため、関わる友だちや遊ぶ場所、活動内容が限られてきます。

気の合う友人がいれば学童保育も楽しい場となるでしょうが、集団生活を負担に感じている場合、放課後くらいはのびのびと自由に過ごしたいと思うお子さんもいます。そして、「友だちは集団下校で帰宅しているのに、どうして自分は学童に行かないといけないの?」といった問題にぶつかります。このように、学童になじめないお子さんは、放課後の自由度が低いことを不満に感じることが多いようです。


とはいえ、誰もいない自宅に小学校1年生の子どもが帰宅し、親が帰宅するまでの数時間を留守番させることは、まだまだトラブルが多く、親の不安も耐えないでしょう。

親が子どもを見守れる年齢のうちに、友人関係や集団の中での役割、どんな遊びを好むのかなどの様子を把握しておくと、成長後の人間関係も把握しやすくなります。


◆デメリット


  • キャリアが中断されてしまう不安

キャリアが中断されることを望んでいないものの、子どもだけの登下校やトラブルが心配で、小学校入学を機に退職されてしまう方もいると思います。

キャリアの中断に納得できないまま仕事を辞めてしまった場合に、「自分は子どものために仕事やキャリアをあきらめてしまった」と後悔したり、むなしさを感じたりすることがあります。


  • 子どもに対して、つい過干渉になってしまう

仕事をしていた母親の場合は特に、仕事の代わりとして子育てが生きがいになりやすく、子どもの生活にあれこれと手を焼きすぎてしまうことがあります。

子どもにとっては学校の生活だけでも疲れているのに、宿題やその他の勉強、スポーツ、習い事などに親のほうが熱心だと、うんざりしてしまいやすくなります。

また、子どもの友人関係が気になって、「○○と仲良くしなさい」などといったように細かく干渉してしまう傾向があります。


  • ほかの家庭の子どものことが目につきやすい

学童保育に行っていない子どもは、放課後の生活領域や友人関係が広く、時間を自由に使えます。これには良い面もありますが、低学年の男の子は特に、危険なことの分別がつかなかったり、公共のルールを破ったり、子どもだけで集まることが楽しくて周囲に迷惑をかけたりする行動が目立ち、親の見守りや仲裁が必要になる場合があります。

仕事で親が不在の友だちの家に遅くまで居座ったり、そういった友だちが「お母さんが家にいていいな」と寂しさから頻繁に訪問してきたりすることもあります。

また、自分の子どもの仲間が悪いことをしたときに注意する機会が多くなり、他人の子どもを叱らないといけない立場に悩むことがあります。

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小1の壁の乗り越え方

誰しもが未知なことに対しては不安を抱きやすいものです。

小1の壁の問題は、学校のことが分からないから不安である部分が大きいため、基本的には、子どもが年長くらいのころから学校や学童保育の情報収集をして、仕事を継続するうえで何が不足しているかを検討することが大切です。

学校を見学するだけではなく、利用・通学している親子に話を聞くのも参考になります。

また、学区内で気軽に情報交換や相談ができるママ友だちがいることも心強いと思います。


1.仕事を継続する方法を考える

小1の壁を乗り越えるのは確かに厳しいかもしれませんが、すぐにあきらめるのではなく、身内の協力をお願いしたり、夫婦で役割分担を見直したり、職場の制度や上司への確認などをしてみるとよいでしょう。


自分から留守番をしたいと言い出すようなしっかりとしたお子さんの場合、カギの扱いや留守番の練習をして自宅で過ごす方法を検討するのも良いかもしれません。ただし、低学年のお子さんは、「お母さんが困るから」などと考えて、本音を言わずに孤独感を我慢していることがありますので、様子を見ながら進めるようにしましょう。


また、仕事の日に学校が休みになる場合については、身内の協力者や地域のファミリー・サポート・センター事業を利用して見守ってもらったり、会社の有給休暇を利用したり、あらかじめ遅刻を認めてもらったりして、仕事やキャリアに未練が残らないような対策を試してみるといいと思います。

ファミリー・サポート・センター事業は、市町村が実施しており、「子育て援助活動支援事業」と呼ばれるものです。乳幼児や小学生等の児童を有する子育て中の労働者や主婦等を利用会員として、子育て支援を行う提供会員が、保育施設への送迎や放課後の子どもの預かり、保護者の用事や仕事がある際の預かりなどの支援を有償で行っています。利用が心配な場合は、時短勤務や在宅ワークを考えるのもいいでしょう。


2.同じ学区内に親子で知り合いを作っておく

同じ学校に通う知り合いや友人がいると、親子ともに安心できます。年上のお子さんを持つ知り合いがいれば、集団登校のことや学校の様子などを聞いたり、同級生の友人の親には、同じ悩みを共有することもできたりして、心強いと思います。


3.学区内の小学校の情報収集を早めにする

学校見学や説明会を希望者向けに開催している学校が多いです。次年度の入学者以外の参加が可能な学校もありますので、少なくとも年長のころには見学を済ませておくと不安が減ると思います。入学者向けの説明会は全員が参加するため、詳しい内容を質問することが難しい場合もあります。ゆっくりと余裕をもって見たいなら、希望者参加型の見学会はおすすめです。


4.同じ園の知り合いと情報交換できる関係を作っておく

学校が違っても、子どもの登校しぶりなどに悩んだときには、同じ園に通っていた仲間に相談できると救いになります。卒園したら終わりになる関係もありますが、気の合う親子とは卒園後も親しくしていると、同じ学校の親子には相談できないことも話しやすいというメリットがあります。例えば、担任の先生が合わない、ただ愚痴を聞いてほしい、といった場合には、違う学校に通う人のほうが話しやすいことがあります。


5.長期休暇の過ごし方について考える

夏休みや冬休み、春休みなど、長期休暇の間、学童保育は全日開催ではないことがあります。特に、お盆休み、年末年始は学童保育もお休みになることが多いので、仕事がある方は預け先を検討しておくことも必要です。

選択肢は学童保育だけでなく、夏休みに子どもだけのキャンプへの参加など、長期の休みでないと参加できない体験に申し込む方もいます。

早めに夫婦や協力者の予定を確認し、お子さんの長期休暇の過ごし方や預け先を考えましょう。まずは、学童保育が休みの日を確認し、早めの対策を練っておくと焦りません。


6.子どもの話を聞く時間を作る

お子さんは親に気を遣って、学校で嫌なことがあってもはっきりと口に出さないことがあります。新しい環境になじめないうちは、子どもの話を聞く時間を作って、忙しくてもこちらから気にかけてあげましょう。

「今日はどうだった?」などとたわいない会話をして、様子をうかがうだけでも、お子さんは「気にかけてもらえた!」と嬉しく感じるでしょう。


7.送迎付きの習い事なども考える

学童保育に通っていると、放課後の自由が少なく、学校と学童の繰り返しに飽きてしまうお子さんがいます。その場合は、興味のある習いごとをしてみるのもいいでしょう。

ほかの子たちが習い事をしているのに、送迎が必要で平日は習い事ができないという場合でも、学童保育に迎えに来てくれる習い事もありますので、情報収集をして探してみましょう。最近では、共働き向けの送迎付きサッカーやスイミングなども増えてきています。


8.母親一人で抱え込まない

小1の壁は、お子さんの性格や特性、両親のワークスタイル、身内の協力体制により、抱える問題も様々です。仕事を辞めてしまったらキャリアが中断されるだけでなく、経済的に困ることもあると思います。また、子どもが小学校に入学するという同じ状況でも感じ方は人それぞれで、その状況にならないと分からないこともあります。

実際にどうすればいいのか分からなくなったら、母親ばかりでなく父親にも知恵を出してもらうようにしましょう。

また、同じような経験をした方や子育てに詳しい専門家に相談してみて、小1の壁を乗り越える方法を一緒に考えてくれる人を見つけることもおすすめです。


学校になじむのに数年かかるお子さんもおり、安心して仕事ができるようになるまでに短期間で済まないケースもあります。特に、お子さんがHSCといわれる過敏な特性や発達障害を抱えている場合には、学年が変わるごとに不安を繰り返しやすくなります。こうした長期的な問題についても、一人で抱え込まず、一緒に悩みを共有してくれる人に思いを伝え、できることとできないことを整理して、今後の見通しをつけられるようにしましょう。


9.担任やスクールカウンセラーに相談する

担任の先生は、お子さんたちの自宅での様子や園での生活、性格や特性を把握しきれていない場合が多いので、困ったことがあれば情報交換ができるとお互いに参考になります。

また、スクールカウンセラーが都道府県や市町村から各学校へ月に数回ほど派遣されていますので、担任に連絡して、相談したりアドバイスを受けたりするのも参考になると思います。


10.登校しぶりなどがあっても、継続できる方法を考える

お子さんが体調不良を連日訴えるなどの登校しぶりが起こった場合、無理に登校させることは難しいです。まずはお子さんの心に寄り添い、安心させてあげてください。

そのうえで、休職や休暇などの職場がとれる対応を確認し、登校しぶりが数か月以上続いたり繰り返したりして、ほかの手段でどうにもならない場合は退職を考えるのもやむを得ないかもしれません。

おわりに

子どもが小学校に入学するときには、誰でも不安が大きいものです。子どもが年長のころから通学予定の学校の情報収集をしたり、悩んでいるのは自分だけと思わずに、知り合いに話を聞いたりすることも安心につながります。

仕事の継続は、現在ではさまざまなワークスタイルがありますので、メリットとデメリットをよく考えて、時短勤務や在宅ワークなどの自分に合った方法を選択するとよいでしょう。

子どもはいずれ成長し、自立していきます。過ぎてしまえば小1の壁はいっときのことと思えますので、キャリアをあきらめない方法を探してみたほうが後悔することは少ないと思います。

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<調査概要>

※1

調査期間:2018年

調査対象: 保育園に通う子どもを持つ18~48歳の294名(男性25名、女性268名、その他1名)

調査主体:スリール株式会社


※2

調査期間:2018年

調査対象: 小学校に通う子どもを持つ 18-48才の291名(男性21名、女性270名)

調査主体:スリール株式会社


<参考文献>

厚生労働省, 「新・放課後子ども総合プラン」について, 2018年9月 https://www.mhlw.go.jp/content/11906000/honnbun.pdf(2021-08-19 最終閲覧)
内閣府男女共同参画局, 令和2年版男女共同参画白書(概要), 2020年7月 https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r02/gaiyou/pdf/r02_gaiyou.pdf(2021-08-19 最終閲覧)
スリール株式会社, 小1の壁とは?退職せずに乗り切る方法と会社ができること | スリール株式会社, https://sourire-heart.com/7718/(2021-08-19 最終閲覧)
『日本大百科全書』, 1994年, 小学館
育児・子育てのカウンセリング
このコラムを書いた人
精神保健福祉士・社会福祉士
救急病院の医療ソーシャルワーカーとして、うつに悩む方や、不登校・長期の引きこもり、障害のあるお子さんの悩みなど、様々なケースに出会い、早期に専門職が関わる必要性を感じてきた。子育てやモラハラなどの家庭内の問題など、様々なお悩みの相談に携わっている。
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