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  1. 発達障害の子どもの進路は?学校選びや特別支援、将来について

発達障害の子どもの進路は?学校選びや特別支援、将来について

お子さんに発達障害があると診断されたら、「この子のために今後どのような教育を受けさせたらいいのだろう」と誰しも悩んでしまうと思います。

お子さん本人の希望も尊重しつつ、発達障害のお子さんを見てきた心理・教育関係の専門家のアドバイスも参考にし、お子さんに最適な学びの場を見つけたいものです。

ここでは、発達障害のあるお子さんの進路や、それぞれの施設・学校でどんな配慮が受けられるのかについてお伝えします。

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発達障害のカウンセリング

目次

- 発達障害とは

- 学校の合理的配慮とは

- 乳幼児期

- 小学校・中学校の進路

- 中学校卒業後・高校の進路

- 高校卒業後の進路

- おわりに

発達障害とは


発達障害とは、生まれつき脳の機能に何らかの原因があり、発達に問題がある障害の総称です。

発達障害には、代表的なものに、自閉スペクトラム症(ASD)注意欠如・多動症(ADHD)限局性学習症(SLD)・学習障害(LD)などがあります。

これらの障害について、簡単に特徴を挙げておきます。


  • 自閉スペクトラム症(ASD)

コミュニケーションが苦手で、会話をしている相手の感情を読み取ったり、文脈を理解したりすることが難しいという特徴があります。また、興味を持つ範囲が狭く、パターン化された行動様式を好み、急な予定変更や臨機応変に対応することが不得意な傾向があります。


  • 注意欠如・多動症(ADHD)

不注意と落ち着きのなさ、衝動性などの特徴があります。

集団生活の中で、気が散りやすい、うろうろしてしまう、他人を妨害する、忘れ物やなくしものが多い、などが問題になることがあります。


  • 限局性学習症(SLD)・学習障害(LD)

知的な発達の遅れはなく、「読む」「書く」「計算する」などの特定の学習が難しいという特徴があります。勉強への意欲がない、努力が足りないと思われがちで自信をなくしてしまうことがあります。

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学校の合理的配慮とは


障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)により、障害のある方への「合理的な配慮」が求められています。

これは、

「障害のある人から、社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたときに、負担が重すぎない範囲で対応すること」

が求められるものです(内閣府のリーフレットより抜粋)。

この対象となるのは、障害者手帳を持っている人に限らず、発達障害のある人も含まれます。

学校で求められる合理的配慮の具体例としては、

「聴覚過敏の生徒のために教室の机・椅子の脚に緩衝材をつけて雑音を軽減する、視覚情報の処理が苦手な児童生徒のために黒板周りの掲示物の情報量を減らすなど、個別の事案ごとに特性に応じて教室環境を変更すること」

が挙げられます(文部科学省「日本の特別支援教育の現状について」より抜粋)。

また、高校や大学受験などでも「合理的配慮」が求められており、「入学試験や検定試験において、本人・保護者の希望、障害の状況を踏まえ、別室での受験、試験時間の延長」などが行われます。

お子さんが特別支援学校ではない小中学校に通う場合に、発達障害の程度や特性に応じた配慮が受けられるか不安な方は、入学前であれば市町村の教育委員会に、入学してからは担任の先生に相談してみるとよいでしょう。


それでは、発達障害の子どもの進路・学校について順番に見ていきましょう。

発達障害の子どもの進路に悩んでいる方へ

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匿名で相談ができるため、家族や友人に知られることなく、安心して相談していただくことが可能です。

索引

- 乳幼児期

保育園 / 幼稚園 / 認定こども園 / 児童発達支援(通所サービス) / 特別支援学校幼稚部

- 小学校・中学校の進路

公立(通級指導教室・特別支援学級) / 特別支援学校 / 私立小学校・中学校

- 中学校卒業後・高校の進路

全日制の高校 / 定時制高校 / 通信制高校 / 高等専修学校 / 高等専門学校 / チャレンジスクール・エンカレッジスクール / 高等特別支援学校 / 特別支援学校高等部

- 高校卒業後の進路

就職(就労支援) / 大学 / 専門学校

乳幼児期

一般的に母親が仕事をしている場合は保育園、そうでない場合や短時間の仕事の場合は幼稚園に入園させることが多いでしょう。

発達障害の程度によっては、全国的に数は少ないですが、特別支援学校の幼稚部、あるいは地域の療育園という選択肢もあります。

軽度の発達障害であれば、通常の保育園や幼稚園で見てもらうケースが多いです。また、園で集団生活をして初めて発達障害に気が付くこともあります。


保育園

保育園とは、親が就労や病気などで子どもの保育を自宅で行えない場合に、親に代わって保育を行う、厚生労働省管轄の児童福祉施設のことです。0歳から入学前の6歳まで入所可能です。

保育園には、認可保育園無認可保育園(認可外保育園)があります。


認可保育園は、都道府県により認可された保育園で、公立と私立があります。

入所を希望する際は、市町村に就労状況家族状況などに関する書類を提出し、保育園に空きがあり許可が下りれば、入所が決まります。


一方、無認可保育園(認可外保育園)は、児童福祉法の一定の基準を満たしていない、あるいは満たしていても認可保育園にはないニーズに応えるために認可外としている場合もあります。

個性的な特徴があったり、現代の様々なニーズに対応している保育園もあります。

認可保育園に入所できない場合や、発達障害のニーズに対応してもらえるなどのメリットがあれば、預け先として検討してみるのもよいでしょう。

幼稚園

幼稚園は、文部科学省が管轄しており、国立、公立、私立があります。3歳~6歳のお子さんが対象ですが、義務教育ではありませんので入園は自由です。

幼稚園は各園で教育方針も様々です。入所前に発達障害がわかっている場合は、障害児枠として入園相談をすることもあります。障害のある子どもに合わせた支援を行うために、教諭の加配などを行っている園もあります。

認定こども園

認定こども園は、待機児童問題の解消と地域子育て支援を充実させるための、内閣府が管轄する施設です。

幼稚園の「教育」と保育園の「保育」の機能を併せ持ち、母親の就労に関わらず利用できます。

保育園では母親が仕事を辞めると基本的には退園になりますが、認定こども園は仕事の有無が関係ないので、母親の就労の事情が変わっても預けられる点は安心です。

児童発達支援(通所サービス)

厚生労働省では、「療育」と同じ意味で「発達支援」を使い、次のように定義しています。

「児童発達支援は、障害のある子どもに対し、身体的精神的機能の正常な発達を促し、日常生活及び社会生活を円滑に営めるようにするために行う、それぞれの障害の特性に応じた福祉的、心理的、教育的及び医療的な援助である。」

(児童発達支援ガイドラインより抜粋)

発達障害の程度によっては、できるだけ早く専門的な療育を受けさせたい、と思うでしょう。その場合は、市町村の障害福祉担当窓口で、児童発達支援について相談しましょう。「通所受給者証」が取得できると利用できます。


以前は障害種別に分かれていた施設を、障害児支援の強化を図るために、通所か入所かという利用形態により一元化しました。その中で児童発達支援は、未就学児が保護者とともに通所により療育を受けに行く通所サービスのことをいいます。発達障害だけでなく、体が不自由なお子さんや、知能に障害のあるお子さんも対象となります。

各自治体で運営しており、内容は様々ですが、一般の保育園や幼稚園では受けられないような作業療法士・言語聴覚士による訓練が受けられ、保護者も発達障害について相談ができます。

療育センターは、親子で通って子どもとのかかわりを学ぶことも目的のひとつであり、支援時間は保育園や幼稚園より短いです。

特別支援学校幼稚部

特別支援学校幼稚部には、国立、公立、私立がありますが、ほとんどは公立です。

視覚障害聴覚障害知的障害など、幼児期から特別な教育を受ける必要があるお子さんが多いです。発達障害で、幼児期から専門的な教育を受けたい場合は対象となるかどうか、公立であれば各自治体、あるいは学校に問い合わせて下さい。

小学校・中学校の進路

公立

公立小学校・公立中学校は、都道府県や市町村が運営している学校で、住んでいる地域によって学区が決まっています。クラスの定員は、小学校の通常学級の1年生が35名、2年生からは40名(段階的に5年後には35名になる予定)、中学校で40名です。非常勤の教師が加配でつくこともあります。

合理的配慮が法律で決まっていても、現実的に生徒数の多さから、発達障害のあるお子さんに十分に関われる状況ではありません。

きめ細かい配慮を希望する場合や、お子さんがクラスにいるのが辛い状況でしたら、以下に紹介する通級指導教室や特別支援教室の利用も考えるとよいでしょう。


  • 通級指導教室

通級指導教室は、軽度の障害のあるお子さんが対象になります。

通常学級に籍をおきながら、特別な配慮が必要な教科だけ、通級指導教室に通う方法です。学習面は通級指導教室、その他の活動は通常学級で過ごします。

通級指導教室では、通常の勉強科目以外に、障害に応じて特性を理解したり、症状への対処法を考えたりといった、特別な指導を受けられることがあります。

在籍校にない場合は、近隣の通級指導教室に通います。


  • 特別支援学級

特別支援学級を設置している学校は、小学校、中学校ともに7割を超えています。一クラス8名以下で編成され、少人数で障害に合わせた配慮を受けながら学習ができます。

特別支援学級に入るには、

「日常生活を営むのに一部援助が必要」
「社会生活への適応が困難である程度」

の2つが基準になります(平成25年文部科学省局長通知「障害の在る児童生徒等に対する早期からの一貫した支援について」より)。

基本的に、国語や算数などの学習は、特別支援学級で授業を受け、体育や図工、給食、学級活動などは、通常学級で過ごすことが多いです。

先生や専門機関と連携をとることで、子どもに合わせた教育環境を用意し、保護者の相談にも乗ってくれる「特別支援教育コーディネーター」が配置されているところも多いです。

特別支援学校

特別支援学校は、障害による学習上、生活上の困難を克服し、自立を図るために必要な知識技能を身につけることを目的とした学校です。特別支援学校の教員免許を持った教員から、障害に配慮した専門的な指導が受けられます。

通常学校の通級指導教室や特別支援学級の対象者よりも、障害の程度が重く、専門的な配慮が必要になるお子さんが対象です。発達障害の程度が重い、あるいは他に知的な障害がある場合は対象になることがあります。

特別支援学校には、幼稚部、小学部、中学部、高等部、高等部専攻科があり、基本的にはそれらに準じた教育を行います。

2007年の法改正により、「盲学校」「聾学校」「養護学校」から「特別支援学校」と呼ばれるようになりました。

入学希望については、お住まいの教育委員会、あるいは各学校にお問い合わせ下さい。

私立小学校・中学校

私立小学校・私立中学校は、個人や法人が運営している学校です。教育方針が一貫しており、校風も様々です。高校、大学まで設置されている学校もあり、校風などが気に入っている場合は、進路の見通しがつきやすいのもメリットです。

また、学費が公立よりも高額になるので、経済的な事情を考慮することも大事です。

公立学校よりも教員の異動が少ない傾向があるため、相性の良い教員がいれば学年が変わっても引き続き相談しやすいことは心強いです。学校によっては心理士やカウンセラーが支援してくれるところもあります。私立は、学校によって様々な特徴がありますので、気になる方は早めに情報収集をして見学、相談をするとよいでしょう。

中学校卒業後・高校の進路

高校の種類は大きく分けると、全日制定時制通信制の3種類があります。

全日制高校が全体の84%以上を占め、定時制が11%、通信制が4%の割合です(文部科学省、高等学校の教育課程における基礎資料 平成28年度より)。


また、上記の文部科学省の資料によると、学科の種類と割合は、普通科が56.3%、専門学科が38.4%、総合学科が5.3%となっています(※国立、公立、私立高校(全日制、定時制)の合計)。


  • 「普通科」は、中学校までの学習内容をさらに詳しく学ぶ学科で、大学・短大への進学率が63%となっており、進学を目的としている生徒が多いといえます。
  • 「専門学科」は、農業、工業、商業、水産、家庭、看護、福祉、情報、複合的な学科、理数科、英語、音楽、美術、体育、国際関係、舞台表現、書道、観光、地域振興、人文科学、探究活動の20種類の学科があります。
  • 「総合学科」は、普通教育と専門教育の科目を自分で選べる学科で、将来の職業選択を視野に入れながらも総合的に学ぶことができます。

高校は義務教育ではありませんので、入学試験を受けて合格することが必要です。入学後も出席日数や試験の成績などが、進級と卒業の可否に関わってきます。

高校に進学する場合は、早めに情報収集を行い、中学校の進路指導の先生や特別支援に関わる先生、スクールカウンセラーと相談するなどして、お子さんに合った進路を検討しましょう。

全日制の高校

全日制高校は、修業年限(在学しなければならない期間)3年、週5~6日の通学を基本としており、卒業までに各学年の進級要件を満たすことが必要です。

学業や部活動などに時間を取られてしまうので、定時制高校や通信制高校に比べると、それ以外の活動はしにくいと言えます。

基本的には、一人の先生が多数の生徒に対して行う一斉授業なので、合理的配慮がなされたとしても、細やかな個別対応までは難しいことが多いです。

週に1~8単位の通級指導が行われている学校もありますので、発達障害により一斉授業の難しさを感じるようであれば、担任や学校に相談しましょう。

あらかじめ希望の高校へ入学する前に、学校側に発達障害の特性を伝えて、試験で配慮が必要なら対応してもらうようにすると良いでしょう。入学後も、気になることは担任やスクールカウンセラーと早めに話し合うことが大事です。

定時制高校

夜間のイメージが強い定時制高校ですが、時代のニーズに合わせて、夜間昼夜間昼間という3種類の形態があります。

修業年限は3年以上で、夕方から始まり4時間程度授業を受ける形態が多いようです。

昼間は仕事をしている人も多く、通学する生徒の年齢も様々です。1日の授業時間が短いため、日中の時間で、就職に役立つような「技能連携校」に並行して通うこともできます。技能連携校については、進学希望の高校に制度の有無を確認しましょう。

高校卒業の要件を満たすと、学歴は「高卒」になります。

通信制高校

通信制高校の修業年限は3年以上です。家庭学習が基本で、配布された教科書を元に学習し、レポート提出、試験、面接指導などにより、単位を取得することができるため、自分のペースで学習をすすめたいお子さんに向いています。

また、指定された回数あるいは指定された時期に、宿泊や通学で登校して対面授業を受ける「スクーリング」を行う必要があります。

お子さんが通信教育についていくのが難しいという場合は、通信教育を受ける子どもの学習を支援する「サポート校」と併用するという方法もあります。

高校の卒業要件を満たせば、「高卒」の学歴になります。

高等専修学校

高等専修学校とは、社会に出てすぐに役立つ実践的な職業教育を行い、様々な分野でのスペシャリストを養成する機関です。高等学校と並ぶ正規の後期中等教育機関として、高等学校の枠に収まらない多様な教育を行っています。(文部科学省「高等専修学校とは」より)

特定の専門分野に興味関心が強いお子さんで、就職に必要な技能を身につけたいという場合に向いています。具体的には、工業、農業、医療、衛生、教育・社会福祉、商業実務、服飾・家政、文化・教養といった専門分野に関する知識や能力を養います。

高等専修学校には、卒業後に大学入学資格が得られる「大学入学資格付与指定校」や、通信制または定時制の高等学校とのダブルスクールで学び、双方の卒業資格を得ることができる「技能連携校」があります。

目指す資格や学部によって修業年限は変わります。大学入学資格付与指定校の修業年限は3年以上となっています。

高等専門学校

高等専門学校とは、実践的・創造的技術者を養成することを目的とした高等教育機関です。全国に国公私立合わせて57校あります。(平成28年度文部科学省「高等専門学校について」より抜粋)

理論だけではなく、実験・実習に重点が置かれています。大きくは、工業系と商船系の学科に分かれ、工業系の学科には、機械工学科、電気工学科、電子制御工学科、情報工学科、物質工学科、建築学科、環境都市工学科などがあり、商船系の学科には商船学科があります。工業系、商船系以外にも経営情報学科、情報デザイン学科、コミュニケーション情報学科、国際流通学科を設置している学校もあります。(文部科学省 高等専門学校の特色より抜粋)

5年一貫教育により、大学工学部レベルの知識や技能を習得します。特定の専門分野に興味関心が強いお子さんで、就職に必要な技能を身につけたいという場合に向いています。

特定の学びたい分野がある場合は、発達障害への支援体制や配慮について、事前に相談するとよいでしょう。

チャレンジスクール・エンカレッジスクール

チャレンジスクール・エンカレッジスクールは両者とも、東京都が設置者となっている教育機関です。

チャレンジスクールは、小中学校時代に不登校経験のある生徒や、長期欠席などで高校を中途退学した生徒を主に受け入れている総合学科、三部制(午前・午後・夜間)の高校です。カウンセリング体制が整っているところが多く、様々な分野に触れながら、夢や目標をさがしやすくなっています。

エンカレッジスクールは、小中学校で十分に能力を発揮できなかった生徒の意欲を育て、社会生活を送るうえで必要な基礎的・基本的学力を身に着けることを目的として、既設校の中から指定されている学校です。基礎基本を徹底するとともに、体験学習を重視しています(東京都教育委員会 「これまでに設置してきた多様なタイプの学校」より)。

東京都だけでなく、神奈川や埼玉など、ほかの都道府県でも似たような学校が創られています。通常の高校では、難しいかなと思われている方、興味のある方は学校のある自治体に問い合わせてみて下さい。

高等特別支援学校

おもに身体障害や知的障害を抱えており、一般企業の就職ができる可能性が高い生徒が対象で、就労に向けた教育を中心に行う学校です。

教科の指導が一般の高校よりも少なく、作業学習など就労に直接結びつく科目が多いです。学校により内容が違いますので、各学校に子どもが対象になるかどうかなども含め、確認するとよいでしょう。

なお、学歴は「高卒」ではなく、「特別支援学校高等部卒」となります。大学受験資格は得られますが、「高卒」の求人などには応募できませんので、この点には注意しましょう。

特別支援学校高等部

高等特別支援学校に対して、特別支援学校高等部は小学部や中学部に併設されていることが多いです。障害に配慮しながら、高等学校に準ずる教育を受けられますが、高等学校とはカリキュラムや勉強内容が違うため、「高卒」扱いにはなりません。自立活動など日常生活に必要なことも授業数に含まれていて、高等学校の教育に準ずるけれど、同等ではないと区別されていて、法律上は異なる種類の学校とされているからです。高等特別支援学校と同様、大学受験資格は得られます。

「高卒」の資格が欲しい方は、この点も留意して、高校進学を考える必要があります。

高校卒業後の進路

就職

発達障害の特性は人それぞれであるため、就職先については発達障害に詳しい専門家などに相談することをお勧めします。

人間関係の難しさや仕事内容が合わないことで、すぐに退職してしまわないためにも、専門機関や相談窓口を利用したほうが希望を叶えやすいでしょう。

参考までに、専門機関と相談窓口を挙げておきます。


  • 障害者職業能力開発校

国や都道府県が設置する、障害のある人に対して、その能力に適応した職業訓練を行う施設です。ハロートレーニングともいわれます。身体障害者や知的障害者が対象となることが多いですが、発達障害・精神障害も対象となるところがあります。

就労に必要な自己管理のほか、習う科目は学校ごとに様々で、販売実務、介護、情報技術関係、事務職関係、お菓子やパン作り、園芸、機械・建築関係などを半年~1年ほど学べるコースがあります。

入校するには、診断書の提出や選考があります。興味があればハローワークに相談に行きましょう。


  • 就労移行支援事業所

就労移行支援事業所では、職業分野への知識や能力を身につけたり、適性を探ったり、模擬面接を行なったりといった、就職につながる就労支援サービスを提供しています。

利用には、発達障害の診断書が必要ですので、興味のある事業所に問い合わせをするか、「障害者就業・生活支援センター」に相談するとよいでしょう。


  • 発達障害のある方が利用できる相談窓口

◇ハローワークの専門援助窓口

発達障害を含む障害に関する知識を持つ担当者が、仕事に関する情報を提供したり、就職に関する相談を行っています。


◇地域障害者職業センター

障害者職業カウンセラー、相談支援専門員、ジョブコーチなどがおり、専門的な職業リハビリテーションを行っています。


◇障害者就業・生活支援センター

障害のある人の身近な地域において、就労と生活の継続的で一体的な支援を行っています。障害者職業センターより数が多く、地域に密着している機関です。


◇発達障害者支援センター

年齢にかかわらず、発達障害の方の相談に乗っている専門機関で、都道府県に設置してあります。専門的に幅広い相談にのっています。


他にも、民間の障害専門の転職エージェントで、発達障害の特性に合わせた仕事を紹介してもらうなどの方法もあります。複数の相談先を持ち、本人の希望と合った相性のいいところを見つけられると良いと思います。

大学

複数の学科をもつ総合大学のほか、芸術などの専門分野に特化した大学があります。

学習形態も様々で、各キャンパスに通って講義や演習をする大学と、家庭学習が基本の「通信制大学」があります。

修業年限は4年制の大学と2年制の短期大学などいくつか種類があります。

専門学校

デザイン、情報技術、アニメーション、調理、研究、美容など、就職に結びつく知識や技術を習得するための学校です。

2年制のところが多いですが、3,4年制のところもあります。


大学、専門学校のいずれを選ぶにしても、お子さんの興味・関心で学校、学部を選ぶことになりますが、発達障害を抱える学生への受験時の配慮や、入学してからの相談・支援体制も調べておくと安心です。

おわりに

発達障害であっても、様々な進路の選択肢があります。本人の希望を尊重することはもちろんですが、発達障害ならではの悩みも出てくると思いますので、その際にどんな配慮が受けられるのか、どんな支援を受ければ無事に卒業できるのかといったように、先を見通しておくと安心です。決まった進路先で、どんなに考えて行動しても思い通りにいかないこともあるかもしれませんが、その都度、専門機関や相談窓口に相談し、進路を見直したり、就労の条件を考え直したりすることも必要です。

発達障害だからとあきらめず、興味のある分野の情報収集などをして、できることを探すきっかけになれば嬉しいです。

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<参考文献>

黒澤玲子(2018)新版大人の発達障害に気づいて向き合う完全ガイド 講談社
文部科学省, 日本の特別支援教育の状況について, 令和元年9月25日「新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議」, 参照2021-03-09, https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/2019/09/__icsFiles/afieldfile/2019/09/24/1421554_3_1.pdf
内閣府, 「合理的配慮」を知っていますか?, 参照2021-03-09, https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/pdf/gouriteki_hairyo/print.pdf
文部科学省, 特別支援学校幼稚部教育要領 第1章 総則, 参照2021-03-09, https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/tokushi/1284522.htm
厚生労働省, 児童発達支援ガイドライン, 参照2021-03-09, https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000171670.pdf
厚生労働省, 障害児支援の強化について, 参照2021-03-09, https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kaiseihou/dl/sankou_111117_01-06.pdf
幼稚園・保育園・認定こども園の違い!特徴とデメリット・メリット | ままのて, 参照2021-03-09, https://mamanoko.jp/articles/29089
文部科学省, 第2部 3 設置者別特別支援学校数、幼稚部・高等部設置学校数、学級数、幼児児童生徒数及び教員数-障害種別-, 参照2021-03-09, https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/020/011.htm
文部科学省, 学級編成の仕組みと運用について(義務), 参照2021-03-09, https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2011/07/29/1295041_2.pdf
文部科学省, 初めて通級による指導を担当する教師のためのガイド, 参照2021-03-09, https://www.mext.go.jp/tsukyu-guide/index.html
国立特別支援教育総合研究所, 小学校・中学校における特別支援教育 - 教育相談 情報提供システム, 参照2021-03-09, http://forum.nise.go.jp/soudan-db/htdocs/index.php?key=mu0rjg7nw-465
文部科学省, 高等学校における通級による指導の制度化及び充実方策について(報告)概要, 参照2021-03-09, https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11402417/www.mext.go.jp/b_menu/houdou/28/03/__icsFiles/afieldfile/2016/03/31/1369191_01_1_1.pdf
文部科学省, さまざまな進路と高等専修学校, 参照2021-03-09, https://www.mext.go.jp/content/20201009-mxt_syogai01-000010303_2.pdf
これまで設置してきた多様なタイプの学校|東京都教育委員会ホームページ, 参照2021-03-09, https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/school/high_school/type.html
文部科学省, 高等学校の教育課程に関する基礎資料, 平成28年4月13日 教育課程部会高等学校部会, 参照2021-03-09, https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/075/siryo/__icsFiles/afieldfile/2016/05/16/1370461_4.pdf
発達障害のカウンセリング
このコラムを書いた人
精神保健福祉士・社会福祉士
救急病院の医療ソーシャルワーカーとして、うつに悩む方や、不登校・長期の引きこもり、障害のあるお子さんの悩みなど、様々なケースに出会い、早期に専門職が関わる必要性を感じてきた。子育てやモラハラなどの家庭内の問題など、様々なお悩みの相談に携わっている。
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