お子様がASD(自閉症スペクトラム)ではないかと感じている親御様、ASDと診断された親御様への今後の不安を少しでも取り除くことが出来るよう、ASDの子どもの特徴や関わり方について解説します。
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目次
- おわりに
ASD(自閉症スペクトラム)とは、自閉症やアスペルガー症候群が統合されて出来た診断名です。統計によると、1000人に10人程度の割合で、3歳前後からはっきりと特性が現れます。原因は、未だ特定されていませんが先天性の脳機能障害であると考えられています。親の育て方や愛情不足が原因ではありません。
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子どものASDの特徴は、相互的な対人関係が苦手な事や、関心や行動が狭い範囲に限られるなどの傾向があります。また、しばしば見られる症状として感覚過敏、感覚鈍麻という特性があり、このような特性は努力では改善が難しい面もあります。その他、不器用さなども見られます。
※感覚過敏…聴覚・視角・味覚などが過敏であること。
※感覚鈍麻…痛みや疲れなどを感じにくいこと。
※スペクトラムについて
ASDの方は障害の兆候が自閉症状の重症度、発達段階、歴年齢により大きく変化するのでそれゆえに、スペクトラム(あいまいな境界を持ちながら連続している)という単語で表現されます。(※1)
・薬物療法、薬物療法以外の対処療法
障害の特性により、かかりつけ医での服薬なども大切になってきます。ここでの注意点は、服薬の量が増えると子どもによっては、副作用(眠気、意識混濁等)から生活に支障をきたす場合があるため、その場合には信頼できるかかりつけ医に相談した方が良いでしょう。薬物療法においては、かかりつけ医と家族の連携が必要不可欠です。また、ASDの特性は各々によって異なるため、服薬療法同様に「自分の障害を理解してくれる他者の存在」が大切です。療育などにより障害特性の改善が見られる場合もあります。
・療育について
療育とは、障害のある子どもの発達を支援する働きかけの総称で、発達支援とも言われています。療育(発達支援)では、一人ひとりの子どもの状態や特徴に合わせた療育プログラムがあり、各々の子どもの持っている力を引き出すためのサポートを行います。療育を通し、幼児期からサポートしていくことが、ASDの子どもに出来ることを増やし、能力を高めることにつながります。ASDの子どもは、上記で述べたように特性が様々であるため各々の子どもの年齢、取り巻く環境、特性に合わせた療育が重要です。例として、身辺自立やコミュニケーションを含む様々な行動に働きかける療育の他、言語の改善を目的とする言語治療、対人関係の関係を目的とするSST、他医療が必要な場合があります。乳幼児健診などの時、療育についての詳細を紹介されることがあります。
発達障害の特性は子どもによって異なるため、困りごとも異なってきます。また特性そのものは病気や症状ではなく、その子特有の性質であり、生まれつきの特有の脳の働き方を反映した「個性」と捉える事も出来ます。幼児期から長所を伸ばし、短所は家族や周囲の人がサポートするという姿勢が大切です。子どもの苦手なこと、欠点と見えることを無理に伸ばそうとしたり克服させようとすると子どもの心の傷(トラウマ)となる可能性が出る場合もあり、二次障害へと繋がる場合が出てきます。長所を伸ばし、出来ることが増えてくると能力を高めていけます。まずは子どもの関心があることからトライし、出来たことを褒める姿勢が大切です。
次に、ASDの子どもへの接し方の注意点をいくつかご紹介しますので、参考にしてみてください。
※二次障害とは、生活の中でうまく行かないことが重なってくることによるうつ症状や自傷行為などのことをいいます。
・予定を視覚化する
障害特性の一つである「目に見えない事に関する不安感」に対しては、週刊カレンダーなどに絵カードを貼り、視覚で一日のスケジュールを確認できるようにすると、不安感の減少につながります。
予定などにこだわりがあるASDの子どもの場合は、生活面でもスケジュールが予定通り進まないと不安感が増えますが、上記のような工夫をすることによって対処出来ます。
・ルールや指示を明確に伝える
障害特性の一つである暗黙のルールがわかりづらいことに対する対策は、ルールや指示を明確に伝えることで対応出来ます。あいまいな指示や皮肉、言外の意味の理解はASDの子どもは難しいためこのような対策が必要です。又、指示をしているときに状況に関係のない話を子どもがしたがった時は、「その話は外に出てからしよう」「じゃぁ10分くらいその話をしよう」などと詳細に伝えることが大切です。その際、簡単な言葉でゆっくり話すように心がけましょう。
・一つのことに集中できる環境を整える
障害特性の一つである情報処理が困難な事に対する対策として、静かなスペースを用意したり物が置かれている場所にはカーテンをつけたりして気が散らないようにすることが大切です。ASDの子どもは、同時に二つの事をすることが苦手です。二つのことを一つずつ作業させるように心がけると子どもは理解しやすくなります。
・褒めて特性を伸ばす
ASDの子どもが生活を安心して過ごすにあたり大切なことは、毎日の生活の中で成功体験を積み重ねていく事だと思います。特性が理解されないことにより叱責された経験などから自信喪失している子どももいるため、成功体験を積み重ね褒められることが自信へとつながります。どうしても家族が否定したり、命令的な態度を取るとASDの子どもは自信をなくしてしまいます。「上手に出来たね。」「昨日これが出来たから、今日はこれをしてみようか?」と肯定的な態度で接する事が大切です。このような態度がASDの子どもの精神状態の安定へと繋がります。
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ASDの子どもは、環境に非常に左右されやすいです。また障害特性の一つであるこだわりが、成長と共に良い方向へと向かう場合があります。特性の悪い面に目を向けるのではなく、良い面に目を向け、親御さんが子どもの心に寄り添い理解する姿勢と、根気強く子どもに関わる態度が大切です。又、地域のASDの子どもを持つ家族会などで仲間を作り、悩みを相談したり情報交換をしたりして、悩みを一人で抱え込まないことも大切です。親御さん自身の気持ちが不安定になると、子どもにも伝わってしまいます。
我が子がASDかも・・・と思ったら、かかりつけの小児科医、学校のスクールカウンセラー、などから「正しい情報」を得ることが大切です。このような専門家から、支援機関へつないでくれる場合があります。支援機関のカウンセラーは、多くの情報を持っています。親として、不安に感じていることを相談すれば「正しい情報」が得られます。少しでも不安な気持ちがあれば早めに相談をするのが良いでしょう。近くに相談できる場所がない場合、うららか相談室のオンラインカウンセリングも活用してみてください。
子どものASDを受け入れるまでの道のりは、決して一方向ではなく、一進一退を繰り返しながら受容へと至るのが普通です。親御さんは焦らずに、子どもの障害特性を穏やかな気持ちで見守る姿勢が大切です。また、子どもが悩んでいることに対し一緒に考える姿勢があれば、子どもは自分が受容されていることを感じるでしょう。時間がかかるかもしれませんが、「ありのまま」を受容する姿勢が大切です。辛くなってしまったら早めに周りの人やカウンセラーに頼り、ストレスを1人で溜め込まないようにしましょう。
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(参考文献)
※1 日本精神神経学会監修「DSM-5精神疾患の診断統計マニュアル」