気分がコロコロ変わったり一日で気分の浮き沈みが激しかったりしてつらいと感じたときや、身近な人の言う事や機嫌がコロコロ変わるように感じられたときに、もしかすると何か病気なのではと思う人は少なくありません。
人は誰にでも気分の浮き沈みがあると考えられています。しかし、コントロールできないほどに気分の浮き沈みが激しいと、やりたいことができなくなったり疲れるようになったりして、日常生活に支障をきたすことがあります。
一日で気分の浮き沈みが激しいという場合には、体の機能をコントロールする自律神経のバランスが乱れて、気分が落ち込んだり意欲が低下したりしている可能性があります。不規則な生活やストレスによって自律神経のバランスは乱れやすく、十分な睡眠時間がとれるように生活習慣を見直したり、仕事などのストレスから離れられる趣味や人間関係を持ったりすることで改善しやすくなると考えられています。
また、自分のことをどのように捉えているかという自己像や自己評価が不安定なために、言う事や機嫌がコロコロ変わると考えられることもあります。
気分がコロコロ変わるというだけでは病気と判断することができませんが、次のような障害による影響の可能性もあります。下記の診断は精神科や心療内科などで医師により行われます。
双極性障害は、大きな気分の落ち込みが見られる「うつ状態」と気分が高まる「躁状態」を交互に繰り返す病気です。うつ状態では、意欲・集中力の低下、焦燥感・不安、不眠などの症状があらわれることがあります。また、躁状態では、自信にみなぎり、注意が散漫になったり話の内容がコロコロ変わったり、活動的になって思い切った散財などにより損失を招きやすくなったりします。この周期は人によって異なり、数週間のものから数年のものもあります。
はっきりとした原因はまだ分かっていませんが、薬物療法と心理教育(自分の病気について理解すること)により、症状とうまく付き合いながら生活することができます。
パーソナリティ障害は、固有の思考や対人関係のパターンなどの影響により、本人や周りの人が苦しみを抱えて、日常生活に支障をきたしている場合に診断されることがあります。
その一つである境界性パーソナリティ障害では、気分の波が大きく、自身の振舞いやイメージが変化しやすいほか、他人との安定した関係を築くことに苦労しやすく、不信感や攻撃的な態度、自傷や相手を振り回すような言動が見られることがあります。おもにカウンセリングを含む精神療法や、服薬の併用による治療が行われます。
適応障害は、特定の環境においてストレスによる気分の落ち込みやイライラ、不安、意欲低下、身体症状などの反応が非常に強くあらわれて、日常生活に支障をきたしている場合に診断されることがあります。例えば、仕事に行く前はなかなか起きられず涙が出たりお腹が痛くなったりしますが、仕事が終わったり休んだりすると元気に過ごしているように見えます。ストレスの原因となる環境から離れると症状が見られなくなることが大きな特徴であり、可能な場合には環境調整を行うことが優先されます。しかし、簡単に環境から離れられないことが多く、おもにカウンセリングを含む認知行動療法という精神療法や、服薬の併用により治療が行われます。認知行動療法(カウンセリング)では、人によって異なる「ものごとの受け止め方」のパターンを把握したり見直したりすることによって、環境にうまく適応していくことを目指します。
上記のほかに、非定型うつ病と呼ばれる状態では、従来のうつ病のような気分の落ち込みや意欲・気力の低下だけではなく、いいことがあると気分が明るくなったり、過食や過眠、怒りっぽさといった症状がみられたりすることがあります。
幻聴や妄想を代表的な症状とする統合失調症では、考えがまとまらなくなったり話題がコロコロ変わったりするように感じられることがあります。
カウンセリングでは、気分がコロコロ変わる原因や解決策をカウンセラーと一緒に考えていくことができます。例えば、自分自身の気持ちについてカウンセラーに話しながら整理したり、自分自身への理解を深めて目標を見つけたりすることがあります。自分の中にあるモヤモヤとしたものをカウンセラーに話すことで、気持ちがすっきりとしてストレスを軽減することにも役立ちます。