他人に話をするときに、ある程度の不安や緊張を感じる人は少なくありません。この不安や緊張により、思ったことがうまく話せないと感じる人は多いでしょう。経験とともに、ある程度の不安や緊張には対処できるようになりますが、そもそも自分の思ったことを相手にうまく伝えるのは簡単なことではありません。自分の思っていることを深く洞察する力やコミュニケーションスキルをトレーニングすることで改善される場合もありますが、うまく話せないのは自然なことだと自分の中で受け入れていくことも大切かもしれません。
思ったことがうまく話せないというだけでは病気と判断することができませんが、次のような障害による影響の可能性もあります。下記の診断は精神科や心療内科などで医師により行われます。
場面緘黙は、ほかの場面では話すことができても、特定の社会的状況において、自分の意思と関係なく一貫して話すことができなくなり、日常生活に支障をきたすことがある症状です。はっきりとした原因は分かっていませんが、以下の社交不安障害の一つとされることが多く、その治療(認知行動療法など)により不安を軽減することが改善に有効だと考えられています。
社交不安障害は、人前で話したり注目されたりすることに大きな不安や緊張を伴い、その姿を見られたり失敗したりすることを恐れて人前に出る場面を回避するようになり、日常生活に支障をきたしている場合に診断されることがあります。はっきりとした原因は分かっていませんが、カウンセリングを含む心理療法(特に曝露療法、認知再構成法)、または服薬の併用により改善することができます。
自閉スペクトラム症(ASD)は発達障害の一つで、はっきりとした原因は分かっていませんが、生まれつき脳の機能の違いがあり、以下のような症状により、人間関係や社会生活で困難を抱えることがあります。
上記のようなことから、混乱してうまく話せなかったり話が噛み合わなかったりすることがあります。
発達障害をなくすことはできませんが、検査やカウンセリングで自身の特性への理解を深めて生活上の工夫をしたり、ソーシャルスキルトレーニングなどで社会的スキルを身につけたりすることで、自分の苦手なことにうまく対処できるようになることがあります。
そのほか、ケガや病気により脳に損傷を負ったことを原因とする高次脳機能障害の失語症では、思っている言葉が出なかったり違う言葉になったりすることがあります。
幻聴や妄想を代表的な症状とする統合失調症では、意欲や思考能力が低下し、考えがまとまらなくなったり会話が噛み合わなくなったりすることがあります。
また、吃音とは、言いたいことがあるのに言葉がつまったり同じ音を繰り返したりして滑らかな発話ができなくなる障害のことをいいます。
カウンセリングでは、思ったことがうまく話せない原因や改善策をカウンセラーと一緒に考えていくことができます。例えば、思っていることをうまく話せない自分自身の状態についてカウンセラーに話しながら整理したり、コミュニケーションのトレーニングを一緒に行なったりすることがあります。
カウンセリングでうまく話せなくても全く問題はありません。基本的には急かさずじっくりと話を伺いますが、どうしてもうまく話せないという場合には、カウンセラーがサポートさせていただきます。