「自分は泣き虫だなあ」と感じることはありますか?感受性が強い方や感情が高ぶりやすい方は、涙もろいことでお困りかもしれませんね。ただ、理由もなく涙が溢れてきたり涙が止まらなくなったりする精神状態は、病気のサインかもしれません。ここではこころと涙の関係について解説していきます。
目次
- おわりに
そもそも、人はどうして涙を流すのでしょうか。
涙は涙腺という場所で、血液をもとにして作られます。眼球が乾燥しないように涙腺から排出管を通って目の表面に流れ、鼻涙管を通って粘膜に吸収されます。常に涙は出ていて、なんらかのきっかけで排出量が多くなると目からこぼれる仕組みになっているのです。ここまでは体の仕組みのお話です。
人には自律神経という神経があります。体温を調節したり、消化液の分泌を促したり無意識に体の機能を調整する神経です。自律神経には覚醒・興奮状態のときに働く交感神経と、リラックスしている精神状態のときに働く副交感神経があります。
感情の変化によって涙が出ることを「情動反応分泌」といいます。感情の変化によって、自律神経である副交感神経がはたらき、涙が溢れるのです。感情が原因で涙を流すのは人間だけだと言われています。怒りや悲しみ、緊張や興奮をおぼえると分泌される副腎皮質ホルモンが涙と一緒に流れ出るため、出すぎたホルモンを排出するために涙が多量に作られるのです。涙を流すことによって、強いストレスから解放される仕組みになっています。
では、どうして涙が止まらなくなってしまうのでしょうか。仕組みだけをみれば、ストレスを解放することができればホルモン分泌がおさまり、涙は止まるはずです。しかし、このコラムをご覧の方は流れ始めた涙が止まらないことにお悩みなのではありませんか?
涙が止まらない原因は、涙を流す信号を出している副交感神経のはたらき過ぎです。ストレスによって自律神経のバランスが乱れ、副交感神経のはたらきが活発になりすぎているのです。
臨床心理士とは・・・
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うららか相談室には、多くの臨床心理士が在籍しています。
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涙が止まらないときに考えられる病気・精神状態は以下のようなものがあります。
脳の神経伝達物質であるセロトニンの放出量が減り、落ち込んだり悲しい気持ちが続いたりする病気です。症状のひとつとして、わけもなく悲しくなり涙が止まらないという状態があります。
涙を流す信号などを送っている自律神経のバランスが乱れることによって起こる、様々な精神的・身体的な不調のことをいいます。涙が流れるだけでなく、ささいなことでイライラしてしまったり気温の変化が極端に苦手になったりする症状があります。
強いストレスが続き、日常生活に支障をきたすほどの心の不調が続く病気です。ストレスの原因があきらかで、ストレスから離れると症状が改善しやすいという特徴があります。
仕事や学校など、特定のことだけに関して涙が止まらない、という場合には、適応障害の可能性も考えられます。
適応障害の例としては、以下のような状態が挙げられます。
女性が閉経を迎える際に、女性ホルモンのバランスが乱れることで起こる障害です。感情の起伏が激しくなり、ちょっとしたことでも泣いてしまったり、イライラが抑えられなくなったりします。
ある物事、出来事に対して過度な不安を感じる障害です。不安や恐怖によって、日常生活に支障をきたすものをいいます。人前で話すことができなくなってしまう場面緘黙症や発作をともなうパニック障害などが例に挙げられます。
命の安全が脅かされるような体験(災害、事故、戦争、DV)をしたことにより、強い精神的苦痛を感じたり生活に支障をきたしたりする障害です。今起こっているわけではないのに辛い体験を追体験(フラッシュバック)することがあり、辛さから涙を流すこともあります。
急に涙が溢れて止まらなくなってしまったらどのように対処すればいいのでしょうか。涙が出る仕組みから考えると以下のような方法が考えられます。
涙が出るきっかけとなった場所に留まることで、神経の興奮状態が続きやすくなります。一旦その場から離れて、お手洗いや人気の少ないところなど刺激が少ない場所に移動してみましょう。気持ちを高ぶらせる原因から離れることで、落ち着きを取り戻せるかもしれません。
涙が止まらない精神状態は、悲観的な気持ちが強くなったり過去の辛い経験を思い出したりすることでも起こります。その場合は、「悲しいのは今起きていることが原因ではないのだ」と捉えなおすことができると、自然と涙が止まりやすくなります。
上と似ていますが、自分がどんな気持ちなのかを冷静に見つめることが必要です。「辛い」「悲しい」など気持ちを書きだすことで、客観的に自分の精神状態をみつめることができ、涙を止めるきっかけをつかめます。
涙が流れている最中は、混乱してしまってどうして悲しいのかわからなくなってしまうと思います。相談相手がいれば、思いのままに気持ちを話してこころを落ち着けるサポートをしてもらいましょう。
強いストレスを感じ続け、うつ病になってしまうとわけもなく涙が止まらなくなることがあります。これは神経伝達物質であるセロトニンが減少することによるものです。
可能であれば、医療機関を受診して体とこころに起きている不調を相談してみてください。うつ病は涙が止まらないだけでなく、不眠や不安が続いたり自分自身が情けなく感じたりといったネガティブな変化がたくさん起きます。日常生活に支障をきたすようであれば、精神科や心療内科を受診することをおすすめします。
うつ病の方は「こんなことでくじけてはいけない」「私がうまく気持ちをコントロールできないのがいけないんだ」「些細なことで病院に行くのは恥ずかしい」と考えがちです。しかし、ちょっとでも「これは病気なのではないか?」と感じたら、専門家に相談していただきたいところです。
うららか相談室では、メッセージカウンセリングや電話カウンセリングなどでお気軽に専門家にご相談いただくことができます。「こんなことで」と思わずにご相談ください。
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匿名で相談ができるため、家族や友人に知られることなく、安心して相談していただくことが可能です。
涙が出ることはとても自然なことです。泣くことによって気持ちがスッキリしたりストレスを解消できたりすることもあります。しかし、とても悲観的な気持ちになったりつらい気持ちが続いたりすることがあれば、誰かに助けを求めることも必要です。泣いても気持ちが晴れないときは、専門家へ相談することも選択肢のひとつです。
<参考文献>
千寿製薬株式会社 目のしくみと涙のしくみ https://www.senju.co.jp/consumer/menoshikumi.html
みんなのメンタルヘルス総合サイト https://www.mhlw.go.jp/kokoro/symptom/2_01_02symptom.html