みなさんは自分をマイナス思考だと感じたことはありますか?日々、暮らす中でいいことがあっても素直に喜べないことはありませんか?「どうせいいことなんて続くはずはない」「次はもっと大きな不幸が待っているかも」という不安にさいなまれて、楽しさや喜びを感じることを恐れてはいないでしょうか。今回は、いいことをまっすぐに受け止めて、うつになりやすい考え方の癖から脱する方法をお伝えします。
目次
- おわりに
マイナス思考の方は、現実に起きていることや可能性をねじまげて悪いほうに結論付ける癖があります。以下のような経験はありませんか?
①過去に数回起こった失敗を「絶対」だと思ってしまう
友人と仲違いしてしまった経験など、努力が報われなかった経験はありますか?誰でも1度や2度はあると思います。
マイナス思考に陥ると、過去の失敗経験をパターン化してしまいます。新たに人間関係を築こうとしても「人にはいつも嫌われるから、今回もきっとうまくいかない」と思い込み、親しくなることを避けてしまいやすくなります。
②人生を振り返るといいことより悪いことのほうが思い出される
過去の経験や思い出について、悪いことばかり印象に残っていませんか?マイナス思考になると、物事の結論をマイナスに持っていこうとする意識が働きます。
成功した経験や楽しかったことなどを思い出せず「人生は失敗ばかりだった」と感じるのであれば、いい思い出を意識できなくなってしまっているのかもしれません。
③相手の心を読もうとしてしまう
マイナス思考になると、人の断片的な発言やしぐさからその人が何を考えているか決めつけてしまうことが起こりやすくなります。例えば、恋人の態度がいつもよりそっけなく感じると「きっと自分に怒っているんだ」「自分のことが嫌いになったに違いない」と相手の心を決めつけてしまうようなことが起こります。実際のところは、仕事で疲れていたり体調が悪かったり、他の要因があるのですが、そのことは頭に入らなくなってしまうのです。
④プラスの情報を否定する
マイナスの結論を出すためには、他の可能性を否定しなくては成り立ちません。努力を重ねていい結果が出ても「この先きっと罰が当たる」と不安になったり「自分にいいことがあるはずがない」とマイナスに捉えなおしたり、いいこともわざわざ悪いほうへ修正するようになります。
認知行動療法でネガティブな思考の癖に気づき、生きづらさを改善
こんな悩みはありませんか?自分らしく楽に生きるための考え方をカウンセラーと一緒に習得していきましょう。
マイナス思考の人には、ある程度共通した特徴があります。生まれ持った性格の影響もあれば、苦い経験から自分を守るために防衛線を張っている場合など理由はさまざまです。次のような性格的特徴を感じることはありますか?
①心配性である
危険や間違いがないか心配し、備えようとすることは悪いことではありません。ある程度の危機感や心配がないと、いざというときに対処できなくなることもあります。しかし、常に何かを心配している状態は健康的ではありません。
「大きな病気をしてお金が無くなってしまうかもしれない」と心配し、貯金をしておくことは悪いことではありませんが、どのくらい貯蓄があれば大丈夫なのかわからずに着るものや食べるものを制限していては、人生が楽しめなくなってしまいます。心配に対して、現実的な対応方法を考えられるようにしたいですね。
②人にどう思われているか不安
人にどう思われているかによって、自己評価が変わってしまっていませんか?自分の価値をきちんと評価できず、人にどう思われるかを基準としてしまうと、些細なことで動揺したり自分を卑下したりしやすくなってしまいます。
③悲観的になることが多い
「もうだめだ」「うまくいくはずがない」と悲観的になりやすい人は、悲観することそのものに現実的な根拠がないことがほとんどです。マイナス思考ゆえに前向きに物事をとらえることや楽観的になることができず、ひたすらに悪い想像ばかりをしてしまいます。
マイナス思考や悲観的な考えを持ってしまうのには、何か原因があるのでしょうか。マイナス思考になってしまう原因を3つご紹介します。
①生まれ持った素質
人には生まれ持った素質、遺伝があります。顔や体型などの外見的な特徴に遺伝を感じている方も多いのではないでしょうか。生まれたときに性格がすべて決まってしまうとは言えません。しかし、幸福を感じるための神経伝達物質セロトニンにかかわる遺伝子が短い人は不安を感じやすい傾向にあるなど、生まれ持った素質は多少なりとも思考に影響を与えています。一説には性格の50%は生まれ持った素質の影響を受けるといわれています。
②否定されることが多い家庭環境
育ってきた環境において、親に否定されることが多いと否定的な考え方が身につきやすくなります。親が完璧主義だったり多忙だったりすると、子どもに対して否定的な言葉をかけやすくなることもあります。否定されて育った子どもは「どうせダメなんだろう」と考える癖がついてしまい、それがマイナス思考を固定させてしまいます。
③ショックな出来事
大人になってからでも、大きくショックを受ける出来事に遭遇すると自己評価が落ちてしまい自信を失ってしまうこともあるでしょう。信じていた人に裏切られたり大事な仕事で結果を出せなかったりすると、心の傷を癒すことができず自信やプラス思考を取り戻せなくなってしまうこともあります。
ここまで、マイナス思考になりやすい状態について書いてきましたが、マイナス思考は悪いことなのでしょうか?マイナス思考の人は用心深く、ストイックになれるので、パフォーマンスがよいとされています。仕事や試験などに対し「これで失敗したら終わりだ」と思い詰める傾向にあるため、逆に失敗が少なく最大限の力を発揮できるのです。パフォーマンスだけをみると、マイナス思考の人のほうが現実的に良い結果を残しそうですね。
しかし、マイナス思考の人はいつも最悪の結果を想定し、不安を感じながら過ごしています。良い結果を残せれば一時的には楽になりますが、仕事や生活に課題ができるたびに神経をすり減らしストレスを感じながら過ごすことになるのです。その苦しさから不眠や過食、漠然とした不安感などうつ状態に陥ることもあります。肩の力を抜くことができずに苦しんでしまうことは健康的ではありません。
否定的な考え方を緩めて、マイナス思考を克服するには、等身大の自分や不安を受け入れることが必要です。以下のような方法で自分を見つめなおしてみましょう。
①起きている課題に対して他人と意見を交換する
自分を見つめなおすには、他人の視点を取り入れることが大切です。会議などではホワイトボードや模造紙を使ったワークを行い、自分に見えていることと他人に見えていることを視覚的に共有しましょう。個人で行えることとしては、ノートに不安や課題について書き出し、相談できる相手に新しい考え方を書き足してもらいましょう。
②カウンセラーに相談する
自分の不安がどこから来ているのか、どこから考えがマイナスに偏ってしまうのか、カウンセラーと共有して分析することはとても有効です。専門知識を持つカウンセラーはあなたがマイナス思考に陥りやすいパターンについて客観的に分析しアドバイスをすることができます。
マイナス思考は自分に身についてしまっている思考パターンのため、自分一人で克服することはとても大変です。ぜひ相談相手をみつけてください。
臨床心理士とは・・・
悩みを抱える人との対話をベースに、精神分析や心理療法を使って問題の解決をサポートする「こころの専門家」です。
臨床心理士の資格は厳しい学習条件が求められ、心理業界では長年にわたり根強い信頼性を持っています。
うららか相談室には、多くの臨床心理士が在籍しています。
メッセージ・ビデオ・電話・対面、あなたが一番話しやすい方法で、悩みを相談してみませんか。
現実的に課題に対処することと、マイナス思考による底なしの不安を抱えることは異なります。自分の心を楽にして、冷静に先のことを考えていきたいですね。うららか相談室ではカウンセラーと一緒に自分の考え方の癖を知ることができます。ひとりで悩まずにぜひご相談ください。
(参考文献)
・嫌な気分よさようなら デビットDバーンズ 星和書店 2013
・性格は遺伝で決まるって本当ですか? 公益財団法人日本心理学会 https://psych.or.jp/interest/ff-07/(参照:2020-05-04)