自分の感情の起伏の激しさに悩む人は少なくありません。
ちょっとしたことでイライラしたり、急に落ち込んでしまったり、自分でも感情のコントロールが難しく困っている人もいらっしゃるのではないでしょうか。
どうして自分の感情の起伏が激しくなったのか、その原因がわからず、対処ができないために困ることもあるかもしれません。
また、家族や恋人など身近な人の感情の起伏の激しさに振り回されて、つらいと感じる人も多くいます。身近な人の感情が、いつ、どのような形で表れるのかわからず、対応に苦慮する人もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、このコラムでは、感情の起伏が激しい人の特徴や原因について解説します。また、感情の起伏の激しさと精神的な病気の関連や、その治し方・対処法についても解説します。
目次
- おわりに
そもそも、「感情の起伏が激しい」とは、気分や感情が短い期間に大きく揺れ動く状態を表しています。「気分の浮き沈みが激しい」と言い換えることもできるでしょう。些細なことで一喜一憂したり、さっきまで怒っていた人が数分後には落ち込んでいたりするなど、気分や感情の振れ幅が大きな波を描いているような状態です。
感情の起伏が激しい人には、以下のような特徴があります。
◆気持ちのコントロールが難しい
感情の起伏が激しい人は、気持ちのコントロールが苦手である場合が多いです。
たとえば、怒った時に高ぶった感情の鎮め方がわからず、怒鳴ったり、人や物に当たったりしてしまう人が挙げられます。また、落ち込んだ時にどうすれば自分の気持ちを切り替えて前向きな気持ちになれるのかがわからず、深く落ち込んでしまう人もいます。
これらの例のように、感情の起伏が激しい人は、気持ちが高ぶった時や沈んだ時に、自分の気持ちをコントロールすることに難しさを感じている場合が多いでしょう。
◆些細なことで機嫌や感情が左右される
感情の起伏が激しい人は、些細なことで機嫌や感情が左右される場合があります。
周りの人には「そんな些細なことで不機嫌になるの?」と思われるような出来事で不機嫌になることがあります。たとえば、雨が降っているだけで不機嫌になる、電車の中が混雑しているだけで不機嫌になる、といったケースなどです。
一方で、他者からちょっとしたことで褒められたり、ゲームで勝ったりするなど、些細なことでも喜びが大きく、急に気分が高揚するケースもあります。
◆周囲からの影響を受けやすい
感情の起伏が激しい人の中には、周囲の空気感や他者の反応を敏感に察知し、その影響を受けやすい人がいます。
たとえば、職場がピリピリしている雰囲気だと、それに影響されて、自分もイライラしてしまうケースがあります。他にも、家族が元気のない様子だと、その影響を受けて、自分も落ち込んでしまうケースもあります。
◆周期的に感情が大きく揺れ動くこともある
感情の起伏が激しい人は、感情の波が周期的に大きく揺れ動く場合もあります。
その周期は、人によって異なりますが、1日の中で大きく変動する周期の人もいれば、数日おき、数週間おきに変動する周期の人もいます。女性で月経の周期に合わせて感情が変動する場合は、後に解説する月経前症候群などの可能性もあります。
朝は落ち込んでいた人が夜になるとハイテンションになる、数時間おきに感情が上がったり下がったりするなど、周期的に感情が大きく揺れ動くと、自分自身の感情の波に振り回され、疲れてしまうこともあるでしょう。
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感情の起伏が激しい原因は1つだけとは限りません。次のような複数の要因が重なった結果、感情の起伏が激しくなる場合があります。
【ストレス】
ストレスは、感情面に大きな影響を与えます。具体的なストレス要因として、以下のようなものがあります。
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・ライフイベントによる環境の変化:進学、就職、昇進、結婚、妊娠・出産、転居など。
・気象の変化:季節の変わり目、気圧や気温の変化など。
・人間関係の問題:家族、友人、恋人、職場の同僚・上司・部下などの人間関係や、ご近所付き合い、オンラインゲームやSNSでのつながりなど。
・仕事・学業の問題:勉強、学校や塾の成績に関すること、仕事の業績や仕事量・仕事内容に関する問題。
・金銭問題:生活に関わる出費や借金などの問題。
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【生活リズムの乱れ】
生活リズムが乱れることにより、精神的に不安定になりやすく、感情の起伏が激しくなる可能性があります。特に、睡眠不足になると、感情をコントロールしにくくなり、ネガティブな感情に敏感になりやすいため、感情の起伏が激しくなる要因となる場合があります(*1)。
【性格・気質】
その人の性格や気質によって、些細なことに影響を受け、感情の起伏が激しくなる場合があります。
たとえば、幼少期に親・養育者との適切な愛着が形成されなかったことが性格面に影響し、特に恋愛関係において、感情が極端に揺れ動くケースがあります。
他にも、「繊細さん(*2)」と呼ばれるHSP(Highly Sensitive Person)の傾向がある人は、とても敏感で刺激を受けやすい気質を生まれつき持っていると考えられています。感受性が高く、相手の感情やその場の雰囲気など、周りの人が気づかない小さな変化を敏感に感じ取るため、気疲れしやすく、ストレスを感じやすい傾向にあります。そのため、HSPの人は、ストレスによって感情の起伏が激しくなる場合や、周囲の人の感情に影響されて自分自身の感情まで不安定になる場合があります。
※HSPは医学的な診断名ではありません。研究上は、音や光、他者の感情など、周囲からの刺激を敏感に受け取り、深く処理する傾向を「感覚処理感受性」と呼ぶことがあります。
【ホルモンバランスの乱れ】
ホルモンバランスの乱れが、感情の起伏の激しさの要因となる場合があります。女性では、妊娠・出産、月経、更年期などにより女性ホルモンのバランスが変化した際に、感情の起伏が激しくなる場合があります。また、男性であっても、更年期の男性ホルモンの減少により、感情の起伏が激しくなる場合があります。ホルモンバランスの変化に関連する代表的な状態として、次のようなものがあります。
〔月経前症候群(PMS)/月経前不快気分障害(PMDD)〕
PMSは、月経開始前の3~10日頃から精神的・身体的な症状が表れ、月経が始まると症状が軽くなるか、消失する状態です。精神面の不調として、イライラや落ち込みなどの症状が見られます。そのため、生理前になると感情の起伏が激しくなる人もいます。
PMSの中でも、抑うつ気分、不安・緊張、情緒不安定、怒り・イライラなどの精神症状が特に強く、日常生活に支障をきたす場合は、「月経前不快気分障害(PMDD)」と診断されることがあります。精神的に不安定となり、感情の起伏が激しくなることもあります。
〔更年期障害〕
更年期障害は、女性は閉経前後の約10年(45~55歳頃)、男性は40代以降に、女性ホルモン(エストロゲン)・男性ホルモン(テストステロン)の減少により、心身の症状が表れます。精神面の症状として、イライラ、抑うつ気分、不安、情緒不安定などの症状がみられ、感情の起伏が激しくなる可能性があります。
【身体的な病気】
身体的な病気は、一見すると感情には関係ないように思われますが、身体の不調がストレスとなり、感情の起伏に影響を与える場合があります。
また、身体的な病気の中でも、甲状腺機能に関わる病気は、精神面に影響を及ぼすことがあります。
〔甲状腺機能低下症(橋本病など)/甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)〕
甲状腺ホルモンは、甲状腺から分泌される生命を維持するために必要不可欠なホルモンです。
橋本病などの甲状腺機能低下症の場合は、疲れやすく、気力がなくなり、気分が落ち込むことがあります。
バセドウ病などの甲状腺機能亢進症の場合は、不安感が強まったり、些細なことにイライラしたりすることがあります。
「感情の起伏が激しいのは、何かの精神病ではないか?」と心配になる人もいるのではないでしょうか。
感情の起伏が激しいからといって、必ずしも精神的な病気とは限りません。しかし、感情の起伏の激しさが、精神的な病気の症状として表れる場合もあります。
そこで、感情の起伏の激しさが症状として表れることがある精神的な病気(精神疾患)について解説します(参考*3)。
◆双極性障害
双極性障害は、気分が落ち込む「うつ状態」と、気分が高まる「躁状態」または「軽躁状態」を繰り返す心の病気であり、感情の起伏の激しさが顕著にあらわれます。
「躁状態」や「軽躁状態」は、気分が高揚し、思考・意欲・行動面のコントロールができなくなる状態をいいます。具体的には以下のような症状があります。
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【躁・軽躁状態の症状】
・気分が異常に高揚している状態が持続し、開放的であり、イライラして怒りっぽい。
・普段の行動とは明らかに異なる以下のような変化が表れる。
①自尊心が肥大、誇大する
②睡眠欲求が減る
③普段より多弁であったり、しゃべり続けようとする切迫感がある
④次々とアイディアが浮かび、いくつもの考えがせめぎ合っている
⑤注意散漫になる
⑥目標を達成しようとする活動が増える、または焦燥感が出てくる
⑦困った結果につながる可能性が高い活動に熱中する
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双極性障害には「Ⅰ型」と「Ⅱ型」という2つのタイプがあります(*4)。
〔双極性障害Ⅰ型〕
社会生活に著しい支障をきたす躁状態がある場合に診断されます。
〔双極性障害Ⅱ型〕
躁状態よりも症状が穏やかな軽躁状態と、一定の基準を満たすうつ状態の両方を経験している場合に診断されます。軽躁状態は本人や周囲がそれほど困りごととして認識しない程度であることも少なくありません。
◆うつ病
うつ病は、落ち込んだ憂鬱(ゆううつ)な気分が続き、物事への興味や喜びを感じにくくなるといった特徴があります。一方で、イライラするなどの症状が表れることもあります。
うつ病に見られる症状は以下のとおりです。
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【症状】
・憂鬱な気分になる/気分が落ち込む
・イライラする
・物事に興味がもてなくなる/喜びを感じられなくなる
・食欲がなくなる(体重減少)/食欲が増加する(体重増加)
・眠れない/寝過ぎる
・焦燥感がある
・疲労感がある/やる気が起きない
・自分には価値がないと感じる/必要以上に自分を責める
・考えがまとまらない/集中力がなくなる/決断できない
・死にたい気持ちになる
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◆パーソナリティ障害
パーソナリティ障害とは、思考、行動、社会的機能(人との関わり方など)において、長期的で一貫した不健全なパターンを示す精神疾患です(*5)。
精神疾患の国際的な診断基準であるDSM-5では、パーソナリティ障害(パーソナリティ症群)はA群、B群、C群、その他に分けられます。その内、B群は演技的、感情的、移り気な傾向があり、自分の気持ちをコントロールすることが難しい場合があります。そのため、感情の起伏の激しさが見受けられることもあります。
B群パーソナリティ障害には、以下の4つが含まれます。
〔境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ障害)〕
対人関係、自己像、感情などが不安定で、感情の起伏が激しい特徴があります。見捨てられることを恐れ、激しい怒りや抑うつにつながることもあります。
〔反社会性パーソナリティ障害〕
他者を自分の思う通りに操ったり、利用したり、他者の権利を無視・侵害するという特徴があります。衝動的で、些細な刺激によって攻撃的になったり、暴力をふるったりすることがあります。
〔演技性パーソナリティ障害〕
自分が注目の的になっていない状況に不満を感じ、過度に他者の注意を引こうとするという特徴があります。感情が急に変化し、感情を演技的に仰々しく表現することがあるため、「感情の起伏が激しい人」に見えることがあります。
〔自己愛性パーソナリティ障害〕
自分が重要である、自分は特別であるという誇大な感覚があり、他者に過剰な賛美を求めるという特徴があります。また、自分の希望が他者に無条件に聞き入れられることを期待する傾向があります。自分の求めていることが叶えられないことにより、苛立ちや怒りなどの感情が激しく高まることがあります。
参考:ADHD(注意欠如・多動性障害)
精神疾患の国際的な診断基準であるDSM-5によると、ADHDの症状として、感情の起伏の激しさは含まれていません。しかし、ADHDの特性から、感情の起伏が激しい人のように見える場合があります。たとえば、以下のような場合です。
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・「多動性」によって声のボリュームを調整しにくく、会話中に場にそぐわない大きな声を出してしまう。
・「不注意」によって気が散りやすく、話を聞いていないように見える。
・「衝動性」によって人の話を遮ったり、話しすぎたり、話題が次々と変わったりする。
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ADHDの人は、上記のような特性によって、周囲の人から「感情の起伏が激しい人だ」と思われる可能性があります。
「感情の起伏が激しいのを治したいけど、何から始めたら良いのかわからない」という人もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは、感情の起伏が激しいことへの対処法や治し方をいくつかご紹介します。
◆自分の感情の起伏について記録をする
感情の起伏が激しい人は、どのようなタイミングで、何をきっかけに自分の感情が上がったり下がったりしたのかを振り返り、記録をつけることをおすすめします。
自分の感情の起伏のパターンを把握できると、対処法を考えやすくなります。
◆生活リズムの改善
感情の起伏が激しくなる要因の一つとして、生活リズムの乱れが挙げられます。
生活リズムを規則正しく整えることで、感情の波が安定しやすくなります。
特に、睡眠リズムを整えることは、気分の安定にもつながります。生活リズムが乱れている場合は、まず睡眠から整えていくとよいかもしれません。朝起きて、日光を浴びると、体内時計がリセットされ、睡眠リズムが整いやすくなります。朝に散歩をしたり、ベランダに出て深呼吸をしたりすることがおすすめです。
◆心理療法(カウンセリング)
ここまでに挙げた感情の起伏のパターンを把握することや、生活リズムの改善について、1人で進めることが難しい場合には、カウンセラーに相談しながら取り組む方法があります。
カウンセリングでは、カウンセラーと一緒に、感情の起伏のパターンや、感情の起伏が激しい原因について考えることができます。また、感情の波を落ち着かせるために、自分に合った対処法を一緒に考えることも可能です。
たとえば、いつも同じような出来事をきっかけに強い怒りが生じる場合には、カウンセリングを通じて、その出来事に対する見方・捉え方を変えることで、怒りを生じにくくなるかもしれません。また、カウンセリングで、怒りをコントロールする方法(怒りへの対処法)がわかれば、怒りが生じたとしても、感情の起伏を小さくし、安定させていくことができる場合もあるでしょう。
感情の起伏の激しさに対処する方法の一つとして、カウンセリングで相談してみてはいかがでしょうか。
◆医療機関の受診
ホルモンバランスの乱れや身体的な病気によって、感情の起伏が激しくなる場合もあります。感情面だけでなく身体面の症状も表れている場合には、内科や婦人科などの医療機関の受診を検討してみてもよいかもしれません。
また、何らかの精神疾患の症状として、感情の起伏が激しくなっている場合もあります。その場合には、精神科や心療内科などの医療機関を受診し、必要に応じて気分を安定させるための薬が処方されることで、感情の起伏の激しさが改善される可能性があります。薬物療法以外に、医療機関での心理療法(カウンセリング)により、感情の起伏の激しさを改善していくアプローチが行われる場合もあります。
感情の起伏の激しさを改善するために、症状に合わせて医療機関を受診することを検討してみてもよいかもしれません。
ここまで、感情の起伏が激しい人の特徴や原因、、精神的な病気との関連、治し方・対処法について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
感情の起伏の激しさは、自分ではどのように対処すればよいのかわからず、困っている人も多いのではないでしょうか。
カウンセリングでは、感情の起伏の激しさについて、その人に合った形で、感情をコントロールする方法や対処法を一緒に考えていくことが可能です。また、感情の起伏が激しい人の身近な人が、どのような関わり方をすればよいのか、具体的な対応方法についても、一緒に考えることができます。
自分自身や身近な人の感情の起伏の激しさに悩んでいる場合には、一度カウンセリングで相談してみてはいかがでしょうか。
参考文献
*1:柳沢正史 監修 (2024) 「快眠法の前に今さら聞けない睡眠の超基本」 (朝日新聞出版)
*2:武田友紀 (2020) 「『気がつきすぎて疲れる』が驚くほどなくなる 『繊細さん』の本」 (飛鳥新社)
*3:日本精神神経学会 日本語版用語監修、髙橋三郎・大野裕 監訳 (2023) 「DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル」 (医学書院)
*4:山本晴義 監修 (2015) 「図解やさしくわかる うつ病からの職場復帰」 (ナツメ社)
*5:黒木俊秀 日本語版監修、小野良平 訳 (2024) 「ひと目でわかる 心のしくみとはたらき図鑑」 (創元社)