通勤中や仕事中に突然の胸の痛み、めまいやふらつき、吐き気や腹痛、動悸や息切れなどが起きて困った経験はありませんか?もし特定のきっかけもなくこのような発作が起きる場合、それはパニック障害かもしれません。パニック障害になったら、仕事は続けられないのでしょうか?仕事中にパニック発作が起きた場合はどうすれば良いの?今回は、パニック障害にまつわるこんな疑問について解説します。
目次
- パニック障害とは
- おわりに
パニック障害とは、突然強い恐怖や不安感とともに、立っていられないような発作(パニック発作と言います)が起きる病気です。パニック発作が起きているときは「死んでしまうかもしれない」というほどの不安に襲われますが、病院に行っても異常は見つかりません。
対処法のないパニック発作に翻弄され、「また発作が起きたらどうしよう」という不安やストレスで、日常生活や仕事に支障が出てしまうこともあります。
調査によると、100人に1人はパニック障害を患っており(※「パニック障害」 メディカル・ガイド- 診断から回復まで. 講談社, 2006)、また、男性よりも女性がかかりやすいと言われています。
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パニック障害は何かのきっかけで発作が起こるのではなく、いつもの生活の中で原因もなく突然発作が起こるのが特徴です。若い人や女性がなりやすい病気ですが、誰にでもかかる可能性はあります。
原因は脳内の不安に対する神経系の機能異常が関係していると言われていますが、まだはっきりとしたことはわかっていません。
発作の頻度には個人差がありますが、一日に何度も発作が起こることもあります。そのため、いつ発作が起こるかわからず常に不安を抱えながら過ごしている方が多く、また不安な状態が長く続くことで、うつ病になってしまう方もおられます。
パニック障害は、脳内の神経伝達物質に異常があると考えられているため、セロトニンという神経伝達物質の作用を強めるための抗うつ剤が処方されます。この抗うつ剤は効き始めるまでに2~4週間かかるため、抗うつ剤が十分な効果を出すまでの間は、あわせてベンゾジアゼピン系抗不安薬を用いて発作をおさえます。こうして服薬調整によってまずはパニック発作を起こりにくくさせます。
服薬とメンタルクリニックの通院だけで症状が改善する方もいますが、精神療法を併用することで早期に症状をコントロールすることができるようになると言われています。例えば、認知行動療法や暴露療法などです。
精神療法の治療は、薬が効いて発作が減ってきた段階で、「発作が起きたらどうしよう」という予期不安などに対処していきます。最終的には、医師と相談しながら徐々に薬の量を減らしていき、普通の生活が送れるようになるまで回復できます。
こういった精神療法は、精神科やメンタルクリニックの短い診療時間では十分には受けられない場合が多いので、カウンセリングも行ってくれる心療内科やカウンセリングサービスなどを活用して、カウンセラーと一緒に取り組むことをお勧めします。
服薬と精神療法で症状をコントロールができるようになる方もいる一方で、そうでない方もいらっしゃいます。いつ発作が起こるかわからないという点を考えると、車の運転など危険な操作を伴うお仕事は避けた方が良いでしょう。接客やコールセンターなど、お客様と接するお仕事も「発作が起きたときの逃げ場所がない」という点で同様に避けた方がよさそうです。
ではどのようなお仕事が向いているかというと、対外的な電話対応を伴わない事務系や、客先での作業がないITエンジニアなどのパソコンを使うお仕事、倉庫内でのピッキングなどの軽作業、店舗のバックヤードなど、ひとりで落ち着いて取り組めるお仕事が挙げられます。
いずれにしても、パニック発作が起きたときの対処法や、上司や同僚などの理解があることでより働きやすくなるでしょう。
パニック障害の治療には1年ほどの時間がかかると言われています。早く仕事に復帰しなければと焦る気持ちになるかもしれませんが、再発防止のためにも、しっかりと腰を据えて治療を受けましょう。治療から6ヶ月経つと障害者手帳の申請ができるようになり、手帳を取得出来たら税金などの控除を受けられるようになるので、これらも活用できるとよいですね。
いよいよお仕事を再開するというときには、障害者就業・生活支援センターで日常生活や就労についてのアドバイスを受けることができます。また、就労移行支援事業所(リワーク)では、原則2年間、働くために必要な知識や能力の向上のための訓練を受けたり、就職支援と職場への定着支援を受けることができます。障害者手帳を持っていれば、ハローワークで障害者向け求人に応募することもできます。
就労移行支援を受けていれば、履歴書の空白期間や、パニック症状が出たときの対処法をどのように書いたらいいのか、といった支援を受けることもできます。
今のお仕事を続けながら治療をしていく場合には、一番にはストレスをためないことが大切です。心理的ストレスだけでなく、睡眠不足などの身体的ストレスもパニック発作に繋がりやすくなります。また、カフェインやニコチン、アルコールなどもパニック発作が起こりやすくなると言われています。これらの摂取を避け、心身ともにゆとりある生活を心がけることで、パニック発作が起こりにくくなっていきます。服薬をしている場合は勝手に薬をやめたりしないこと、そしてカウンセラーと一緒に認知行動療法に取り組みながら、決して無理をしないようにしましょう。
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もし仕事中に発作が起きてしまったときは、楽な姿勢をとり、頓服の抗不安薬を飲むか、認知行動療法の考え方、マインドフルネスなどを活用して、こころを落ち着かせることが大切です。そのためには、あらかじめ医師やカウンセラーと、発作が起きたときにどうしたら良いのかを話し合っておくとよいでしょう。
ヘルプマークを取得して、周囲に協力を求めることも有効です。パニック障害はひとりで治すのは難しい病気です。誰にも頼らないでいると、プレッシャーによってストレスが蓄積してしまいます。また、発作が起きたときに周囲の目が気になって、余計に不安を感じてしまったりすることもありえます。家族や直属の上司、同僚などの理解が得られるようにして、「発作が起きても大丈夫」という状況をつくることが大切です。
そのためには、パニック発作について周りの人に知ってもらう必要があります。突然発作が起こったときに、事前の知識がないと会社側としても雇用し続けるのが怖くなってしまい、離職を勧められてしまうことになりかねません。発作は長くても10分程度であることや、薬を飲むことで対処できることなどを事前に会社に伝えておくとよいでしょう。
パニック障害はひとりで対処しようとせず、周囲に頼ることで早期に発作への対処ができるようになる病気です。医師やカウンセラーとよく話し合い、焦らずじっくりと治療に取り組むこと、そして家族や上司にどのような病気なのかをしっかりと説明することで、仕事を続けながら治療をすることができます。
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