職場環境、家庭環境とも特に不満もなく、趣味もあり毎日楽しく暮らしている。
それなのに、なんだか疲れやすかったり元気の出ないことはありませんか?
また、ご自身でなくとも、ご家族がそういったことを感じていたり、意味もなくイライラしていて、不安になることはありませんか?
もしかしたら、毎日の食事で改善できるかもしれません。
目次
メンタルの不調を感じ、精神科のある医療機関を受診する場合、一般的に投薬や認知行動療法などの精神療法がとられます。
近年では、それらの治療と並行して、栄養面からの治療や予防を試みる栄養精神医学が注目されています。
食事や栄養、腸管の状態が、身体症状のみならず、精神症状・向精神薬にも影響を与えることが分かってきたことがその背景にあります。
栄養と精神の関係は、未だ十分に解明されてはいない部分もありますが、食事・栄養の影響で精神症状が改善したり、腸内環境の悪化が精神症状に影響することを示すデータは増えています。
例えば、疲れている時、無性に甘いものを欲することはありませんか?
私自身、なにかストレスを感じた時は、ご褒美と称してカロリーの高いものを食べてしまいがちです。
これには実はホルモンが関係しており、ストレス誘発性摂食と名前がついています。
慢性的にストレスを感じている場合、副腎からコルチゾールというストレスホルモンが分泌されます。
このコルチゾールは、ニューロンペプチドYという食欲を高める物質の分泌を促したり、食欲を抑えるレプチンという物質の濃度を低下させる作用があります。
その結果、食欲を高めると考えられています。
では、なぜコルチゾールが高まり、過食になることが精神状態の不安定さをもたらすのでしょうか?
それは以下のような反応が、身体の中で進んでいくからだと考えられています。
慢性的なストレスによりコルチゾールが多い状態が続く
→過食になる
→肥満に至る
→脂肪細胞がふくらみ、炎症性サイトカインという物質を放出する
→慢性的に軽度の炎症状態となる
→脳を傷害するような作用のある物質が生産され、セロトニンやメラトニンといった気分
の安定や睡眠に欠かせない物質の生産が減る
→精神状態が不安定になる
このような理由で精神症状の不安定を招いている場合、根本的なストレスを投薬や認知行動療法により治療するといった方法に加え、食生活をコントロールして、肥満から標準体重に戻していくことで、改善が期待できる可能性があります。
ご自身がストレスを特に感じていないにも関わらず、気分の浮き沈みが見られたり、きちんと睡眠を取っても疲れが取れなかったり、またそういった症状の改善について一般的な治療やカウンセリングで効果が得られなかった方は、よりいっそう食生活を整えることをおすすめします。
食生活を整えることで、炎症状態を緩和させたり、気分を安定させるホルモンを増やすことをサポートできるからです。
カウンセリングを通じて、こころのメンテナンスをしてみませんか?
うららか相談室では、臨床心理士などの専門家にメッセージ・ビデオ・電話・対面でお話していただくことができます。
次のチェックリストにあなたは何個あてはまるでしょうか?
✔ 1日3食とれていない
✔ 食事のバランスを特に意識しないことが多い
✔ 和食より洋食が好きだ
✔ コンビニ食、外食が多い
✔ 野菜不足である
✔ 魚より肉を多く食べる
✔ 豆類をとる習慣がない
✔ 貧血ぎみだ
✔ 便秘がちorお腹をくだしがち
✔ 便やおならがくさい
一つでも当てはまった方は、食事内容改善の余地ありです。
まず、食生活を整えることにおいて、基本となるのはバランス良く食べること。
自分の食事バランス、とれていると自信を持って言えますか?
一見しっかり食べていても、タンパク質、野菜が実は不足ぎみ、といった内容の食事を続けたとします。
その場合、必要なエネルギーは満たしているのに、ビタミン・ミネラル・葉酸やアミノ酸の不足に陥っていく可能性があります。
この飽食の時代にありがちな、「食事をしっかりとっているのに、実は栄養失調でした」というケースです。
ある種のビタミン・ミネラルや葉酸、アミノ酸は不足するとうつ病のリスクを高めるので、このケースに当てはまる方は、メンタル不調になりやすい食生活と言えるでしょう。
メンタル不調に関連する栄養素の一例として、ミネラルの一種である鉄分を挙げてみます。
この摂取量が不足すると、貧血になることは皆さんよくご存知でしょう。
特に女性はライフステージと共に、貧血とずっと付き合っていくこととなります。
鉄分不足が顕著になる女性のライフイベント
・月経での出血(平均一回に20~140ml程度)
・妊娠中の、胎盤を作ったり、胎児に酸素を送るため血色素であるヘモグロビンの必要量が増えることによる、鉄分の必要摂取量の増加
・出産での出血(平均300ml程度)
こうした状況の中で、鉄分の摂取不足が続き貧血となる人は多いです。
この時期に、陥りやすいメンタルの不調が「PMS(月経前症候群)」「産褥期うつ」「産後うつ」です。
女性ホルモンの変動に加え、鉄分不足がその原因の一つと考えられています。
貧血の時は、疲れやすい、ぼーっとすることが多い、イライラする、といった症状が出やすいです。
月経時や、産前産後にこれらの症状を経験したことがある方は多いのではないでしょうか。
また、「栄養バランスはバッチリ!でも便秘やお腹がゆるい」といった悩みを持っている方も要注意です。
精神の安定とお腹の調子は密接に関係してきます。
腸には腸神経系という1億個以上の神経細胞からなる神経系があり、脳と相互作用をしているからです。
腸内環境を整えることは、身体だけでなくこころを整えることにつながるわけです。
大事な場面で、お腹がキュルキュル痛くなって、集中できなかった。。。
なんて経験がある方は、腑に落ちやすいですよね。
腸内環境を整えるには腸内細菌叢の善玉菌と悪玉菌のバランスを良好に保つことが大切です。
・油ものや肉ばかり好んで食べる
・乳製品・野菜不足
・大豆製品をとる習慣がない
・発酵食品をとらない
こういった食生活にあてはまる方は、腸内環境が乱れ、メンタルヘルスに影響する可能性があります。
では、どんな栄養素がメンタルに影響を与えるのでしょうか。
以下は、不足するとうつ病のリスクを高める栄養素と、その栄養素を多く含む食材です。
〈ビタミン・ミネラル〉
野菜や果物、魚介類、レバー、赤身肉、大豆製品等に多く含まれます。
ビタミンB1:豚肉、玄米、ごま
ビタミンB2:鮭、レバー、大豆製品、のり、卵
ビタミンB6:にんにく、パセリ、ナッツ、バナナ、まぐろ
ビタミンB12:魚介類、のり、レバー
ビタミンD:きのこ類、魚介類
葉酸:葉物野菜、のり、レバー、大豆製品
鉄分:赤身肉、レバー、魚介類、青菜、大豆製品
亜鉛:魚介類、大豆製品、レバー、牛肉
〈アミノ酸〉
タンパク質を構成するのがアミノ酸です。いろいろな種類のタンパク質をとって、アミノ酸を摂取しましょう。
魚、肉、卵、大豆製品、乳製品がタンパク質を多く含みます。
トリプトファン:魚、卵、大豆製品、乳製品、肉、バナナ
メチオニン:魚介類、乳製品、卵、ナッツ類
チロシン:乳製品、卵、魚、大豆製品
〈不飽和脂肪酸〉
青魚に多く含まれる、DHAやEPAといった脂肪酸です。体内での炎症を御制する作用や、セロトニンやドーパミンといった、気持ちを安定させる作用のあるホルモンに関係があることから、メンタルヘルスの向上に有効ではないか、とされています。
DHA、EPA:魚類、ナッツ類
上記のような栄養素を含む食材を上手に献立に取り入れつつ、炭水化物・タンパク質・脂質のバランスのとれた食事をこころがけましょう。
(過剰症の可能性があるため、上限量が定められている栄養素もあります。たくさんとればいいというわけではなく、適量が大切です。)
あわせて、適度な運動や休息もとりましょう。
もっと詳しく栄養とこころ・身体の関係について知りたい方、現在の食生活を振り返ってみて疑問を持たれた方、小さなことでもお気軽にご相談下さい。
毎日の食事内容をお聞きし、改善のポイントや、不足している可能性のある栄養素についてご紹介します。あなたの今の生活に合った取れ入れ方を提案したり、献立例をお作りすることも可能です。
(参考文献)
こころに効く精神栄養学/功刀浩
食品成分データベース/文部科学省
n-3系多価不飽和脂肪酸と気分障害/理化学研究所 脳科学総合研究センター
わが国における鉄欠乏,鉄欠乏性貧血女性の増加と栄養/小阪昌明