他人からどう見られているのか気になることは誰しも経験があることではないでしょうか。自分の見た目が許せない、鏡を見たくない、顔のコンプレックスが気になってつい鏡とにらめっこしてしまう…。そのせいで、外出に時間がかかったり、引きこもってしまったりしていませんか?「顔、身体など外見が他人より劣っている」と非常に不安になったり、ストレスを感じている状態をコントロールすることが難しいのは、醜形恐怖症という病気かもしれません。
目次
- 醜形恐怖症とは?
- 醜形恐怖症の原因
- おわりに
醜形恐怖症(BDD:Body Dysmorphic Disorder)とは、顔、身体、肌など自分の外見を非常に醜いと感じ、極端に不安やストレスを感じている状態をいいます。毎日鏡を何時間も見たり、逆に鏡が怖くて見ることができなくなったり、日常生活に影響を及ぼしてしまうほど外見に対して不安を感じることも含まれます。中には、整形を繰り返す人も少なくありません。また、醜形恐怖症は、特に女性が多いというわけではなく、性別に差はありません。
醜形恐怖症を抱える人は、自分が醜形恐怖症であると自覚することが難しく、医師に相談することが少ないため、一人で抱えこんで何とかしようと必死になってしまうことが多いです。
何度も鏡を見てしまったり、鏡やガラスなど自分が映りこむものを徹底的に排除してしまったり、身なりを整えなければと何時間も必死に外見を気にするといった強迫的な行動をとることが醜形恐怖症には多くあります。国際的な診断基準であるDSM-5(アメリカ精神医学会)では、醜形恐怖症は強迫性障害関連症群に含まれ、最新の診断基準であるICD-11でも強迫性症候群のひとつとされています。
あまりに容姿・外見が気になり、不安や恐怖を感じることから、非常に精神的に疲れてしまいやすいため、うつ病を併発するリスクは非常に高く、社会や人の視線に対して恐怖を感じるため、強迫性障害や摂食障害、アルコールや薬物の乱用を併発するリスクも高いといわれています。
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などの行動はありませんか?
醜形恐怖症の外見の悩みは、特に顔に対しての不安が多いように思われていますが、顔の不安だけの症状ではありません。身体や肌、歯、髪など外見にまつわる不安は様々です。男性の場合は男らしく変化した部分(髭や身体、髪など)、女性の場合は周囲と自分の身体を比較してしまう傾向があるため顔や体型などに不安を感じやすいと言われています。不安が強いと、登校や出勤、外出が難しくなり、遅刻が増えたり、引きこもってしまうなどの日常生活への影響が出てきます。
日常生活では、鏡や窓ガラスといった顔や外見が映るものに対して不安や恐怖を感じるため、そのような物を排除しようとする強迫行動もみられることがあります。一方で、例えば、一度髪型が気になるとなかなか鏡から離れられなくなったり、化粧が気になって何度も確認してしまうことに時間を費やしてしまい、他のやるべきことが進まない、予定の時間に遅れてしまう…といったほど、長時間鏡を見てしまうこともあります。鏡を排除することと離れられなくなることは、矛盾しているようですが、外見に長時間とらわれてしまうことが共通しています。
誰しもコンプレックスはあるものですが、コンプレックスの健全な範囲と醜形恐怖症の判別は難しいと言われています。醜形恐怖症は、異常なほどの不安があるのにその状態を相談することは少なく、自分が病気であると感じにくい病気です。自分では気づきにくい上に、人に相談しても、“気にしすぎ”、“あまり外見の欠点は気にならない”…となかなか他人には理解されないことも重なり、自分ひとりで抱えこみやすいです。そのため、治療をしたり、医療機関や相談機関に相談したりすることができず、症状が悪化し、自由に行動できる時間が減ってしまいます。身なりが気になり遅刻してしまう、外見が気になり外出が難しい・怖いなど、日常生活に支障がある場合は、医療機関や相談機関に相談する目安です。
醜形恐怖症のはっきりとした原因はわかっていませんが、虐待やトラウマ、アイデンティティ、メディアの影響など様々な要因が重なっている可能性があると言われています。
その中でも、虐待の影響は大きいのではないかと言われています。親から身体の欠点に対して否定的な言葉をかけ続けられることで、他人から見ると大したことはないものでも、確信的なものと思い込んでしまいやすく、外見にこだわってしまうことがあります。また、友達や他人からの「目が小さいね。」「鼻が特徴的だね。」「髪型が変だね。」「肌が汚いね。」といった言葉をきっかけに、どう見られているか気になり発症してしまうこともあります。
また、理想像が高い人や完璧主義な人、人との違いに敏感な人は、醜形恐怖症のリスクが高いと言われています。理想に追いつこうと努力をしますが、理想はどんどんエスカレートしてしまうため、理想に到達することは難しく、長時間身なりを整えたり、整形を繰り返すといった行動になってしまいます。
醜形恐怖症は、薬物療法や認知行動療法(CBT)という心理療法が効果があると言われています。
認知行動療法とは、認知(物の捉え方:どう感じ、どう行動するのか)の歪みを修正し、ストレスを軽減し、気持ちを楽にしていくものです。外見へのとらわれを見直し、修正していくことで症状を改善していきます。
多くの醜形恐怖症の患者さんがうつ病を併発しているといわれていますが、この場合はうつ病の治療を行うことで醜形恐怖症の症状も軽減することがあります。
また、カウンセリングでは、外見に対する独特な捉え方について考え直したり、日常生活で困っていることを軽減するために行動を見直しアドバイスを行ったりすることができます。
カウンセリングでは、症状による日常生活の困りごとをお聞きし、外見に対する認知の歪みを修正するお手伝いをします。
醜形恐怖症は自分に対して非常にネガティブな感情を抱くため、外見の捉え方を見直しながら自分の欠点も認めていくこと、自分の良いところにも注目しながら、“欠点がある=良くない、存在価値がない”という意識を変えていくことなど、状態を見ながらカウンセリングを行っていきます。
醜形恐怖症となった原因を考え、継続したカウンセリングの中でカウンセラーとともに考え方を修正していくことができます。また、繰り返し行ってしまう強迫行動についても見直し、どのように減らしていくか、症状をコントロールしていくかを相談することができます。
醜形恐怖症は、自分の外見が嫌いなことで強迫行動を取ってしまいますが、なかなか自分では気づきにくい病気で、医療機関や相談機関への受診に繋がりにくいものです。理想が叶わず時間やお金をかけてしまうことや、どうしても外見が気になってしまって引きこもりやうつ病に発展してしまうことも少なくありません。外見が気になって何度も繰り返してしまう行動があったり、身なりを整える時間が非常に長くなってしまう方は、まず医療機関や相談機関へ相談されてみてください。