みなさんは自分のことが好きですか?ここ数年で自分を肯定することや自分を愛することをテーマにした映画やドキュメンタリーがたくさん出てきました。しかし、自分を好きになれなかったり、自分のことが嫌になったりという経験をしている方も多いのではないでしょうか。ここでは、自己嫌悪についてのメカニズムと対処法をお伝えします。
目次
自己嫌悪とは読んで字のごとく、自分自身が嫌になってしまうことです。「どうしてこんな嫌なことを考えてしまうんだろう」「自分はひどい人間だ」「出来が悪い」など、自分を責めてしまう状態を指します。ネガティブな感情のなかでも、落ち込むこととは異なり、自分自身を受け入れがたく疎ましく感じる気持ちのことです。
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では、なぜ自分自身を嫌になってしまうのでしょうか。自分に対して以下のような特徴を感じたことはありませんか?
①完璧主義である
なんでも完璧にやり遂げたいと感じている人は、うまくいかなかったことに対して嫌悪感を抱きがちです。最終的に成功したかどうかで物事を見てしまう傾向にあり、小さな失敗を許すことができません。
「あの失敗さえなければ、もっと良くなっていたはずなのに」と自分を追い込んでしまいます。
②「良い人間でありたい」と考えている
わたしたちは小さいころからモラルや理想について教育を受けます。モラルに反することや社会のルールについてよくないことを正すべきである、自分は良い人間であるべきだと強く思う人ほど、ネガティブな感情を受け入れられず自己嫌悪に陥りやすいです。
③負けず嫌いである
「人に負けたくない」「人より優れていたい」という気持ちが強い人は、誰かより劣っていると感じたときにできない自分を責めてしまいます。友人に恋人ができたときや結婚したとき、出産の時期など個人で大きく異なることに対しても「負けた」と感じてしまい、嫉妬を感じる自分を嫌悪してしまうような人もいます。
④人からどう思われているか気になる
物事の善し悪しについて、他人からの評価が基準となってしまっていませんか?自分自身の価値を計るのに「友人はこのほうがよいと言っていた」「親から見て今のわたしはダメだ」と、他人を基準にしている状態では自我が安定せず、ちょっとしたことでぐらついてしまいます。等身大の自分を認めて、肯定してあげることが必要です。
上記のような特徴は、それだけで自己嫌悪につながるわけではありません。心理学的な研究では、思い描いた理想と現実にギャップが生まれたとき、その原因を自分に求めることで自己嫌悪が生まれるとされています。理想や目標自体が高く、実現できない要因がたくさんあるにもかかわらず「自分がもっと能力の高い人間だったら・・・」「自分が気を抜いたからいけないんだ」と、思うことが自己嫌悪を引き起こすのです。
また、自己嫌悪のすべてが自分に悪影響を与えるわけではありません。自己嫌悪には自分自身を省みることで、目標に再チャレンジする努力を行うことや目標を再設定する冷静さを得ることなど、ポジティブな影響もあります。ただし、自分自身を理解し受け入れることができていないと適切な目標設定自体が難しくなってしまいます。高すぎる理想をかなえられずに自分を追い込んでしまうかもしれません。
①自分のことをきちんと知り、受け入れる
自己嫌悪に陥りやすい人は、自分のことをよく知りません。「まじめで思いやりがあり、がんばればなんでもできる人間」を理想としています。しかし、世の中にはなかなかそんな完璧な人はいません。「怠けたい気持ち」や「人に嫉妬してしまう面」「できないことや苦手なことがある」ということを受け入れることが大切です。
自分を受け入れることが怖いときは、味方を作ることが重要です。友人や親など、ありのままの自分を認めてくれる人がいればネガティブな感情を受け入れやすくなるでしょう。身近な人に相談する勇気がないときはカウンセリングサービスなどを利用してもよいと思います。うららか相談室ではカウンセラーがあなた自身を見つめなおすお手伝いをすることができます。
②スモールステップで目標を立てる
理想や目標が高すぎると、達成できなかったときの自己嫌悪はつらいものになります。目標を達成するために、できそうな小さな目標を3つ程度立てるようにしましょう。例えば、10kg痩せたいというダイエットの目標であれば、最初の目標として「1か月に2キロ痩せる」「1日の摂取カロリーを計算する」「まずは30分ウォーキングできるようになる」と小さいことから達成していけるように目標を立て直します。
③あきらめるという選択肢をもつ
立てた目標や抱いた理想が現実とずれているときに起こりやすいのが自己嫌悪です。高すぎる目標をあきらめることは悪いことではありません。よりよい選択肢を選べるように、今の目標をあえてあきらめることも必要です。
自己嫌悪に陥ったときに対処することも大切ですが、できれば自己嫌悪にさいなまれる時間を減らしてきたいですよね。自分を疎ましく感じないためには、以下のような方法があります。
①ありのままの自分で居られる人間関係をみつける
理想と現実にギャップが生まれてしまう要因には、自分を偽らないとやっていけない環境があります。人の悪口で盛り上がっていたり他人の粗を探してばかりいたり、落ち着けない人間関係からは距離を置くことが必要です。SNSを見る回数を減らす、ひとりでいる時間を作るなど自分を飾らずにいられる場所を見つけましょう。
②自分の感情を認める
人は誰でも、嫉妬したり悔しい気持ちを抱いたりします。自己嫌悪に陥りやすい人はネガティブな感情とそれに対する批判がセットになってしまっています。「嫉妬する自分はダメな人間だ」と考えることをやめて、もう少しフラットに自分の感情を見つめてみましょう。「いま嫉妬しているんだ」までで気持ちを止めて、自分を批判しないように意識してみてください。
③自分も他人も好きになる
自分を肯定することと他人を肯定することはどちらもとても難しいことです。特に完璧主義で負けず嫌いな人は、他人の悪いところを探してどうにか自分を勝たせようと考える癖があります。人の悪いところを探す癖は、そのまま自分にも向いてしまいます。どんなにいいところがあっても悪いところを探す癖がついてしまっているので、自分を好きになることが難しくなってしまうのです。人を好きになることで自分の好きなところも見つけやすくなります。
自己嫌悪に陥りやすい自分を変えていくには、カウンセリングサービスを活用することがおすすめです。カウンセラーに気持ちを話すことで、自分の考え方の癖を一緒に見つめていくことができます。友人や家族など身近な人には、ネガティブな気持ちをなかなか話せないという方は少なくないと思います。カウンセリングサービスでは、適度な距離感でご自身の感情を話すことができ、またそれを否定される心配もありません。自分の気持ちに整理がつかないということがあれば、まずそれを話すところからはじめてみてはいかがでしょうか。
臨床心理士とは・・・
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自分を好きでいられないことはとても苦しいことです。等身大の自分を受け入れて、前向きな日々を過ごすために気持ちをうまくコントロールできるとよいですね。
参考文献 水間玲子 自己嫌悪尺度の作成 教育心理学研究 44,296-302
参考サイト 自己嫌悪とは?公認心理士が詳しく解説します https://www.direct-commu.com/chie/mental/self-hate1/