誰しもが「自分らしさとはどういったことなのか」について考えたことがあるでしょう。人の意見に左右されすぎたり、周りからの期待に応えようと頑張りすぎたりするときには、自分らしさが失われているように感じることがあるかもしれません。「もっと自分らしく生きたい」と思っているけれど、何から手を付けていいか分からないという人も多いでしょう。そんな自分らしさとは一体どのようなものなのでしょうか。自分のことを知って、自分らしく生きるためにはどうすればいいのでしょうか。
目次
- 自分らしさとは
- 自分らしさの要素
- まとめ
自分らしさとは、「自分は本来こんな人間だ」「~ときには本来○○するのが自分だ」といった認識のことです。心理学では「本来感」といわれることがあります。
「あなたの自分らしさは何ですか」と聞かれてすぐに答えられる人は少ないのではないのでしょうか。家族や友達など他人のことであれば、例えば、優しい、短気、思いやりがある…といったように「その人らしさ」を簡単に表す言葉がでてくるかもしれません。しかし、自分のことになると簡単に表すことができず、自分らしさが分からないと感じる人が多いでしょう。
自分らしさを決める要素には様々なものがあります。もとから生まれ持った気質に加えて、これまでの経験による好みや価値観によっても影響されます。
また、社会的な役割や環境も自分らしさの要素となります。例えば、母親としての自分、妻としての自分、仕事をしている自分といった役割が自分らしさに影響します。
つまり、自分らしさを大切にするためには、自分を取り巻く環境や経験を踏まえた「自分を知る」ということが重要になります。
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では、自分を知るためにはどうすればいいのでしょうか。
自分を知るために、まずは自分の好きなことを知りましょう。自分の好きな活動をしているときに「自分らしくいる」と感じる人が多いことが分かっています。「何をしているときに充実感や安心感を得られるのか」「自分は何が得意なのか」といったことは、本来の自分の在り方を知る大きな手掛かりになります。
私たちは大人になるにつれて、自分の好きなことよりも、やらなければならないことや周りからの期待、社会的な役割にとらわれて、自分らしさを抑制するようになります。この抑制された自分らしさは確かに自分の中にあるにもかかわらず、すぐに気づくことが難しいものです。自分が落ち着くと感じたり楽しいと思えたりしたときには、無意識のうちに自分らしさをその活動に見いだしていることが多いと考えられます。好きなことや得意なことに共通する要素を考えてみると、自分らしさを少し理解できるかもしれません。
リラックスして自分の気持ちを表現できる対人関係にいるときに「自分らしい」と感じる人が多いことが分かっています。特に、友人と一緒に過ごすことは「本来感」との関連が見られます。これは、友人とのやり取りの中で自分の役割や意見が相対化されることで、社会における自分らしさが位置づけられるからと考えられています。
また、カウンセリングは自分を知ること(自己理解)を目的として活用されることが多いです。心理的な分析を行うカウンセラーにリラックスしてお話することで、抑制された「自分らしさ」がどのようなものであるかに気づきやすくなります。心理検査を受けることも、自分の性質を知るためには効果的でしょう。
自分らしさは、自身の経験から生まれた好みや価値観、社会的な役割や生活スタイル(環境)によって変化します。子どもの頃に嫌いだったものを大人になってから好きになったり、学生のころと社会人になってからで価値観が変わったりするように、ライフステージによって「自分らしい」と感じることが変わるのは自然なことです。過去の自分が好きだったことをしてみても「自分らしい」と感じられないと、自分らしさを失ったかのようなショックを受ける人がいるかもしれませんが、それは自分らしさが経験や役割によって変化しているからと考えることができます。
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自分らしく生きるのが難しいと感じるのは、次のような理由が挙げられます。
対人関係で自分を装っているときに「自分らしくない」と感じられる人が多いことが分かっています。常識的であろうと振るまったり、他人からの評価のために自分の感情を偽った振舞いをしていると「自分らしい」と感じにくくなります。例えば、派手なものが好きなのに、世間や相手から年相応でない人と思われることを気にして、地味なものを身につけていると、自分らしくないと感じられるでしょう。しかし、社会生活では世間や相手からの評価の向上が求められることも少なくありません。常識とされているものとの折り合いをつけることが避けられない状況は少なからず存在しています。
対人関係で自分の意思を抑制しているときに「自分らしくない」と感じられる人が多いことが分かっています。自分に自信がない人は、自分の意思を叶えるのが難しくなります。自分の意見があるにもかかわらず、「否定されるかもしれない」と考えて、黙ってしまったり周囲に合わせてしまったりすると「自分らしい」と感じにくくなります。しかし、どのようなことに対しても自分に自信があるという人は稀でしょう。ときに自分の意思を抑えて、やりたくないことをするという状況は、少なからず社会に存在しています。
自分らしく生きることが難しい社会で、自分らしさを守るためには、ときに相手の評価を気にしないことや失敗を恐れないことも大切です。
周りの目が気になって身につけることができなかったファッションを試してみたり、どうせうまくいかないからと手を付けていなかった趣味や勉強に少しずつチャレンジしてみたりといったことが、自分らしく生きるためのきっかけとなるかもしれません。少しずつこうした変化を試みることで、自分らしくないと感じる場面を減らすことができるでしょう。
自分らしさとは、「自分が本来どのような人間であるか」「本来どのようにするのか」といった認識のことをいいます。自分らしさには、生まれ持った気質や身体、これまでの経験による価値観や好み、社会的な役割などが要素として挙げられ、自分を知ることが「自分らしさ」を大切にすることに繋がると考えられます。自分を知るためには、自分が好きな活動に取り組むことや気の許せる友人と話すことなどが有効です。現代社会は自分らしく生きるのが難しいこともありますが、少しずつチャレンジを重ねることで自分に自信を持ち、他人からの評価を気にせずに自分の意思を表現することも大切だと考えられます。
カウンセリングでは、心理的な分析を行うカウンセラーとリラックスして話すことで、抑制された「自分らしさ」に気づきやすくなります。うららか相談室では、ビデオ・電話・メッセージ・対面形式でカウンセラーに悩みを相談することができます。自分らしく生きることができていない感覚がありもやもやしている方や、もっと自分らしさを追求したいという方はぜひオンラインカウンセリングを活用してみてください。
<参考文献>
伊藤 正哉, 小玉 正博, 自分らしくある感覚(本来感)に関わる日常生活習慣・活動と対人関係性の検討, 健康心理学研究, 2006, 19 巻, 2 号, p. 36-43
伊藤 正哉, 自分らしくある感覚(本来感)についての心理学的研究, 博士論文 筑波大学博士 (心理学) 学位論文, 2007