大事なお子さんのことは、いくつになっても心配ですよね。しかし、子どもが失敗しないように、困らないように、と親がなんでも決めてしまったり、先回りして失敗を回避したりするような行動は、お子さんが自分で決断し行動する機会を奪っていることになります。
最近では、ヘリコプターペアレントと呼ばれる、子どもがいる場所にどこにでも駆けつけ、子どもを先回りして管理するタイプの親が問題視されています。
このコラムでは、親が子離れできない原因と対処法について述べていきます。「子どものことが心配でたまらない」「気にしないでいようと思ってもついつい関わりすぎてしまう」と悩んでいる方はぜひ、参考にされてみてください。
目次
- おわりに
「子どものために」と思って過度に口を出したり、代わりに行動してあげたりすることが子どものためにならないこともあります。
例えば、子どもが以下のような問題を抱える可能性が挙げられます。
1.主体性を持った大人になれない
いつも親が先回りして、あれこれ準備をしたり、細かく指示をしたりすると、子どもが自分で考えて決断する機会がなくなります。反抗期に「何でもかんでも親に決められるのは嫌だ!」と子どもが反発すれば、そこで親子関係が変わる場合もありますが、素直で従順な子どもだと、育てやすい反面、親の指示がないと動けない子になる可能性があります。
2.いつまでたっても親や他人に依存してしまう
自分で決断する、自分で行動して責任を取る、という経験が少ないと、大人になったときに重要な決断ができなくなることが多いです。自分でものごとを決めた経験がないと、決断に対する不安が大きくなり、先を予測して行動することが難しいので、「誰かに決めてもらったほうが楽でいい」という考えになる場合があります。特に、恋人から支えられることを求め、その依存状態から抜け出そうにも自分の意思ではコントロールが効かず、トラブルや心身の不調を抱えやすくなることがあります。
3.失敗や挫折に弱くなる
親が子どもの行動を決めて失敗を避けてきた、あるいは、失敗した後の責任を子どもではなく親がすべてフォローしていた場合、大人になって失敗や挫折をしたときにどのようにして立ち直ればいいか分からなくなることがあります。ささいな失敗に対しても必要以上に落ち込んで、「やっぱり自分はダメな人間だ」などと感じ、自尊心が傷つきやすくなります。
4.自分の決断や行動に自信が持てない
親に「お母さんの言うことを聞いていれば間違いない」などと言い聞かされて育った子どもは、いつまでたっても自分の行動に自信が持てず、小さな失敗でもまるで大きな失敗のように恐れることが多いです。自分でものごとを決めて、その結果がどうであれ褒めてもらったり、認めてもらったりした経験がないと、自分への自信が育ちにくくなります。
臨床心理士とは・・・
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1.子どもは親の所有物だと思っている
子どもは自分の思い通りになると思っているタイプの親は、子どもに理想の姿を押し付けることが多いです。子どもが反抗して親子関係が変わる場合もありますが、そのようなきっかけがないと、進学、就職、結婚、子育て…といったように、子どもの人生すべてをコントロールしようとしてしまう傾向があります。親にその意識がなくても、子どものころから、「あなたは、○○大学に行って、○○企業に入るのがいいと思う」などと、子どもの意見を無視して自分の価値観を押し付けてしまっていた場合は要注意です。
2.過保護・過干渉
子どもの生活すべてに口を出したり監視したりする「過保護・過干渉」タイプの親は、子どもの発達や成長に関係なく、子どもが小学生になっても、中高生になっても、大学生や社会人になっても同じように子どもと関わろうとすることが多いです。子どもが反抗すると、「こんなに助けてあげているのに!」と怒り出すこともあります。
3.子どもへの期待が大きい
自分が叶えられなかった希望を押し付ける、子どもへの期待が大きいタイプの親は、例えば、「自分は勉強が苦手だったから、子どもをいい大学へ入れたい!」などといったように、子どもが望まないのに幼少期から勉強や習い事などのスケジュールをびっしりと組み込んだりすることが多いです。あるいは、子どもと親は別の人間であるにも関わらず、「自分がいい大学を出て、いい会社に勤務しているから」などといって、子どもにも自分と同じようになってほしいと考える人もいます。
4.自分がいつも正しいと思って、子どもの話を聞かない
「あなたは子どもなんだから、年長者である大人の意見を聞きなさい」などと言って、子どもの意見を聞かないタイプの親は、自分が正しいと思っていることを子どもにも強制することが多いです。子どもは、「どうせ親は自分の意見を聞いてくれない」「説得するのは面倒くさい」と思い、心の中では親に反発していても、表面的に親の意見に合わせていることがあります。
5.変化や成長を受け入れられない
いつまでも子どもは可愛いままでいてほしい、自分のそばから離れないでほしい、と思っている親は、子どもの反抗期を受け入れられず、子ども自身がやりたいことのために進学や就職をして実家を離れることに不安を感じやすくなります。「進学、就職、結婚も地元でしてほしい」といったように、子どもの希望よりも自分の希望を押し付ける場合があります。
1.心が不安定で寂しい
例えば、親自身の夫婦仲が悪い、親しい友人がいない、心を許せる人がいない、などのことで自分の心が不安定になっていると、うまく子離れできない場合があります。不安定な心の支えであった子どもが進学や就職、結婚で実家を離れてしまうときには、自分が見捨てられたような気持ちになることもあるでしょう。
2.子ども以外に興味を持てることがない
仕事や趣味、友達との付き合いなどがなく、子ども以外のことに興味を持てないのも、子離れできない原因の一つかもしれません。子どものことばかり気になって、過保護や過干渉になるケースも多いです。
3.親自身も子離れできない親に育てられた
自分自身が子離れできない親に育てられ、そのような親のあり方が当然だと思っているために、なかなか子どもから離れようとしない場合があります。このような親は、誰かに指摘されるまで、自分が子離れできない親だという自覚を持つことは難しいでしょう。
4.親自身が子どもに無関心な親に育てられた
3.で挙げたこととは反対に、自分自身が子どもに無関心な親に育てられ、「自分は子どもに寂しい思いをさせない」「子どもに愛情をたくさんかけたい」という思いが強すぎると、うまく子離れできない場合があります。
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1.子ども以外のことで自分が興味のある活動を始める
子育てだけでなく、仕事を少し始めてみたり、キャリアや自分自身のために勉強してみたり、趣味や仲間づくりを楽しんだりする自分のための時間も持つようにしましょう。子どもには、親にかまわれるのが疎ましく感じられるようになる時期があります。そのような時期を迎えたときに、親が好きなことに没頭できるようになっていれば、子どもと程よい距離感を保つことができます。
2.自分自身の不安と向き合う
親自身の不安を子どもの世話をすることで満たしていると感じている場合は、まずは自分自身の問題を解決することを考えましょう。例えば、夫婦問題に目を向けたくないため、子どもをきっちりと管理することで満足している場合などが当てはまります。抱えている不安に応じてそれぞれ対処することになりますが、不安の原因や対処法が分からないという場合はカウンセラーに相談するなどして、親自身の心の安定を図りましょう。
3.子どもの失敗を認める
完璧主義で失敗することが許せないタイプの親は、子どもの失敗も認められないことが多いです。子どもが失敗から何を学ぶかが大事ですし、失敗した後のフォローを自分で考えて対応するということも子どもの学びにつながります。子どもの失敗を大げさに捉えすぎないようにしましょう。
4.子どもを信用して見守る
子どもにとって初めてのことは、親子ともにとても心配になるものです。例えば、子どもに留守番を頼む、カギを預けるなどは、勇気がいることです。しかし、小学3,4年生くらいになると、短い時間は留守番をしてもらうことも必要になるでしょう。
子どもにカギを預けて留守番させるとき、子どもを信用するためにできる対策には以下のことが挙げられます。
子どもが自分で考えて行動し、失敗したときにどうすればいいか対応を考えるという経験が大事です。大きな失敗をする前に小さな決断や失敗をたくさん経験させて、大人になったときに自分で決断できる主体性のある大人になれるよう見守りましょう。
5.子どもが困ったときには助ける
子どもの生活にトラブルはつきものです。トラブルを全て親が解決してしまうことも、全く無関心でいることも、子どものためにならないことがあります。
例えば、小学校高学年のお子さんが友達と些細な口喧嘩をした際に、すぐに親が直接介入するのではなく、「どのようにすれば、また仲良しに戻れるかな?」などと、親子で考えることが大切です。子離れしなければいけないからと考え、子どもが一人ではできないようなことを、「自分でなんとかしなさい!」などと言って、子どもに責任を押し付けるのは無理があります。
子どもと一緒に解決策を考えるのは面倒で非効率的と思うかもしれませんが、小さなトラブルをいくつも経験することで、子どもは少しずつ人間関係を学んでいき、自分でトラブルを解決できるようになります。その困りごとが、「子ども自身で解決しないといけないものなのか」「親がどこまで手助けするのがいいか」という基準については、子どものためになるかどうかを長い目で見ることで判断するようにしましょう。
例えば、いくら子どもが困っていたとしても、子どもの宿題のアドバイスをするのはいいですが、宿題を代わりにやってあげるのは将来的に子どものためになりません。
6.子どもと親は異なる人間であるということを理解する
「自分は頭がよかったのに」「父親はスポーツができたのに」などと、「自分の子どもなのに、どうしてできないの?」と責められても、お子さんは自分の存在を否定せざるを得ず、逃げ場がなくなってしまうだけです。
親と子どもは、異なる人間です。似ている部分があったとしても、時代背景や価値観、周囲の環境などが親の時代とは異なるため、うまくいかないこともたくさんあります。
子どもも、親の想像が及ばないようなことを子どもなりに頑張っています。自分と比較せず、子ども自身にとっての成長を喜びましょう。
7.小学生、中高生…と発達段階に合わせて少しずつ段階的に子離れをする
子どもの環境が大きく変わる節目で、少しずつ子どもから手を放していきましょう。
小学生になると、子どもだけで登下校が始まります。友だちと約束をして、放課後に公園へ遊びに行く子もいます。時間の管理や友だち付き合い、遊びの様子などは、心配な部分は見守り、気になることは子どもに伝えましょう。
中高生になるとスマホの利用をすることで、友だち関係が心配な部分も出てきますが、しつこくならない程度に親子の会話から様子をうかがったり、デジタル機器の利用についてルールを決めたりして、進路などの必要なことは話し合える距離感を保つことが大事です。子離れしなければいけないからと考えて、親が気づかないうちに、成長の過程で何か問題を抱えて心身に支障をきたしてしまうと、解決するのに時間も労力もかかります。
進学、就職、結婚、など人生の節目には、自分で決められてよかった、立派に成長した、と笑顔で見送ってあげて下さい。
8.子どもの立場になって考える
子どもにすがりつく親は、ますます子どもに疎まれます。子離れを喜べる親は、子どもにとっても誇らしいものです。「自分が子どもの立場だったら…」と考えることができれば、子どもの「親離れをしたい」という気持ちも受け入れられると思います。
「そうはいっても、子離れがなかなかできない」「今まで大切にしてきた子どもを気にかけずにいられない」という方は、カウンセラーなどの心の専門家に相談して、お子さんが自分の人生を生きていくことを見守り、そして、親自身も自分の人生を充実させることを考えられるように行動することをおすすめします。
特に女性は子育てのために仕事やキャリアを中断することも多いので、子育てに全身全霊を注ごうとする人もいるでしょう。幼少期はそのような関わりでもいいですが、小学生になり、子ども同士の関わりが楽しい時期になると、親の過干渉を嫌がる子も増えてきます。もちろん、マナーなどについて注意すべきことは伝える必要があり、放任すぎるのも干渉しすぎるのもよくありません。親がすべてを管理して、子どもの行動を決めた方が楽と思うかもしれませんが、長い目で見ると子どものためにはなりません。面倒でも、学校の準備、身支度、勉強の仕方、友だち付き合い、お金の使い方、ゲームのルールなどについて、一つ一つ親子で話し合いながら、子どもが自分で決めて行動できるように見守る姿勢が大事です。
子育ての期間は振り返るとあっという間に過ぎていきます。子育てと同時に親も毎日、自分ための時間を短くても確保し、子どもが大きくなったときにしたいことのリストを作るなど、少しずつ子離れの準備をしておきましょう。
<参考文献>
・子離れできない親になりやすい性格とは?子離れの手順も解説
https://motherselect.jp/parents-cannot-leave-child/ (2021-04-19 参照)
・子どもの成長を妨げる「ヘリコプターペアレント」とは? 特徴と事例、予防策を解説 | ソクラテスのたまご
https://soctama.jp/column/63128 (2021-04-19 参照)