子どもが「学校が嫌い」、「学校に行くのが嫌だ。」と言い始めると、親としては心配になりますよね。
「『学校が嫌い』って言っているけど、休ませてもいいのだろうか?」
「このまま不登校になってしまうのではないか?」
といった疑問も浮かんでくるでしょう。
そこで、このコラムでは、学校を嫌いになる理由について例を挙げ、小学生、中学生、高校生それぞれの傾向について解説します。
また、学校が嫌すぎるときの対処法や学校が嫌な理由がわからないときの親の対応についてもご紹介します。
目次
- 小学生の傾向
- 中学生の傾向
- 高校生の傾向
- おわりに
「学校が嫌い」となる理由は人によりさまざまですが、以下の内容が理由として多く挙げられます。
●人間関係
クラスメイト、友達、先生、先輩・後輩などの学校生活における人間関係は、学校が嫌いな理由としてよく挙げられます。「なんとなくあの人と合わない。」といった対個人の悩みから、嫌がらせやいじめなど複数人が関わる問題まで、人間関係に関する悩みは多岐にわたります。そのため、人間関係が原因で学校が嫌いになるケースは非常に多いと言えるでしょう。
●学業面
学校生活の多くの時間は学習の時間であるため、学業に関することが学校が嫌いな理由になる場合があります。例えば、以下のようなケースがあります。
・授業内容が理解できず、周りに後れを取っていることで、学校が嫌いになるケース。
・学力が高い子どもの場合、授業内容がつまらないと感じ、学校が嫌いになるケース。
・宿題が終わらないことで、学校が嫌いになるケース。完璧主義の子どもは、宿題が終わっていない状態(完璧でない状態)で学校に行くことに対して抵抗が強く、「宿題が終わっていないまま登校するくらいなら、学校を休む!」と言うケースもある。
・定期テストへのプレッシャーから学校が嫌いになるケース。周囲の大人の期待に応えたいと思う子どもが「良い点数をとらなければ!」とプレッシャーを感じることもあれば、「同級生よりも良い点数をとらなきゃ!」と自分で自分にプレッシャーをかけている場合もある。
●生活面・体力面
朝起きられないことで登校時間に間に合わず、学校が嫌いになることがあります。
ここで注意が必要なのは、起立性調節障害などの病気によって朝起きられない場合があることです。あまりにも朝起きられないことが続く場合には、そのような病気の可能性も含め、医療機関の受診を検討することをお勧めします。
また、小学校・中学校・高校のいずれにおいても、1年生として入学したばかりの時期は、それまでの環境と生活リズムが大きく変化するため、その変化に適応できない場合に、学校が嫌いになることがあります。
他にも、学校に毎日通い授業に参加するだけでも体力を消耗するため、体力があまりない子どもにとっては、学校に行って教室で過ごすだけでも苦痛となり、学校を嫌いになる場合があります。
●学校行事
学校生活では、運動会、文化祭、合唱コンクール、修学旅行など、さまざまな学校行事があります。
子どもによっては、苦手なことに長時間取り組まなくてはならない学校行事の時期が近づくと、練習への参加が嫌になったり、その行事があること自体が苦痛になったりして、学校が嫌いになる場合があります。
●集団生活
集団生活が苦手で学校が嫌いになる子どももいます。
先ほど理由の一つとして挙げた学校行事は、集団で行動することを求められる場面が多くなるため、集団生活が苦手な子どもにとっては、苦痛でしかなく、学校嫌いになるのも無理はありません。
特に、修学旅行は家族以外の同級生と寝食を共にするため、集団生活が苦手な子どもにとっては、学校嫌いになりやすい理由の一つと言えるでしょう。
●学校のルール
学校によっても異なりますが、校則が厳しい学校の場合には、そのルールを守ることが嫌になり、学校嫌いのきっかけとなる場合もあります。
例えば、全員が同じ制服を着て、校則で決められた髪型・服装で登校しなければならないことが、「ルールに縛られていて、自由がなく嫌だ。」と感じるケースもありますし、決まった時間に決まった行動を皆と同じようにしなければならないというルールが嫌になるケースもあります。
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小学生の場合、特に1年生は、日常生活の延長で遊びが中心だった保育園や幼稚園から、ルールがあり、椅子に座っている時間が長く、遊びよりも学習の時間がはるかに長くなる小学校に上がったばかりで、学校生活へのなじみにくさが目立ちます。
こうした状態は「小1プロブレム」と呼ばれることもあります(*1)。
不登校にまでは至らなくても、学校生活になじむようになるまで、「学校が嫌い。」、「学校に行きたくない。」と登校をしぶることは少なくありません。
場合によっては、登校に親の付き添いなどが求められることもあります。
また、「分離不安障害」になる場合もあります(*1)。子どもが親と離れることに強い不安を感じ、学校に行けなくなる状態のことを言います。こちらも小学校低学年に見られるケースが多いです。
この場合は、子どもの気持ちの安定をはかりながら、徐々に親から離れて行動できるように促していく必要があります。
中学校に上がると、勉強内容が難しくなり、部活動なども本格化します。全教科を担任の先生が教えていた小学校とは異なり、中学校では教科ごとに教える先生が替わるため、担任の先生との距離感も変わります。
このような「中1ギャップ(*1)」と呼ばれる小学校生活とのさまざまなギャップに戸惑いを覚える子どもは少なくありません。
部活動に関しては、小学生ではあまり経験しなかった先輩・後輩の関係性に部活動で触れることとなり、戸惑いを覚えたり、関係をうまく作れなかったりすることによって、「部活嫌い」から「学校嫌い」となるケースもあります。
また、厳しい部の場合、部内の暗黙のルールなどがあり、その環境になじめずに学校嫌いになる場合もあります。
高校に上がると、小学校・中学校の義務教育とは異なり、単位を落とすと留年や退学につながるため、「休めない。」とプレッシャーに感じ、「学校嫌い」になる場合があります。
また、高校生になりアルバイトを始めるなど行動範囲が広がることで、学校以外の活動が優先され、「学外の活動は好きだけど、学校は嫌い。」となる場合もあります。
子どもが「学校が嫌すぎる」となってしまったとき、親はどう対処したらよいのでしょうか?
「学校が嫌すぎる」ことについて、子どもなりの理由を聴くことで、対処法も見えてきます。
学校の何が嫌いなのか、学校生活の何に対して嫌だと感じているのか、子どもの話にまずは耳を傾けましょう。
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【話の聴き方のポイント】
①遮らず、最後まで話を聴く。
子どもの話を聴いていると、親側が話の先を読めてしまう場合があり、途中で遮って「そういうことね。」と早合点してしまうことがあります。また、途中まで聴いた段階で「それは、こうしたらいいんじゃないの?」とついアドバイスをしてしまうこともあります。
そうすると、子どもの心の中には「親に話しても、どうせ最後まで聴いてくれない。」という諦めが生じ、「学校が嫌すぎる」とまで感じているのに、その理由を話してくれず、その後の対応が難しくなることが懸念されます。
そのような事態を防ぐためにも、子どもの話は遮らずに、最後まで聴くことが大切です。
②子どもの気持ちを否定せず、寄り添う。
学校が嫌いな理由が、親にとっては「そんなことで…。」と些細なことに思えたとしても、子どもにとっては重大なことだと捉えていることは少なくありません。「それが嫌だと感じたんだね。」と子どもの気持ちを受け止め、寄り添う姿勢で話を聴きましょう。
③話してくれたことに「ありがとう」と伝える。
子どもによっては、学校が嫌いな理由を話すと親に怒られるのではないか、否定されるのではないかと不安に思っている子どももいます。
そこで、「それが嫌だったんだね。話してくれてありがとう。」と伝えることで、子どもとしては「親に自分の気持ちを話してもいいんだ。」と安心することができ、その後の親子関係も良好になります。
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このような話の聴き方のポイントを踏まえて子どもの話を聴き、子どもが「学校が嫌い」な理由を話してくれたら、その内容に沿って対処していきます。
●理由に関わらず、どうしても登校したくない場合→休ませる
子どもが「学校が嫌すぎる」と話すほどに、どうしても登校したくない場合は、それほど子ども本人にとってつらいと感じる事情があるはずです。そこまでつらいと子どもが感じていても登校させなければならない理由はあるでしょうか?おそらく、多くの人は「そこまでしてでも登校させなければならない理由はない。」と答えるでしょう。
また、「一度休ませると、そのまま不登校になるのではないか?」と心配になるかもしれませんが、一旦休ませても、そこで早く手を打つことができれば、休む期間を長引かせずに済むことが多くあります。
「学校が嫌すぎる」ときには、一旦休ませ、まずは子どもの気持ちを安定させることを優先しましょう。
●生活面・体力面が理由の場合→医療機関の受診を検討する
一旦休ませても体力が回復しない場合や、朝起きられないことが続く場合には、先述したように、病気の可能性も含め、一度医療機関の受診を検討してみましょう。
体調不良について、薬を処方してもらう、あるいは医師から適切な対処法を指示してもらうことで、子どもも親も安心感が得られ、再登校につながりやすくなります。
●学業面や学校生活になじめないことが理由の場合→学校と連携する
学校嫌いの理由が、学業面や学校生活になじめないこと(生活面・体力面、学校行事、集団生活、学校のルールなど)に起因する場合には、担任の先生に相談し、配慮してもらえたり、直接的なサポートが得られたりすることで解決する可能性があります。
また、スクールカウンセラーは学校でカウンセリングを実施するため、学校との連携がとりやすいことが特徴です。担任の先生に相談しづらい場合には、学校との連携をとることができるスクールカウンセラーに相談するとよいでしょう。
●主に人間関係が理由の場合→学外の専門家(カウンセラー)に相談する
学校嫌いの理由が、学校内の人間関係に起因する場合には、担任の先生や学校の先生たちと連携をとれるスクールカウンセラーにはかえって話しづらい場合もあります。
そのような場合には、学外のカウンセラーに相談することがお勧めです。子ども本人がカウンセラーに相談してどう対処すればよいのかをカウンセラーと一緒に考えるのもよいでしょうし、親が「子どもの学校嫌いの理由にどう対処すればよいのか?」、「子どもにどういったサポートをすればよいのか?」などについて相談するのもよいでしょう。
「子どもの学校が嫌な理由がわからないと、対応ができない。理由を話してくれない場合は、どうしたらいいんだろう?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。
そこで、学校が嫌な理由がわからないときの、親の対応についてご紹介します。
●学校が嫌な理由を子どもが話せるようになるまで待つ
子どもに何らかの事情があって学校が嫌な理由を話せない、あるいは、話したくない場合もあります。
そのような場合には「話したいなと思ったら、いつでも話してね。」と、親側は話を聴こうとする姿勢であることを伝えておいて、あとは子どもが話せるようになるのを待ちましょう。
子どもが自分の気持ちを話せるようになるまでエネルギーを回復させるため、あるいは子どもが自分の気持ちを整理するために、数日間学校を休ませるのも一つの選択肢として考えてもよいでしょう。
ただし、「いつまで待てばいいのだろう?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
「何日待てば話してくれるようになる。」といった明確な基準はありませんので、例えば「3日は待とう。そこまで待っても話してくれなければ、次の手を打とう。」と考えてみるなど、親の心の中で期限を決めておくと不安や焦りが軽減されやすくなるため、お勧めです。
●子ども自身も「学校が嫌い」な理由がわからない場合
子ども自身も学校が嫌いな理由がはっきりとは分からず、「何となく嫌。」という場合もあります。
そのような場合に、親が色々と予想して「あれが理由かな?それとも、これかな?どうなの?」と質問責めにすると、子ども自身もわからないため、答えられず困ってしまうでしょう。
子ども自身も学校が嫌いな理由がわからない場合には、「そういう時もあるよね。今、あなたはどうしたい?」と子どもの希望を聞いて、休みたいと答えるのなら、ひとまずその日は休ませるのがよいでしょう。休む以外の希望が出てきた場合には、その希望に沿って対応するとよいでしょう。
学校が嫌いな理由がわからない場合や、子どもに希望を聞いても出てこない場合には、「落ち着いたら、一緒に考えてみようか。」と子どもの様子が落ち着いてから、時間をとって話をしてみるのもよいでしょう。話の聴き方のポイントは、先ほどご説明したとおりです。
子どもにとって、親よりも第三者に話した方が自分の気持ちを話しやすい場合には、カウンセラーなどの専門家と話す機会を作ってあげることも有効です。
ここまで、子どもが学校を嫌いになる理由や学校が嫌すぎるときの対処法、子どもの学校が嫌な理由がわからないときの親の対応についても解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
「学校が嫌い」と話すお子さんのことを心配されている親御さんにとって、少しでもご参考になりましたら、幸いです。
お子さんのことについて「うちの子の学校が嫌いな理由がわからない。」、「うちの子の場合、どうやって話をしたらいいのだろう?」とお困りの方は、カウンセラーがお子さんに合った対応を一緒に考え、サポート致します。ぜひ一度カウンセリングでご相談ください。
参考文献
*1:下島かほる (2022) 「登校しぶり・不登校の子に親ができること」(講談社)