生きづらさやストレスを抱えがちな人の中には、完璧主義な性格がその要因となっているケースが見受けられます。完璧主義そのものが悪いわけではありませんが、そのせいでしんどいならば、自分を楽にするために完璧を求める部分を減らしていけるといいですよね。
この記事では、完璧主義やその特徴、治し方などについてお話しますので、生きづらさや完璧主義をどうにかしたいと思っている方はご参考にしてください。
目次
- 完璧主義とは
- おわりに
「完璧主義」はよく聞く言葉ではありますが、まずはその意味やどんな状態を表すのかを改めて見ておきましょう。
・失敗が許せず何事にも高いレベルでの遂行を求める
「完璧」とは、傷ひとつない完全な状態を表す言葉で、一般的には欠点や足りないところがないことや、その様子を指します。
その言葉の意義通り、高い到達点を設定して、それをひとつの間違いもなく、できる限り完全な形で達成するための努力をし続ける傾向が強いことを、完璧主義と呼びます。
・自覚がないことも多い
完璧主義の人は大変な努力家とも言えますが、本人にとってはそれが当たり前で、完璧主義という自覚がない人も珍しくありません。この自覚のなさが、生きづらさや周囲との軋轢を生むこともあります。
自分では「これくらい普通」という認識でいるのに、周囲から「完璧主義」と言われることがある場合は、そういう傾向があるのかもしれないと考えてみるのも、自分を楽にするのに役立つかもしれません。
完璧主義な人の特徴には、このようなものが挙げられます。
・理想が高く責任感が強い
完璧主義の人は、与えられた役割や課題を理解し、それを全うしようと強い責任感を持って向き合う人が多いです。意図的に手を抜いていい加減な態度で臨んだり、途中で投げ出したりすることはとても少なく、最後まで高いレベルでこなそうとします。
・自分にも他人にも厳しい
その理想の高さや責任感の強さは、本人だけでなく他者にも向けられることがあります。周囲の人が一生懸命やっていないように見える、あるいは出来が今ひとつというようなときに、ストレスを感じたり態度に出てしまうことがあるなど、完璧主義者は自分にも他人にも厳しい傾向があります。
・傍から見たら小さなミスも過剰に大きく捉える
完璧にこなしたい気持ちがとても強いため、些細な不足やミスも許せないと思いがちなのも、完璧主義の人によく見られる特徴です。周囲からは概ね問題ないと思われる結果であっても、完璧主義の人からすると失敗だと考えたり、過剰に大きな問題と捉えたりすることがあります。
・他人からの評価が気になり、自己評価が低い
まったくミスをせず何事も完璧にできる人は本来いませんから、小さなミスも許せない分、自分を否定する機会が多くなってしまいます。そのため、完璧主義の人はおのずと自己評価が低くなります。
また、完璧主義者は人から評価されたいという気持ちが強く、周りからどう見られているか気にしがちで、実は自信がないことも多いです。
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完璧主義には、状況によって良い方向に働く場合もあれば、そうではないこともあります。完璧主義の長所と短所をそれぞれ見ていきましょう。
・高い成果や周囲からの信頼感を得られる
以下のような部分は、完璧主義の長所と言えるでしょう。
☑ 作業の完成度が高い
☑ 安心して任せられる人として信頼される
間違いがないよう細心の注意を払えるので、仕事や作業などの達成度や完成度が高く、多くの場面で成果を上げることができます。
そういったところが周囲から信頼され、細かい作業、慎重で綿密な計画や確認が必要な仕事などを安心して任せられる人、と認識されることも多いでしょう。
・一人で頑張りすぎて疲れてしまうなど短所もある
反面、完璧主義が下記のような短所として表れることもあります。
☑ 人に頼れない、人を信用できない
☑ 頑張りすぎて疲れてしまう
☑ 不安や自己否定感で心が不安定になりやすい
☑ 完璧にできると思えないことには挑戦しづらい
完璧を期すために全て自分で確認しながらやりたい傾向があり、それが人を信用して頼ることが苦手という形で現れることは珍しくありません。その結果、一人で抱えて頑張りすぎてしまい、過労やストレスに繋がりやすいと言えます。
また、人から優秀で完璧だと思われたい気持ちが強いため、期待したほど周囲からの評価や労いが得られないと感じたとき、不安や怒り、自己否定感、「もっと頑張らないとダメだ」という考えなどで苦しむこともあります。
さらに、完璧にできないくらいならゼロの方がまし、という極端な考えも完璧主義者にはしばしばみられます。ちゃんとできるとは思えないことや自信が持てないことには、最初からチャレンジしなかったり、どうしても回避できないことにはなかなか取り掛かれなかったりすることがあります。
それが怠け癖や先延ばし癖のように見えてしまうことも、時にはあるでしょう。
完璧主義になる原因には、どのようなものがあるのでしょうか。
・環境の影響
親、学校や習い事の先生など周囲の大人から、何らかの面で良い結果や高い水準の達成を求められることが多い環境で子ども時代を過ごすことは、完璧主義になりやすい要因と言えます。
・生来的な性格や資質
期待されると応えなくてはと思うタイプや、負けず嫌い、真面目など、持って生まれた性格からも、完璧主義的な傾向がうまれることがあります。環境によってそのような元々の性格が強化されると、ますます厳格な完璧主義者となり得ます。
・過去の失敗体験
テストで予期せず悪い点数を取ってしまった、仕事で思わぬミスをしてしまった等、本人にとって大きな失敗だと感じる体験をした後は、自分自身を信用しづらくなり、入念に準備や確認をするようになるのは自然なことと言えます。
しかし、一時的な反応ではなく、ミスを恐れ、失敗する自分を許せない感覚が定着することもあり、それが完璧主義につながる場合もあります。
完璧主義が自分や他人をしんどくさせるならば、治していけるといいですよね。完璧主義をやめたい方がご自分でできる対策をご紹介します。
・完璧にできなくても重大な困り事は起きないという現実を見る
完璧主義の人は完璧ではないことに大きな不安や恐怖を抱くことが多いですが、実際のところ、完璧じゃなかったとしても修正不可能なほどの困り事は起こらない場合がほとんどです。
完璧を求めすぎていると感じたら、「もしこれが完璧にできなかったらどうなるか」を現実的に考えて書き出してみると、思っていたより酷いことにはならないと気づきやすいです。
また、たとえ困った事態になりそうだと思えても、それにどんな対処法が取れそうかを考えると、絶対に対処できないことは滅多にないでしょう。そう捉え直して少し力を緩めてみると、楽になれるはずです。
・客観的な数字で時間や目標を設定する
100%完璧ではなくても、「これくらいなら許容できる」と思えるラインを自分で設定し、そのための準備期間、一日に要する時間、進度などを、具体的な数値にするのも良いでしょう。
そうすることで、やりすぎてしまいそうなときに自分にストップをかけたり、「この程度の力の入れ具合でそれなりの目標を達成できる」ということが体感しやすくなったりします。
・本来の目的は何かを問い直す
小さなミスを防がなくてはと思いすぎて全体的な目標を見失ってしまったり、自信の無さや評価してもらいたい気持ちが強くなるあまり頑張りすぎてしまうようなときは、本来の目的は何だったかを自分に問い直すと良いでしょう。
「枝葉末節の完成度より全体的な底上げができればよい」「今は個人的に人から認められ褒めてもらうことではなく、この仕事を成功させるために動こう」というように、不適応的なこだわりからより適応的な目的に視点を移すのも有効な対処法です。
・カウンセリングを受ける
自分だけではなかなか完璧主義から離れられないという場合は、カウンセリングを受けるのも手です。
カウンセリングでは、完璧主義的思考を変えていく方法を話し合い、カウンセラーと共に実践したり、完璧主義になった要因となるものを探り、それへのアプローチをしたりと、希望に応じたやり方を試していくことが可能です。
完璧主義の人がいると正確で完成度の高い仕事や運営ができるなど、助かるところも大いにありますが、時に自分を苦しめてしまったり、周囲を息苦しくさせたりする場合もあります。そのような自分の傾向を知り、できる対策から試していきながら、場面に応じて力の出し方を調整していけるといいですね。