「メンタルが不調になると、お風呂になかなか入る気になれない・・・」「身だしなみを整える気力がない。」そんな状態になったことはないですか?
うつ病をはじめ、メンタル不調が生じると、いつもは当たり前にできている入浴や洗顔などができなくなってしまうことがあります。
清潔さや美しさは体調に直結するものではありません。しかし、清潔にしているときの気持ちよさは誰もが知っているはずです。
このコラムでは、うつ病のときに身だしなみがどうでもよくなってしまう原因とその対策について解説していきます。
目次
- おわりに
なぜ、うつ病のときは身だしなみを整えることが難しくなってしまうのでしょうか。理由は以下の3つです。
1.情報能力の低下
うつ病になると、脳の情報処理能力が低下します。身だしなみに限らず、元気なときにできていたことのやり方がわからなくなってしまう傾向があります。料理や洗濯などの家事、読書などもうまくできなくなってしまうことがあります。
2.自己肯定感の低下
うつ病のときは自分自身に魅力を感じられにくくなります。コンプレックスばかり気になり、身だしなみに気を遣うことや頑張ることができなくなる傾向があります。
3.気力の低下
うつ病のときは気力が落ちるため、非常に疲れやすくなります。「お風呂に入ろう」「お化粧をしよう」と思っても、それを実現できるだけの力がわいてこないのです。
身だしなみを整えることから自分を遠ざけてしまう「億劫」だという気持ちについて、考えていきたいと思います。
「今日は、なんだか億劫だからお風呂は明日にしよう・・・」「今日は寝癖を直すのも面倒くさいから、帽子をかぶってごまかそう」そんな気持ちになることは誰にでもあります。そして、たいていの場合はそのような気持ちは長くは続きません。1日か2日程度で、気力が回復するでしょう。
しかし、うつ病の場合は違います。気力がすぐには回復せず、その翌日も、さらにその翌日も入浴や歯磨きをできるか確信を持てない状態が続きます。このような症状を抑制症状と呼びます。考える力や判断力が低下し、行動も変わっていく症状です。何気なく行っていた入浴に対して、「服を脱いで、ドアをあけて、シャワーの蛇口をひねって・・・」と果てしない工程があるように感じられます。最初の行動になかなか移ることができず、入浴できない状態が続いてしまいます。そのとき、「お風呂に入らなければならないけど、入ることができない」という表現になることが多く、自責の念に駆られてしまうという特徴もあります。
臨床心理士とは・・・
悩みを抱える人との対話をベースに、精神分析や心理療法を使って問題の解決をサポートする「こころの専門家」です。
うららか相談室には、多くの臨床心理士が在籍しています。
身だしなみはなぜ大切なのでしょう。清潔さを失うことで様々な影響があります。
1.虫歯
うつ病の方に限らず、メンタル不調によって身だしなみを整えることから遠ざかってしまう場合、虫歯を放置してしまう方が多くいらっしゃいます。虫歯が進行すると抜歯や入れ歯が必要になることもあります。
2.身体的な病気
わかりやすいものでは、皮膚疾患にかかりやすくなります。白癬菌による水虫やアレルギー性皮膚炎など、湿疹やかゆみを伴う症状が出ます。
3.自信の喪失
ここまで、うつの症状によって、身だしなみが乱れてしまうということをお伝えしてきました。外見の変化は周囲の評価にもつながります。ネガティブな評価があれば、コンプレックスがどんどん大きくなり、自信や自己肯定感が低下し、悪循環に陥ってしまいます。
メンタル不調のとき、悪循環に陥ってしまわないように実践していただきたいことがあります。身だしなみやおしゃれは完璧でなくとも構いません。ただ、健康を損なってしまわないように、以下の点だけは取り組みたいところです。
1.歯磨き
お口の健康を保つ『口腔ケア』は必ず必要です。虫歯や歯周病が進行すると、食べ物を噛むことが難しくなり、健康的な食事をとることが困難になってしまいます。
デンタルリンスや緑茶でうがいをするなど、できることから始められるとよいでしょう。
2.洗顔・シャワー
体をさっぱり清潔に保つことを目的にしましょう。リンスインシャンプーや全身用ソープ(髪も顔も体も洗えるもの)を利用して、かかる手順を少なくすることがポイントです。
1.入浴のコツ
普段は何気なく行っている入浴も、うつ病のときは果てしなく大変なことに思えます。まずは浴室に向かうことから始めてみましょう。なんだかやる気が起こらないときは、簡単に準備体操をします。手足をグーパーする動きを10回やってみましょう。
浴室ではとにかく手順を減らします。
全身用ソープを使って、髪、顔、体を洗いましょう。気持ちに余裕が出たら、リンスやトリートメントなどのスペシャルケアをしてもいいですね。
2.髪を乾かす
風邪をひかないためにも、ドライヤーでしっかり髪を乾かすのが理想的ですが、吸水タオルやタオルキャップなどの便利グッズに頼ると楽です。
3.口腔内を清潔に保つコツ
浴室に歯ブラシを持ち込んで、入浴と一緒に歯磨きをしてしまうのもアリです。便利グッズとしては、デンタルリンスがあります。歯ブラシを使うことが億劫な日はデンタルリンスを使ってうがいをするだけでも殺菌作用がありますよ。
4.入浴後はぜひ保湿を
お肌を清潔にしたら、ケアは保湿をメインに考えましょう。あれこれ塗るよりも、きちんと洗顔をして乳液やクリームで保湿をすることが大切です。
カウンセラーと一緒に、うつ病の改善に取り組んでみませんか?
うららか相談室では、あなたの「改善したい」という気持ちを、臨床心理士などの専門家がしっかりとサポートさせていただきます。
顔の印象をがらりと変えるポイントはたった2つです。肌と眉を意識しましょう。肌トラブルを防ぐためにもUVケアが大切です。外出時は日焼け止めを塗るように意識しましょう。石鹸で落ちるものだと肌にやさしく、クレンジングの工程が省けますし、肌をきれいに見せる効果のあるものを選ぶと顔色が明るくみえます。
眉は流れを整えることを意識しましょう。
清潔さを保ち、身だしなみを整えることでポジティブな変化が起こります。
1.周囲からの評価が良くなる
清潔感のある人は周囲からの印象もよくなります。株式会社マンダムが行った視線と恋愛に関する調査(※)では、初対面の異性に対して「清潔感があること」が好感度を上げるという結果が出ています。身だしなみを整えることで、周囲の人々に好印象を持ってもらうことができます。
2.自分自身の気分がよくなる
歯磨きをしなかったり入浴できなかったりする日々が続くと、体の不快感が増していきます。また、うつ病のときには自責の念に駆られることも少なくありません。身だしなみを整えることで「今日はできた」という達成感が生まれ、自分自身の気分がよくなるきっかけが生まれます。入浴や洗髪のさっぱり感もあるので、よりいっそうポジティブな気持ちが生まれやすくなるでしょう。
症状がつらく、何から始めてよいかわからなければ工程を整理することが必要です。そのために、以下の方法を試してみるのはいかがでしょうか。
1.手順書を作成する
身だしなみについて、やりたい項目を定めて手順を書き出してみましょう。書き出すことで「実はこんなに楽なことだったのか」と客観的に感じることができるほか、手順書を見ることで行動するときに考え込むことが減ります。
2.美容室・理容室に行ってみる
自分ではなかなか難しいと思うときは、一度美容室や理容室に行ってみるというのも一つの方法です。髪を切ってもらったり髭を剃ってもらったり、シャンプーしてもらうことでさっぱりとした気分を得られます。
3.人と一緒に整理する
考える力がない時は、一人でどうにかしようとしてもうまくいかないことも多いでしょう。カウンセリングは、カウンセラーとお話することで、考えを整理したり、自分の行動パターンや気分の変化に気づいたりすることができ、うつ病で身だしなみを整えられない状態の解消にも効果が期待されます。うららか相談室では、うつ病の方の相談経験が豊富なカウンセラーが多数在籍していますので、ぜひご活用いただければと思います。
清潔さを保つことは、回復のきっかけにつながるだけでなく、更なる不調の予防になります。できることを続けて、気分よく毎日を過ごせるとよいですね。
※調査概要
調査期間:2018年8月実施
調査対象: 15歳~29歳 男女456名(男性226名、女性230名)
調査主体:株式会社マンダム