働く人にとって、労働できる状態を維持することは簡単ではなく、時折、仕事を休まざるを得ないときもあります。そのようなときに、休職制度を利用することができる場合があります。休職は決してやましいことではなく、心身を療養したり、ほかに行うべきことがあったりする場合には、正当に仕事を休むことができる権利のようなものです。しかし、実際に休職したいときに、手続きや会社への伝え方が分からず、困ってしまうことが少なくありません。そこで、休職制度と欠勤・休業・休暇との違いや、給与・手当てなどについて見ていきましょう。
目次
- 休職制度とは
- 主な休職理由
- 休職するメリット
- 会社への伝え方
- まとめ
休職とは、仕事に関連しない個人の事情によって、労働契約を維持しながらも長期的に会社を休むことを指します。休職中も社員であるため、会社からの連絡には応じられるようにしなければいけません。
日本では休職の条件や期間などについて法律上の明確な決まりはありませんが、多くの会社が休職制度を設けており、会社ごとに定められた条件や期間で休職制度を利用することができます。
一般的に挙げられる休職理由について、次のような理由が挙げられます。
休職の理由としてよく挙げられるのが、病気やケガです。療養をするために会社を休むので、医師の診断書が必要になります。うつ病や適応障害、抑うつ状態などの診断を含みます。
災害の復興支援や社会福祉施設でのボランティア活動へ参加するために休職制度を利用できる場合があります。ほかにも個人的に望んだ留学のため、長期の休みが必要になり、休職する人も少なくありません。(留学休職と呼ばれます)
ケガや病気ではない何らかのアクシデントなどがあり、出勤ができない場合に休職制度が適用されることがあります。
被告人として起訴されたために、職場の安全な環境や会社としての信用などに生じうる問題により、出勤を禁止する場合に休職制度が適用されることがあります。
議員に当選するなどで公職に就き、仕事の両立が難しくなった際に、多くの場合は休職することができます。
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休職の期間などについては、会社の就業規則によって異なります。
期間は休職理由にもよりますが、目安として数カ月から長くて2,3年程度である場合が多いようです。また、期間が過ぎて復職できない場合は、基本的に自然退職の扱いとなります。
また、多くは個人の事情で仕事を休んでいることになるため、原則的に給与は支払われません。しかし、傷病休職の多くの場合は休職手当を受けられます。健康保険の手続きを行えば、例外を除き、休業4日目~最大1年半の期間で、一日あたり直近一年の給与の平均の2/3程度の傷病手当金が支給されます。
欠勤が長引いて休職制度が適用されることがあり、欠勤と休職を混同している人は少なくありません。
欠勤とは、自己都合で会社を休み、休職制度などが適用されていない状態を指すことが多いです。例えば、体調不良やケガで出勤できなくなった際に、労働契約に基づいて提供しなければならない労務が行われなくなるものの、会社としては熱があっても出勤するようにとは言えないでしょう。そして、診断書がなく休職制度を適用できなかったり、休職制度がなかったりする場合には、ほかの制度を利用しない限りは欠勤扱いになります。
休職と欠勤・休業・休暇の違いについて、次にまとめてみました。ただし、就業規則によって言葉の定義が異なる場合があるので、注意してください。
休職
欠勤
休業
休暇
次に、休職するメリット・デメリットについて見ていきましょう。
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仕事のストレスや疲れから離れることができるので、しっかりと療養することができます。これは、うつ病や適応障害、抑うつ状態の治療では特に大切なことです。
しばらく仕事をしない場合に退職するという方法もありますが、退職してしまうと仕事を再開できる保障がなくなります。復帰後の職が確保されていることは、精神的な安心感にもつながるでしょう。
精神疾患で休職した場合は治療後に復職をする流れになりますが、予防の観点から、抱えている問題があれば取り組むことができます。症状が落ち着いてから、例えば、ストレスを抱えやすい内面と向き合うためにカウンセリングを受けたり、家族の問題などの生活環境を改善したりする時間も確保されます。
会社としては休職中も保険料を負担していることや、安定して出勤できる人のほうが安心であることから、社内の評価に影響する可能性がないとは言えないでしょう。しっかりと事情を会社に理解してもらうことが大切です。
休職中は基本的に給与の支払いがなく、傷病手当金を受け取っても通常時よりは収入が減ります。また、休職中も住民税や保険料を支払う必要があり、経済的に厳しくなる人も少なくありません。
自分の休職によって同僚の仕事の負担が増えたのであれば申し訳ないと感じたり、一人だけ休職していたことに引け目を感じてしまったりして、職場に復帰しにくくなる人もいます。また、復職後に周りからの信頼を取り戻そうと必要以上に頑張ってしまい、心身に不調をきたす人も少なくありません。
休職したいことを会社に伝えるときは、どのようにすればいいのでしょうか。休職のデメリットを減らす伝え方について見ていきましょう。
まず、病気やケガで休職する場合は、病院で診断書をもらうようにしましょう。診断書がないと、休業にすることが難しく、相手によっては嘘をついているのではないかと疑われてしまう可能性もあります。病気で休養が必要だということを理解してもらうために、診断書は用意しておきましょう。
実際に会社へ伝える際は、メールや電話だけで済ませるのではなく、可能な限り上司に会って直接話すようにしましょう。メールなどでアポイントメントを取り、診断書がある場合は診断書を提出し、休職したい旨を伝えましょう。
たとえ病気が原因であったとしても、会社に迷惑や負担をかけてしまうことには変わりないため、丁寧な言葉で謝罪の旨などを伝えるようにしましょう。ただし、体調がすぐれなかったり、精神的に厳しかったりする場合は、症状が落ち着いてから職場の理解を得るようにしましょう。
休職制度の内容は会社によって異なりますが、従業員が正当な理由で休むことができる権利であるとも言えます。病気やケガで仕事ができない場合には、しっかりと療養をすることができて、復帰後に仕事があることも保障されます。ただし、会社にとっては休職者が増えることで負担がかかることも事実でしょう。したがって、会社に伝えるときには、できる限りの準備と配慮を行うようにしましょう。