皆さんは、「フレイル」という言葉を耳にしたことはありますか?
医療介護業界で、近年さかんに叫ばれている「フレイル」。日本語で訳すと「虚弱」という意味で、加齢により身体とこころが弱くなった状態のことを言います。
例えば、フレイルのサインとして、
・前よりも疲れやすい
・体重が減った
・外へでるのがおっくうだ
などが挙げられますが、これらは年齢を重ねると誰もが経験することのように思いますよね。
しかし、これらのサインは筋力の減少や骨、関節等の衰えにより、日常生活に支障をきたしはじめている身体からの大切な訴えでもあるのです。
フレイルには、体重減少や筋力低下などの身体的な変化だけでなく、閉じこもりや孤食による気力の低下などの、精神的な変化や社会的なものも含まれます。
目次
- あなたの親は大丈夫?「フレイル」かもしれない特徴的な症状とは
では、なぜフレイルが現在これほど注目されているのでしょうか。
フレイルの状態が続くと、免疫が低下して病気にかかりやすくなったり、ストレスに弱い状態になっていきます。
軽い風邪で肺炎になったり、なんとなくだるくて足元に注意が向かず、転倒骨折してそのまま寝たきりになったりするケースは多いです。
その結果、うつ病や認知症を発症したり、自分の感情をコントロールできなくなることもあります。
つまりフレイルが進行するにつれ、身体的にも精神的にも、じわじわと要介護状態になっていくわけです。
超高齢社会の日本では、高齢者にとっても、これから高齢者を支えていく若年層にとっても、介護問題は大きなテーマです。健康寿命を延ばし、元気な高齢者を増やすことが社会全体の課題となっているのです。
そんな中、注目されているのがこのフレイルというわけです。
フレイルの最大の特徴は、適切な治療や予防を行うことで要介護状態になることを防げる、また要介護状態から健康な状態にもどる可能性がある、というところです。
そしてその、適切な治療や予防として重要なポイントの一つが栄養なのです。
2ヶ月間、かかりつけ管理栄養士が食事を通してメンタルヘルス改善をサポートします。
食事記録のフィードバックとZoomを使った定期カウンセリングにより、こころと体の健康を食生活からセルフマネジメントできるようになることを目指します。
あなたの親にこんな症状が見られたら、もしかしたら「フレイル」状態かもしれません。
・体重が減ってきている
・すぐに疲れる
・歩く速度が遅くなった
・食事量が減った
・立ったり座ったりがつらそうだ
・ふくらはぎが細くなった(人差し指と親指でわっかを作り、ふくらはぎの一番太い部分を囲うと余白ができる)
・慢性的に管理が必要な疾患がある(糖尿病、悪性新生物、呼吸器病、心血管疾患、抑うつ症状、貧血等)
・家にとじこもりがちだ
・物忘れがひどくなっていたり、会話中に物の名前が出てきづらいことが増えた
フレイルの予防や改善にとって重要となる、3つのポイントをご紹介します。
① 栄養
バランスの良い食事を心がけましょう。
筋肉には魚・肉・大豆製品などに含まれるたんぱく質が必要です。
また、主食(ご飯、パン、麺等)を必要量とれていないと、カロリー不足に陥り、せっかくとったタンパク質が筋肉に変えられる以前に、エネルギーとして消費されてしまうので、注意が必要です。
骨を強くするカルシウムを含む乳製品や、カルシウムの吸収を助けるビタミンDを含む野菜や、きのこ類も合わせてとりましょう。
3食しっかりととり、よく噛むことで口腔機能の向上や認知症の予防もすることができます。
② 運動
日常生活の中でできる運動を継続して行っていくことで要介護のリスクを下げることができます。
毎日30分以上歩く、エレベーターは使わず階段を登る、寝る前にストレッチする、など、無理なくできることを続けてみましょう。
筋力を維持することが、転倒・骨折をきっかけとした寝たきりの予防となります。
また、免疫力維持にもつながり、肺炎のリスクの予防にもなります。
③ 社会とのつながり
外出がおっくうで閉じこもってしまったり、退職後、交友関係が減ったりすることで、社会参加の機会が減っていくと、フレイルになりやすいです。
趣味のクラブに入る、ボランティア活動に参加する、就労するなど、自分にあったやり方で社会とのつながりを持ちましょう。
うららか相談室のカウンセリングでは、あなたやあなたの両親の今の食生活をヒアリングし、管理栄養士がフレイル対策として改善できるポイントや、相談者様に合ったレシピをご提案することができます。
文章でやりとりしたい方はメッセージカウンセリングを、話しながら相談したい方は電話またはビデオカウンセリングをご利用ください。外出も兼ねての対面カウンセリングも可能です。
今、自分がとっている食事でフレイルの予防ができているか確認改善しつつ、社会とのつながりや運動のとっかかりとしても活用していただければと思います。
ご自身にあった方法を取り入れて、元気な老後を目指していけるといいですね。
普段の食事内容をお聞きし、改善のポイントや、不足している可能性のある栄養素についてご紹介します。どのように利用者様の生活に取れ入れることができるか考えたり、献立例をお作りすることも可能です。
最後に、フレイル予防を意識したレシピを1品、ご紹介します。
良質なタンパク質を含む鶏ささみ肉と、カルシウム含量の高い小松菜を使った、ガーリックライスです。
炭水化物(ごはん)とタンパク質(鶏ささみ肉)とビタミン・ミネラル(小松菜・玉ねぎ・にんにく)が一気にとれるのが魅力のレシピです。
また、本来の調理工程だと、粘り気がでないよう少し冷ましてからごはんを炒める、手ににおいの付きやすいにんにくをみじん切りにする、と少々面倒に感じるガーリックライスですが、今回のレシピはにんにくチューブを使った混ぜ込みごはんですので、簡単、時短で作れます。
☆ささみと小松菜の混ぜ込みガーリックライス☆
材料(1人分)
・ごはん 150g
・ささみ 70g
・小松菜 40g
・玉ねぎ 40g
・にんにく(チューブ) 5g(小さじ1)
・オリーブオイル 15g(大さじ1)
・醤油 7.5g(小さじ1と1/2)
・黒こしょう 少々
作り方
1. ささみを小さめのサイコロ状、玉ねぎ、小松菜をみじん切りにする。
2. フライパンでオリーブオイルを熱し、1を炒める。
3. しんなりしてきたら醤油ににんにくを混ぜておき、鍋肌から回し入れ汁気がとぶ程度まで炒め合わせる。
4. ごはんに3をまんべんなく混ぜ込む。
5. 黒こしょうで味を整えて完成。
*お好みでひとつまみ程度塩を振り、味を調整して下さい。
[栄養成分]
エネルギー501kcal、タンパク質22.3g、脂質16.2g、カルシウム87mg、食塩相当量1.4g
にんにくの香りが食欲をそそります。ごはんは具を混ぜ込んだ時、べちゃっとしないよう固めに炊くのがおすすめです。
是非、食卓に取り入れてみて下さい。
(参考文献)
・参照/文部科学省食品成分データベースhttps://fooddb.mext.go.jp/index.pl
・高齢者の特性をふまえたガイドライン(厚生労働省保険局高齢者医療課)https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000205007.pdf