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  1. 感覚過敏の子どもやHSCへの配慮事項から学ぶ子育てのヒント

感覚過敏の子どもやHSCへの配慮事項から学ぶ子育てのヒント

自分の子どもに対して、発達障害の診断は受けていないものの、他の子と比べて育てにくさを感じることはありませんか。

例えば、

  • 他の子が怖がらないような音や光、においを嫌がる
  • 集団生活になじめず、幼稚園や保育園、学校から帰宅するとぐったりしている

などといったことが頻繁にあると、うちの子はちょっと疲れやすいのかな、外で気を遣いすぎるのかな、と心配になる人は少なくありません。

また、食べ物にこだわりがあるのか偏食がひどい、言葉で言いたいことを伝えられずすぐに癇癪を起こす、怒られたことをずっと覚えている、夜の寝つきが悪いなどのことで、どれだけ工夫をしてもうまくいかないことがあります。

このような育てにくさから親御さんは疲弊し、子どもから逃げたいと思うこともあるでしょう。

このコラムでは、そうした子育ての難しさを感じやすいお子さんの特性について紹介しますので、同じような悩みを持つ保護者の方のヒントになれば嬉しいです。

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目次

- 感覚過敏とは

- HSCとは

- 感覚過敏の子どもやHSCが抱える問題

- 感覚過敏の子どもやHSCへの配慮事項から学ぶ子育てのヒント

- おわりに

感覚過敏とは


視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚などの諸感覚がとても敏感なことを指します。平衡感覚や温度感覚などに敏感な人もいます。

感覚過敏でない人にとっては気にならないことが、感覚過敏がある人にとってはとても辛く、生活の妨げになることがあります。例えば、声が大きく感じる、人混みが怖い、光がまぶしすぎるなど、感覚過敏でない人に比べると、刺激が脳内で何倍にも感じられ、体調を悪くするほど苦痛に感じてしまうこともあります。

苦手な刺激がわかれば、例えば、聴覚過敏の人であれば、音が小さく聞こえる耳栓や防音保護具を使用するといったように、刺激を軽減する工夫をして対処することが可能です。

HSCとは


HSCはhighly sensitive childの略で、病名や診断名ではなく、人一倍繊細な気質をもった子どものことを指します。

アメリカの心理学者エイレン・N・アーロン博士が、感受性が強く非常に敏感である人を意味するHSP(highly sensitive person)の特性について指摘したことで、HSCも注目されるようになりました。

HSCの4つの特性として、以下のものが挙げられます。

  1. 物事を深く考えて処理する(Depth of processing)
  2. 過剰に刺激を受けやすい(Overstimulation)
  3. 感情の反応が強く、共感力が高い(Empathy and emotional responsiveness)
  4. 些細なことに気づきやすい(Sensitivity to subtleties)

刺激に対して敏感なので人より疲れやすかったり、じっくり考えないと不安なので行動に移すまでに時間がかかったりすることがあると考えられます。

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感覚過敏の子どもやHSCが抱える問題

刺激に敏感なお子さんたちは、集団生活の中で特にストレスを感じやすい傾向がありますが、幼児期や低学年ではそのことをうまく言葉にできません。例えば、子どもの特性によって次のような問題を抱えていることがあります。

音の刺激に敏感な子どもは、クラスの中で先生が大声でクラスメートを叱ると、まるで自分が叱られたかのように感じてしまい、恐怖を覚えやすくなります。また、周りの子にとって平気な程度の雑音であっても、クラス内がざわざわと騒がしく感じられやすいので落ち着かず、不安になってしまうこともあります。

嗅覚が過敏であれば、給食などの匂いが気になって授業に集中できないというお子さんもいます。

一斉授業では他のクラスメートと一緒のペースで進めることを求められやすいため、マイペースで一つ一つの作業を丁寧に行いたいお子さんは強いストレスを感じることがあります。

また、感覚過敏の子どもやHSCは、学校だけでなく友だち付き合いや親子関係においても問題を抱えやすくなります。例えば、友達から嫌なことを言われた、お母さんに怒られたなど、あっさりと忘れてしまいそうなことを深く受け止め、時間が経っても覚えていることがあります。

個人レベルの問題として、例えば、触覚が敏感なお子さんの中には、服の肌触りを気にして特定の素材を嫌がったり、食感にこだわりがあり偏食が多かったりすることがあります。また、個人のケースによりますが、睡眠障害のあるお子さんも多く、眠りが浅い、すぐに起きてしまう、なかなか寝付けない、次の日は寝不足で過ごす、といった問題に親子ともども悩むことが少なくありません。

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感覚過敏の子どもやHSCへの配慮事項から学ぶ子育てのヒント

どんな子どもでも少なからず周りの子どもと違う特性や苦手なことを抱えています。感覚過敏の子どもやHSCへ配慮するとよいとされていることは、子どもの特性に合った関わり方であり、感覚過敏やHSCでなくても次のように、子どもに対する育てにくさを感じたときの子育てのヒントになることがあります。


1. 子どもの気持ちに共感する

子どもが不安そうにしたり怖がったりしているときは、不安な気持ちや怖いと思う気持ちを受け止めてあげましょう。

「そんなの怖くないでしょ!」「なんで嫌なの!」といったように否定をすると、お子さんは委縮してしまいます。

具体的な事例を元に、声かけの例をあげてみます。


  • 事例1) 家族で花火を見に行ったが、子どもが楽しめなかった

「せっかく花火を見に来たのに」とイライラするのではなく、「大きな音が怖かったね」と言葉にして伝えてあげましょう。


  • 事例2) 自分の子どもが小さい子に人見知りをしてしまった

「小さい子にやさしくできないなんてダメ」と腹を立てるのではなく、「急に近くに来たのが嫌だったね」と後で言葉にして伝えてあげましょう。

幼児期には自分の不安を言葉にできないお子さんも多いので、大人が言葉にして伝えることで、何が不安だったのか自覚できるようになり、苦手なことにうまく対処する方法も少しずつ学んでいきます。


2. 好みについて話し合い、できることは合わせてみる

感覚が過敏だと、寝具や衣服の肌触りが嫌だと言って駄々をこねたり、特定の食べ物の味が嫌いと言って料理を食べようとしなかったりなど、普段の生活でも、面倒に感じることが多いです。

「わがままを言わずにこれで我慢しなさい」と叱っても、お子さんは癇癪を起こすなど、かえって大変なことになりやすいです。

例えば、せっかく買ってきたシーツを嫌がられるなど、少々イラッとすることもあるかもしれませんが、「すごい感覚だね」と声をかけたり、好きな肌触りの布を教えてもらい、次回の参考にするなど、子どもに寄り添った対応ができると良いですね。

偏食については、好きな食べ物の理由を聞いて好みを知ったり、一緒に料理を作ったりして少しずつ食べられるものを増やしていきましょう。栄養バランスにこだわり、無理に嫌いな食材を食べさせようとすると、そのことがつらい記憶になったり、さらに食材に対する苦手意識が増すことがあります。子どもがいつも同じものばかり好んで食べていると親は心配かもしれませんが、そのうち同じものに飽きて、次に好きなものができてきます。焦らずじっくりすすめていきましょう。幼稚園や学校の給食で、例えば、他の子がモリモリと食べているのを見て「自分も食べてみよう」と思うこともありますし、完食シールが欲しくて「少しだけトライしよう」という気持ちになることもあります。まずは好きなものだけでもおいしく食べられるよう、長い目で見守りましょう。


3. 子どものペースを尊重する

HSCのお子さんは、慎重な性格のお子さんも多いです。じっくり考えてから行動する子どもに対し親御さんはもどかしくなり、ついつい「早くして!」と言いたくなりますが、お子さんは急かされることを嫌います。子どものペースを尊重するようにしましょう。

集団生活が苦手な理由としても、周りの子と同じペースで進めないといけないことが大きいです。どうしても集団生活が子どもにとってストレスになってしまうようなら、副担任の先生にみてもらう、特別支援学級などの少人数でみてもらうといった配慮をお願いする方法もあります。

家庭では、お子さんが納得いくまでじっくり行動する時間を作ってあげて下さい。集団生活で周りのペースに合わせることにかなり疲れていて、家では自分のペースで物事を進めたいと思っているかもしれません。


4. 嫌なことは無理にさせない

親御さんが、活発で物怖じしない男の子がうらやましい、子どもは堂々としているもの、と思っていると、子どもが嫌がっていることに対して「うちの子は怖がりなんだから」「そんなの大丈夫だよ」などと言ってしまいがちです。

スポーツの習い事などでは、元気に活動しているように見えて、勝ち負けを競うことや親から活躍を期待されることにプレッシャーを感じ、ストレスになっている場合もあります。

本人が希望しているなら問題ないですが、ストレスが強かったり、好きではなかったりするようなら無理をさせなくてもいいと思います。

子どもが嫌なことから逃げてばかりになっては困る、と考える親御さんも多いですが、本人の意思がない場合は、ストレス反応が出たり、落ち込んだりすることも増えてきますし、ひどいときはチック(本人の意思とは関係なく突発的な体の動きや声が繰り返し出てしまうこと)が出やすくなったり、うつ病のような症状がみられたりすることがあります。

本人が望んでいるかどうかの見極めは難しいですが、親の希望を押し付けず、子どもが心身を害するようなストレスを感じていると察知したら、無理をさせない方がいいでしょう。


5. 子どもが分かるように丁寧に説明して、子どもに行動を決めさせる

親がなんでも決めてしまうとお子さんはとても不安になります。

歯医者が怖い、予防接種が怖い、というのもよくある場面ですが、例えば、幼児なら歯医者さんの絵本やパンフレットを見せて、何をするのか、何のために行くのか、行かないとどうなるのかをきちんと説明しましょう。それでも納得しなかったり、怖がったりことはあると思いますが、避けられない予定は早めに伝えて、根気よく説明することが必要です。


6. 親が感情的になってしまったときはきちんとフォローする

感覚が過敏なお子さんを育てていると、こだわりや好みの細かさに親自身もとても疲れてしまいやすいです。せっかく作ったご飯を全く食べてくれない、友だちとも泣いてばかりでうまく遊べない、何が嫌なのかはっきりしないで癇癪ばかり起こす、夜はなかなか寝てくれない、といったことを毎日のように繰り返されると、本当にストレスが溜まると思います。

「この子の特性だから仕方ない」と分かっていても、他の親子を見ているとうらやましくなったり、なんで私ばかり辛い思いをするのだろうと悲しくなったりすることもあるでしょう。落ち込んでいるときに、お子さんに些細なことをぐずぐず言われると、怒りや悲しみが爆発してしまうこともあると思います。

そんなときは、お子さんと一時的に離れてクールダウンしてから、「さっきは怒ってごめんね。お母さんも疲れてしまったんだ。」と辛い気持ちを話してみるのもいいでしょう。

感受性の強いお子さんは人の気持ちにも敏感ですので、不機嫌なお母さんに「もっと笑ってほしい」などと言ってくることも多いです。


親が辛いときは、市町村の児童家庭支援センターの心理士や、児童福祉課の児童福祉司、保健センターの保健師などに、子育ての悩みを聞いてもらうのもよいでしょう。

地域のファミリーサポートなどの支援サービスを利用し、お子さんを預けてリフレッシュする時間も必要です。集団保育が苦手な子どもでも、1対1でかかわってくれる支援なら、担当者に慣れるのも早く、託児をお願いしやすいでしょう。


うららか相談室のカウンセリングでは、子育てや親のメンタルヘルスなどの様々な悩みをオンラインでカウンセラーに相談することができます。一人で悩みを抱え込みすぎてしまわないよう、お気軽にご利用いただければと思います。

おわりに

感覚過敏やHSCの傾向があるお子さんは、周りの子が平気なものでも頻繁に嫌がることがあり、苦手な理由がはっきり分からないで親御さんも困惑してしまうことが多いですが、子どもが嫌がっている理由を根気よく知ることで、親がとるべき対応も見えてきます。

甘えやわがままだと思っていたものが、実はお子さんにとっては苦痛を感じるほど苦手だったとわかれば、それを避けることは逃げではないということを子どもに伝えることができます。

苦手なものから距離を置くこと、無理強いしないことで、お子さんのストレスや不安は軽減されやすくなります。

細かいことに気を遣わないといけない、周囲に理解を求めないといけない、といったことが多く、子育てが面倒で辛いと思うことも多いですが、敏感なお子さんには、人の感情を察知したり、慎重に物事を進めたりできるという良い部分もあります。

お子さんの良い面を伸ばし、苦手な部分はお子さん自身も自分で対処できるように親子で話し合う時間を持つと、お子さんだけでなく親御さんも過ごしやすくなると思います。

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参考にしたもの

・音が異常に気になる…聴覚過敏の原因と簡単セルフチェック[耳鼻科医解説] Doctors Me(ドクターズミー), 2021-03-29参照

https://doctors-me.com/column/detail/6165

・PHPのびのび子育て2021年3月号 傷つきやすい子、敏感な子の育て方, PHP研究所

・感覚過敏とは?感覚過敏の種類・原因・解決方法など | 感覚過敏研究所, 2021-03-29参照

https://kabin.life/kabin

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このコラムを書いた人
精神保健福祉士・社会福祉士
救急病院の医療ソーシャルワーカーとして、うつに悩む方や、不登校・長期の引きこもり、障害のあるお子さんの悩みなど、様々なケースに出会い、早期に専門職が関わる必要性を感じてきた。子育てやモラハラなどの家庭内の問題など、様々なお悩みの相談に携わっている。
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