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  1. セルフコンパッションとは?自分を思いやるワークの実践方法

セルフコンパッションとは?自分を思いやるワークの実践方法

更新日 2024.11.21
自身の性格・能力
うららか相談室

セルフコンパッションとは、簡単に言うと「自己への思いやり」のことです。自身の至らない点を人間なら誰もが経験するものとして、批判せずに捉える概念であり、カウンセリングや心理セラピーなどに活用されています。自分の弱みや過去の失敗などによる苦しみを抱え続けると、うつ病などの精神疾患に陥ることもあります。そうしたストレスの軽減に役立つと考えられ、近年注目されているセルフコンパッションについて解説していきます。

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目次

- セルフコンパッションとは

- セルフコンパッションの3つの要素

- セルフコンパッションが高い人の特徴

- セルフコンパッションの効果

- セルフコンパッションを高める方法

- まとめ

セルフコンパッションとは

セルフコンパッション(self-compassion)は、心理学者のクリスティーン・ネフによって定義され、「自分への思いやり」「自己への慈しみ」と訳されます。思いやりや慈しみとはそもそも仏教思想がもとになっていますが、心理学の分野で研究されているメンタルケアの方法としてのセルフコンパッションでは、宗教性は排除されています。

日本では、「自分に厳しくあるべき」という通念が広まっており、無意識に「自分を甘やかしてはいけない」と考えるため、自身を苦しめやすいと感じています。もちろん、自分に厳しく努力するのが悪いということではありません。自分に厳しくすることで、内面的な成長ができることは多いですが、いつも無茶をすべきということではありません。

セルフコンパッションは、自尊心(自己肯定感)の代わりの役割を果たし、ストレスへの対処だけでなく、幸福度の向上自己成長にもつながると考えられています。

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セルフコンパッションの3つの要素


セルフコンパッションは以下の3つの要素から構成されています。


1. 自分へのやさしさ(self-kindness)

日常生活でうまくいかないことがあると、自分の弱みを批判的に捉えがちですが、そういった自己批判は抑うつなどのメンタル不調を引き起こしやすくなります。

自己批判ばかりするのではなく、自身の弱みや苦しさに優しく接することで気持ちを落ち着かせます。


2. 共通の人間性(common-humanity)

「どうして自分だけがこんなに苦しい思いをしなければならないのだろう」と考えたことはありませんか。このような捉え方をすると、孤独感を抱きやすくなります。

孤独感は、うつ病に対するリスクを高めると考えられています。

自分が経験している困難や苦しみは、広い視点で見れば、人間である以上誰もが体験しうると考えることができます。また、自分は一人で生きているのではなく、周りの様々なものによって生きていくことができていると考えられます。自分だけが苦しみを抱えているのではなく、誰しも何らかの弱みがあることに気づくことで、孤独な気持ちが緩和されます。


3. マインドフルネス(mindfulness)

マインドフルネスとは、「今この瞬間」に感じていることに対して、良い悪いなどの価値判断をせずあるがままに捉えることを指します。ネガティブな感情ばかりを無理に抑えようとしたり強調したりすると、さらなる苦しみを増幅させやすくなります。この傾向を、「過度の一致」といいます。

自分の感じていることを客観的に捉えることで、効率的に困難を対処することができます。

セルフコンパッションが高い人の特徴


セルフコンパッションが高い人は、次のような傾向があるということができます。


◆他人にもやさしい

セルフコンパッションが高い人は、自分にも他人にもやさしくすることができます。また、困っているのは自分だけではないという考え方を身につけています。


◆他人に助けを求めることができる

困難は自分だけで解決しなければならないというとらわれが少なく、客観的に苦しみを捉えられるため、セルフコンパッションが高い人は、他人を頼ることができると考えられています。

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セルフコンパッションの効果

上記に加えて、セルフコンパッションを高めることの効果を見ていきましょう


◆精神的な健康

セルフコンパッションは不安・抑うつを防ぐ効果があると考えられており、精神的な健康につながります。ただし、うつ病などで抑うつや不安の強すぎる人は、セルフコンパッションの考え方を掴むのが難しいことがあり、セラピストやカウンセラーと行う、症状を軽減させてから行うなどの配慮が必要になるかもしれません。


◆幸福度が高まる

セルフコンパッションはものごとを否定的に捉えることを防ぐため、幸福度が高くなると考えられています。幸福度の考え方である「ウェルビーイング」がセルフコンパッションの根底にあります。


◆自己成長へのモチベーションが高まる

セルフコンパッションが高い人は、生活をより良いものにしようとするため、困難に対して積極的に向き合う姿勢が見られます。人生に対する好奇心が高くなるともいえます。

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セルフコンパッションを高める方法

セルフコンパッションを高めるためには、どのような方法があるのでしょうか。


◇マインドフルネスを取り入れる

マインドフルネスの考え方を取り入れる方法として、マインドフルネス瞑想を行うことや、マインドフルネスストレス低減法を実践するなどが挙げられます。マインドフルネス瞑想は、余計な考えにとらわれず今感じていることを客観的に捉えるトレーニングです。

マインドフルネス瞑想は、楽な姿勢で、数分間、呼吸に意識を集中させます。呼吸から意識が離れた場合は、そのことに気づき、再び呼吸に意識を戻すことを繰り返します。

マインドフルネスストレス低減法は、ジョン・カバットジン教授によってマサチューセッツ大学メディカルセンターで開発された心理療法プログラムで、音声ガイダンス付きのワークブックも販売されています。セルフコンパッションの考え方が取り込まれています。


◇ジャーナリング

ジャーナリングとは、「書く瞑想」とも呼ばれており、心に浮かんだことをそのまま書き出していくという方法です。書き出すことで、自分の考えや感情を客観的に捉えやすくなります。ジャーナリングは、自己理解だけでなく、「生きるヒント」が得られるといわれています。書き出したことには、他人を養育するようにやさしい言葉をかけるといいでしょう。


◇慈悲の瞑想

慈悲の瞑想とは、仏教用語であり、転じて、自分と他人が幸せになること、苦しみから解放されることを願う瞑想のことを指します。自分とほかの全人類の幸せを願うことは、コンパッションの定義ともいえます。セルフコンパッションを提唱した前述のクリスティーン・ネフは、慈悲の瞑想に対して肯定的です。

慣れるまでは、「私が幸せでありますように、苦しみから解放されますように」「人類が幸せでありますように、苦しみから解放されますように」といったように願うのがいいでしょう。


「どうして自分ばかり…」という考え方が強く、そうしたとらわれから離れられない方は認知行動療法のワークで、納得のいく考え方を習得していくことも一つの手です。

まとめ

日本では、「自分に厳しく」と教えられることが多く、自分を追い詰めて頑張りすぎてしまう傾向があると考えられます。セルフコンパッションの概念は、ありのままの自分を受け入れて、自分に対して慈悲の気持ちを持つことで、精神的に安定し、余裕をもちやすくなるという考え方です。自分に対してネガティブな気持ちを持っていたり、イライラしやすかったり、過去の失敗を引きずって自分を責めてしまいやすい人は、セルフコンパッションの考え方を意識してみてはいかがでしょうか。

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<参考文献>

水野雅之 菅原大地 千島雄太 (2017) セルフ・コンパッションおよび自尊感情とウェルビーイングの関連 ─コーピングを媒介変数として─, 感情心理学研究 Vol.24 No.3 112-118
仲嶺実甫子 竹森啓子 佐藤寛 (2018) セルフ・コンパッションが被援助志向性およびストレス反応に及ぼす影響, 関西大学心理学研究 Vol.9 13-19
宮川裕基 谷口淳一 (2016) セルフコンパッション研究のこれまでの知見と今後の課題-困難な事態における苦痛の緩和と自己向上志向性に注目して-, 帝塚山大学心理学部紀要 No.5 79-88
有光興記 (2014) セルフ・コンパッション尺度日本語版の作成と信頼性,妥当性の検討, 心理学研究 Vol.85 No.1 50– 59
中島妃佳里 (2013) ジャーナリングの意義とその方法, Psychologist : 関西大学臨床心理専門職大学院紀要, Vol.3 21-30
平野美沙 湯川進太郎 (2013) マインドフルネス瞑想の怒り低減効果に関する実験的検討, 心理学研究 Vol.84 No.2 93–102
有光興記, 心理学ワールド 87号 「あるがまま」の心理学  セルフ・コンパッションと「あるがまま」 | 日本心理学会, 2021/03/01最終閲覧, https://psych.or.jp/publication/world087/pw05/
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このコラムを書いた人
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