皆さんは理想の老後を考えた時、どんな生活が浮かびますか?
・子どもや孫と一緒に騒がしくも楽しい生活
・子育ても終わり、夫婦で旅行三昧
・田舎でゆっくり穏やかな隠居生活
・海外移住をして、のんびり悠々自適な毎日
しかし、現実の生活を考えると、こんな不安も浮かんできます。
・老後、そもそも健康に生活できているのだろうか?
・一人暮らしで頼れる人が周りにいない。
・もし病気になったら、介護や治療にいくらかかるのだろう。
・健康的な生活をおくれるだけの年金が今後もらえなかったら?
私は現在30代前半ですが、老後への期待と同時に、不安も大きいのが実際のところです。
目次
人生100年時代がすぐそこまで来ているといわれています。
実際、日本人の平均寿命は、男性 80.98 年、女性は 87.14 年となり、前年度と比較して男女とも延びています。(※1)
一方で、健康寿命(日常生活に制限のない期間のこと)も延びてはいるものの、同じく平成28年で男性は72.14年、女性は74.49歳との結果となっています。(※2)
つまり、要支援・要介護状態での生活が、男性で平均8.84年、女性で平均12.65年続くということになります。
この結果を聞くと、健康の大切さがより身に染みますよね。
ところで、冒頭から何回も出てくる、この「健康」という言葉は、そもそも非常に幅の広い概念です。
それぞれの人がさまざまな条件の中で生きています。単に傷病の有無だけで、健康かどうかを判断することはできません。
また、身体的(肉体的)には良好な状態であったとしても、精神的あるいは社会的に良好な状態でなければ、健康であるとは言い難いものがあります。
今後、寿命が延びれば延びるほど、自分は一体健康に生きていると言えるのか、考えることになりそうですね。
2ヶ月間、かかりつけ管理栄養士が食事を通してメンタルヘルス改善をサポートします。
食事記録のフィードバックとZoomを使った定期カウンセリングにより、こころと体の健康を食生活からセルフマネジメントできるようになることを目指します。
健康な生活が保てなくなったとき、必ずやってくるのが介護生活。
介護はこれから超高齢社会を迎えるにあたり、今後さらに社会全体で取り組むべき大きな課題です。
しかし、できることなら健康寿命を少しでも長くして、心身ともに元気な毎日を送ることが理想ですよね。
現在高齢期の方にも、将来高齢期をむかえる方にも、今日からできることがあります。
それは食生活の改善です。
皆さんは、ご自身の目標とする食事摂取量をご存知ですか?
食事摂取量は、それぞれの年齢や既往歴、生活環境によって変わります。
例えば、1日分のたんぱく質の目標量を、標準的な女性の30~49歳と50~64歳、65~74歳で比較してみると、このようになります。
30~49歳:67~103g
50~64歳:68~98g
65~74歳:69~93g
(日本人の食事摂取基準(2020年版)より身体活動レベルⅡの場合)
青年期から中年期→中年期からプレ高齢期→前期高齢期と年代が上がるにつれて、上限量は減るものの下限量が増やされているのが分かります。
簡単に言うと、最低限これくらいの量はとれるといいですね、という量が年齢が上がるほど増えている、ということです。
加齢に伴って減少していく筋肉量を維持することが、高齢期の介護予防では重要なので、若年、及び中年成人に比べて、高齢者では多くのたんぱく質の摂取が必要とされることが前提とされているのです。
また、現在高齢期にあたり、筋力の衰えにより日常生活に支障が出始めている人では、より多くたんぱく質をとっていた人の方が、筋肉量や身体機能に改善がみられたという報告もあります。
具体的な献立で比べてみましょう。
・ごはん 150g
・鮭と野菜のホイル蒸し
・春菊のお浸し
・わかめと油揚げのお味噌汁
・いちご
この献立を、介護予防の観点から改善してみると、次のようになります。
・ごはん 150g
・鮭と野菜のチーズのせホイル蒸し(上記献立+チーズ20g)
・春菊の白和え(上記献立+豆腐70g)
・わかめと油揚げのお味噌汁
・いちごヨーグルトかけ(上記献立+ヨーグルト20g)
調理工程に大きな違いはありませんが、チーズ20g、豆腐70g、ヨーグルト20gを意識して加えただけで、たんぱく質のとれる量は13.03gも増えます。
おまけに、介護予防の骨量維持のためにとりたいカルシウムの量も206.5mg多くとれます。
(*心臓疾患、糖尿病、高血圧、脂質異常症、痛風等の持病を持っている人も少なくないので、やみくもに量を増やせばいいというわけでもありません。その場合は適切な食事摂取基準が変わります。)
このように食生活を見直し、自分に必要な食事摂取量に近づけることで、介護の予防、もしくは要介護度を進行させないことができます。
中年期に太り過ぎ防止で食事を控えめにしてきた方が、高齢期もそのままの生活習慣を続け、栄養不足で虚弱体質になり、介護が必要になっていくというケースもよくあります。
年齢や状況に応じて食生活を改善して、将来の介護生活の予防をしていきたいですね。
食生活の改善の重要性を述べてきましたが、毎日の食事の栄養素を考えた上で献立を考えるなんて結構大変では…と感じる方も多いと思います。
そんな方のために、栄養素を意識した献立を考えるために役立つポイントをいくつかご紹介します。
【献立を検討するときに役にたつポイント5か条】
・カロリーのコントロールは主食(ごはん、麺、パン等)で行う。
・たんぱく質は魚、肉、大豆製品、乳製品等いろいろな種類からとる。
・野菜・きのこ・海藻はたっぷりと。
・主食:主菜:副菜=3:1:2の割合を意識する。
・塩分は控えめに。
たんぱく質が筋力維持には大切!と聞くと、ついついメインの肉や魚の量を多くし、たんぱく質は増えるものの、ごはんの量は減り脂質や塩分はとりすぎになる、といったように、全体のバランスを崩しがちになります。
しかし、献立をたてるにあたり1番大切なのは、全体のバランスがとれているかどうかです。
上記5点の基本の献立のたて方を意識すると、1食の中で栄養バランスがとりやすくなってきます。
そのうえで、自分に必要な栄養素が現在どれくらいとれているかを知り、過不足分を調整すると良いでしょう。
栄養カウンセリングでは、普段の食生活や基本的な心身状態の聞き取りを行い、現在の栄養状態を知った上で、改善できることを考えます。体質や好み、料理にかけられる時間等も具体的にお聞きし、あなたの生活に寄り添う、最適な食事法を見つけます。
普段の食事内容をお聞きし、改善のポイントや、不足している可能性のある栄養素についてご紹介します。どのように利用者様の生活に取れ入れることができるか考えたり、献立例をお作りすることも可能です。
栄養管理に加え大切なのが、社会への参加と、毎日歩くなどの継続した運動です。
特に、社会とのつながりのないことが介護生活への最初の入り口になります。
とはいっても、単身世帯であったり、都会に住んでいてご近所づきあいが希薄だったりして、どこから社会につながりをもっていけばいいのかわからず、なんとなく人との関わりがなくなっていくケースも多いのが実際のところです。
私は管理栄養士ですので栄養分野が専門ですが、食事の相談を通していろいろな方とお話できることは、大切な人とのつながりだと思っています。
うららか相談室には日常生活の支援をしたり、社会参加に向けたサポートが得意なカウンセラーも登録しているので、高齢期を元気に過ごすための窓口として活用できたらいいですね。
自分に必要な栄養素を知りたい方、健康に良くて美味しいレシピを知りたい方、少しでも気になった方はぜひ一度、栄養相談を試してみてください。
(参考文献)
※1 厚生労働省 平成28年簡易生命表の概況
※2 第21回健康日本21(第2次)推進専門委員会資料