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  1. 子どもが発達障害と診断されたら?親の接し方と子どもへの伝え方について

子どもが発達障害と診断されたら?親の接し方と子どもへの伝え方について

子どもの発達障害は、保健センターの乳幼児の健康診査で発達の遅れを指摘されたり、園や学校で集団生活になじめない、周囲の子どもとトラブルを起こす、落ち着いていられない、などの問題があり、発達障害の診断へとつながるケースが多いです。

保護者の方は、「ちょっと育てにくい子かな、と思いながらも、精一杯、育児を頑張ってきたのにどうして?」と、怒りや悲しみで混乱すると思います。

しかし、良い面を考えると、小さいころに発達障害の診断がつけば、その後の療育に早期につなぐこともでき、苦手な部分をフォローする体制を整えられます。

大人になってから、様々な場面で生きにくさを感じても、診断の難しさや訓練できる場所の少なさから、適切な環境に恵まれていないと、うつ病などの二次障害も引き起こしやすいのです。

ここでは、お子さんが発達障害と診断された際の心構えと、その後の対応などについて述べていきます。

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発達障害のカウンセリング

目次

- 発達障害とは

- 発達障害の診断をどう受け止めたらいい?

- 子どもが発達障害と診断されたらまずすること

- 発達障害の子どもへの親の接し方

- 発達障害についての子どもへの伝え方

- おわりに

発達障害とは

発達障害とは、生まれつき脳の機能に何らかの原因があり、発達に問題が生じる障害の総称です。

代表的なものに、「自閉スペクトラム症(ASD)」「注意欠如・多動症(ADHD)」「限局性学習症(SLD)・学習障害(LD)」などがあります。

それぞれの詳しい症状については、ここでは省略しますが、同じ診断名がついても、お子さんにより、程度や症状、困っていることは、それぞれです。


また、障害によって、気づくポイントや時期が異なります。

国立精神・神経医療研究センターの「1歳から始めましょう、発達障害児と家族への早期総合支援」によると、自閉スペクトラム症は1歳6か月時点から早期兆候がみられ、注意欠如・多動症は「1歳6か月での発見は困難」「学校に上がってから治療のニーズがわかる」、学習障害は「1歳6か月では調べられない」など、同じ発達障害の中でも、その分類によって診断時期は様々なことが分かります。


さらに、発達障害が問題と感じるかどうかは、お子さんを取り巻く環境によって変わります。

家族の協力や理解が得られる、園や学校での対応も好意的である、近くに療育を受けられる専門機関があるなど、恵まれている環境であれば、発達障害があっても特に大きな問題を意識せずに過ごしていけると思います。

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発達障害の診断をどう受け止めたらいい?

お子さんが発達障害と診断されたら、覚悟はしていても、ショックを受けると思います。しかし、発達障害に気が付かないまま子どもが大きくなった場合、勉強が本格的になる中高生のころや、進路や就職を考えるとき、あるいは大人になってから結婚や育児などの臨機応変な対応を求められる場面で、もやもやした生きにくさを抱えてしまうこともあります。

幼少期や学童期など、早い時期に発達障害と分かれば、苦手な部分への支援が早い時期から受けられるというメリットもあります。早期診断・必要な支援を受けると、うつ病などの二次障害を防ぎやすくなり、その後の生きやすさも変わってきます。

親はいつまでも子どもの世話をするわけにはいきません。子どもが自立した生活を送るために、苦手なこと、配慮が必要なことについて、お子さん本人も理解できるよう、カバーする方法を考えていくことが大事だと思います。

子どもが発達障害と診断されたらまずすること

お子さんが発達障害と診断されたら、辛い気持ちでいっぱいになるかもしれませんが、診断がついたことで、お子さんが過ごしやすい環境を早めに準備できる、と気持ちを切り替えましょう。

まず、お子さんが通う園や学校の先生に診断名や配慮してほしい内容について、相談しましょう。

発達障害について書いてあるパンフレットや書籍のコピーなどを利用するとわかりやすいです。

普段生活する場所で、周囲の人が障害に関する理解があることは、お子さんにも保護者の方にとっても安心です。発達段階を重ねるごとに、トラブルや悩みが出てくることもありますが、その都度、先生や関係者とよく話をし、解決策を考えることも必要です。

まずは、関係機関との情報共有をすることで、身近な生活の場を過ごしやすくできるように整えましょう。

それと同時に、市町村の障害福祉担当窓口に相談に行き、受けられる支援についても確認しておきましょう。


1歳6か月児健康診査で発達障害の可能性が指摘された場合は、保健センターでの経過観察となり、必要があれば専門の医療機関や療育機関へつないでくれます。

すでに幼稚園や保育園、小学校に在籍している場合は、上記で述べたような配慮事項を先生や保育士と相談しましょう。子育てに難しさを感じる保護者が子どもの行動の客観的な理解の仕方を学ぶ「ペアレント・トレーニング」なども発達障害者支援センターや専門機関などで実施されています。


その他、幼児・児童の発達支援としては、次のような支援があります。


◇放課後等デイサービス

就学している障害児(幼稚園・大学を除く)を対象に、放課後や夏休み等の長期休暇中等において、生活能力向上のための訓練等を行う。


◇保育所等訪問支援

保育所等に通う障害児を対象に、障害のある児童の支援に関する知識や経験をもつ児童指導員、保育士、理学療法士、作業療法士、心理士などが園を訪問して、集団生活などの専門的な支援を行う。


◇短期入所

都道府県が指定する指定障害福祉サービス事業者において、障害者の家族の病気などの場合にサービスを受けられる。


以上の支援は、発達障害を含む障害のある児童が受けることができます。利用には、市町村に給付費の支給申請を行い、市町村が障害者の福祉サービスの必要性等の調整を行ったうえで、支給決定を受けた方が利用できます。


また、知的障害のあることを証明する療育手帳交付の判定は、18歳未満は児童相談所で障害の程度の判定を受け、市町村の窓口で申請となります。該当するか否かは、発達障害の診断を受けるときに、確認してみるといいでしょう。

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発達障害の子どもへの親の接し方

発達障害の程度や症状について、問題となることはそれぞれ違いますが、一般的に以下のようなことに配慮してもらうと過ごしやすくなると思います。


①子どもが安心できる環境を作る

好きなことができる場所、安心できる場所があると気持ちが落ち着きます。

家庭では、できるだけリラックスできる雰囲気を作りましょう。

不安やストレスが強いと発達障害に特有のこだわりが強くなることもあるので、安心できる環境は重要です。


②よい行動を褒めてのばす

発達障害に特有のこだわりが強いお子さんもいますが、こだわりを消すことを目指すのではなく、うまく付き合っていくことが大事です。

良い行動、できたことを褒めることで、意欲が湧き、お子さんの自信になります。


③失敗した時でも「行動できたこと」を褒める

お子さんが失敗したときでも「がんばったね」と褒めるとともに、次はどのようにしたらうまくいくのか、具体的に伝えましょう。

例えば、忘れ物をしてしまったときは、チェック表を使って、チェックをしながら明日の準備をするなど、少しの工夫で失敗も減らせます。


④注意するときは落ち着いた声で短く伝える

怒られることに敏感なお子さんも多いです。怒られた意味が分からないこともありますので、どうしたらよかったのかを具体的に伝えます。

特に公共のマナーは、はっきりと伝えましょう。

お店では順番を守る、公園では遊具をみんなで仲良く使う、病院では静かに待つなど、そのようにする理由を話し、適切な行動をその都度、伝えましょう。



⑤嫌がることは無理強いしない

感覚が敏感なお子さんは、他の子が平気な音や人混み、感触などが、とても気になることがあります。

苦痛に感じている様子なら、我慢させずに、嫌な刺激からは遠ざけます。

偏食のお子さんには、苦手な食べ物を無理強いせず、全体的に栄養のバランスがとれていればよしと考え、食べることが嫌いにならないよう配慮するとよいです。


⑥相手の気持ちを伝え、具体的なやり取りを教える

友だちとのやり取りが苦手だったり、泣いている友だちの気持ちがわからずに、怒らせたりするお子さんもいます。

その場合は、その状況での友だちの気持ちを代弁したり、「そういう時は、『どうしたの?』と声をかけるんだよ」などと、適切な対応方法を教えましょう。


⑦今日のスケジュール、これからすることを明確にする

急な予定変更や先が分からないと不安になってしまうお子さんもいます。

カレンダーやホワイトボードに前もって予定がわかるように記入し、見てわかるようにしておくと便利です。

予防接種や歯科検診などが不安な場合は、何のためにそれを受けるのか、パンフレットや絵本などで説明して、少しでも不安を軽減しておきましょう。


⑧癇癪やパニックには冷静に対応する

苦手な刺激や環境、驚いたとき、思い通りにいかなかったときに、癇癪やパニックになることがあります。

あらかじめ、落ち着くための方法をお子さんと相談しておくと安心です。

例えば、静かな場所に移動する、大好きな毛布を触る、落ち着くまで抱っこしてもらうなどです。

そして、落ち着いたら、その理由を聞き、癇癪やパニックを起こさないように配慮する、事前にきちんと説明するなど工夫をしましょう。


これらの対応をしても上手くいかないことがあると思います。どうしていいか困ったときは、お子さんに関わってくれている児童支援施設や特別支援学級の先生などに相談すると何かヒントが得られるかもしれません。

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発達障害についての子どもへの伝え方

発達障害の診断を受けに行く時やお子さんに何か困りごとがあった時は、障害について話す良いチャンスです。


例えば、普通は気にしないような音や匂い、人混みなどの刺激を過剰に嫌がることがあったとき、友だちにしつこくちょっかいを出してトラブルになってしまったときなどは、お子さんの生まれつきの特性について話しやすいタイミングです。


国立障害者リハビリテーションセンターによると、「本人に最適なタイミングで」「本人がわかることばで」「本人が納得できる説明の仕方で」伝えることが大切と述べられています。

また、その中で、話す時期についても説明しています。

具体的には、以下のようなタイミングで何度か説明する必要があります。

・同年代の子どもとのちがいに気づき始めた学童期

・学業や友人関係につまずき自尊心が低下した思春期

・進学や就職など適性に沿った進路選択に悩む青年期

・職場での対人関係や仕事が思うようにいかない成人期

(引用:国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター 「本人に発達障害の診断を伝える」)

これは、お子さんの発達状況に応じ、その都度、必要なことを伝えていくということです。


「子どもが障害のことを知ったら、かわいそう」と、発達障害についてずっと話さないでいることは、親としても心苦しく、もやもやした気持ちを抱え続けることになります。

小さい頃に発達障害について伝えておくと、本人も周囲も、そういうものか、と受け入れてくれやすいと感じます。

例えば、音や刺激に過敏な場合は、「○○(子ども)は、あの音が嫌いなんだね。無理しなくていいんだよ。」などと声かけし、刺激から遠ざけます。

そして、落ち着いた後に、「○○(子ども)は、他のお友だちより、音に敏感すぎるところがあるんだよ。でも、人それぞれ苦手なことはあるから、自分でも苦手だな、と思ったらはっきり口に出していいんだよ。」など、苦手な刺激に対しての対応も伝えましょう。

また、集団生活で、相手の気持ちがわからず、しつこくちょっかいを出して怒らせてしまったなどのトラブルでは、「お友だちは、今は他のことをやっていたから、しつこくされて嫌な顔をしていたよね?『今はこっちで遊ぶからいい』って言われたら、何度も誘わないようにしよう」など、どうすればよかったのか説明しましょう。

何度か、同じ様なトラブルが続いたら、「○○(子ども)は、お友だちが嫌がっていることに気が付きにくいのだけど、お友だちの気持ちも考えてみよう」など、お子さんが苦手であるけれど、今後、適切に対応しないといけないことについては意識させ、その都度、対応方法を話しましょう。

集団生活など、他人に迷惑をかけてしまうようなケースでは、具体的な場面で、その都度、対応方法を伝えることが一番分かりやすいです。

ただし、パニックを起こしてしまうような音や刺激に対しては、お子さんに無理をさせるのではなく、「嫌だよね。逃げても大丈夫。」とあらかじめ距離をとることを教えればよいでしょう。


お子さんに「障害」として伝えることに戸惑いがあるかもしれません。障害が改善しないという思い込みをなくすために、特定のことについて通常より苦手であるという特性を生まれつき持っているけれど、意識すること、練習することで改善されるという点も、繰り返し伝えましょう。

おわりに

発達障害の診断を受けた後の流れや利用できる支援、今後の進路などについて述べてきました。発達障害に限らず、誰にでも苦手なことはあります。発達障害は、その特性が目立ってしまうことが悩みを抱える原因につながりますが、周囲の理解を得ること、早期に必要な支援を受けること、本人も保護者も発達障害について理解し対応の仕方を学ぶことで、お子さんが過ごしやすくなります。

こちらのコラムを読んで、今後の参考にして頂ければ幸いです。

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<参考文献>

富山県(2012)ひとりじゃないよ<学齢期>発達障害支援ハンドブック, https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000208381.pdf(2021-02-10 参照)
みんなのメンタルヘルス|厚生労働省, https://www.mhlw.go.jp/kokoro/(2021-02-10 参照)
1歳半検診で発達障害のおそれがあるとわかったら~発達障害は早期発見が大切 - 児童向けコラム | 障害者ドットコム, https://shohgaisha.com/column/grown_up_detail?id=1103(2021-02-10 参照)
山形県(2008)発達障害の理解のために, https://www.pref.yamagata.jp/documents/3099/hattatu-panf_kourousyou.pdf(2021-02-10 参照)
国立障害者リハビリテーションセンター(2015)楽しい子育てのためのペアレント・プログラムの支援者研修のご案内, http://www.rehab.go.jp/application/files/4915/8287/2181/73bd8161980df23dae2fe02771630bfe.pdf(2021-02-10 参照)
発達障害のカウンセリング
このコラムを書いた人
精神保健福祉士・社会福祉士
救急病院の医療ソーシャルワーカーとして、うつに悩む方や、不登校・長期の引きこもり、障害のあるお子さんの悩みなど、様々なケースに出会い、早期に専門職が関わる必要性を感じてきた。子育てやモラハラなどの家庭内の問題など、様々なお悩みの相談に携わっている。
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