失感情症とは、アレキシサイミアの日本語訳で、感情の認知や表現がうまくできない障がいのことを言います。「空気が読めない」「人の気持ちを考えない」「感情を表に出さない」とよく言われてしまう方は、もしかすると失感情症の傾向があるかもしれません。
目次
- 失感情症とは
- 失感情症の特徴
- 失感情症の症状
- まとめ
失感情症は、名前だけ見ると、「感情を失っていること」「感情がないこと」と誤解されがちですが、そういうわけではありません。失感情症は、「アレキシサイミア」という性格特性を日本語に当てかえた言葉で、自分の感情を認知したり、感情を言葉で表現したりすることに対して障がいを抱えていることを言います。
失感情症の傾向がある人にも、喜怒哀楽などの感情があるのですが、自分の感情が変化したことに気づかなかったり、他人から今の感情を聞かれても答えられなかったりします。
例えば、仲のいい友達と喧嘩してしまったとき、どのような気持ちになりますか?
恐らくは、「悲しい」という気持ちになると思います。
そして、失感情症の傾向がある人もほとんど似たような感情を抱きます。しかし、それが「悲しい」という言葉に当てはまっているのかが分からないのです。人間は言葉に助けられて認知を行なっていますが、当てはまる言葉が見つからないので、その人にとってはそうした出来事が「悲しい」と認知できないのです。
また、失感情症の傾向が強い人もいれば、全面的にではなく一部の失感情症の性質を抱えている人もいます。
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失感情症(アレキシサイミア)の傾向がある人は、つらい状況に置かれても感情を表に出せないため、周囲から「我慢強い人」「ポーカーフェイス」と見られる傾向があります。逆に、自分の感情を認知できないがために、行動と感情にずれが生じ、相手にネガティブな印象を与えることもあります。
また、例えば「悲しいとき」がどういうときなのか分からないため、悲しいときに取るべき行動も見当がつかない傾向があります。ある出来事が起きて、その場にいる全員が悲しい気持ちになっているときに、一人だけいつもと同じトーンで話し始めて、「空気が読めない」「感情がないのか」と言われてしまうことがあります。
さらに、ただでさえ自分の気持ちが分からないので、他人の気持ちも想像ができず、対人関係を築くことにも難があるとされ、「人の気持ちを考えない」「コミュニケーションが下手」とみなされることが多くなります。同様に、物語の登場人物の気持ちが分からないという特徴もあります。
失感情症という名前ですが、病気ではなく、冒頭でも触れたように、実際に感情を失っているわけではないので、それ自体に直接的な問題はありません。しかし、失感情症の傾向がある人は、本能的にストレスを軽減しようとするために、寝込んでしまったり、急に泣き出してしまったりと実生活に支障をきたす場合があります。
また、失感情症が原因で、以下のような疾患を招きやすくなります。
◆摂食障害や依存症
失感情症の傾向がある人は、漠然と嫌な気持ちになったときに、気持ちを表現できず、代替物で本能的に気分を解消しようとします。その結果、摂食障害や薬物依存症にも陥りやすいとされています。
◆心身症やうつ病
さらに、失感情症の傾向がある人は、抑圧された感情やストレスに気づけないため、対処することができず、どんどん心に負荷がかかって、突然うつ病や心身症を発症してしまうケースが多く見られます。
心身症は、心理的ストレスが原因で臓器の機能に障害が生じて、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、アトピーや喘息などの身体的な症状を発症することを言います。
失感情症(アレキシサイミア)は、心身症の患者がなかなか治癒に向かわなかったところから提唱された概念で、心身症と失感情症の結びつきはとても強いと考えられています。
また、そもそも失感情症の傾向がある人は、コミュニケーションや対人関係の不具合や生きづらさを感じることが多く、人一倍ストレスがかかってしまうため、上記のような疾患への誘発も起こりやすくなります。
失感情症(アレキシサイミア)の原因は、遺伝的に生まれ持った性格が大きく影響すると言われています。
ですが、家庭環境や特定の出来事に起因して失感情症の傾向を持っていくとされる説もあります。特に、親が子どもを無視するような家庭で育った場合、子どもは気持ちを他人に伝える意味が理解できず、周りの人の気持ちも分からないため、失感情症の傾向を持ちやすいと言われています。
失感情症(アレキシサイミア)を改善するためには、自分や他人の気持ちに興味を持つことが大切です。そもそも感情とは複雑で、言葉で表すことは簡単ではありませんが、大まかに伝えることができて、人の気持ちも何となく分かったほうが生活は豊かになるとされています。完全に感情を言い表すというイメージではなく、一般的な感情を大まかに分類して、そこに当てはめてみるなどのトレーニングを行うことで、徐々に改善していけるといいでしょう。すぐに行動できることとしては、日記を書いて見返したり、小さな物語を書いてみたりするのもいいとされています。
また、失感情症は病気ではありませんので、失感情症の性質を味方につけるというのも一つの手です。
「感情的」と言われてしまう人は、自分の感情に敏感で、余計なことでも他人に感情を押し付けてしまい、相手から嫌がられてしまうことがあります。失感情症の傾向がある人は、その逆であると考えて、「現実的」「冷静」「我慢強い」ということを味方につけることができます。ただし、気づかないうちにストレスをため込んでいて、突然うつ病や心身症を発症しないように、ストレスの軽減と発散に気を使っておく必要があります。睡眠時間や休息をしっかり確保したり、軽い運動を取り入れたりしてストレスを減らす習慣をつけるといいでしょう。また、周囲の人に失感情症について正しく理解してもらえれば、比較的日常を過ごしやすくなるかもしれません。
また、精神疾患を抱えている場合、失感情症の傾向がある人は、自分の感情を認識しづらいため、医師やカウンセラーの質問に答えるのが難しく、信頼関係を築きながら時間をかけて治療していくことになります。精神疾患の治療中でも、気が付かないストレスによって重症化しやすくなるので、早いうちからストレスの軽減と発散を取り入れるようにするべきです。
失感情症(アレキシサイミア)を改善したい人には、カウンセリングの活用をおすすめしています。まずは、現状どのくらい失感情症の傾向が強いのかをカウンセラーと一緒に把握するところから始まります。時間をかけて改善していくのか、あるいはそうした性質を活かしていくのかについて、相談しながら自分に合った理想の形を見つけ、実現するために何をしていくべきか考えていきます。専門家に相談することで、今までなかなか自分一人では認識できなかった感情や発見に気づくことができるでしょう。メンタル不調を誘発する可能性がある場合には、ストレスを軽減・解消する方法についても取り入れていきます。ただし、精神疾患が重いような場合には、心療内科や精神科の受診を推奨することがあります。
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失感情症(アレキシサイミア)は、感情がないという病気ではなく、自分の感情を言葉で表せないという性質のことを言います。自分や他人の気持ちが分かるようになったほうが、人生は豊かになりますし、精神疾患のリスクも低下するため、改善したいという方は自分の内面と向き合うことを意識し、感情の変化に気づき、徐々にトレーニングを重ねていけるといいでしょう。しかし、失感情症を単に悪いこととして落ち込むのではなく、それが病気ではなく性質であることを考慮し、ポジティブに捉えるスタンスも重要です。カウンセリングなどを活用して、うまく失感情症に向き合えるといいでしょう。