反抗挑戦性障害は、多くは学童期や思春期の子どもに見られる、反抗的・攻撃的な態度を主な症状とする障害です。子どもの反抗的な態度に手を焼く保護者や先生も多いかと思いますが、反抗挑戦性障害への理解を深めておくことで見えてくる対応策もあるかと思います。
反抗挑戦性障害とはどのようなものか、一般的な反抗期とは異なる点や対応等についてお話していきます。
目次
- 反抗期との違い
- おわりに
反抗挑戦性障害という診断名は、あまり聞きなれない方も多いかと思います。はじめに、それがどんなものなのか、反抗期との違いも交えながらお伝えします。
・子どもに多く見られ、怒りや攻撃性の高さを特徴とする
反抗挑戦性障害は反抗挑戦症とも呼ばれ、強い怒りや攻撃性、否定的・反抗的、不服従的な態度を示すことを特徴とする診断名です。
反抗挑戦性障害と診断されるのは幼児期から思春期、特に10歳前後の子どもが多いとされています。
反抗挑戦性障害の症状には、このようなものが挙げられます。
☑ すぐ怒ったりイライラしたりする
☑ 大人と口論する
☑ 指示や規則に積極的に反発する
☑ 自分のミスを人のせいにする
☑ 故意に人を困らせる意地の悪さや執念深さ
カッとなりやすく、すぐに怒りやイライラを表明したり、大人に反発して口論したがる等、社会的な状況において周囲との軋轢を生みやすい症状が多くみられます。
反抗挑戦性障害の子どもは怒りっぽい反面、通常は適切な善悪の判断を身につけており、他者を身体的に傷つけたり、権利を侵害したりするような悪事は行いません。
反抗挑戦性障害の症状には、すぐ怒って大人に反発するなど、いわゆる「反抗期」とも似通ったところがありますが、反抗挑戦性障害が正式な医学的診断名であるのに対して、反抗期は一般的な用語であるという違いがあります。
幼児期や思春期に反抗的な気持ちや態度が現れるのは子どもの正常な発達の一環ですが、怒りや反発の頻度や程度、持続期間が一般的に年齢相応以上の場合は、反抗挑戦性障害が疑われることもあります。
反抗挑戦性障害は、上記のような症状が少なくとも6ヶ月以上続いていて、学校や家庭などでの人間関係や学業に大きな問題が生じている場合にのみ診断がつきます。癇癪や反抗的な態度が見られても、それほど頻度や程度が酷くはなく日常生活に大きな困難があるわけではない場合は、反抗挑戦性障害とは異なります。
ここからは、反抗挑戦性障害の原因や、関連する別の疾患などについて見ていきましょう。
・原因はまだ充分わかっていない
反抗挑戦性障害の原因は、まだはっきりと解明されていませんが、以下のような要因が発症に関わっていると考えられています。
☑ 感情や行動の統制力の弱さ等、遺伝的・生来的な気質
☑ 脳の構造や機能等、神経生物学的要因
☑ 不適切な養育や攻撃的な雰囲気のある家庭で育つ等の環境要因
・ADHDとの関連が深いとされている
カッとなりやすいところや情動の調整が難しい症状が、ADHD(注意欠陥多動性障害)と似ているところがあるという意味だけでなく、ADHDの二次障害として反抗挑戦性障害を発症するという意味でも、反抗挑戦性障害とADHDは関連が深いと言われています。
・他の疾患との区別が重要
ADHDや一般的な反抗期以外にも、反抗挑戦性障害とよく似た症状が現れ得る疾患もあります。たとえば、うつ病や不安障害でもイライラや反抗的に見える態度が出ることは珍しくありません。
反抗挑戦性障害はアメリカ精神医学会や国際疾病分類による診断基準に基づいて、医師によってのみ診断がつけられます。適切な治療や対応を考えるうえでも正確な診断が大切なので、心配が強いようならば専門医を受診することをおすすめします。
反抗挑戦性障害の治療法について、具体的に見ていきましょう。
・症状を抑えるために薬が使われることも
反抗挑戦性障害の治療では、症状の種類や強さ、本人や周囲の苦痛の度合い等に応じて、薬物治療が行われることがあります。とはいえ、現在のところ、反抗挑戦性障害に関する特効薬があるわけではなく、衝動性や易怒性を抑える薬や漢方薬が用いられたりします。また、抗不安薬や抗うつ剤が使われることもあります。
・本人や周囲の大人へのカウンセリング
反抗挑戦性障害の症状を抱える本人はもちろん、保護者や教員がカウンセリングを受け、どのような対応をするとよいのか相談し合うことも、有効な治療法とされています。
保護者や教員の中には、反抗的な態度を向けられ続けると対応に苦慮することや、疲労感や無力感の蓄積、関係の悪化などの問題が出てくることも珍しくありません。そのような周囲の大人のしんどさを第三者に話すことや、具体的な対応について指導を受けることで、症状や親子関係をはじめとする人間関係を改善することが期待できます。
・一次障害や別の疾患がある場合はそれを治療する
ADHDの二次障害としての反抗挑戦性障害の場合、ADHDの治療が進むのに連動して症状が改善することが多いので、まずは一次的な疾患への治療を適切に行うことが大切です。
また、うつ病や不安障害など、反抗挑戦性障害と似た別の病気がある場合は、それを治療することで共通する症状も抑えていくことができます。
いずれにしても、正確な診断のもとに、継続的に経緯を診ながらその都度適切な対応をしていくことが重要です。
臨床心理士とは・・・
悩みを抱える人との対話をベースに、問題の解決をサポートする「こころの専門家」です。
うららか相談室には、多くの臨床心理士が在籍しています。
周囲の大人が反抗挑戦性障害の子どもにどう関わるかは、症状の予後に大きく影響します。どんなふうに接するのが望ましいのか、見ていきましょう。
・分かりやすく一貫したルールや対応を示す
反抗挑戦性障害の子どもは善悪を理解しているとされていますが、それでも繰り返してしまう望ましくない言動については、子どもが理解できるようにルールを伝え続けることが大切です。
子どもの性格や存在を否定するのではなく、当該の言動に問題があるということとその理由を分かりやすく話します。
子どもにとって分かりやすく伝えるためには、そのルールは一貫していることが大切です。状況によっては臨機応変な対応が必要なこともありますが、最初は比較的パターン化しやすい場面から取り組んでいくのも一手段です。
・適応的な行動を強化する
反抗挑戦性障害の子どもも、常に反抗的なわけではありません。望ましい言動をしたときは、それを強化するような肯定的な声かけや対応をするのも大切なことです。
ポジティブな言動がなかなか見られないという場合でも、反抗的・非適応的な言動はしていないとき等、その子どもの中では比較的問題が少ない場面で、その状態を褒めたり支持したりすると良いでしょう。
不適応的な行動をしたときにルールを伝えることで効果が見られない場合は、そのようなときは働きかけはせず、適応的な行動に対して積極的に認めていくアプローチも有効です。
・家族や学校と連携を取る
反抗挑戦性障害では、権威的な相手に対して反抗的な態度を取ることがしばしばあり、母親にだけ、あるいは学校の特定の先生が症状の対象になることもあります。対象になっている大人の負担が大きくもなりやすいので、家庭と学校や保育園・幼稚園などで連携を取り合い、負担の軽減を図ることも重要な対処法です。
誰かのせいにするのではなく、子どもを取り巻くすべての大人が、子どもの症状を和らげていくために協力し合う関係であるという共通理解を持つと良いでしょう。
反抗挑戦性障害は一般的な反抗期とは区別され、明確な基準に則り医師によって診断されるものです。周囲の人が対応に苦痛や疲弊感を覚えやすく、反抗挑戦性障害を持つ本人も不当な低評価や、人間関係や学業成績等の悪化などで辛い思いを抱えやすいので、周りの大人が適切な知識や対応力を身につけることも重要です。
できるだけ早期の治療や介入が望ましいですが、単なる反抗期なのか反抗挑戦性障害なのかを判断するためにも、大変ならば周囲に相談することや医療機関の受診をおすすめします。