「私たち夫婦には充分な会話がある」と自信を持って言える方は、どれくらいいらっしゃるでしょうか。充分な会話ができているかと問われると厳しい、またはほとんど会話なしという方も少なくないことでしょう。そのことを辛く感じているようなら、何らかの手立てを考えられるといいですよね。
今回は、夫婦の会話がないことについて、その影響や原因、対処法などをお伝えしていきます。
目次
- おわりに
まずは、夫婦の会話がないことでどんな影響が出てくるのか見ていきましょう。
・コミュニケーション不全が起きる
会話が少ないと、必然的に相手の考えていることや気持ちを知る機会も少なくなりますから、充分なコミュニケーションが取れない状況に陥ります。
その状態が続けば続くほど、どんどん相手のことが分からなくなり、憶測で誤った判断や決めつけをしてしまったり、そんな相手の態度を見て不満を募らせたりと、夫婦仲の悪化や家庭内不和に発展する恐れも大きくなります。
・ストレスで心身や仕事に不調が出るおそれも
会話がないことで日々つまらない思いをしたり、話せない相手と一緒にいる意味はあるのだろうかと考えてしまう方もいることでしょう。そのようなモヤモヤを抱えながら同じ家で過ごすのは大きなストレスにもなり得ます。
また、コミュニケーション不全の状態では、本来なら考えなくていいことを(往々にして否定的な方向に)考えてしまうことや、不満や怒り、悲しみなどの感情が湧いてくることもあり、それもやはりストレスとなります。
そういったストレスから、心や身体に不調が出てきたり、仕事や家事などに集中できない等、生活に良くない影響が出ることもあります。
・子どもの心が不安定になることもある
子どもがいる場合は、夫婦の会話がないことが子どもに影響を及ぼすことも考えられます。何気ない日常会話や気持ちを伝えあったり尊重したりする方法を、家庭内で両親の姿を通して学ぶ機会が持てないため、家庭内不和のあるお家で育ったお子さんは、対人関係が上手く持てない、自分に自信がなく不安の強いタイプも珍しくありません。
また、本来なら夫婦が直接話すべきことを、会話できない関係になってしまっているために、子どもを介して伝達するケースもあり、そうなると、子どもは本来負わなくて良いはずの役割を背負わされることになります。
そういったことが続くと、両親の仲が悪いのは自分のせいかもしれないと感じる子も多いです。
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うららか相談室では、臨床心理士などの専門家があなたの不安や悩みをしっかりと聞き、気持ちの整理や解決をサポートさせていただきます。
では、なぜ夫婦の会話がなくなってしまうのでしょう?考えられる原因を見ていきましょう。
・元々の性格など、会話がないことが問題にならないケースも
夫婦のどちらか、あるいは両方が元々おしゃべりではない性格というのも、会話がなくなる原因のひとつです。また、長い年月を一緒に過ごしていくうちにお互い相手のことを充分理解し合えていて、会話をしなくて安定して温かい関係を維持できる、という夫婦もいることでしょう。
このように、普段はあまり会話がなくても必要なコミュニケーションは取れている、話さなくても満たされているなど、会話がないことで夫婦双方や他の家族が困っていない、問題にならないケースもあります。
・多忙や生活スタイルのすれ違い
会話がないことが問題になる場合、仕事や家事育児で忙しくてゆっくり話す時間がないというのは、その大きな原因のひとつです。また、夫婦どちらかが夜勤や単身赴任をしているなど、生活スタイルにすれ違いが生じている場合も、必然的に会話は減ってしまいがちですよね。
・話すと喧嘩やトラブルが起きてしまう
一方で、話す時間がないわけではないけれど会話がない、という夫婦もあります。こうなってしまう主な原因には、会話をしようとすると喧嘩になってしまう、あるいは、どちらかが一方的に否定されたり辛い思いをしたりすることになってしまうために、話したくても話せない、という背景があることが多いです。
会話がなくても家族みんなが困っていないならば特に対処は不要ですが、誰か一人でも困っているならば何らかの対処をしていけるといいですよね。どのような対処法があるのか、見ていきましょう。
・困っている気持ちを伝え、相手の気持ちを聞く
夫婦の片方は会話がないことをとても辛く感じているのに、相手は何とも思っていなくて、配偶者が困っていることにまったく気付いていないケースもあります。その場合は、会話がないことで悩んでいる、行く末が不安である等、気持ちを相手に伝えることが、まず必要になってくるでしょう。
そこで会話がないことに関するお互いの感じ方が違っていたことを共有でき、双方が安心できる落としどころを探るための話し合いができるといいですね。
・まずは他愛もない話題から始める
会話がない期間が長くなると、いきなり重要なテーマで話をしようと思ってもなかなか難しいものです。まずは「おはよう」「いってらっしゃい」等のあいさつや、「今日は暖かいね」「雨が降りそう」というような気候の話など、当たり障りのない短い声かけから始めると良いでしょう。
一緒にテレビを眺めて、その内容に関するコメントをしてみるのも、会話のきっかけにしやすいかと思います。
・子どもの話をきっかけにする
子どもがいる夫婦の場合は、子どもの話題をきっかけにするのも一手段です。進路や子どもの問題行動など重要な内容だと言い争いに発展するリスクもあるため、まずは「学校でこんなことがあったんだって」「今日、子どもがこんな作品を作ってきたよ」というように、ポジティブな、あるいは何気ない話題を振ってみるとよいでしょう。
そして、夫婦なのだから子どものこともそれ以外のことも、こんなふうに共有していけると嬉しいという気持ちも併せて伝えられると、その後の会話を増やすことにも繋がるのではないでしょうか。
・不満やしこりを落ち着いて伝えあう
話題を選んで話し始めても反応がなかったり、いつの間にか言い争いになっていたりして、「声を掛けるんじゃなかった」と後悔することになってしまう場合もあるでしょう。このようなことの繰り返しで疲れたと感じるときは、気分が回復するまで待つのも悪くありません。
会話がない辛さや、やっぱり会話のある夫婦になりたいという気持ちの方が強まってきたら、話しているとなぜいつも喧嘩になってしまうのかを振り返って考えるのも大切なことです。
片方に、あるいは双方に、相手に対する不満や過去に傷ついた経験があると、それとはまったく関係ない会話をしているはずの場面でも、ちょっとした一言や態度などがきっかけになって過去の怒りや不満がぶり返し、喧嘩になってしまうということはとてもよくある話です。この辺りについて、お互い落ち着いて話し合い、過去の不満は解消しておくと、今後の喧嘩を減らし、穏やかな会話ができるようになる可能性が高まります。
・手紙やメールなど文章で伝える
直接話すのがどうしても難しい場合は、手紙やメールなど文章で気持ちや連絡事項を伝えあうのも悪くない手段です。文章なら余裕のある時に読み書きできますし、感じてから文字にするまでの間に冷静になれたりもするので、落ち着いてやり取りがしやすいのです。
文章のやり取りで相手の考えていることが分かるようになれば、実際の会話もしやすくなる効果も期待できます。
・いったん距離を取る
全ての人間関係もそうですが、夫婦関係も相手があることなので、片方がいくら頑張っても相手にその気がまったくなければ改善は難しいです。取れる対策は取っても相手が会話のない状況を改善しようとする気持ちをまったく持ってくれなかったり、逆に責められたりするようであれば、いったん頑張るのをやめて距離を取ると良いでしょう。
DVやモラルハラスメント(精神的DV)がある場合などは、会話したくても怖くてできない、怒らせないよう気を遣って会話をしようと頑張っても喧嘩になってしまい、いつも一方的に責められる、ということもよくあります。そのようなときは、上手く会話を導けない自分が悪いとは思わず、心理的あるいは物理的に距離を取ることを検討されるのも必要な対処のひとつです。
各自で会話を増やし、夫婦仲を良くしようと対処をしてみても、長年の蓄積や産後クライシスなどの影響でどうしてもうまくいかないということもあるでしょう。そのようなときは、カウンセリングもおすすめです。
夫婦のどちらかのみ、または双方が一人ずつカウンセリングを受けても良いですし、夫婦同席での「夫婦カウンセリング」を行っているカウンセラーもいます。第三者の視点を交えてそれぞれの心の中や夫婦間に何が起こっているかを知り、自分の気持ちを整理することで、相手にも分かりやすい形で伝えられるようになります。
カウンセラーによっては夫婦同席のカウンセリングに対応していない場合もありますので、夫婦カウンセリングをご希望の際は事前に確認することをおすすめします。
※この記事の執筆者であるたかだ ちかこカウンセラーは、夫婦同席でのカウンセリングには対応しておりません。
会話がなくても穏やかな関係を築ける夫婦もいる一方で、会話がない人とこのまま一緒にいていいのだろうか、子どもが巣立った後の老後が不安だという方々も多いことと思います。
会話がなくなる理由はそれぞれの夫婦によって様々ですので、まずは何が原因で今のような関係になったのか振り返り、それに応じた対策を考えていくことが大切かと思います。自分たちだけではどうにもならないときは専門家の力も借りつつ、双方が納得いく関係にしていけるといいですね。