あれこれ心配しすぎてしんどい、ものごとを深く考えすぎてしまう、といったことでお悩みではないですか。
心配すること自体は決して悪いことではありません。自分の将来をしっかりと考えたり、大切な人へ思いやりの気持ちを持って接したりできるのは、むしろ良いことです。
しかし、心配性すぎるとストレスがたまったり、日常生活に支障をきたしたりすることがあります。
では、極度の心配性は病気なのでしょうか。また、心配性を治すにはどうすればいいのでしょうか。
目次
- まとめ
心配とは、これから起こるかもしれない不確実な出来事について、ネガティブに考え続けることをいいます。人は心配することで、よくない結果が予想される問題を解決しようとします。「心配」は「不安」よりもその対象が明確で、「恐怖」よりも対象が明確でないと位置づけられることが多いです。
心理学者の根本橘夫氏の調査によると、自分を心配性だと思っている人は青年の65%強で、そのうち心配性を直したいと思う人は60%~70%でした。
心配性の人はそうでない人に比べてストレスの多い生活を送っていることが分かっています。心配性が疲れるのは、「心配する」ということの次のような特徴が原因ではないかと考えられます。
つまり、心配性はストレスから逃げているのではなく、むしろストレスに立ち向かうのをうまく制御できない状態であり、精神的に疲れやすいのだといえます。
また、心配性でない人は自分を満足させるために行動することが多いのに対して、心配性の人は失敗や危険を避けるために行動する傾向があるといわれています。「初対面の人との会話」を例に挙げると、心配性でない人は「コミュニケーションを楽しむ」ために話しますが、心配性の人は「嫌われないようにする」ために話す、といった傾向の差があると考えられます。心配性の人は満足することが少なく、自分の安全を追求しようとするので、トラブルには巻き込まれにくいものの、精神的には疲れやすいといえます。
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あれこれと心配しすぎてしんどい、心配事が絶えないで生きづらいといったことを感じている人は、不安障害などの病気の可能性もあります。
不安障害とは、日常生活に支障をきたすほど強い不安を主な症状とする、次のような疾患の総称です。
全般性不安障害とは、1種類の対象ではなく、様々なことに不安や心配を抱いて、自分では感情のコントロールが難しくなる病気です。心配事の対象としては、例えば、家族やお金、自分の将来、災害などが挙げられ、内容は過剰で具体的な根拠がなく、時間とともに対象が変化することもあります。また、疲れやすい、感情的になる、集中力の低下、筋肉の緊張、不眠などの心身の症状が現れます。このようなことに対して、「自分は心配性すぎるだけだ」と考えてしまう人も多いです。
強迫性障害とは、自分でもつまらないことだと分かっているのに、頭に繰り返し浮かんで離れない不安やこだわり(強迫観念)をなくすために、何度も同じ確認や行動(強迫行為)をとってしまい、日常生活に支障をきたしたり、外出ができなくなったりする病気です。例えば、不潔に感じて何度も手を洗う、戸締りが心配で何度も確認してしまう、決まった位置に物がないと不安に感じる、不吉な数字を避ける、自分が誰かに危害を加えた事件がないか確認する、などの症例があります。強迫行為を実行するのに時間がかかり、予定に遅れてしまうこともあります。症状への自覚がなく、強迫観念を「誰もが感じるこだわり」だと捉える傾向があり、「自分は心配性なだけだ」と考える人が多いです。
社交不安障害(社会不安障害)とは、人前で何かをするときに、自分がどのように見られるかということへの不安が大きく、身体症状が出たり、その症状が現れることへの不安から人前に出ることを避けるようになったりする病気です。例えば、プレゼンやスピーチ、他人との会話に対して強く緊張し、赤面や震え、動悸、発汗、吐き気などの身体症状が現れます。
パニック障害とは、特に体に病気はないのに突発的な動悸やめまい、呼吸困難などを伴う、「死んでしまうかもしれない」と思うほどのパニック発作を起こしたり、また発作が起きるのではないかという不安により、発作が起きやすい場所や外出を避けるようになったりする病気です。例えば、電車に乗ったときに発作が起きて病院へ運ばれたものの、体に異常は見つからず、また発作が起きるのではないかという不安のあまり、電車に乗れなくなるといったことが挙げられます。
不安障害にはほかにも種類がありますが、服薬で今感じている不安を抑え、カウンセリング(認知行動療法という心理療法)で対象への不安を徐々になくしていく治療が一般的です。また、不安障害には含まれませんが、心配性と思われやすい病気に心気症というものがあります。
心気症(しんきしょう)とは、死につながるような重い病気への恐怖が大きく、自分の心や体の些細な変化に対して過敏になり、「重い病気かもしれない」「重い病気に違いない」などと思い、繰り返し病院で検査したり、医師を疑ったりする心の病気です。抗不安薬とカウンセリング(認知行動療法)での治療が一般的です。
心配することは、うつ病の症状としても挙げられます。心配性の人は、うつ病の主な症状である「大きな気分の落ち込み(抑うつ)」に対して、その原因となった出来事や自分のネガティブな気持ちについて考え込んでしまうため、抑うつを長引かせやすいといわれています。心配性すぎるとうつ病になりやすいかどうかははっきりと分かりませんが、心配することで増える疲れやストレス、不安にうまく対処できるようになることは、うつ病などの精神疾患の予防につながると考えられます。
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心配性すぎて疲れるという人は、次のように「自分が心配している状況」に気づいたり、不安やストレスを減らしたりする方法を試してみてください。
心配事や不安にとらわれてしまったら、深呼吸をしたり、好きな音楽を聴いたりして、リラックスするようにしてみましょう。深呼吸は不安を抑えるリラクゼーション法の一つであり、呼吸法と呼ばれています。様々な呼吸法がありますが、10秒呼吸法は次のような手順で行うことが多いです。
また、好きな音楽を聴くということを挙げましたが、大切なのは心配に気づいてリラックスできることであり、自分の好きな趣味のようなものであればいいでしょう。
心配性の人はそうでない人に比べて、自分のネガティブな感情に気づくことが難しいと指摘されています。心配してネガティブな考えが連鎖していると気付いたときに、好きな格言や他人から言われて嬉しかったことなど、何でも構いませんが、ある言葉を心の中で唱えるようにするといいかもしれません。
心配性の人はネガティブなことについて過剰な情報収集をする傾向があります。テレビの電源を切ってネットサーフィンをやめ、ネガティブなことに触れる機会と情報収集をする時間を減らすことで、ストレスや不安を抑えることができると考えられます。
マインドフルネスとは、未来や過去ではなく「今ここで自分が経験していること」に対して、余計な評価や判断をすることなく、ありのままに観察することをいいます。
マインドフルネスな心のあり方を習得するために、マインドフルネス瞑想という方法がよく用いられます。マインドフルネス瞑想は、自分の呼吸のみに意識を向け、そのほかのことに意識がそれてしまった場合はそれに気づき、また呼吸に意識を戻すということを繰り返します。このようにすることで、ネガティブな感情を連鎖させていた思考を自分でコントロールしやすくなると考えられています。現実に起きていることや今取り組んでいることへの集中力を高め、心配している自分に客観的に気づくことができるため、心配を減らすことができると考えられています。
心配しすぎてネガティブな気持ちにとらわれたり、ストレスがたまっていたりする場合は、誰かに話を聞いてもらうと、気持ちがすっきりして冷静になりやすいです。家族や友人、職場の人などに聞いてもらったり、カウンセリングを利用したりするのもおすすめです。うららか相談室では、ビデオ・電話・メッセージ・対面形式から好きな方法で、自分に合ったカウンセラーを選んで悩みを相談することができます。
心配することを過度にネガティブに捉える必要はありません。心配することを無理に避けようとしたり、心配している自分を責めたりすることは、むしろ逆効果になるともいわれています。また、今まで心配することによって様々な状況に適応してきた人が、強制的に「心配すること」をやめようとすると、現実に問題が起こりやすくなる可能性もあります。
逆に、「心配性の人は成功しやすい」といったようなポジティブな信念も心配を助長させる可能性が指摘されています。
心配性と言っても様々な特性があり、人によって性質が異なります。そんな自分の様々な特性を理解し、例えば「慎重で真面目な性格を長所として有意義に活用する」といったように、「心配性」という言葉にとらわれないことも大切です。このように自分を理解していくこともカウンセリングでお手伝いできるのでぜひ検討してみてください。
心配性すぎると、難しいことについて考えるのを自分の意思でやめられないため、疲れやすくなります。また、極度の心配性は不安障害などの病気の可能性もあります。心配性であることを過度にネガティブに捉える必要はありませんが、心配しすぎて疲れる方はリラックスする方法を身につけたり、情報収集する時間を減らしたり、誰かに話を聞いてもらうことでストレスをケアするなどの方法を試してみてください。
<参考文献>
菊島勝也 村田英代(2006)心配性者における安全追及行動と思考の制御困難性, 愛知教育大学教育実践総合センター紀要 Vol.10, pp.261-267
杉浦義典(2001)心配への認知的アプローチ―能動性に着目して―, 教育心理学研究Vol.49,pp.240-252
金築優 金築智美(2011)高心配性者におけるメタ認知とメタ感情の特徴, 感情心理学研究 Vol.18 No.3, p.198
田中圭介(2014)過剰な心配に対するマインドフルネス・トレーニングの作用機序, 広島大学総合科学研究科学位論文(未公刊)
https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/ja/00035736
飯島雄大(2013)心配を予測・維持させる要因に関する心理学的研究, 東京大学総合文化研究科学位論文(未公刊)
パニック障害・不安障害|疾患の詳細|専門的な情報|メンタルヘルス|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_panic.html (2021年4月28日 最終アクセス)
パニック障害・不安障害|こころの病気を知る|メンタルヘルス|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_panic.html (2021年4月28日 最終アクセス)
全般不安症(GAD) - 10. 心の健康問題 - MSDマニュアル家庭版
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/10-%E5%BF%83%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E4%B8%8D%E5%AE%89%E7%97%87%E3%81%A8%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AC%E3%82%B9%E9%96%A2%E9%80%A3%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E5%85%A8%E8%88%AC%E4%B8%8D%E5%AE%89%E7%97%87-gad (2021年4月28日 最終アクセス)