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  1. ソーシャルワーカーに相談できること。医療ソーシャルワーカーが解説します

ソーシャルワーカーに相談できること。医療ソーシャルワーカーが解説します

突然の病気や事故、介護、失業、減収などで生活が困窮してしまったり、あるいは子育てや出産の悩み、家族関係のもつれなど、人生では予測しない様々な出来事が起こることがあります。そして、友人や身内に話すだけでは解決できない問題を抱えることもあります。そんなときは、ソーシャルワーカーに相談してみると問題を解決できるかもしれません。

ソーシャルワーカーの役割や存在について知っておくと、困ったときに慌てずに済むと思います。ここでは、ソーシャルワーカーの役割や相談方法などについてお伝えしていきます。

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目次

- ソーシャルワーカーとは

- ソーシャルワーカーの役割と種類

- ソーシャルワーカーに相談できること、期待できること

- ソーシャルワーカーはどこにいる?ソーシャルワーカーに相談する方法

- おわりに

ソーシャルワーカーとは


「ソーシャルワークとは社会福祉援助のことであり、人々が生活していく上での問題を解決なり緩和することで、質の高い生活を支援し、個人のウェルビーイングの状態を高めていくことを目指していくこと」とされています(日本学術会議の社会福祉・社会保障研究連絡委員会「ソーシャルワークが展開できる社会システムづくりへの提案」より)。

※ウェルビーイングとは、身体的・精神的・社会的に健康であるという意味の幸福のこと

つまり、ソーシャルワーカーは、人々が抱える問題を解決、あるいは緩和するために、悩みを抱える人々の相談に乗り、問題点を整理し、生活を改善するための提案をしたり、地域の専門機関につないだり、社会資源の利用を勧めたりする専門職のことです。


カウンセラーが、主に本人自身の心の持ち方や考え方などの問題を解決する役割を担っているのに対して、ソーシャルワーカーはどちらかというと、問題を解決するために、トラブルになっている家族間の調整を行ったり、利用できる社会資源につなげたり、言葉で上手に伝えられない方の気持ちを代弁したり、権利を守るという役割が大きいです。問題解決のために、身近な環境調整を行い、過ごしやすくすることで、問題を抱えている本人の能力を高めることに貢献します。

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他分野の専門職と連携して支援を行うことも多く、多角的な視点を持っている方が多い資格です。

ソーシャルワーカーの役割と種類


  • ソーシャルワーカーの役割

ソーシャルワーカーが果たすべき機能について、全米ソーシャルワーカー協会が示しているものをわかりやすく要約して、その特徴を以下に挙げておきます。

  1. 人々の問題解決能力や対処能力などを強化するため、事前評価、診断、発見、カウンセリング、援助、代弁などを行う
  2. 人々と社会資源、サービス、社会保障制度などと結びつけるために、チームを組んだり、紹介、連携などを行う。
  3. 制度の効果的かつ人道的な運営を促進するため、管理・運営、専門家の指導、関係者の調整などを行う。
  4. 社会政策を発展させ、改善するため、政策分析、政策提案、職員研修、資源開発などを行う。


  • ソーシャルワーカーの資格

ソーシャルワーカーの資格として一般的なものは、国家資格である「社会福祉士」「精神保健福祉士」です。そのほかに、大学卒業時に必要な単位を満たすことなどで得られる任用資格(特定の職務に就く際に必要な資格)として、「社会福祉主事」や「児童福祉司」があります。社会福祉主事は、具体的には、福祉事務所のケースワーカー、社会福祉施設の施設長や生活相談員として働いており、児童福祉司は、児童相談所や市町村の児童福祉課で子育てなどの相談、支援、家族調整などを行っています。


  • 所属する場所によって異なるソーシャルワーカーの呼称

ソーシャルワーカーは所属する場所によって呼び名が異なります。病院で働く場合は医療ソーシャルワーカー(MSW:Medical Social Worker)、学校ではスクールソーシャルワーカー、都道府県や市町村の心理・福祉課などの相談担当はケースワーカーと呼ばれます。高齢者施設などでは生活相談員と呼ばれることもあり、働く場所によって、同じ資格を持っていても呼び名が違うことがあります。

ソーシャルワーカーに相談できること、期待できること

1.生活全般にかかわる悩みを相談できる

ソーシャルワーカーが所属する場所により専門分野が異なりますが、基本的には生活全般にかかわる悩みが相談の対象になります。その方の生活にまつわる問題を解決、緩和することが目的ですので、「こんなことまで相談していいのかな」とためらわず、何でも話してみると、問題解決の糸口が見つかることもあります。なかなか話してもらえなかった部分に問題の本質が隠れていることや、相談される方は何が問題なのか分からず混乱していて気が付いていないことがあります。一見、問題とは関係がなさそうな話でも、ソーシャルワーカーの視点から見ると解決のヒントを見つけられることも多いです。


2.対応分野が幅広く、具体的な調整や支援を行なってもらえる

ソーシャルワーカーの対応分野は幅広く、所属する場所によって様々です。


  • 医療ソーシャルワーカー

私は救急病院の医療ソーシャルワーカーでしたが、退院後の生活全般の相談と、外来通院や入院中の不安や悩みを中心に携わってきました。その内容は、漠然とした不安をはじめ、支払いや生活費、就労などの経済的な悩みや、家庭不和の悩みといったものであり、退院後の生活をどうするか具体的な方向性を決める、不安を軽減する、などの援助をしています。


  • スクールソーシャルワーカー

スクールソーシャルワーカーは、学校生活の悩みのほか、家庭の問題なども相談できます。文部科学省の「スクールソーシャルワーカーの活用事業」の「趣旨」を一部抜粋すると、「教育分野に関する知識に加えて、社会福祉等の専門的な知識や技術を有するスクールソーシャルワーカーを活用し、問題を抱えた児童生徒に対し、当該児童生徒が置かれた環境へ働きかけたり、関係機関等とのネットワークを活用したりするなど、多様な支援方法を用いて、課題解決の対応を図っていくことにする。」とあります。学校生活の悩みを相談できる専門家として、スクールカウンセラーをご存知の方は多いと思います。相談できる内容は、スクールカウンセラーもスクールソーシャルワーカーもほぼ同じですが、カウンセラーはどちらかというと本人の心の問題を解決することが専門であり、ソーシャルワーカーは、現在の悩みを解決するために社会資源を利用したり、環境調整を行なったりする部分が強みです。


  • ケースワーカー

都道府県や市町村で相談支援を行うケースワーカーも所属する組織や部署によって専門分野が違いますが、例えば、生活保護のケースワーカーであれば、生活費や医療費などに関する生活保護の相談をはじめ、その後の生活の支援、就労や通院などの相談、家族との連絡などを必要に応じて行います。


  • 生活相談員

高齢者施設のソーシャルワーカーは、生活相談員と呼ばれることが多いですが、主に施設入所中の悩みや不安、退所後の生活についての相談に乗ります。入所している本人だけでなく、家族の相談にも乗り、被介護者の要望と介護者としての家族の負担を擦り合わせる家族調整なども行います。


漠然とした不安があるけれど具体的に何を相談していいかわからない、という場合も、本人や家族が関わりのある施設や専門機関のソーシャルワーカーに一度会っておくと、困ったときにいつでも話を聞いてもらえる、という安心感につながります。


3.地域の社会資源や利用できる制度について教えてもらえる

ソーシャルワーカーは地域の社会資源の情報を多く持っているため、ソーシャルワーカーを通して相談すると、現在の施設を退院・退所した後に早めに入れる施設を紹介してくれるなど、今後の生活の見通しがつきやすいということが挙げられます。また、社会保障制度なども紹介してくれるので、医療費や生活費、利用できる制度、手続きなどについても情報が得られます。

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ソーシャルワーカーはどこにいる?ソーシャルワーカーに相談する方法

ソーシャルワーカーは生活全般の相談に乗ってもらえると述べましたが、相談したい内容をある程度考えてから、解決したい悩みに一番近いソーシャルワーカーに相談するのが良いと思います。

前述したとおりソーシャルワーカーは、医療機関(診療所などはいない場合が多いですが、200床以上の入院設備のある病院には医療ソーシャルワーカーがいることが多い)、高齢者や障害のある方のための専門施設市町村の(高齢者、障害児・者、児童などの)福祉関係の相談窓口に所属しています。

多くの場合は、医療機関であれば、その病院に通院や入院をされている本人や家族が相談の対象者になり、高齢者や障害児(者)の施設でも、入所を希望する方や通所・入所している方が相談対象になることがほとんどです。どこにもかかわりがないようであれば、市町村の相談窓口に相談し、専門の施設を紹介してもらうのがいいと思います。


ソーシャルワーカーは各々の専門施設に所属していますが、訪問などで外出していることも多いです。相談内容が決まったら、電話やメールなどで予約を取ってから相談に行くとよいでしょう。突然訪問しても、不在だったり、他の方と面談していて会えない場合もあります。

医療機関であれば、医師や看護師に相談すると、必要に応じて、医療ソーシャルワーカーにつないでくれます。本人や家族が通所・入所している施設であれば、職員に聞くと、ソーシャルワーカー(生活相談員と呼ばれていることもあります)に連絡を取ってくれます。

子育ての悩み、心の問題、経済的な相談、社会保障に関することなどを、身近な地域のソーシャルワーカーに相談したい場合は、市町村窓口で例えば、「子どもを育てることに自信がないので、専門の人に聞いてもらいたい」などと伝えると、児童福祉司につないでくれるでしょうし、「成人した子どもが引きこもりで困っている」などの問題であれば、都道府県の精神保健福祉センターに相談すると、精神保健福祉士が対応してくれるでしょう。

一般の方は、ソーシャルワーカーと聞いてもピンとこないですし、保有資格の違いや所属部署によって名称が異なるため、とても分かりにくいと思われます。ですので、地域の行政機関に相談する場合は、「~について専門の方に相談したいのですが、どちらに連絡すればいいですか?」というように、代表窓口に連絡するとスムーズです。


うららか相談室では、社会福祉士や精神保健福祉士のソーシャルワーカーにオンラインで悩みを相談することができます。一人で悩みを抱え込みすぎてしまわないよう、お気軽にご利用いただければと思います。

おわりに

普通に問題なく生活しているつもりでも、ある日突然、解決困難な問題に悩むことがあります。身近に同じ悩みを持ち、情報に詳しい人がいれば、適切なアドバイスをもらえますが、そのようにうまくいくことは多くはありません。

子育てや介護、事故や病気、経済的な問題や心身の不調などは、誰しも抱える可能性があります。そんなときに、ソーシャルワーカーの役割や利用方法を知っていると心強いです。

地域の社会資源を利用したり、家族に対して自分からはうまく言えないことをソーシャルワーカーに代弁してもらったりすることで、過ごしやすくなることも多々あります。

様々な呼び名があり、まだまだ一般的にはわかりにくいソーシャルワーカーについて、少しでも知ってもらえたら幸いです。

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参考にしたもの

・福祉臨床シリーズ編集委員会編(2005)、臨床ソーシャルワーク事例集、弘文堂

・門田光司・奥村賢一(2009)スクールソーシャルワーカーの仕事、中央法規

・厚生労働省(2017)ソーシャルワークに対する期待について, 第9回社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会

・社会福祉主事|全国社会福祉協議会

https://www.shakyo.or.jp/guide/shikaku/setsumei/10.html(2021-04-09 参照)

・厚生労働省(2016)児童虐待防止対策について

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/11.pdf(2021-04-09参照)

・スクールソーシャルワーカー活用事業:文部科学省

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/046/shiryo/attach/1376332.htm(2021-04-09参照)

・社会福祉・社会保障研究連絡委員会(2003)ソーシャルワークが展開できる社会システムづくりへの提案, 日本学術会議 第18期社会福祉・社会保障研究連絡委員会

家族関係の悩み相談・カウンセリング
このコラムを書いた人
精神保健福祉士・社会福祉士
救急病院の医療ソーシャルワーカーとして、うつに悩む方や、不登校・長期の引きこもり、障害のあるお子さんの悩みなど、様々なケースに出会い、早期に専門職が関わる必要性を感じてきた。子育てやモラハラなどの家庭内の問題など、様々なお悩みの相談に携わっている。
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